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フェスティバル期間中のエジンバラときたら。下の写真を見てほしい。 これは先日の日記でも触れたフリンジフェスティバルの1日の上演スケジュールである。細かい文字で実に44ページ。会場の数だけで300箇所以上、朝の8時から始まるものやら真夜中の1時半から始まるものまである。これでたった1日分!それが8月いっぱい、連日のように続くのだ。フリンジのすごさ、わかっていただけただろうか?これだけあるとさすがにプログラムに目を通すのもラクではない。しかも数ある中には質の高いものからどうしようもないものまで、いろいろあって、本当に玉石混交。どれに行っていいのか、何を基準に選んだらいいのか、どれが面白くてどれがスカか、どうやって選んだらいいというのだ!?掘り出し物もありそうな予感なだけに、ぼやぼやしてたらすごいものを見逃すんじゃないか。期間が限られているだけに異様なプレッシャーも感じる。とにかく行かなくちゃ、とわけもなく焦って、とりあえず、手当たり次第に行ってみることとあいなった。それは他のひとも同じらしい。イギリス人と結婚している私の友人のところには、ロンドンから親戚や友人などのお客様がフリンジ目当てに入れ替わり立ち代わり常時4~5人ずつ泊まっているが、やっぱり夜中まではしごをして歩いているそうなのである。(それにしても受け入れる側のお客扱いも大変そうだ。なんだか田舎のお祭りに都会の親戚や友人が集まる、というこのノリはどこぞの国の盆や正月に近いものがあるかも。やっぱお祭りなんですね、これは。)・・・で、昨日。朝から出かけた私は、まず11時ごろのトークショーのチケットをゲットしようとしたが既にソールドアウト。やばい!と焦ってとにかくチケットがとれた12時からの「シェークスピア・レビュー」を見る。あなたのシェークスピアを見直そう、という主旨のいかにもイギリスっぽいユーモアに溢れたレビューだったが、場末の小劇場でやってそうな演目で時代遅れ感がぷんぷん。 昔ながらのイギリスって感じが、外国人の私には面白かったけどね。続いて軽く昼食をとったあと、日本人のパフォーマーたちが上演しているガレージシアターに行く。ちょうど「サロメ」が始まるところだったので、よく考えもせずにチケットを買う。・・・ごめん。これに関しては多くを語りたくないっす。写真もみなさまの目を汚すだけなので入れません。なんか、悪いものを飲まされましたって感じ。過激なメーク。大音響の不協和音。胸の悪くなるような叫び声とダンス。美しいならまだ許せるが、鶏がらみたいな(ゲイの)サロメ。あの胸がムカムカするようなステージに、わざわざお金を払い、貴重な時間を費やしたかと思うとほんとうに頭くる。お客様を喜ばせる、という基本を忘れてやしないか。アーティストだかなんだか知らないが、あなたたちの自己満足につきあわされる方の身にもなってよって言いたい。このあたりですでにどっと疲れてしまい、いったん家に戻ることに。そのまま1時間ほど仮眠をとる。夕方からはちょっと面白そうなプログラム。何と、昨日も話題にのぼった和太鼓を、外国人のパフォーマーだけで演奏するという。ムゲンキョウと呼ばれるそのグループは、英国に5つある和太鼓のグループの中で唯一のプロフェッショナルなスコットランドのパフォーマーたちだ。英語で歴史や伝説、楽器や演奏法などについての解説も交えながら、ときにユーモアたっぷりに彼らが披露してくれたのは、意外にもピュアな日本の太鼓そのものだった。 演奏もなかなかいけてるし、気合がはいってる。それは先日紹介した道(TAO)とは比べようもないが、でも技術はともかく、なにより太鼓をとっても愛していて、真剣に日本の文化を学び、それをイギリスのひとびとに紹介しようとしてくれているのが嬉しいじゃありませんか。1時間あまりのとっても楽しめる演奏だった。終わったあと、寿司バーへゆくと、彼らとばったり。いろいろお話を伺うことができた。 この右側の女性が、ミユキさんといって日系のハーフ。この方とちょっと太めのメインドラマーがこのムゲンキョウの創設者だ。福井県に二年ほど住んで、太鼓を勉強したそうな。最近は鼓童に代表されるような現代的な和太鼓がブームで、こちらでも大変な人気を博しているが、まだまだマイナーだけどその中でこういう動きもあるよ、っていうことを皆さんに報告したくて日記に書かせていただきました。こういう動きが、もっともっと大きくなってゆくと嬉しいな。ちなみにこのフリンジだが、エジンバラに始まって今ではアヴィニヨンや他の都市でも開催されるようになっているらしい。mini犬さんのコメントでも、日本でもこれに倣ってコメディフェスティバルが開催されているらしい。国際フェスティバルで上演される演目というのは逆にいえばあまりにも有名でテレビなどでも放映されたりしてどこでも見れるけれど、こういうメジャー未満というか、メジャーになる直前あたりにいるパフォーマーのものは、フリンジでしか見ることができないだろう。その意味で私はいま、もしかして、千載一遇のチャンスに遭遇しているのかもしれない・・・ああ、そう思ったら、もういてもたってもいられない。私の心はまたさわさわと波立ち、、、明日もまた超大忙しの、「フェスティバルな」一日が始まるのです・・・
2004年08月21日
