炬燵蜜柑倶楽部。

炬燵蜜柑倶楽部。

2023.10.08
XML



 久しぶりにやってきた婚約者は私の前で元気そうな女を連れて、そう言い放った。
 ベッドの上で今は左手くらいしか動かせない私には、彼の言葉に返す語彙が上手く見つからない。
 だからこう言った。

「わかったわ。せめて最後に手を握らせてちょうだい。お願い」

 彼はちょっと戸惑ったが、ベッドに近づき、伸ばした手を握った。
 瞬間。
 びく、と震えて彼は停止した。

「な、……あんた何を」



「最後だから体内電圧の微調整をしておこうと思ったのだけど、もう上手くいかなかったわね」

 がくりと彼の身体がその場に崩れ落ちた。
 やがて私も今の過放電で停止するだろう。

 西暦2540年。人口が激減した地球では、増えない分長く生きるために身体を老化する毎、義体化し、その性能により仕事を行うのが普通だった。
 私はその身体で義体に電気を通し、性能を安定させる役目を持っていた。
 だがもう弱ったこの身体ではその能力も不安定になっていた……





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2023.10.08 00:33:53
コメントを書く
[婚約破棄ざまぁ大喜利ショートショート26番・一話500文字以内縛り] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: