2004年04月28日
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??レナト・レデントール・コンスタンティノ

フィリピン全国紙ツデー(ABS=CBNニュース・オンライン版提携)
2004年4月26日



 モルデハイ・ヴァヌヌは、12年間の独房監禁を含む18年間、囚われていた監獄の門を自由人として歩みでた。自由にしてやるから、釈放をありがたく思えと、かれは投獄した者たちに言い含められている。おまえを釈放するが、イスラエル出国は許さぬ。外国人と口を利くことも、新聞記者に話すことも御法度だ。18年前、かれの良心の声が暴いたイスラエルの汚れた死の秘密を抱えた死の核施設ディモナで、昔やっていた仕事を口外してはならない。

 監獄から一歩を踏み出したばかりのヴァヌヌの最初の言動が、世界の人びとの喝采をあびた。ヴァヌヌは新しい人なのだ。18年前、みずからの良心に従う決心をした時と同じ、新しい人なのだ。ヴァヌヌは地元報道陣に歩み寄る。外国報道陣に歩み寄る。指でVサインを示し、マイクとカメラにまっすぐ向かって話しかける。ヴァヌヌは「君たちはわたしを潰せなかった」とイスラエル政府に告げる。わたしを売国奴と呼べばいい、と誘拐者たちをあざける。「わたしの責任は大きくなった」

 「わたしは光栄だ。わたしは幸福だ。君たちはわたしの正気を奪えなかった。今でもわたしは、イスラエルの核兵器開発は間違っていると信じている。今でもわたしは、わたしたちが存命中の核兵器廃絶は可能だと信じている」とヴァヌヌは報道機関に語る。「わたしは、モハメド・エルバラダイに、国連の国際核兵器査察団にお願いする。イスラエルに来てほしい。ディモナを査察してほしい。ディモナは閉鎖しなければならない」

 外で「ヴァヌヌを殺せ!」と一団のイスラエル人たちが喚いている。イスラエルの法務大臣、つまり間違った呼び方でミニストリー・オブ・ジャスティス [正義大臣]ヨセフ・ラピッドが、「ヴァヌヌは自分の崇拝者である活動仲間たちに取り巻かれているわけでして、じゅうぶんな世話が期待できるでしょう。当局として、身の安全を図るわけではありません」と報道陣に説明する。イスラエルの新聞は、悪意から、ヴァヌヌの住所を公開する。マーリブ・インターナショナルという新聞が世論調査協力を読者に呼びかける。ヴァヌヌは収監されるべき、出国を許されるべき、殺害されるべき??どちらですか? 1日たって、マーリブは抗議の遠吠えを容れて、非を認めて世論調査を撤回し、殺害は不適切な表現でした、もっと“穏やか”な“執行”に替えるべきでした、と弁明する。



 「今朝、アウシュヴィッツを訪問しました」と、誇らしげにラピッドが、BBC番組『辛口評論』のキャスター、ティム・セバスチャンに言う。セバスチャンは(ヴァヌヌがイスラエルに深刻な被害を与えたとクドクド言っている)イスラエルの大臣に向かって、ヴァヌヌの暴露によって、イスラエルがこうむった被害の例をあげてくれますか、と質問しただけなのだ。ラピッドは、警棒で打ちのめされたなどと、ユダヤ民族が身に受けた恐怖を振りかざす。イスラエル政府が、二枚舌、悪意、特異な人種主義を言いつくろう必要に迫られると、いつでもホロコーストを持ち出して、批判を抑え込む。イスラエルは苦しんだ。イスラエルは悪いことはできない。セバスチャンは正しく対応する。「すみません。アウシュヴィッツに、どんな関係があるのですか? わたしはヴァヌヌについて質問しているのです」とズバリ言う。

 たぶんセバスチャンは、別の質問もしたほうがよかった。イスラエルの核兵器で、自爆攻撃を防げるとお考えですか?

 「ある国が数億の敵対勢力に包囲され、その一人ひとりがその国家の破壊を誓っている場合、いったい何をすべきだろうか?」と詰問するイスラエル人がいる。イスラエルの核施設の解体論は、この質問をぶつけるだけで封じることができると考えているかのようだ。

 この質問は、アラブ諸国政府がイスラエルの生存権を20年以上も前から認めているという事実を無視している。アラブ諸国で実施された世論調査で、イスラエル占領下のパレスチナ人に対する残酷な仕打ちを見て、怒りを感じますかと設問して、YESの回答が増えることがあっても、減るはずがないという周知の事実が、たしかに裏付けられてはいる。だが同じ世論調査が、中東和平の枠組みにイスラエルを組み込むのが妥当であると考えるアラブ人がほとんどであることも明らかにしている。こういう事実も無視しているのだ。

 イスラエルが“不倶戴天の敵”から蒙(こうむ)りかねない“火急の壊滅”などと言い立てる人は、荒野に囲まれた小さな文明社会に、イスラエルの生き方の破壊を狙う残忍な数億の未開人を対置する、決まり文句で凝り固まった思考様式を振りかざして、核兵器保有を合理化しているのだとは、実際にはまったく分かっていない、つまり人種主義者なのだ。

 “新たなホロコースト”の防止を名目として、イスラエルは、万人、とりわけ非ユダヤ人に、自家製のホロコーストを発動すると脅迫しているが、その動機は必ずしも自衛に限らない。

 その動機は、中東地域におけるイスラエルの覇権拡大。非人道的な占領の正当化。ユダヤ人のみに都合のよい、中東における支配体制の維持。イスラエルの無辜の市民を標的にする憎悪テロの連発を引き起こす体制の護持。