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ヨーロッパ人のフェスティバル好きについてはすでに「ヨーロッパ人はフェスティバルがお好き~ヴェローナ音楽祭~」で触れたがその中でもエジンバラの人々のフェスティバル好きはただごとではない。なにしろ、エジンバラ・フェスティバルと一口にいわれるものの中にはエジンバラ国際フェスティバル、フリンジフェスティバル、ジャズフェスティバル国際映画フェスティバル、ミリタリータトゥー、国際ブックフェアー・・・などありとあらゆるジャンルのお祭りが含まれていて、8月のエジンバラはとにかく街全体がフェスティバル一色となるのだ。それはヴェローナ音楽祭とか、ザルツブルク音楽祭のような音楽だけのフェスティバルとかカンヌ映画祭やベルリン音楽祭のような、映画だけのフェスティバルとかそういう単体のフェスティバルとはわけが違う。この時期、街の人口は一気に二倍に膨れ上がり、街は全く別の顔を見せる。これを称して街のひとは「ロンドンが丸ごと押し寄せる」と表現している。街中いたるところでパフォーマンスが繰り広げられるので歩いていて楽しいことこの上ない。まるで街全体がテーマパーク。ノリとしてはまさにディズニーランドである。勿論、もっとずっとずっと文化的だけどね。さて、今週からフリンジフェスティバルが始まった。一番有名な国際フェスティバルが「クラシック音楽やオペラ、バレエ、演劇」などに限定されるのに対し、こちらはもっと大衆的なレベルのパフォーマンスのフェスティバルである。日本でいえば「演芸」とか、あるいは「大道芸」のような出し物が目白押し。ロック、カバレット、フォークロア、パントマイム、漫才、サーカス、手品・・・いずれも観客を巻き込んで、観客とうまくコミュニケーションをとりながらユーモアたっぷりに繰り広げられる、ある意味、エジンバラの人たちが最も楽しみにしているフェスティバルである。開幕に先立って先日の日曜日、家の近くのメドウズ公園で、「フリンジサンデー」が行われたので早速行ってみた。フリンジに出演するパフォーマーたちが一堂に会して、この日1日、無料でパフォーマンスの一部を披露してくれるのだ。いつもは静かな公園も、この日ばかりはこの賑わい。 びらを配る人だってこの凝りよう。 きれいなバルーンが花を添える。 コインを入れると中に入っている人がロックを演奏してくれる人間ジュークボックス。 突拍子もないノリに大受け。フレディ・マーキュリーもビックリのこの抱腹絶倒の芸人。 最後は、「We are the champion!」と歌いながら観客にリフトされてながらみんなの頭上を一周したぞ!このメガネのおばさんも観客3人を引きこみ独特のトークで大受けだった。 観客とのやり取りなしにはありえない大道芸の真髄。ここはやはりスコットランド、タータンチェックのお兄さんも健在! だがトークはイマイチだぞ!どの芸人も、肩の力が抜けていてリラックスした雰囲気である。芸人も楽しみ、観客も楽しむ。それが基本のフリンジだ。さてその中に、日本からの芸人の姿が!彼らはCru Cru Circusという名前で登場。日本でもその名前なのかはわからない。言葉ができない分、パントマイムで魅せる! ジャグリングの芸も素晴らしいが、おもしろい顔やパントマイムだけで十分観客を笑わせてくれた。さて、広大な公園をあちこち見ながら歩いていると公園の一隅に設けられた野外特設ステージの前に一際、大きな人だかりが。 何か面白そうなもんが始まるらしいと興味を引かれて行ってみると・・・なんと、それは日本の太鼓のパフォーマー「道」(TAO)だった。私も太鼓は大好きだし、何かめちゃくちゃ期待できそうな予感。 いや~、はっきりいってカッコよかった~!引き締まったカラダに、赤い文字を背中にを染め抜いた白装束。 そのいでたちの粋もさることながら、パフォーマンスの質も高い! 伝統をしっかりと受け継ぎながらも、伝統にしばられず、現代的な感覚で自由に表現してゆく。独特の美学に貫かれたそのパフォーマンスは、ガイジンには絶対に真似できない日本人ならではの感性だ。勇壮な太鼓の乱れ打ちが始まると、観客席からはやんやの大喝采。これですよ、これ!軽い興奮の中で、私は思う。日本が世界に問うことのできるものは、やっぱり日本独自の伝統文化。それも、現代日本の普通の若者の感覚で自由に表現された伝統文化が斬新だ。ここ10年ほど、歌舞伎や能、三味線などの伝統芸能の分野で若手の活躍がめざましく、古臭く時代錯誤であるだけだった伝統芸能を現代的な感覚で蘇らせ、それが世界に評価されてきているが、こういうことができるようになった日本を私は頼もしく思う。こういう若者がどんどん出てきてほしい。そして、世界の人びとにアピールしてほしい。アテネオリンピックでも、日本の若者たちの活躍がめざましい。特にプレッシャーに弱かった日本が、土壇場で冷静に演技し、大逆転劇を演じた男子体操。金を期待され、そして当然のように金メダルを手にした北島。メディアにたたかれ続けたすずさんと一緒に三度目のオリンピックで銀メダルを手にした山本。いやはや。おばさん(あっしまった!マダムでございました)たちが心配するまでもなく、とってもいい感じに育ってる若者たちはちゃんといます。バブル崩壊後、迷走する日本にも、ちょっとは光明が見えるといえるんじゃないかしら。そんな感懐をいだいて家路についた夢先案内人でした。
2004年08月18日
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楽天で日記を始めてから1週間あまり。おもろしくて、夢中になって日記を書きまくってまいりました。おかげさまで、随分たくさんの方に遊びに来ていただき、素敵な方々とバーチャル上ですが知り合いになることができました。ほんとうに、感謝してます。書きたいこと、伝えたいことが山ほどあって、ほんとうに一日じゅうでもパソコンに向かっていたいくらい。そろそろ夫が嫌な顔をし始めてます。でも・・でも・・・それでも書きたい意欲は止まらない!ホームページを立ち上げようとはずっと思っていましたが、山奥の(!?)孤独なサイトでひとりごとのように語るっていうのと、楽天広場というような賑やかな場所で喋るっていうのとはかなり違うんじゃないかと思います。だってここならいろんな反応がすぐ返ってくるしとっても素敵な場所だな、って思ってます。さて今日は、そろそろ疲れも出てきたので、ちょっと中休み。明日は開幕したエジンバラ・フェスティバルの日本人の活躍がわたしにとってはすごくホットなテーマだったのでそれを報告しますね。そしてあさってからはまた南仏話題に戻ります。またぜひ遊びに来てくださいね!
