Just the way you are

 Just the way you are

2006.01.15
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カテゴリ: こども劇場/例会
「夏の庭ーThe Friendsー」
作:湯本 香樹実(新潮社 1994)演出:印南 貞人
東京芸術座

東村山中央公民館ホール  開演18:00


町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは『観察』し始めた。
生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。
夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごとに高まるけれど、
不思議と老人は元気になっていくようだ・・・。
いつしかぼくたちの『観察』は、
老人との深い交流へと姿を変え始めていく。

喪われ逝くものと、
決して失われぬものとに触れた
ぼくたちの夏休みは終わった。

一面に咲き乱れるコスモスの庭で。

(東京芸術座HPより)

東京に住む小学6年生の少年3人組が、ある独り暮らしの老人と出会い、ひと夏の交流を通して「死」とは何か、「生」とは何かを考えてゆく物語。(これでは、ありがちな解説すぎて全然面白くない…:苦笑)

物語のストーリーテラーでもある木山少年は、小学校最後の夏休みも毎日塾へ通っている受験生。専業主婦の母親は、仕事人間の夫から子どもの教育を一身に背負わされ、ストレスを抱えているのか…ロクに食事もとらず、息子の前でも構わずワインを飲んでばかり。
やせっぽちでメガネの河辺少年は、両親が離婚し、現在は母子家庭。父親がいないことを引け目に感じているのか、父親の話題になると、つい話が大きくなる(虚言癖)傾向あり。「老人(の死)を観察しよう」と言い出したのも彼。「お父さんに離婚したことを後悔させてやるのよ!」と、母から発破をかけられ、やはり受験のために塾通い中。
デブの山下少年は魚屋の息子。手先が器用で、小学生ながら包丁を研いだり、魚を3枚に卸ろすこともでき、親の家業を継ぐのもまんざらではなさそう。だが、両親は息子を魚屋にはさせたくないため、彼もまた受験生生活を強いられている。

ある日の塾帰り。デブの山下が、田舎の祖母のお葬式での体験談を2人に話す。3人は「死」は身近なものと気づき、生まれて初めて「死んだ人=死体」をも具象的なモノとしてとらえはじめる。「死ぬってどういうこと?」「死んだ人を見てみたい」…好奇心旺盛な年頃の3人は、近所で独り暮らしをしているおじいさんを見張り、その死を見届けようと観察を始める。(ある意味、これも立派な自由研究?)

おじいさんの家は長年まったく手入れをしていないようだ。庭に放置されたゴミ袋も夏の暑さのせいで異臭を放っている。おじいさんは、何年も着替えたことがないような薄汚れたシャツとステテコ姿で、一日中こたつに入ってテレビを見ている。外出と言えば、近所のスーパーで2、3日に一度お弁当を買うのみ。 3人は、そんな生ける屍?のようなおじいさんを連日根気よく見張る。しかしおじいさんは一向に死ぬ気配はない。どこかのクソガキが自分ちを覗いていると気づき、最初は怒って追い払ったおじいさんも、徐々に3人にうちとけてゆく。むしろ、少年たちが毎日自分を見に来るのを心のどこかで楽しみにしていたんじゃないかな。ある時は、Vサインをしながらニカッと笑ってみせて、3人を驚かせる。死んでゆくどころか、どんどん元気になってゆくおじいさん。年寄りの長生きの秘訣は、「若さ」に触れることなんだなぁ…と思ったり。

そうこうするうちに少年たちは、いつの間にか、おじいさんの庭の草取りやら洗濯物干しを手伝わされたりする。最初は渋々やらされていた3人も、普段の核家族の生活の中では味わったことのない、老人との交流がまんざら嫌でもないようで、文句を垂れつつも素直に言うことを聞く。塾帰りにおじいさんちへ通う毎日。その間にも、それぞれの家庭では小さな問題が起こっていたりするのだが、3人はおじいさんの前では、本当に無邪気に「自分」を出してゆく。昔、花火職人だったおじいさんは、少年たちのために手製の打ち上げ花火を披露する。少年たちは、おじいさんの家の庭にコスモスの種をまく。秋、庭一面に咲き乱れるコスモスをおじいさんに見せてあげるために。

おじいさんは、3人にせがまれて自身の戦争体験を話す。戦時中の極限状態とはいえ、南方の戦地で自分が犯したことの罪の意識から、戦争が終わっても奥さんの待つ家には帰らず、以来ずっと独り暮らしなのだそうだ。3人は、生き別れになった奥さんとおじいさんを再会させようと、わざわざ電話帳から居場所を探り、バスで2時間かけて老人ホームに会いに行ったりする。少年達にとって、おじいさんはもはや「他人」ではなく、「この人のために、なんとかしてやりたい」と願える存在~「友だち」になった瞬間だと思った。(結局、おじさんと奥さんの再会話は実らなかったのだが)

そして、突然の別れ。


数ヶ月後の少年達。中学受験後の少年達の家庭では、それぞれに変化もあった。木山の家では、仕事人間の父親が、母親の入院をきっかけ家庭を顧みるようになり、夫婦関係にも修復の兆しが見えはじめていた。河辺の母親は再婚。山下は受験に失敗し、念願叶って(?)将来は家業の魚屋を継ぐ方向へ進みそうだ。
これからも少年達は、人生の途中で何かにぶつかるたびに、「こんな時、もしも、おじいさんならどうしただろう」と、自問自答するだろう。 「俺たち、あの世に知り合いがいるんだぜ!それってすごい心強くないか?!」 と、一回り大きくなった少年達の爽やかな笑顔と、自分の決めた進路へと向かう姿が、とても眩しく感じた。

「死」という重いテーマを扱っている作品なのに、爽やかな感動を与えてくれる秀作。多感な年頃の子どもの視線になれば、「死」に興味を持つのは至極自然な事であり、現在、まっとうな大人に成長している人ならば誰にでも覚えがあるはず。昔は大家族で、お年寄りも今ほど長生きじゃなかったから、小学生の頃にとりあえず祖父母のお葬式に立ち会うのが「初体験」みたいな感じだったのでは。あるいは子どもの頃に、道ばたに転がっている猫やらスズメの死骸を観察したり、虫の共食いを見ちゃったりする経験は、それ自体は残虐で目を背けたくなるものでも、人が人として成長するためにも大切な事なのだと思う。

むしろ、子どもの世界からリアルな「死」を遠ざけ、まるで別世界の絵空事のように割り切ってしまっている現代の風潮の方が、問題なんじゃないのかな?(だから「人殺しを経験してみたい」とか、とんでもない事を言い出す若者が出現したりするのでは)と、あらためて思った。
(この話になると、書きたい事が山ほどありずぎるのでこの辺でおしまい)


映画にもなっているので、原作本と共に機会があれば見てみたいな。







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Last updated  2006.02.19 09:36:42
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