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2025.11.16
テーマ： AI(140)
カテゴリ： 楽天グループの戦略
ご訪問ありがとうございます。
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楽天AI戦略の全貌：「Rakuten AI Optimism」基調講演レポート
イベント概要と盛況ぶり
2025年7月30日から8月1日にかけて、パシフィコ横浜で開催された「Rakuten AI Optimism」は、楽天グループにとって記念すべき第6回目の「楽天オプティミズム」の進化形として注目を集めました。今回は初めてAIをメインテーマに据えたビジネスイベントとして生まれ変わり、会場には累計約2万3千人、オンラインを含めると3万3千人を超える参加者が集まりました。
「Empowering the Future」をコンセプトに掲げた本イベントでは、日本の未来に変革をもたらすことを目的として、ビジネスカンファレンスとエキシビジョンの両軸で展開されました。特に初日の基調講演では、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇し、AIの可能性と楽天の具体的な取り組みについて詳細に語りました。
楽天グループの歴史と現在地
三木谷氏は講演の冒頭で、楽天グループの約30年にわたる挑戦の歴史を振り返りました。1995年に日本興業銀行を退職した同氏が、インターネットの可能性を信じて1997年に「楽天市場」をスタートした当時、通信速度はわずか14.4kbpsという現在の高速インターネットの約10万分の1という環境でした。
それでも三木谷氏は「無線であらゆる通信が可能になり、世の中の情報はすべてつながって世の中が根本から変わっていく」という先見性を持ち、特に地方企業をはじめとした中小企業を支援したいという思いから、全く新しいプラットフォームの構築に着手しました。
その後、楽天トラベルの展開、世界初の大規模インターネットポイントシステムの構築、証券業務への参入、プロ野球への参入、銀行業への進出、社内公用語の英語化、そして近年の携帯キャリア事業への参入まで、常に「世の中の常識を逆手にとった」様々なプロジェクトにチャレンジしてきました。
現在、楽天グループのサービスは70以上にのぼり、世界規模では約20億人の利用者数を誇ります。日本国内だけでも、ほぼすべての日本人が楽天IDを保有し、月間アクティブユーザー数は約4,400万人に達しています。多くのユーザーが複数のサービスを利用している点も、楽天エコシステムの特徴として挙げられます。
楽天モバイルによる通信革命
楽天モバイルの登場により、日本国民のインターネットおよびモバイル利用が大きく変化していることも明らかにされました。契約者の1カ月あたりの平均データ利用量は増加傾向にあり、現在約32GBに近づいています。若年層では月々約70〜80GBを利用するユーザーも存在し、まさに「無制限の時代」が到来していることが示されました。
さらに、楽天モバイルでは革新的な取り組みとして、AIアバターによる接客サービスや、AIを通じた人間のスタッフのような対話によるeSIMや物理SIMカードの発行システムを導入しています。これらは「未来のモバイル契約」の姿を具現化したものとして紹介されました。
ネットワーク運用においてもAI活用が進んでおり、RAN Intelligent Controller（RIC）を活用することで、消費電力を従来比で20％削減することを目指しています。
出典：https://rakuten.today/blog-ja/rakuten-ai-optimism-mickey-opening-keynote-2025-j.html?lang=ja
AIエージェントという新たなパラダイム
講演の核心部分では、AIの進化について詳しく解説されました。三木谷氏は「楽天グループが目指しているのは、最強のAI」だと宣言し、2000年代中盤からのディープラーニングの発展が生成AIの登場につながり、ここ数年間でAIが劇的なスピードで進化していることを説明しました。
特に注目すべきは、AIが単純な回答を提供する段階から「アクション」を実行する段階へと進化している点です。これがAIエージェントと呼ばれるものであり、三木谷氏は「スーパー秘書」という表現で説明しました。従来の質問に答えるだけのデジタル対応から、ユーザーの意図を理解し、その趣味や嗜好を咀嚼した上で実際に取引を実行する能力を持つことが重要だと強調されました。