2004年08月17日
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美女の集まる街には、なぜか美味いレストランが多い。たとえば、かのマダムK がレポートしている西麻布とか六本木界隈もお洒落でレベルの高いレストランが軒を連ね、それに群がるようにファッショナブルな美女が集まっている。でしょ?世界のファッションをリードし、お洒落な女性が集まるパリも、同時に美食の街としても有名だ。でしょ?つまり美女あるところに美食アリ。美食あるところに美女アリ。この法則が成り立つのである(ほぼ)。さてこの法則を活用すると、いままであなたを悩ませていた問題が一挙に解決する。つまり、美女をお探しだがどこへ行ったら出会えるのかわからない、というアナタ。まよわずうまいもんのある街をさがしなさい。どこへ行ったら美味しいもんが食べれるかわからないアナタ。美女密度の高そうな街へお行きなさい。あなたのお探しのものは(ほぼ)見つかるはずです。私がアインシュタインの相対性理論に次ぐこの世紀の大発見「美女と美食の相関性理論」(!?)を完成させたのは、実はかの「奇跡の街」エクサンプロバンスであった。南仏のパリとも呼ばれるお洒落な街エクサンプロバンスには美女が多い。それも金髪、碧眼、八頭身。ギリシャ彫刻に見るような、飛び切りの美女たちだ。南仏リゾートを背後に控えたこの街の美女たちのファッションはセクシーにして大胆、そしてとてもアーティスティックだ。パリや東京がいくらお洒落といっても、大都会で仕事をしている女性たちがあんな格好で街は歩けないだろう、いくらオフであっても。それは南仏のここなればこそ、だろう。街は明るい光と、色彩と、そして美女に溢れ、かのミラボー通りには、お洒落なカフェやレストランが立ち並ぶ。それらはビジュアル的にもいかにも美味しそうな店構えだ。さて、この美食の街エクサンプロバンスに来てプロバンス料理を食べないのもどうかと思ったが、1週間にも及ぶ南仏滞在で、さすがの健啖家ファミリーもこってり系には少々、食傷ぎみ。で、今夜はジャパニーズレストランを探して寿司でも食べよう、ということになった。ホテルのレセプションに座っていた、ちょっとおかま系?と思われるお兄さんが、「それならいいレストランがありますよ。」と嬉々として教えてくれたのはドゴール広場にほど近いビクトール・ユーゴー通りにあるレストラン「Yoji(ようじ)」。はじめ日本食レストランとは気づかず通りすぎてしまうほど、お洒落なフレンチカフェっぽい外観。 そのいかにもフレンチっぽいテラスのある店構えにも驚いたが、何より驚いたのは、ウェイトレスのチマチョゴリ姿だ。「えっ、これって韓国料理店?」「いや、しかしジャパニーズとちゃんと書いてあるよ。」つまり、韓国人経営のフレンチカフェ風ジャパニーズレストラン(!?)。韓国人経営の日本料理店は随分見たが、フレンチカフェ風のお洒落なレストランは初めてだ。しかも、チマチョゴリ着て、「ボンソワー」なんて言ってる。これって・・・たとえばインドに日本人経営による、とってもマハラジャ?っぽい店構えの中国料理店があったりして日本人の仲居が着物着て出てきて「ナマステー」なんていうようなもんじゃないか。あまりにもシュールだ。しかし、外見に反して、このレストランで出してくれるのは、マガイモノでない純粋な日本料理だった。むこうのカウンターの中で日本人の寿司職人らしきヒトが握っているらしい寿司は各種のお好みから松竹梅のセットメニューまであるし、天ぷら、しゃぶしゃぶ、すき焼き・・などと並ぶメニューに破綻はない。メニューの中の焼肉(プルゴギ)がちょっとヘンといえばヘンだが、なにせ韓国人経営でチマチョゴリとくれば仕方がない。さて、腹ペコだった私たちは、11ピースの竹寿司4人前を注文し、それで足りなかったのでさらに8ピースの梅寿司1人前とプルゴギ2人前を追加注文して食べた(!)お寿司のクオリティーも高かったが、それ以上にプルゴギも美味しかった。私たちにサービスしてくれたチマチョゴリ姿の日本人ウェイトレスも、やさしくて可愛かったし。ふぅ~すっかり満足して周りを見渡す。かなり大きな店内がほぼ満席。そのほとんどはフランス人だ。お友達とくつろぎながら歓談しているようすの、お隣のテーブルの上を見て、おっと思った。テーブルの真ん中にはお好みで注文したらしい寿司が陶板の大皿に盛られていてそのほかにも色々美味しそうなものが色々のっている。しかもテーブル脇のクーラーボックスにはシャンペンが・・・。セ、センスある~!彼らはすっかり日本料理に慣れていて、食べつけている感じだ。おっかなびっくりの初心者的様子はそこにはないし、堅苦しく考えずに、好きなように食事をアレンジし、そしてほんとうに食事と会話を楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。お隣の方たちだけではない。お店は若く、洗練された人びとに溢れ、楽しげに食べて、飲んでお喋りに花を咲かせている。