野山系の行政書士が書く楽天日記

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2004年12月04日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 作家の藤本義一氏は井原西鶴の研究家としてもつとに有名な方である。氏の軽妙洒脱な会話は西鶴の影響であるような気がする。
「西鶴は才覚をもじった名であって・・・」
 昔私は藤本氏から「なかなか才能あるで」と肩を叩かれたが、以後仕事のほうが左前になり、食うために筆を捨て資格取得に励んだ。結果としてはいろんな資格を取ることができ、今は士業家として筆こそ持ってはいるが、書くことが全く違う。家の大黒柱として生活の安定が一番、どうにか食っていけそうになったらまた筆を手に創作活動に戻ろうかと考えている。最近物書きという言葉に対して郷愁めいた切ないものを感じて仕方がない。

 先日天満のジュンク堂(旧マツザカヤ7階)に立ち寄った。
 難波のジュンク堂は人が多くごちゃごちゃしているが、ここはいつも比較的閑散としている。大川に向いた窓側のテーブルに腰を下ろし、眼下に広がる大川の眺めは隣接するキャッスルホテルの窓からの眺望と同一であり、タダで本を読ませて頂いた上に眺めに目を細めることもできる超お薦め場所である。
 藤本義一氏の新刊文庫がレジ横に積み上げられていた。
「君、どないしてるんや? 書いてないんか?」
 あの独特の口調で声を掛けられたような気がして本を手に取った。


  商は笑にして勝なり  藤本義一    日経ビジネス文庫

 祖父が職人であり父が商人であった藤本氏は成長期に二人からいろんな影響を受けたという。さらに井原西鶴の研究家という立場から書かれたこのエッセイは経営コンサルタント等が書く書きものとは違った味があって面白く(インタレルトの意味)読めるようになっている。

 少しさわりを読んでみよう。

 職人に大切なのは技量という腕前であり、商人に必要なのは器量という役に立つ才能であった。同じ人間なのに、職業が異なったために、技量と器量に分かれてしまうである。

 生きていく上で、やってはいけない掛け算が三種類ある。
「他人、親に対して、決して心配を掛けるな、迷惑を掛けるな、そして不幸を掛けるなの三つの掛け算」

 昔の大阪には「三途の川を渡るな」というのがあった。
 正確にはサンズの川というらしいが、商人が成功するためには、やってはいけない「べからズ」が三つあるというのだ。

 二、役就かず
 三、判せず

 判せず、についてはここまで詳しく書かれている。日常から生まれた知恵そのもである。
「へこみやチョボとか金属板で一本線が入っている判子は暗闇でも捺せるようになっているから安もんの判子。めくら判捺せるから」



「実印を押すというのは商人にとって生きるか死ぬかといのと同じや。実印をどんな書面に捺す場合でも、その捺す紙の下に、これを敷いて捺さなくてはいかん」
 といって持ち出してきたのは、十センチ四方の厚さ七、八ミリのフェルト板だった。
「どんな厚さの紙の上にでも、実印を捺すとき場合は、その紙の下にこのフェルトの台を敷くことを忘れたらいかん。これを敷いて捺すと実印の大きさは同じであっても、盗印された場合はたちまち別の人間が捺したと露見することになる。そこで、自分が捺したことでないと警察は認めて捜査に乗り出してくれることになる」

 商売と占いについても、
「守口や門真は大阪市内からみたら表鬼門にあたる。そんなわけで松下幸之助氏が工場建設を思い立った時、周囲の者が猛反対したらしいが、松下氏は表鬼門やったら安う買えるんと違いますか、と言ったという。鬼門を気にしていたら、北海道や九州に支店出すこともできまへん。そないなったらどないなりますねん?」

 商人たちは実学を学んで失敗を未然に防いできたということがよくわかる本です。
 士業家は職人であると同時に商人でもあるべき、と私は考えております。
 みなさんも仕事などで迷われたら、ぜひご一読下さい。





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最終更新日  2004年12月04日 11時36分38秒
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