AIの普及スピードについても驚くべき数字が示されました。2025年6月末時点で、世界では約12億人を超える人々がAIを利用しており、これはインターネットやスマートフォンの普及スピードを圧倒的に上回っています。ChatGPTの出現後、次々と新しいAIサービスが登場し、ほぼすべての人が何らかの形でAIを日常的に使用する時代が到来していることが説明されました。
日本のAI後進性と楽天の使命
一方で、日本のAI活用については厳しい現実も示されました。アメリカを100とした場合、日本の「AI力」は20程度にとどまっており、特に50〜60代の中高年層では生成AIサービスの利用率が20％程度という状況です。
この現状を踏まえ、三木谷氏は「楽天グループが皆さんをいかにAIでエンパワーメントしていくかというのは極めて重要な役割の1つ」だと述べ、楽天が「意識しないでも皆さんがAIを使えるようになる」ことを目指していると表明しました。
出典：https://rakuten.today/blog-ja/rakuten-ai-optimism-mickey-opening-keynote-2025-j.html?lang=ja
「Rakuten AI」ブランドの刷新と戦略
このような背景から、楽天は「すべての人に最強のAIを」というコンセプトのもと、「Rakuten AI」のブランドコンセプトとデザインを一新しました。新しい融合、新しい創造、そして協働をキーワードに、既存のビジネス向けおよび個人向けAIサービスの統一ブランドとして展開することが発表されました。
技術面では、OpenAI、Anthropic、Microsoft、LangChain、LlamaIndexといった外部企業との提携により「Rakuten AI」を構築していることが明かされました。同時に、日本語の特殊性を考慮した独自の大規模言語モデル（LLM）の開発も進めており、スマートフォン内で動作する小規模言語モデル「Rakuten AI 2.0 mini」の開発にも取り組んでいます。
具体的なサービス展開
講演では「Rakuten AI」を搭載した具体的なサービスも紹介されました。7月30日より、楽天モバイル契約者専用のコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」が「Rakuten AI」を搭載し、大幅にバージョンアップされました。
この新しいRakuten Linkでは、テキストや音声、画像検索により楽天市場、楽天ラクマ、楽天ブックス、Rakuten Fashionといったショッピングサービスのレコメンデーションが可能になります。さらに今後は、金融、旅行、エンターテインメントといった楽天エコシステム全体のサービスを横断して、「Rakuten AI」がユーザーのエージェントとして機能することが予定されています。
実用例として、商品の写真を撮影すると類似商品を提案したり「万年筆を予算2万円以下で探してください」といった音声による検索が可能になることが挙げられました。従来の各サービスの検索ボタンからの検索が、エージェントによる自動的な検索へと変化することで、インターネットの使用方法の概念が根本的に変わることが説明されました。
AI＋ヒューマンの重要性
講演の終盤では、AIの発展における人間の重要性についても言及されました。三木谷氏は「最終的にはやっぱり人だと思います。AI＋ヒューマン。人間的なサービスが重要になってくる」と述べ、楽天市場の店舗や楽天トラベルの宿泊施設が培ってきた「ライブな感覚」こそが重要だと強調しました。
まとめと今後の展望
三木谷氏は講演を「AIを使いこなす、使い倒すことが皆さんにとって重要であって、楽天はそれに向けて最強のAIプラットフォームを作っていきます」という言葉で締めくくりました。
今回の基調講演を通じて、楽天グループのAI戦略の全体像が明らかになりました。単なる技術導入ではなく、長年培ってきた豊富なデータ資産と多様なサービス群を活用し、ユーザーの日常生活に溶け込む形でAIを提供する包括的なアプローチが特徴的です。
「全ての人に最強のAIを」という理念のもと、楽天は日本のAI活用促進において重要な役割を担うことを宣言しました。AIエージェント時代の到来を見据え、人間味を失わない「最強のAIプラットフォーム」の構築に向けた取り組みが、今後注目されることになるでしょう。
ここから私見と考察を記載いたします。
考察1：楽天の「AI戦略」は本質的に「データ戦略」である
今回の記事を読む限り、楽天のAI戦略は、特定の生成AI技術を自社開発するよりも、むしろ自社が蓄積してきた「多様なデータ」をいかに活用するかに重点を置いていると読み取れます。三木谷氏が「データは金脈である」と語っていることからも、この点は明らかです。
楽天グループが抱えるデータは、EC、旅行、金融、通信など、私たちの生活に密着した多岐にわたるサービスから生まれています。これらは単なる購買履歴だけでなく、個人の趣味嗜好、経済状況、行動パターンといった複合的な「ライフログ」として機能します。
例えば、楽天市場でキャンプ用品を購入し、楽天トラベルでキャンプ場の予約をし、楽天カードでガソリン代を支払うといった一連の行動は、ユーザーの「アウトドア」という嗜好を深く理解するのに役立ちます。これをAIエージェントに活用すれば、単に「キャンプ場を検索する」だけでなく、「予算内で、家族連れでも楽しめる、周辺に温泉があるキャンプ場」といった、より高度な要求に応えられるようになるでしょう。
これは、特定の領域に特化したデータしか持たない企業と比べ、楽天の大きな強みです。楽天は、外部の先進的なAIモデル（OpenAIなど）を「エンジン」として利用しつつ、自社の膨大なデータを「燃料」として投入することで、他社には真似できない、よりパーソナライズされた「最強のAI」を構築しようとしているのではないでしょうか。
考察2：AIエージェントは「検索」の概念を根底から変える
AIエージェントの概念は、単なる機能追加ではなく、ユーザーとサービスの間のインターフェースそのものを刷新するという、極めて野心的な試みだと考えられます。
従来のインターネット利用は、ユーザーが能動的に検索し、選択するというプロセスが中心でした。しかし、楽天が目指すAIエージェントは、ユーザーの「〇〇したい」という漠然とした意図を理解し、サービス横断的に最適な解を提示し、さらには取引まで自動で実行するというものです。これは、特定のサービスにユーザーを誘導するのではなく、ユーザーの生活全体をAIがサポートする、という新しいパラダイムへの転換です。例えばユーザーが「週末に旅行に行きたいな」と話しかければ、AIエージェントが過去の旅行履歴、予算、現在の天候などを考慮し、旅行プランを提案し、予約まで完了させます。
この変化は、特定のキーワードで検索して情報を探すという、現在のインターネットの使い方を過去のものにする可能性を秘めています。もしこのビジョンが実現すれば、ユーザーは特定のサービス名を意識することなく、楽天という「AIエコシステム」に深く依存するようになるでしょう。
考察3：日本のAI後進性は「AI＋ヒューマン」で克服できるか？
講演では日本の「AI力」がアメリカの5分の1程度にとどまっているという厳しい現状が示されていました。楽天はこの課題を意識しなくてもAIを使える状態にすることで解決しようと試みています。しかし、三木谷氏が講演の終盤で強調した「AI＋ヒューマン」という概念が、この課題解決の鍵になるかもしれません。日本は、職人技やきめ細やかなサービスといった人間的な価値を重視する文化があります。
楽天のAIは、この人間味と効率性を融合させることを目指しているように思えます。例えば、AIが最適な旅行プランを提案し、予約まで自動で行いつつも、宿泊先の旅館では細やかなおもてなしが提供される、というようなハイブリッドな体験です。
これは、テクノロジーが人間の仕事を奪うのではなく、人間の強みである共感や創造性をAIが引き出すという、日本的なAIのあり方を模索しているようにも感じられます。楽天が目指す人間味あるAIは、単なる効率化ツールではない、新しい価値観を提示するかもしれません。日本の企業や文化に深く根ざしたおもてなしの精神が、AIと結びつくことで、世界に類を見ないユニークなサービスが生まれる可能性を秘めているのではないでしょうか。
全ての人に最強のAIを：「Rakuten AI Optimism」三木谷オープニングキーノート
https://rakuten.today/blog-ja/rakuten-ai-optimism-mickey-opening-keynote-2025-j.html?lang=ja
すべての人に最強のAIを：「Rakuten AI Optimism」三木谷オープニングキーノート
楽天グループ最大級の体験イベント「Rakuten Optimism（楽天オプティミズム）」が、第6回開催を迎えた今年は、AIに焦点をあてたビジネスイベント｢Rakuten AI Optimism」へと進化。2025年7月30日（水）から8月1日（金）まで3日間の会期中、会場となったパシフィコ横浜には約2万3千人（累計来場者数）を超えるお客様にお越しいただき（…
ご訪問ありがとうございます。
