ハマスを含むパレスチナ系武装グループが2023年10月7日にイスラエルを攻撃した。「アル・アクサの洪水」である。 その攻撃に関する情報をイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は事前に把握、しかも隠蔽していたとイスラエルのハーレツ紙は報道した 。
同紙によると、ネタニヤフ首相は攻撃の1週間半前、アラブ首長国連邦のハンマド・ビン・ザイード大統領から電話で警告されていたのだが、何も行動を起こさなかったという。ビン・ザイードの電話会談は45分間にわたり、その中でハマスのガザ地区指導者がイスラエルに対する大規模な作戦を計画していると警告したのだが、その警告を首相は安全保障当局者へ伝えなかったというのだ。またイスラエル政府はエジプトの情報機関からもハマスによる攻撃が迫っていると警告されていたとハーレツ紙は伝えている。
この攻撃で約1400名のイスラエル人が死亡したとされているが、 当時のハーレツ紙による報道によると、イスラエル軍は侵入した武装集団を壊滅させるため、選挙された建物を人質と一緒に砲撃で破壊したという 。イスラエル市民をイスラエル軍は殺害したということだ。そしてイスラエル軍はハマスの攻撃を口実にしてガザ住民の大量虐殺を始めた。
ネタニヤフ首相は攻撃の直後、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出した 。聖書の中でユダヤ人の敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねてみせたのだ。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたとされている。これこそがガザやレバノンでイスラエルが行ってきたことだというわけだ。
ネタニヤフ首相はハマスによる攻撃を事前に知っていただけでなく、イスラム教徒を挑発していた。イスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクに対して冒涜的な行為を繰り返していたのだ。

例えば今年4月1日、イスラエルの警察官はイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺、4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクに突入し、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/今年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、そしてユダヤ教の「仮庵の祭り」(今年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。ユダヤ教徒の一部はアル・アクサ・モスクを破壊し、「第3神殿」を建設するべきだと主張していた。
その後、イスラエルはガザで民族浄化作戦を展開したが、その犠牲者がどの程度は明確でない。多くが瓦礫の下に埋もれ、それをイスラエル側は運び去っているが、これは事実を隠すことが目的だろう。
ネタニヤフ首相はウラジミール・ジャボチンスキーが1925年に結成した「修正主義シオニスト世界連合」の流れを汲む。ジャボチンスキーは1940年にアメリカで心臓発作のために死亡したが、アメリカ時代に彼の秘書を務めていたベンシオン・ネタニヤフはベンヤミン・ネタニヤフの父親にほかならない。その後、ジャボチンスキー派は1970年代に福音派キリスト教徒、キリスト教原理主義者、あるいは聖書根本主義者と呼ばれているグループに支援されて勢力を拡大させた。
ガザでの推定犠牲者数はいくつか示されている。 医学雑誌「ランセット」は2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数は6万4260人で、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だと推計する論文を発表した 。
また、 「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書では、イスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前に約222万7000人だったガザの人口が調査時点では185万人に減少、つまり37万7000人が行方不明になっているとしている。 死亡者の約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達するという推計を採用すると、殺害された子どもの数は15万人になる。
2023年10月7日にイスラエルと攻撃したハマスは1987年12月にシーク・アーメド・ヤシンらによって創設された。ヤシンはムスリム同胞団の一員としてパレスチナで活動していた人物で、イスラエルの治安機関であるシン・ベトの監視下、1973年にムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)を、そして76年にはイスラム協会を設立。そしてハマスは1987年にイスラム協会の軍事部門として作られた。
イスラエルがハマスを創設した目的は、PLO(パレスチナ解放機構)の中心的な組織、ファタハ(パレスチナ民族解放運動)を率いていたヤセル・アラファト対策のためだ。アラファトのライバルを育て、内部対立させることで運動を弱体化させようとしたのである。
しかし、時間が経過するにつれ、ハマスの内部にパレスチナ解放を目指そうというメンバーが増えてくる。元々のメンバーはカタールで保護されているが、パレスチナ解放を目指すメンバーはレバノンなどへ移動させられているようだ。
それでも、 シーモア・ハーシュによると、2009年にネタニヤフは首相へ返り咲いた際、PLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとした 。そのため、ネヤニヤフはカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。イスラエルとハマスとの関係は切れていないということだろう。
ネタニヤフはパレスチナで民族浄化を実行するだけでなく、「大イスラエル構想」も持っている。西アジア全域からイスラム教徒を追い出してイスラエルにしようと考えている。この計画はジャボチンスキーたちだけのものではなく、アメリカやイギリス、つまりアングロ・サクソンの支配者たちのものでもある。彼らは北アメリカやオーストラリアで先住民を虐殺し、自分たちが望む人びとを移住させ、自分たちの国を作り上げた。ウクライナでも先住のスラブ人が殺されているが、ロシアの反撃でアングロ・サクソン系の支配者は苦境に立っている。
アメリカ軍とイスラエル軍は「大イスラエル」を実現するため、2月28日にイランを騙し討ちにして最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師やアブドルラヒム・ムサビ参謀総長を含むイランの要人を殺害、態勢を転覆させて国を乗っ取ろうとしたが、失敗した。
外部の意向を受け、ウクライナにおける対ロシア戦争や西アジアの対イラン戦争をドナルド・トランプ政権内で指揮しているのはスティーブン・ミラー大統領次席補佐官と行政管理予算局のラッセル・ボート局長だと言われている。ネタニヤフが指揮しているわけではない。ウクライナやイランで敗北した責任を彼らはウォロディミル・ゼレンスキーとネタニヤフに負わせようとしている。
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【 Sakurai’s Substack 】
【 櫻井ジャーナル(note) 】