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私がチロルと散歩していると、公園の向こうからフレンチブルを連れた中年女性がやってきた。 『マンションのエレベーターでは抱っこしないといけない』 ので彼女は片手に犬用のカートを引いていた。前進したがる犬に足を取られ見るからに危なっかしそうだった。私が思うに抱っこして顔に足が近付く方が私は生理的に気になるのだけれど・・・。 何となくこの時点で悪い予感はしたもののそれはさておきー、まだ若いというそのこはチロルと追いかけっこをしたがり走り出した。するとそのこのリードはあっという間に私の足にぐるりと巻き付き、瞬く間に締め上げられた。「あいたたた!!」 私が声を上げても彼女はリードを離さず、しっかり握りしめたままだった。 顔色一つ変えず、同じ犬連れだからという気持ちでいたのかどうかー、彼女は自分も一緒に走って私の足からリードをといた。 日本の町中で『お題目に沿ったガチガチのカモフラージュ』にイライラさせられる事が多かったのは私だけだろうか、、。 『犬で他人に迷惑をかけない』ために規則があるというなら、『規則に沿うだけの振る舞い』はやめてほしい。何が本当の迷惑になるのか『自分の良心で配慮し行動して欲しい』・・・!!・・・と他の犬連れさんに願いたい。
2008年05月25日
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ある日の夕方私が家に帰ると裏庭から彼の笑い声が聞こえてきた。確かそこには留守番中のチロルが待っているはず・・・。行ってみると彼が何かチロルに食べ物をやっていたらしい。「お帰り。さっきチロルにデーツ(フルーツの一種)をあげていたところなんだ。よかったなかな? チロルはキャッチするのが上手だね。」「あはは、チロルは人の食べるものなら何でも欲しがるよ。そのうちあんたの晩御飯も全部食べられてしまうよ~。(笑)」 犬が駄目だと聞いていたけど全くでもないらしい。きいてみると、前の職場で雇用主の犬相手にペットボトルをキャッチさせたり祖国にいる叔父さんの犬5匹を知っているから大丈夫だという。 しかし、叔父さんの犬というのは家庭犬でなく、羊番として飼われている。狼やよその人間が近付くと牙を剥いて威嚇する。体を洗うのも近所の川に飛び込んで泳いでそれでOKなのだ。犬は働く共存者であり、可愛いとか血統がどう等という観念は一般の人にとってイランでは薄いらしい。 ラマダンの時期、まだ熱さの残るシドニーで自動車の修理工場に勤める彼は、1ヶ月間昼間の断食を忠実に遂行していた。毎日汗だくになって帰る彼は帰宅後の日没に1.5?のボトル入りジュースを一気に飲み干し、生き返るのだった。 祖国に緑の瞳の美しい婚約者を置いてきた彼、Essyはオーストラリアへ結婚の為の資金を稼ぎに単身でやってきた。同じ汗水流して時刻とどれ程の収入の格差があるのか、よくホームシックだと嘆いていた彼はここへくるまで余程の決断力がいったという。「僕がここへ来る前、両親やきょうだい(7人)が皆泣いていたよ。でも、ここでレジデンスを取って数年働いた後は故郷に帰るよ。6月の結婚式が済んでからここに戻って2人で働くんだ。そして、帰ったら家を買って兄弟と会社を経営したいな。」まだ26歳、元電気工事師のEssyは将来の夢をそう語った。 引っ越して間もない彼と私はよく近所のスーパーや図書館へ一緒に出かけた。時には用のある間チロルのリードを持ってもらったり引いてもらう事もあった。私の友人を交えて食事をしたり散歩に出かけたり、Miguelも料理好きの腕をふるい、ペルー料理で一緒に食卓を囲む等、あれこれ共に過ごす間、犬の心配もうやむやのうちにどこかへ行ってしまった。 しかし、敬虔なムスリムである彼は言う。「イスラムの教えでは犬と豚は触れてはいけない、もちろん食べてもいけないんだ。犬は人体に有害な病原体をいくつか持っているし、豚もそうで、豚はゴミでも何でも食べる。僕の国では豚肉を売っている所は全体の一割位で、クリスチャン又はインターナショナル向けの店だけだよ。君はこんなイスラムの考えについてどう思う?」 そんなEssyが生活が落ち着いたら将来チロルの様な犬が一匹欲しいという。猫はあまり人につかないから、犬の方が可愛いのだそうだ。 しかし、チロルがそんな彼に喜び余って濡れた鼻先をくっつけようものなら彼はすぐ手を洗う。そういえば、私も何もわからずかつて初めてチロルが家に来たときはそうしていたなぁ…と昔を思い出していた。 現在、彼は夕方のアルバイトでピザの宅配を始め、勤務先近くの友人宅で暮らしている。弟が離れる様な寂しさを感じた。積極的に目的に向かって前進中の彼はとても輝いて見える。もし婚約中の彼女が一緒に来ていたらきっと惚れ直していることだろう。 たまに話す電話の終りに『チロルにもよろしく。』と冗談混じりに言う。共に暮らした4ヶ月半、フラットメイトが彼でよかったと心からそう思う。
2008年05月19日
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「悪いねぇ、犬がいると次のフラットメイトがなかなか決まらないんだよ。あ~ぁ・・・。」一番の年長者であり、ペルーからの在住31年になるフラットメイト、Miguelはやけ気味にそうぼやいた。 3人いたフラットメイトの一人が出て行ってから1ヶ月程経とうとする頃だった。 いよいよ私が出て行く番か・・・。家賃は徐々に上がり街周辺はどこも住みにくくなっている。Miguelは次の入居者が来る迄の間自分が空室の家賃を負担しなければならず、はじめは余裕を見せていた彼も焦り始めていた。駅から徒歩15~20分かかるこの場所は条件的にも決して人気のある家ではなく、そうでなくても犬がいるとなると誰もが来てくれるとは限らない。何人か見学者が現れたがその内の何名かが犬のアレルギーや宗教上の理由で入居を断ったらしい。料理好きで面倒見のいい大家さんの様で、チロルも可愛がってもらっていた分、私は彼に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。 私自身も他の部屋を探し始めた。Miguelに引っ越す事を相談すると極力夜や雨天以外はチロルを外にいさせる様に躾けてこのまま住んで欲しいという事になり、そうこうしているうちにまもなく新しいフラットメイトが決定した。 彼はイランから働きにやってきた敬虔なムスリムの青年だった。この時彼はオーストラリアにきてまだ1ヶ月も経っていなかった。 私がチロルの散歩の間、彼は荷物を運び込みすっかり以前からそこに住んでいたかの様にダイニングルームの椅子にもたれかかり、足を投げ出してリラックスしていた。短く刈り上げた頭にくっきりとした目鼻立ちが精悍な印象だった。「やぁ、こんばんは。」気さくに声をかけられたがとっさに彼が犬と接触出来ない事を思い、通りすがり無頓着な様子のチロルのリードを短く引き上げた。「ごきげんよう。」「おぉ~っ。」驚きと不安の混じった声をあげながら彼は裏庭に出ていくチロルの後ろ姿を見送っていた。 私は裏庭でチロルの体を拭きながらいろいろな事を思っていた。このまま彼とうまく生活していけるんだろうか、人が好きなチロルが彼と接触せずに過ごしていけるんだろうか・・・と。 その夜隣の彼の部屋の前を通りがかると部屋の中から祈り(コーラン)の声が聞こえてきた。私は部屋に戻りそっと手を合わせ、これからの日々の平穏を願った。
2008年05月11日
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