さすが南仏のパリ、来ている人たちの食文化のレベルが高いぞ!私たちみたいに、梅だの竹だのというセットメニューを注文し、さらにプルゴギまで食べるという、わけのわからない注文の仕方をする野蛮なヒトはいなかった。(汗)日本人のクセに・・・元祖夢先案内人、大いに恥じ入る。それにしても日本の食文化も、国際的になったもんだな。しみじみと感じる。ロンドン三越の「純日本風」も確かに悪くない。(おそるべし、ロンドン三越 参照)だけど、こうやって外国のヒトにきちんと理解されながら、異なる食文化の文脈の中で解釈しなおされ、そして洗練され、高められた形でその中にしっかり浸透してゆく「日本」はもっと素敵。よく考えれば、チマチョゴリも南仏の明るい色彩の中では、着物よりも合っているのかもしれないな。そう思い直して、美女と美食の街エクサンプロバンスの「奇跡の」日本料理店Yojiを後にしたのでした。
2004年08月15日
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若い頃から私はセザンヌが大好きだった。「カードをする男たち」や果物を描いた静物画など、あの独特の深い色彩と精神性に強く惹かれてきた。だから南仏を旅行したとき、セザンヌゆかりのエクサンプロバンスだけはは外せないぞ、と思っていた。子供たちに関しては今回はノーマーク。前回のパリでの苦い体験(昨日の日記参照)から、どうせ見せても関心をもたないだろうと思ったからだ。今回は私だけの興味、と割り切っていた。文句をさんざん言われながらも暑い中、坂道を登って辿り着いた先はローヴのアトリエ。それはセザンヌが自分で設計し、最晩年の5年間の創作の場となった場所である。サント・ヴィクトワール山がよく見える場所が近くにあり、晴れた日にはそこへでかけて絵を描き、雨の日や寒い日にはこのアトリエで過ごしたといわれている。エクサンプロバンスの中心部から少しはなれた小高い丘の中腹にあるアトリエは、木立に囲まれ、ごらんのような静かな佇まい。 天井が高く、開口部もおおきくとられたそのアトリエの壁は灰色に塗られ当時のままに保存されている。 部屋の片隅には古ぼけた外套、意外なほど大きな帽子、よく使い込まれた革の絵の具箱と画家の上着。それらは皆、セザンヌが死ぬまで愛用した遺品だ。これらを見たとき、私は軽いショックを受けた。それまで私にとってセザンヌは、本や写真でみるだけの抽象的な存在、その意味では「人間」でなくむしろ「概念」に近かったかもしれない。だが、目の前には現実に肉体を持ち、血の通った人間として生きた、生身のセザンヌの遺品がそこにあった。生身の人間だということは、いくら頭でわかっていても、実際に本人に会ったり、そういう具体的な品物を見せられるまでは、それを「感じる」ことは難しいものだ。さて、セザンヌの遺品の横には、セザンヌの絵のモチーフとして何度も登場する石膏像や、フルーツ、フルーツ皿、花瓶、そして古ぼけたテーブル、粗末な椅子などが並べられていた。古びたワインのボトルさえある。 えっこれが? と驚くほど、石膏像はちゃちなものだし、皿なども貧しげでこれといった特徴もないものだ。(3つ並べられた髑髏がちょっと不気味だが)それらの何の変哲もない静物の数々が、このふしぎな静謐さをたたえた空間の中で、セザンヌの手によって深い色合いと精神性とを与えられ、永遠の命をえることとなった。その奇跡。アトリエの片隅には、絵画集が置かれ、これらの品々のどれがどの絵のモチーフになっているかが対照できるようになっている。何気なしにそれをめくっていた娘が、突然、「あ、これオルセーで見たよね!」と声をあげた。「あ、これも、それからこれも見た!」次々にめくりながら娘がいう。「へぇー、セザンヌって、こんなところで描いていたんだねえ。」ナットク、という顔。!!!ああ、母は、母は、その言葉がききたかった!オルセーで聞いた言葉は「なんかよくわかんない」とか「つまんない」とかミモフタモない言葉ばかり。「へぇー」で始まり「なんだねえ」で終わるというような、そんな意味ある言語が娘の口から発せられるなんて母は期待すらしてなかったです。(ちなみにそれは何へぇーぐらい?と聞こうかと思ったが、やめた。)でも、いま、このセザンヌのアトリエで、娘は生身のセザンヌを感じ、木立のなかにひっそりと佇むアトリエにいまも漂う、画家の孤独な精神世界と、研ぎ澄まされた感性を感じ取った(はずだ)。そして彼女の中で、何かが少しだけ変わったのである。なぜって、帰りに階下のショップでスケッチブックとデッサン用鉛筆を買ってとせがんだ娘は、それ以降、夢中になって鉛筆を走らせ、ついに真のゲージツ(!?)に目覚めてしまったからだ。娘の描いたサント・ヴィクトワール山。 漫画ばかり描いていた小学生の娘の絵にしては、なかなかいけるでしょ?南仏エクサンプロバンスの奇跡。-------------------さて、明日はエクサンプロバンスの奇跡シリーズ第三弾!「エクサンプロバンス・奇跡の(!?)日本食レストラン」をお送りします!乞う、ご期待!(なんだ、そりゃ?)