 反ユダヤ声明だって? たぶん粗雑なフレームアップだろうが、それにしても反ユダヤだって? たぶん、でっちあげ。

 「イスラエルの意志として、しばしば持ち出される平和の願いは、わたしが思うに、イスラエル政治の原則ではありません。イスラエルの覇権と影響力の拡大が原則なのです」と、ワルシャワ生まれで強制収容所からの生存者、エルサレム、ヘブライ大学で化学教授だった故イスラエル・シャーハク博士が語った。

 ガン治療に貢献した研究で国際的に高く評価されたシャーハク博士は、1948年のイスラエル建国から2001年に亡くなるまで、イスラエルに居住していた。ナチス占領下のゲットーや死の収容所で生き延びる努力のために、幼年時代の大半を費やしたシャーハクは、折に触れ、イスラエル支配下のパレスチナ人の境遇を、ナチスのもとで生きた、みずからの体験になぞらえた。「中東諸国のどこであれ、戦争が勃発した事態において、好ましくない国内社会変動を防ぐために、イスラエルは、必要なら核兵器の使用も辞さない戦争準備をしています……明らかにイスラエルは中東全域の公然たる主導権を握るために準備しているのです……この目的のためには、どのような手段も、核兵器でさえも躊躇せず選ぶのです」

 「イスラエルの民主主義は、いまだにユダヤ人にのみ許された特権なのです。イスラエルの問題を追求すれば、広い意味で異民族排斥主義、狭い意味で反アラブ人種主義、どちらにしても、社会階層の上から下まで、隅ずみに染みこんだ人種差別にいきつきます」とシャーハクが語った。かれは、自分を「自己嫌悪のユダヤ人」と中傷したユダヤ人を忘れられない。この雑言の出所は「ナチスなのです。ユダヤ人の人権を擁護するドイツ人がいれば、ナチスは自己嫌悪のドイツ人と嘲(あざけ)りました」



 イスラエルは“諸国を照らす光”を自認したがる。だが、イスラエルが作り上げたみずからの姿を悟るまで、存在するのは暗闇だけだ。

 イスラエルの国内公安機関シンベトの前局長ヤーコフ・ペリーによれば、事実として、「イスラエルは準破局状況へ向かって坂道を下っている。剣で切り開く生き方を続ければ、イスラエルはいつまでも泥沼でのたうつだけであり、やがて自滅する」

 ユダヤ人庁および世界シオニスト機構の前議長アブラハム・バーグの声に耳傾けてみよう。「パレスチナの子どもたちを気にかけなくなったイスラエルは、かれらが憎悪にかられ、イスラエル人が現実逃避に耽っている只中で自爆しても、驚くことはない。かれらの生活そのものが責め苦であり、わたしたちの寛ぎの場でアラーに身を捧げるのだ。かれらの家では、子どもたちや両親が空腹を抱え、屈辱に沈んでいる。だから、わたしたちの食欲を奪おうと、レストランでみずからの血を流すのだ。

「イスラエルはテロ首謀者や工作者を一日に千人殺害できるだろうが、なにも解決などしない。なぜなら、指導者は下から、憎しみと怒りの井戸から、不公正と道徳腐敗の“下部基盤”から現れるのだ……。

「パレスチナ民衆をイスラエルの軍靴の下に踏みにじっておいて、中東唯一の民主主義国家を自認してはいるわけにはいかない。イスラエル国内の居住者すべて、ユダヤ人と同じくアラブ人にも、平等な権利を認められなければ、民主主義はありえない。人道的、道徳的、ユダヤ的な方策の外には、イスラエルが領土を保全し、世界で唯一のユダヤ国家に住む多数派ユダヤ人を守る手段はありえない」


 「毎日のように葬儀があり、イスラエル人が共有する復讐心が、わたしたちイスラエル人が占領者であるという事実を見る目を、ともすれば曇らせています。わたしたちはテロや戦争の恐怖を道連れに生きていますが、占領される側であるために、時間毎の死に苦しみ、もっと大きな恐怖を道連れに生きているのが、パレスチナ人なのです。イスラエルによるパレスチナ占領は、何十年もイスラエルの安全を損なってきましたし、人間性を剥奪しました。…… わたしや(イスラエル)国防軍兵士たちの行動だけでは、政府の方針を変えることはできませんし、いわんや和平交渉も不可能です。だが、占領は政治や戦略の次元だけではすまないと、同胞市民たちに伝えることはできます。占領は道徳の問題でもあるのです。わたしたちは同胞に別の道を示すことができます。かれらは占領にNOと言ってもいいのです」

 次は、売れっ子作家でグシュ・シャローム(平和同盟)創立メンバーにして、イスラエル国会3期目の議員ウリ・アヴネリ??「暴力は症状、占領は病気である。……イスラエルが戦争の中心にあり、その真っ只中で、パレスチナ人350万がイスラエルの占領軍に弾圧されている。昨日の犠牲者が今日の加害者になりさがり、世界は震撼している。イスラエルに求められているもの、それは他国民にもまして高い道徳水準なのだ。まさしくそうだ」

たしかにそうだ。



[筆者] レナト・レデントール・コンスタンティノ。フィリピン・ケソン市在
住の作家、画家。フィリピンの全国版日刊紙ツデー(ABS=CBNニュー
ス・オンライン版と提携)に週刊連載コラムを執筆。最近、グリーンピース中
国と共同して気候変動とエネルギー問題に専念。家族は、妻カラヤーン・プリ
ド、リオ・レナト(男6歳)、ユラ・ルナ(女1歳)
HP:http://www.redconstantino.blogspot.com





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最終更新日  2004年09月28日 01時42分27秒 コメントを書く


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