ロシア軍の攻撃によりオデッサやニコラエフへ物資を輸送する船舶の航行が遮断され、ウクライナは黒海へのルートを断ち切られた。地上ではキエフ、スミ、オデッサなどが激しく攻撃されている。明らかに攻撃の強度が高まった。「特別軍事作戦」から戦争へステージが進んだと言える。ウクライナ/NATO軍は迎撃システムが脆弱な民間施設を狙ってきたが、ここにきてロシアの石油タンカーや穀物輸送船に対する攻撃が激化、それがロシア側の姿勢を変えたわけだ。
キエフ政権は混乱、街頭では反ウォロディミル・ゼレンスキーのデモが始まっている。ファシズム体制下、思想、言論、言語が統制され、野党の存在も許されない国でこうした運動が起こっているのだ。抗議活動はミハイル・フェドロフ国防相の解任に対する抗議として始まったが、これは不満を噴出させる切っ掛けにすぎない。
フェドロフに目をつけたのはパランティア・テクノロジーズのアレックス・カープCEO。彼は「防衛およびAI分野での協力」を確立するため、2022年にキエフを訪れている。
パランティアは2003年、CIAのベンチャー・キャピタル部門であるIn-Q-Telからの資金で創設された会社。イスラエルの情報機関とも関係が深く、パランティアの共同創設者である現在会長のピーター・ティールはドナルド・トランプ大統領を支持、J・D・バンス副大統領のスポンサーとしても知られている。
同社はイスラエルを積極的に支援、イスラエル軍によるガザでの住民虐殺に絡んで軍事監視や航法システムを開発した。アメリカ軍は 対イラン攻撃でパランティアのメイブン・スマート・システムを使用した 。このシステムの導入を自衛隊も検討している。
メイブンはデータ中心型のプラットフォームで、衛星画像、ドローンからの映像、レーダーのデータ、戦場センサー、情報報告などを統合して指揮官らの判断を支援する。
このAIがロシアに対するドローン攻撃を立案したのだろう。戦場ではロシア軍が圧倒しているが、それに対してウクライナ/NATO軍はロシア領内にあるエネルギー関連の民間施設を激しく攻撃するようになり、ロシア人を怒らせることになったが、この攻撃もAIの命令なのだろう。パランティアのAIは無能だ。
しかし、そうしたウクライナ/NATO軍の攻撃に対する報復でウクライナの主要都市は壊滅状態。ウクライナが使っているパトリオット防空システムの迎撃率は数%と言われているが、このところパトリオットからミサイルが発射されていない。
ウクライナ軍、正確に言うならばキエフのクーデター軍の兵士不足は2023年の段階で深刻。 その年の8月31日までイギリスの国防大臣を務めていたベン・ウォレスが同年10月1日にテレグラフ紙へ寄稿した論稿の中で、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えているとしていた。
その後、状況が改善されているはずはなく、強制徴兵担当者が街を歩いている男性を拉致、数週間の訓練で最前線へ送り込み、殺している。すでにヨーロッパ諸国で傭兵の募集に応じる人は見当たらず、目立つのはコロンビア人だ。
ウクライナ西部のリビウでは7月8日、強制徴兵担当者の自動車が市民に襲われ、破壊された。ウクライナの街頭では男性が拉致され、最近ではその家族や通行人と担当者が乱闘になる様子を撮影した映像が発信されてきた。
南オセチアへの奇襲攻撃は対露戦争の一環
ロシアや中国の征服を目指す戦略をアングロ・サクソンは19世紀から立てているが、最近の動きとしては2008年8月のジョージアを利用した南オセチアへの軍事侵攻がある。これは北京オリンピックの開催に合わせて実行された。
この軍事侵攻を仕掛けたジョージアのミヘイル・サーカシビリ大統領は西側にとって都合の悪い政権を倒すため、2003年11月に実行された「バラ革命」を経て登場してきた人物。2002年5月から05年8月にかけてジョージア駐在アメリカ大使を務めていたのはクーデターの仕掛け人とも言われているリチャード・マイルズ。トビリシの大使館で彼はサーカシビリ陣営をコーチしていた。(Guardian, November 26, 2004)
2003年の選挙前、CIAの工作資金を扱っているUSAIDは選挙の信頼度を上げるためだとして投票のコンピュータ化を求め、150万ドルを提供。コンピュータ化によって投票数の操作が容易になることはいうまでもない。コンピュータ化を求めたのはアメリカが不正選挙を目論んでいたからだと推測する人もいる。
サーカシビリは1992年に国立キエフ大学を卒業しているが、そこでペトロ・ポロシェンコなる人物と親しくなっている。2014年2月にウクライナではアメリカ主導のクーデターがあったが、その後にポロシェンコはウクライナ大統領に就任した。
サーカシビリは1994年にアメリカのコロンビア・ロー・スクール(法科大学院)で学び、翌年にはジョージ・ワシントン大学ロー・スクールに通っている。その後、彼はニューヨークの法律事務所パターソン・ベルクナップ・ウェッブ・アンド・タイラーで働き、そこでエドゥアルド・シェワルナゼの下で働いていた旧友に誘われて政界入りしたという。
ジョージアが南オセチアを奇襲攻撃する約8時間前、サーカシビリ大統領はロシアとの関係強化を求める南オセチアの分離独立派に対話を訴え、油断させていた。奇襲攻撃の開始は23時35分だ。(The Times, August 8, 2008)
その当時、南オセチアに駐留していた平和維持部隊は軍事的な能力は低く、アメリカやイスラエルの軍事訓練を受けているジョージア軍の前になす術がなかった。そこでロシア軍は戦闘車両150両を送り込むなど即座に反撃、ジョージア軍に対する空爆も開始。ロシア軍はイスラエル軍に貸されていたふたつの基地も攻撃、航空機を着陸させてジョージア軍を攻撃したと言われている。イスラエル軍を含めてロシア軍は粉砕してしまった。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Progressive Press, 2019)
この奇襲攻撃の背後にアメリカ政府がいたことをうかがわせる出来事もある。攻撃の約1カ月前の7月10日にアメリカの国務長官を務めていたコンドリーサ・ライスがジョージアを訪問していた。奇襲攻撃の直後、8月15日にもライスはジョージアを訪問、サーカシビリと会談している。
また、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズは元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣、「アフガニスタンに派遣される部隊」を訓練しているが、それ以上に重要な役割を演じたのはイスラエルだ。
イスラエル軍のガル・ヒルシュ予備役准将が経営する「防衛の盾」は2001年から予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士を教官としてジョージアへ送り込み、ロシアとの戦争に備えて武器を提供、それと同時に軍事訓練を行った。軍事訓練の責任者はヒルシュのほか、イスラエル軍の退役将軍イースラエル・ジブ。イスラエルは「イラクでNATO軍を助けるため」に訓練していることになっていたのだが、実際はオセチアやアブハアーズへ派遣される兵士だった。(Ynet, August 16, 2008)
アメリカのタイム誌によると、訓練だけでなくイスラエルから無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどの提供を受けている。(Tony Karon, “What Israel Lost in the Georgia War”, TIME, August 21, 2008)
当時、ジョージア政府にはヘブライ語を流暢に話す閣僚がふたり含まれていた。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣で元イスラエル人のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりはテムル・ヤコバシビリだ。
米英の対ロシア戦争にはイスラエルが深く関与している。





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