2004年08月14日
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5月に子供たちをつれてパリのルーブルとオルセー美術館を訪ねた。いまさら言うまでもないが、ルーブルは古典派までの名画、オルセーは近代(とくに印象派)の絵画がたくさん収蔵されている、人気の美術館である。子供達にルーブルとオルセーを見せる!これは子供が生まれたときからの私の念願だった。違いのわかる人間に育てるには、やはり小さい頃から本物に触れさせねば。世界の名画に触れたウチのかしこくて可愛い子供達は、きっと真のゲージツに目覚めるに違いない!ああ、こういう素晴らしい教育を子供達に授ける私って・・・何て・・・何てすてきな母親なの!だが期待(というより妄想)に胸膨らませて連れて行ったルーブルでは・・・みごと撃沈。ウチのおばかな子供らは、何の興味も示さなかった。私の説明もうるさがって、聞く耳もたずの状態だ。唯一、興味を示したのはモナリザ。これだけは黒山の人だかりを潜り抜け(子供なんでこの点は有利)自分からすすんで見に行く。おっいいぞっ。さすがウチの子、ダビンチの名画ぐらいは知ってるんだ!「ねえねえ、モナリザ、知ってたの?」私はうれしくなって聞く。「うん、○○○(←ギャグ系のサイト)でね!」母、絶句。情けない・・・(T-T)さて、モナリザの写真を何枚かとった息子は一仕事終えた、目的は達した、との感懐をいだいたとみえ「ね~もう見たから早く帰ろうよ~」と矢の催促。「えっこれからミロのヴィーナスも見るんだよ。それから○○も、○○も。」と私。「え~!いーよー。そんなのー。」「ここつまんないよ~。もーかえろーよー。」姉娘のほうも一緒になってブーイングの嵐だ。母、切れる。ええい、控えい! みなのもの、この印籠が目にはいらぬか!ここは世界に冠たるルーブル美術館であるぞ!母のあまりの迫力にハハーっとひれ伏す子供たち。ハハ・・(^^;)>で、とにかく、見せることは見せましたよ、ミロのヴィーナス。だってそうでもなきゃ、何のために大枚叩いてここまで連れてきたかわかりませんからね、プンプン。こちとら本物教育ですからね、プンプン。しかし、ことオルセーに至っては。戦況、さらに悪化。暑い中を1時間以上も外で並ばせられ、もう子供たちは始めから拒絶状態。それをなだめすかして見せてはみたものの子供たちの反応は・・・・はじめのうちこそ、絵の前で少しは足を止めていたりしたが、なにせ名画中の名画が狭い空間にてんこ盛りである。しかもあの混雑。考えてみれば、この空間にいるというだけで、ものすごい量の視覚情報が一気に目に飛び込んでくるわけだ。これをバイト数にしたらどれぐらいなんだろうか?きっと気の遠くなるような数字に違いない。やっぱ、これは誰でも疲れます。子供たちは途中でまたイヤになって、帰ろうコールのオンパレード。出てきたときには親も子もヘトヘト状態だった。だがしょせん、美術館というのはそんなもんである。幻想をいだいてはいけない。ほんとうは1枚の絵を鑑賞するのだって、それなりの時間が必要だ。絵と向き合う静かな時間。それとある程度の美術史の知識。ずっと古い昔に描かれたその絵に描かれているものはいったい何なのか、どういう背景で描かれたのか、描いた画家は何を伝えようとしているのかそんなことは、ある程度の美術史の知識がなければわからないし、そこから何かを感じたり味わったりする鑑賞という作業は、知識、観察力、洞察力、想像力、そして感性を総動員させるほんとうにホネの折れる作業なのだ。というわけで、無残にも玉砕とあいなったパリ美術鑑賞の旅であったが後日、南仏エクサンプロバンスに立ち寄ったとき、ウチのおばかな子供たちに奇跡が訪れる!その続きはまた明日!ところで、ルーブルみやげにモナリザの神秘の微笑み・・・見たい??じゃ、ちょっとだけ(マダムK風に /もっとも私はまじめですが) 怖っ!
2004年08月13日
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南仏。それはずっと私の憧れの地だった。ずっと以前、まだ学生だった頃、ニースやカンヌを訪れ、その地中海の青さに驚き、食べるものすべての美味しさに驚いた。その後、ベストセラーとなった「南仏プロバンスの12ヶ月」を読むにつけ、いつかはここを訪れたい、と思っていた。というわけで、今回、渡欧がきまったときには、もう私の腹は決まっていた。私はこの夏、南仏にゆく!そして別荘をかりるんじゃい!さいわい、夏には母やかのマダムK、およびそのご子息2人も来るというし、少し大き目のゴージャス系を借りちゃおうっと。みんなで割ればそう高くないし、みんなで地中海をながめつつ、美味しいものを食べ、ワインを飲んでわいわいやったら、楽しいだろうな~ク~!やっぱ人生、こうでなくっちゃね!私はインターネットを通じてさまざまな物件をさがす。う~む。それにしても高いぞ。しかも「やっぱ海のそばじゃないと」とか「暑いしプールが必要だよねえ」とか横からノーテンキな要求を出すヒトまでいる。(それは夫です)だからーめちゃくちゃ高いんだってば、そういうのは!ここでもない、あそこでもない。いや、楽しいのは楽しいんですがね。やっぱ、大変な作業なわけですよ、いろんな人の日程やら希望やらを調整するってのは。そんなにがんばってやっと決まったという段になって・・・「私はイタリアに行くわ。そうでなければ今回の旅行は意味がないの。」(キッパリ!)とマダムK。え~、ま、まじっスか~!?いかに私が言説巧みに(?)説得しても、マダムKの決意には、一点のゆらぎもない。ああみえても、結構頑固である。かくして計画は最初から練り直し、私もまけじとかねてからの夢を実現すべく、断固たる決意で南仏へ。元祖夢先案内人として、これだけは外せませんからねえ。しかし2週間の予定だった滞在を1週間に減らし、あとの1週間は妹につきあってイタリアへ行くこととあいなった。イタリアもそりゃ良かったけどああ南仏! Oh!南仏。ここはまた別格だす。感嘆詞なしに語ることはできません。南仏や、ああ南仏や、南仏や、と気分はまさに松尾芭蕉?ここではまさに至福のときを過ごさせていただきました。太陽があって、海があって、美味しい食事があって・・・このうえ、いったい人生に何が必要というんでしょう?だってこれですよ! それからこれ! そしてこれ! これがぜ~んぶ、自分たちだけのもの!(1週間は)この眺めを見ておいしいご飯を食べ、地中海に満月の昇るのを見た日にゃ、この世をば わが世とぞ思ふ もち月の かけたることのなしと思えば。というまさに藤原道長の心境。(1週間だけね)1940年代に建てられたというこの別荘は、内装はすっかりリニューアルされているが、基本的にとてもシンプルだ。 シンプルにして、豪華。どんなに簡素に暮らしても、ここの暮らしは英国のどんな貴族よりも豊かである。だってさりげなくスーパーで買うものだって、ひとつひとつが、めちゃめちゃ美味しいのだから!みずみずしいオレンジ!(うわ~っオレンジってこんなに濃厚な味だったんだ、って目から鱗)口の中で爽やかな甘味が広がるぶどう!そして山盛り買っても安い新鮮なスカンピとかオイスターとか。勿論、フランスパンも、チーズも、ワインも!それこそ、缶詰や出来合いのソースの類に至るまで、ここのものはうまい。素材がいいから、シンプルな味付けでいい。凝った料理を作る必要がない。それって、ものすごい幸せなことではないだろうか?私はどこへ行ってもそこに住むヒトをうらやましいと思ったことはないが、南仏のあそこに住む人たちだけは、メラうらやましい、です。だってそこには限りなくシンプルにして限りなく豊かという私の理想の暮らしがあるから。・・・いつか、いつか、南仏に住んでやるぞォ。(息子を弁護士にでもして、別荘買わせるぞォ。)との野望を胸にいだいて、肌寒いエジンバラへの帰途に着いた元祖夢先案内人なのでした。ちなみに、南仏の別荘を私も借りてみたい!と思うヒトは、下記のサイトなどからどうぞ。http://www.abritel.fr/http://www.4-your-holidays.com/他にもvacation rental, holiday rentalなどのキーワードで検索すると、たくさん出てくるようです。週単位、2週間単位になるのですが、家を借りて友達とシェアすれば、ホテルに泊まるより安くあがりますよ!ただし、ある程度英語かフランス語はできないとツライです。
2004年08月12日
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6月ごろ、ひとりでロンドンへぶらりと出かけた。美しいが静かすぎるエジンバラにちょっと飽きてきて、刺激がほしくなったからだ。ロンドンまで、電車にゆられること4時間半。いや~、ロンドンは遠いです。ってゆーか、エジンバラが遠いんだね。なにしろ、地図で見るとエジンバラは北の果て。ロンドンに住む人にとってスコットランドへ行く、というのは「ちょうど東京から青森へ行くようなかんじかな。ほら、津軽海峡、冬景色~♪みたいな?」とうそぶく輩すらいる。 いや、演歌流れてないって。だがある意味あたってる。スコットランド訛りって東北弁?って感じだし。スコットランド人は内気で物静か、そしてとっても我慢強い。そういうところも、東北人と似ているかも。(ちなみに私は生粋の東北おごじょざます。内気でも物静かでも我慢強くもないっスが。)ロンドンはさすがに刺激的な街だ。なにせ交通量がすごい!ついでに騒音と排気ガスもすごい!人の数がすごい!でも街には活気があって、人の顔は明るく開けている。