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楽天AI戦略の全貌：「Rakuten AI Optimism」基調講演レポート
イベント概要と盛況ぶり
2025年7月30日から8月1日にかけて、パシフィコ横浜で開催された「Rakuten AI Optimism」は、楽天グループにとって記念すべき第6回目の「楽天オプティミズム」の進化形として注目を集めました。今回は初めてAIをメインテーマに据えたビジネスイベントとして生まれ変わり、会場には累計約2万3千人、オンラインを含めると3万3千人を超える参加者が集まりました。
「Empowering the Future」をコンセプトに掲げた本イベントでは、日本の未来に変革をもたらすことを目的として、ビジネスカンファレンスとエキシビジョンの両軸で展開されました。特に初日の基調講演では、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇し、AIの可能性と楽天の具体的な取り組みについて詳細に語りました。
楽天グループの歴史と現在地
三木谷氏は講演の冒頭で、楽天グループの約30年にわたる挑戦の歴史を振り返りました。1995年に日本興業銀行を退職した同氏が、インターネットの可能性を信じて1997年に「楽天市場」をスタートした当時、通信速度はわずか14.4kbpsという現在の高速インターネットの約10万分の1という環境でした。
それでも三木谷氏は「無線であらゆる通信が可能になり、世の中の情報はすべてつながって世の中が根本から変わっていく」という先見性を持ち、特に地方企業をはじめとした中小企業を支援したいという思いから、全く新しいプラットフォームの構築に着手しました。
その後、楽天トラベルの展開、世界初の大規模インターネットポイントシステムの構築、証券業務への参入、プロ野球への参入、銀行業への進出、社内公用語の英語化、そして近年の携帯キャリア事業への参入まで、常に「世の中の常識を逆手にとった」様々なプロジェクトにチャレンジしてきました。
現在、楽天グループのサービスは70以上にのぼり、世界規模では約20億人の利用者数を誇ります。日本国内だけでも、ほぼすべての日本人が楽天IDを保有し、月間アクティブユーザー数は約4,400万人に達しています。多くのユーザーが複数のサービスを利用している点も、楽天エコシステムの特徴として挙げられます。
楽天モバイルによる通信革命
楽天モバイルの登場により、日本国民のインターネットおよびモバイル利用が大きく変化していることも明らかにされました。契約者の1カ月あたりの平均データ利用量は増加傾向にあり、現在約32GBに近づいています。若年層では月々約70〜80GBを利用するユーザーも存在し、まさに「無制限の時代」が到来していることが示されました。
さらに、楽天モバイルでは革新的な取り組みとして、AIアバターによる接客サービスや、AIを通じた人間のスタッフのような対話によるeSIMや物理SIMカードの発行システムを導入しています。これらは「未来のモバイル契約」の姿を具現化したものとして紹介されました。
ネットワーク運用においてもAI活用が進んでおり、RAN Intelligent Controller（RIC）を活用することで、消費電力を従来比で20％削減することを目指しています。
出典：https://rakuten.today/blog-ja/rakuten-ai-optimism-mickey-opening-keynote-2025-j.html?lang=ja
AIエージェントという新たなパラダイム
講演の核心部分では、AIの進化について詳しく解説されました。三木谷氏は「楽天グループが目指しているのは、最強のAI」だと宣言し、2000年代中盤からのディープラーニングの発展が生成AIの登場につながり、ここ数年間でAIが劇的なスピードで進化していることを説明しました。
特に注目すべきは、AIが単純な回答を提供する段階から「アクション」を実行する段階へと進化している点です。これがAIエージェントと呼ばれるものであり、三木谷氏は「スーパー秘書」という表現で説明しました。従来の質問に答えるだけのデジタル対応から、ユーザーの意図を理解し、その趣味や嗜好を咀嚼した上で実際に取引を実行する能力を持つことが重要だと強調されました。
AIの普及スピードについても驚くべき数字が示されました。2025年6月末時点で、世界では約12億人を超える人々がAIを利用しており、これはインターネットやスマートフォンの普及スピードを圧倒的に上回っています。ChatGPTの出現後、次々と新しいAIサービスが登場し、ほぼすべての人が何らかの形でAIを日常的に使用する時代が到来していることが説明されました。
