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2009年08月02日
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このミステリーがすごい

【内容】

【このミステリーが凄い】 より紹介文

惨殺された二人の女性___犯人を追う刑事、夫、そして犯人の心の闇


 構想執筆六年という難産のもと誕生した香納諒一の十二年ぶりの新作は、二段組み六百ページ近い超大作となった。
 <犯罪被害者家族の集い>に出席した帰り道に、木島喜久子と目取真南美という二人の女性が殺された。南美は住宅地にある教会の庭で、後頭部をぐしゃぐしゃに割られた姿で発見された。さらに礼拝堂の中には心臓を一突きされ、両手を切り取られたハープ奏者の喜久子の死体まであったのだ。警視庁捜査一課の大河内茂雄は妻の遺体を確認しにやってきた南美の夫、渉に注目する。帰り際、エレベーターのボタンを押す時指にハンカチを巻き指紋を残さないようにしていたのを垣間見たのだ。後日、目取真宅はもぬけの殻になっており、しかもいっさいの指紋も残されていなかった。そして渉の勤務先東洋貿易の実質的なオーナーが、西日本に本部を置く日本最大の暴力団共和会だったことが明らかになる。
 また、二人が出席していた集いにパネラーとして招かれた弁護士の名前が中条謙一であることに刑事の一人が反応する。中条こそ十九年前、同級生の首を切り取り、自分が通う中学校の校門に乗せた、猟奇事件の犯人だったのだ。
 大河内は、二人の有力容疑者を追うが、中条には、弁護士仲間の証言による鉄壁名アリバイがあった。そしてあくまで被害者の夫であるという建前を盾に、公安部から目取真渉に対する捜査に待ったがかかる。
 一方、姿をくらませていた目取真渉は妻を殺した犯人への復讐を誓っていた。目取真は殺しを金で請け負う凄腕スナイパーだったのだ。そして彼が完遂した依頼の一つが、警察の暗部と繋がっていた・・・。
 猟奇的殺人者、殺しのプロフェッショナル、そして組織から逸脱した刑事の三者の追跡と闘いを、真正面からたっぷりと描いたクライムノベルである。これだけで一つの作品になりそうな、目取真の数奇な生い立ち。子供の死によって壊れた家族への思いを引きずり、刑事であり続ける意味を、自らに問いかけながら事件を追っていく大河内。そして他人の心を操る謎の殺人者。少年による残虐事件や警察の腐敗など、さまざまな現実社会の問題をプロットに巧みに組み込みながら、三者三様の心の暗闇を照射するのである。『幻の女』と並ぶ畢生の傑作だ。





 たしかに、傑作と言える一冊だと思いました。『幻の女』というのは当然ウィリアム・アイリッシュ著の本かと思いましたが、香納諒一さん著の『幻の女』というのもあるんですね。そちらは日本推理作家協会賞受賞作、人生に疲れたおとうさん族向きのようです。
被害者の二人の女性が冒頭登場する、最初の1ページ目からすっかり取り込まれていきました。たいてい、最初の数ページは、面白くなるまで我慢することもあったりする読書ですが、この本は、どこからどこまでも、とても読みやすかったです。
刑事や、夫の動向が、切り替わるシーンなども、スムーズ。
事件が起こり、遺体が発見、まずは刑事の視線で、被害者夫に不信の目を向ける。読んでいても、この夫が犯人だとしたら、結婚は全くの偽装だったのか、それとも二重生活と妻を大事にしていた男なのか?と興味を湧かせながら読ませるのです。やがて、スナイパーの夫の視線から、暴力団と警察の繋がりが見え出す。さらに、鉄壁のアリバイを持つ、かつての14歳の猟奇殺人者が関係者の中に登場。

 なんといっても、あの〈神戸連続児童殺傷事件〉別名『酒鬼薔薇事件』の少年Aが、モデルなのが明白の人物に注目しました。社会的復帰を果たした立派な弁護士、でも、聞き込みに行った刑事の勘が働きます。「こいつは自分の過去をなんとも思っていないのか。殺した記憶を消し去ってしまったのか。」冷静にこやかに応対する弁護士へ、疑いの気持ちが消えない。アリバイ証明後も容疑者としてマークしつづける。少年法に守られ入手しにくい過去の事件の情報資料を得ようと行動します。
少年だったからとは言え、「人を殺して、こんな風に簡単に出てきて人生をやり直せちゃうのか。」「母親への憎しみが強い。でも、体罰を与えられた人間が、100人中99人は殺人なんて起こさない。いや。1000人中999人は違うだろう。」
こうした刑事の心のつぶやきは、ほんとにそうだよな、と思いました。
こうした犯罪者の心の闇は、どうしても共感出来ないし、想像もつかない、理解もしがたいとしか思えず、どうしてこういう人間に育っちゃうのだろうか、、という疑問と不安がずっと消えませんでした。

初、香納さん作品は、たっぷり堪能できました。重厚な警察小説なのに、スナイパーというハードボイル風のかっこいいコンビもいて、さらに猟奇殺人の味付けまで。
香納さんは、しかし、ハードボイルドジャンルの方なんですね。最近は作品の幅を広げようということです。もちろん『このミス』でもベテランさん。今後、わたしがたのしめる本が見つかるかな?断然男性ファンが多い作家さんでは?でも、本書は女性も十二分に楽しめました。まともな女性人物はほとんどいませんでしたけど。


この年の『このミス』は、ベテラン勢強しの年だったようです 。『制服捜査』佐々木譲さん著 『名も無き毒』宮部みゆきさん著 『赤い指』東野圭吾さん著 などなど、良かったし好きな作家さんたち。
法月綸太郎さん、有栖川有栖さん、はあんまりしっくりこなかった。一冊づつくらいしか読んでません。 

それこそハードボイルド中のハードボイルドというイメージです。

著者の本 感想

『影の彼方』      1990年 第7回織田作之助賞佳作入選
『ハミングで二番まで』 1991年 第13回小説推理新人賞
『時よ夜の海に瞑れ』  1992年 
『幻の女』       1999年 第52回日本推理作家協会賞
『贄の夜会』      2007年 『このミステリーがすごい!』ランキングの7位





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最終更新日  2009年09月12日 15時16分56秒


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