気軽に声もかけてくれたりして、気の合いそうな現代的な感覚の人もたくさんいる。やっぱりロンドンはいい。来たついでにピカデリー・サーカスのジャパン・センターへ行って、本を買ったり、現地日本語新聞をもらったり、掲示板をのぞいたりして、色々と情報収集してくる。その際にジャパン・センター近くにあるロンドン三越にも寄ってみたのだが・・・ちょっと驚いた。一歩足を踏み入れればそこは外の喧騒とは打って変わった静寂。「いらっしゃいまっせー」と日本語の純デパート系裏声がとんでくる。おおお!ここは、まるで・・・まるで・・・日本そのものではありませんか!売り場に並べられているものは、完全に日本人のイメージする「ヨーロッパのお土産」ばかり。ラインから外れたものは絶対においていない、というその安心感。ここなら最小限の労力で、「間違いのないお土産」が買えます。お買い物をする日本人マダムたちも、駐在員の奥様から、旅行中の年配のマダムまで、さまざまではあるが、ゆったりお買い物をする人々の姿、嗚呼、それは遠い故郷で慣れ親しんだ三越の風景そのものだ。く、くつろげる、この雰囲気!いや、マジで。そしてこの小さな逆カルチャーショックにも似た驚きは三越地下の純日本料理店(名前は忘れた)で、さらに大きな感動へと変わったのである。だって、私が食べた松花堂弁当。これは、一切の妥協のない味だ。いや、特別にうまい、とかそういうことではない。日本で食べる三越の松花堂弁当と寸分の差もないお味である、という意味で妥協がないのだ。材料がそろわないからコレで間に合わせました、的なマガイモノがひとつもはいっていない。この英国という異国の地にあって、これは驚嘆に値する。多少なりとも外国に住んだ経験のある方なら、それがどんなに大変なことかおわかりだろう。コストからいっても、材料調達の難しさからいっても、純日本料理を作るなんぞ至難の業だ。(現に我が家の食卓を見よ!)実際、ロンドンにはたくさん日本料理店らしきものがある。しかし、日本人に見える従業員も、実は韓国人や中国人だし、経営者もたいてい日本人ではないことが多い。出される料理のマガイモノ度も推して知るべしである。そういう日本食を日本食として出されたり、日本製でない粗雑な製品を「ジャパニーズ○○」といって売られたりするのを見るにつけ、最近、私の「バリバリの愛国心」が刺激され、不愉快な気分になるのである。しかし、その点、ロンドン三越(の日本料理店)は違う。かくも純粋な日本、あるいはジャパニーズクオリティーを、一切の妥協なしに実現しているロンドン三越。これは三越の財力とプライド、クオリティへのこだわり、接客のノウハウがあって初めて可能なものだろう。もし英国人が日本を知りたいと思ったら、ロンドン三越へ行けばよい。私は躊躇なくそう言う。良きにつけ、悪きにつけ、ここならピュアーな日本文化がある。周りを見渡すと、結構英国人らしき人が来ていて、松花堂弁当を食べていたり、すしバーの方には英国人を交えたパーティーも入っていた。企業研修らしき人も見学に来ていた(ように思う)。いいぞ、三越。日本の意地をみせてやれぇ~。
2004年08月11日
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英国は階級社会である。しかしここエジンバラに来てからというもの、いったい「上流階級の人びと」はどこに隠れているの?というほど、周りにはフツーの人びと (これを貴族と区別してcommon peopleというらしい)ばっかりだった。一説によると、階級社会は崩れ、上流階級はもはや絶滅した、という人まで出てくる始末。まあ、こちらには子連れというハンデもある。高級っぽい匂いのする場所へはなかなか近づけないことも確かである。しかし昨日、母がもうすぐ帰国することもあるので、うわさには聞いていたセレブなレストランへ行ってみることにした。市の中心部からは車で10分ほどのPrestonfield House Hotelにある、Rhubarbというレストラン。(http://www.prestonfield.com/welcome.htm)12世紀までさかのぼることができる由緒ただしきプレストンフィールド・ハウスはホテルとしても長い歴史をもつが、昨年、スコットランドのレストラン業界で最もサクセスした一人との呼び声の高い現オーナー、ジェームズ・トンプソン氏が買い取り、多額の資金を投入、内装をリニューアルして、つい昨年の11月にリオープンした超セレブ系レストランだ。何しろこのレストランで食事をした人々のセレブ度を見てほしい。ウィンストン・チャーチル。マーガレット・サッチャー。ショーン・コネリー。エルトン・ジョン。キャサリン・ゼダ・ジョーンズ。おおおー!って感じでしょ?さて、私たちは午後7時に予約をいれた。入念にドレスアップし、タクシーを呼んでいざ、Prestonfield House Hotel へ!市内の住宅街のホテルにもかかわらず、広大なホリールード公園を背にしたホテルは、まるで別天地だ。郊外の大自然の中にでもいるような風情。 なんと、庭園には孔雀が優雅に歩いているではありませんか!さて、ホテルにはいると、もうそこには黒シャツに黒スカートをきた優雅なドアマンが待ち構えている。こちらの名前をいうまでもなく、すでに承知している様子である。(予約のおかげだね!)「テーブルに着かれる前に、こちらのラウンジで食前酒はいかがでしょうか、マダ~ム?」なんぞ言われたら、とても「ノー」とは言えない。 さて、席についた私たちに、イケメン系のウェイターさんが注文をとりに来る。夫はシェリー酒を頼む。母と子供たちはノンアルコールでレモネードを。さて、私は何にしよう。あんまり凡庸なものは頼みたくない。