日本のAI後進性と楽天の使命
一方で、日本のAI活用については厳しい現実も示されました。アメリカを100とした場合、日本の「AI力」は20程度にとどまっており、特に50〜60代の中高年層では生成AIサービスの利用率が20％程度という状況です。
この現状を踏まえ、三木谷氏は「楽天グループが皆さんをいかにAIでエンパワーメントしていくかというのは極めて重要な役割の1つ」だと述べ、楽天が「意識しないでも皆さんがAIを使えるようになる」ことを目指していると表明しました。
出典：https://rakuten.today/blog-ja/rakuten-ai-optimism-mickey-opening-keynote-2025-j.html?lang=ja
「Rakuten AI」ブランドの刷新と戦略
このような背景から、楽天は「すべての人に最強のAIを」というコンセプトのもと、「Rakuten AI」のブランドコンセプトとデザインを一新しました。新しい融合、新しい創造、そして協働をキーワードに、既存のビジネス向けおよび個人向けAIサービスの統一ブランドとして展開することが発表されました。
技術面では、OpenAI、Anthropic、Microsoft、LangChain、LlamaIndexといった外部企業との提携により「Rakuten AI」を構築していることが明かされました。同時に、日本語の特殊性を考慮した独自の大規模言語モデル（LLM）の開発も進めており、スマートフォン内で動作する小規模言語モデル「Rakuten AI 2.0 mini」の開発にも取り組んでいます。
具体的なサービス展開
講演では「Rakuten AI」を搭載した具体的なサービスも紹介されました。7月30日より、楽天モバイル契約者専用のコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」が「Rakuten AI」を搭載し、大幅にバージョンアップされました。
この新しいRakuten Linkでは、テキストや音声、画像検索により楽天市場、楽天ラクマ、楽天ブックス、Rakuten Fashionといったショッピングサービスのレコメンデーションが可能になります。さらに今後は、金融、旅行、エンターテインメントといった楽天エコシステム全体のサービスを横断して、「Rakuten AI」がユーザーのエージェントとして機能することが予定されています。
実用例として、商品の写真を撮影すると類似商品を提案したり「万年筆を予算2万円以下で探してください」といった音声による検索が可能になることが挙げられました。従来の各サービスの検索ボタンからの検索が、エージェントによる自動的な検索へと変化することで、インターネットの使用方法の概念が根本的に変わることが説明されました。
AI＋ヒューマンの重要性
講演の終盤では、AIの発展における人間の重要性についても言及されました。三木谷氏は「最終的にはやっぱり人だと思います。AI＋ヒューマン。人間的なサービスが重要になってくる」と述べ、楽天市場の店舗や楽天トラベルの宿泊施設が培ってきた「ライブな感覚」こそが重要だと強調しました。
まとめと今後の展望
三木谷氏は講演を「AIを使いこなす、使い倒すことが皆さんにとって重要であって、楽天はそれに向けて最強のAIプラットフォームを作っていきます」という言葉で締めくくりました。
今回の基調講演を通じて、楽天グループのAI戦略の全体像が明らかになりました。単なる技術導入ではなく、長年培ってきた豊富なデータ資産と多様なサービス群を活用し、ユーザーの日常生活に溶け込む形でAIを提供する包括的なアプローチが特徴的です。
「全ての人に最強のAIを」という理念のもと、楽天は日本のAI活用促進において重要な役割を担うことを宣言しました。AIエージェント時代の到来を見据え、人間味を失わない「最強のAIプラットフォーム」の構築に向けた取り組みが、今後注目されることになるでしょう。
ここから私見と考察を記載いたします。
考察1：楽天の「AI戦略」は本質的に「データ戦略」である
今回の記事を読む限り、楽天のAI戦略は、特定の生成AI技術を自社開発するよりも、むしろ自社が蓄積してきた「多様なデータ」をいかに活用するかに重点を置いていると読み取れます。三木谷氏が「データは金脈である」と語っていることからも、この点は明らかです。
楽天グループが抱えるデータは、EC、旅行、金融、通信など、私たちの生活に密着した多岐にわたるサービスから生まれています。これらは単なる購買履歴だけでなく、個人の趣味嗜好、経済状況、行動パターンといった複合的な「ライフログ」として機能します。
例えば、楽天市場でキャンプ用品を購入し、楽天トラベルでキャンプ場の予約をし、楽天カードでガソリン代を支払うといった一連の行動は、ユーザーの「アウトドア」という嗜好を深く理解するのに役立ちます。これをAIエージェントに活用すれば、単に「キャンプ場を検索する」だけでなく、「予算内で、家族連れでも楽しめる、周辺に温泉があるキャンプ場」といった、より高度な要求に応えられるようになるでしょう。
これは、特定の領域に特化したデータしか持たない企業と比べ、楽天の大きな強みです。楽天は、外部の先進的なAIモデル（OpenAIなど）を「エンジン」として利用しつつ、自社の膨大なデータを「燃料」として投入することで、他社には真似できない、よりパーソナライズされた「最強のAI」を構築しようとしているのではないでしょうか。
考察2：AIエージェントは「検索」の概念を根底から変える
AIエージェントの概念は、単なる機能追加ではなく、ユーザーとサービスの間のインターフェースそのものを刷新するという、極めて野心的な試みだと考えられます。
従来のインターネット利用は、ユーザーが能動的に検索し、選択するというプロセスが中心でした。しかし、楽天が目指すAIエージェントは、ユーザーの「〇〇したい」という漠然とした意図を理解し、サービス横断的に最適な解を提示し、さらには取引まで自動で実行するというものです。これは、特定のサービスにユーザーを誘導するのではなく、ユーザーの生活全体をAIがサポートする、という新しいパラダイムへの転換です。例えばユーザーが「週末に旅行に行きたいな」と話しかければ、AIエージェントが過去の旅行履歴、予算、現在の天候などを考慮し、旅行プランを提案し、予約まで完了させます。
この変化は、特定のキーワードで検索して情報を探すという、現在のインターネットの使い方を過去のものにする可能性を秘めています。もしこのビジョンが実現すれば、ユーザーは特定のサービス名を意識することなく、楽天という「AIエコシステム」に深く依存するようになるでしょう。
考察3：日本のAI後進性は「AI＋ヒューマン」で克服できるか？
講演では日本の「AI力」がアメリカの5分の1程度にとどまっているという厳しい現状が示されていました。楽天はこの課題を意識しなくてもAIを使える状態にすることで解決しようと試みています。しかし、三木谷氏が講演の終盤で強調した「AI＋ヒューマン」という概念が、この課題解決の鍵になるかもしれません。日本は、職人技やきめ細やかなサービスといった人間的な価値を重視する文化があります。
楽天のAIは、この人間味と効率性を融合させることを目指しているように思えます。例えば、AIが最適な旅行プランを提案し、予約まで自動で行いつつも、宿泊先の旅館では細やかなおもてなしが提供される、というようなハイブリッドな体験です。
これは、テクノロジーが人間の仕事を奪うのではなく、人間の強みである共感や創造性をAIが引き出すという、日本的なAIのあり方を模索しているようにも感じられます。楽天が目指す人間味あるAIは、単なる効率化ツールではない、新しい価値観を提示するかもしれません。日本の企業や文化に深く根ざしたおもてなしの精神が、AIと結びつくことで、世界に類を見ないユニークなサービスが生まれる可能性を秘めているのではないでしょうか。
全ての人に最強のAIを：「Rakuten AI Optimism」三木谷オープニングキーノート
https://rakuten.today/blog-ja/rakuten-ai-optimism-mickey-opening-keynote-2025-j.html?lang=ja
すべての人に最強のAIを：「Rakuten AI Optimism」三木谷オープニングキーノート
楽天グループ最大級の体験イベント「Rakuten Optimism（楽天オプティミズム）」が、第6回開催を迎えた今年は、AIに焦点をあてたビジネスイベント｢Rakuten AI Optimism」へと進化。2025年7月30日（水）から8月1日（金）まで3日間の会期中、会場となったパシフィコ横浜には約2万3千人（累計来場者数）を超えるお客様にお越しいただき（…
ご訪問ありがとうございます。
ただいま楽天グループでは楽天従業員からの楽天モバイル紹介キャンペーンを実施中です。 下記からログインして楽天モバイルにご契約いただくと、最大14,000ポイントプレゼントいたします！よろしくお願い申し上げます。
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