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2004年02月19日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「黒い御飯」 永井龍男

 そうして明治何年かの四月一日、母はいそいそした私の手を引いて小学校の門をくぐった。私はきっと、次兄の着古した紺がすりの縫い直したのを着、新しいごわごわの袴と、新しいカバンと新しいぴかぴかする帽子をかぶって、しかし、はたの者から見た私の姿は、袴にはかれ、帽子にかぶられ、カバンにさげられていたに違いない。きっとその日はよい天気であったろう。
 父は体が弱かった。八、九年も、同じ印刷所の校正係をつとめていた。その間、ほかの仲間たちはどんどんよい位置を占め、社も発展していった。しかし父はいつもガラス戸のはまった寒い、暑い厚生室の中で、赤い筆を持っていた。

 どうです? うまいもんでしょう。貧乏という言葉も不遇という言葉も、入学の嬉しい気分など一言も書いてませんが、よい天気であったろう、と書くこと行間からにじみ出していますよね。
 わずか10枚あまりの作品ですが読後感(中身の濃さ)は50枚以上あります。

 文学を鑑賞する際、ストーリーも大事ですが、こうした表現力のうまさが加わって生きてくるんですね。いわば脇役ですが、主役を生かすも殺すもすべてこの脇役の演技力なんですね。

 この作品の続きを読みたいですか? すでに廃刊になっているとおもわれるので読むことはできないと思います。それで明日からしばらくこの続きを書くことにしますね。





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最終更新日  2004年02月20日 07時38分47秒
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