私はちょっと挑戦的な気分になり「グ、グラッパあります?」と口走ってしまった。思わずウェイターさんの相好が崩れる。え~!グ、グラッパァ~?って顔である。しかしそこは彼もプロ、「Sure! (もちろん、ありますとも)」とにっこり。えええっ、あるんだ、グラッパ。私はちょっぴり感心する。グラッパはワインの絞りかすを蒸留して作るかなり強烈なイタリアのお酒。ぶどうの香りがとてもいいので私は大好きなのだが、ウォッカや、アクアヴィットのように男の酒ってかんじで、女性がたしなむような品の良いお酒とはいえない。これを飲むのは、かなりののんべえ、これを頼むのも、かなりやべえ、という感じ。しかも食前酒ではないし。でも、ま、好きなものを飲むのが一番である。さて、ソムリエがにやにやしながら運んで来たグラッパをのどに流し込みながら、今夜のメニューを決める。う~む。難しいぞ、メニュー。(しかし、グラッパがのどに熱くてキモチがいい。ク~!やっぱこれだね!)スターターは・・・例えばこんな感じ。Terrine of foie gras and duck confit, Gewürztraminer jelly, toasted brioche - £11.50Seared Isle of Skye scallops, swede puree, ginger oil and beet juice - £9.50なんじゃこりゃ?しかし値段はそう高くない。メインは・・・こんな感じ。Pan seared fillet of sea bream, fennel boulangere, tomato and squid ragout - £16.50Pave of turbot, crab and asparagus in a light shellfish broth - £19.0いったいどんなものが出てくるのやらさっぱり見当もつかん。こういう時、ウェイターにお勧めを聞くのが本当は一番だ。しかし今日は人数も多かったので、聞くのも面倒だし、とりあえず、食べたい食材がはいっているかどうかで決めた。夫は前菜にフォアグラ入りのテリーヌ、メインにワイルドサーモン。私は前菜がラビットのロースト、メインがラム。母は前菜にトルテリーニ、メインは白身魚。子供たちのぶんは、ウェイターにお任せした。「テーブルのご用意ができました」ウェイターが呼びに来る。通されたダイニングルームはまあ、なんて優雅。 壁にはたくさんの肖像画。歴代の屋敷の主たちの肖像画だろうか。その夜のお客は年配の上品な紳士淑女方。ロングドレスのご婦人もいるが、服装は全般にそう派手でもない。しかし、隣の老紳士が話す英語を聞いて驚いた。そこらで喋っている「common」の人たちの英語とは全然ちがう。これぞ「ザ・上流階級」。こちらに来て初めて聞いたほどの、上品な英語であった。「マイ・フェア・レディー」の世界をはじめて理解した、って感じ。さて、肝心の料理のお味だが・・・まず、パンは非常に美味しかった。水も厳選したものを使っている。ワインもなかなか。しかし数々の賞を受賞したという割に、料理のお味はどうか?ヌーベルキュイジーヌっぽいそのテイストは、メニューと同じぐらい、不可解だったというべきか。ただし、ホスピタリティーは絶品である。ウェイターはひとこと喋るごとにマダムをつけ、私なぞ一晩のうちに20回以上もマダムと呼ばれたような気がする。12歳の娘にまで、口がすべってマダムと呼んでいた。いや、ここまでマダムと呼ばれ続けると、気分はいいものである。レストランを出る頃には、すっかりほんもののマダムになった気分。ああ、かのマダムKをここにつれてきたかったっス。マダム度、確実に上がりまくりだったはずだっス。
2004年08月09日
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「絶対にこれだけは見ておいたほうがいいですよ。」エジンバラに行くと決まったとき、英国通の知人に言われた。エジンバラ・ミリタリータトゥーのことである。「チケットは早めに買わないと売り切れますからね。」貴重なアドバイスまで受けた。4月にはいってさっそくチケットを買いに行く。だがその時点でもう、良い席はソールドアウト。結局、プレスプレビューの日の別売りチケット※を並んで買い求めることにした。※一般公開に先立ってプレスの人に公開する日のチケットは、7月26日に限定発売。他の日のチケットが取れなかった人には朗報だ。プレスの人がうろうろして確かに目障りだが、それを我慢すれば、朝から並ぶだけでいい席も簡単にとれ、しかも半額(!)なのがうれしい。ここまで人気のあるミリタリータトゥーって、いったいどんなに素敵なのだろうか?期待と好奇心とで胸膨らませ、私たちは8月5日、早々にタトゥーを見てまいりました。席は正面の上のほう。ほぼベストといっていいでしょう。2時間並んで買ってくれたくれた夫にひたすら感謝である。幻想的にライトアップされたエジンバラ城の前で、延々2時間近くにわたって繰り広げられる軍楽隊のパレードと民族舞踊のショウ。確かに美しいし、華やかだ。哀愁をおびた音色で粛々と演奏されるバグパイプもいい。花火まであがって、いやもう、サービス満点。 でもプログラムが始まるにつれて、ちょっとびっくり。スコットランドの軍楽隊。これは当然、メインでしょう。バグパイプにタータンチェック。それを見たくて来たのだし。 実際、私はそれだけをやるのかと思ってました。イングランドにいじめられっぱなしのスコットランド人が、民族の誇りを取り戻すための年一回のお祭り。そういうもんなのかな、と思ってました。でもこれが微妙に違ったんですね。まずイングランドの軍楽隊や、ロイヤルエアフォースが登場。ロイヤルエアフォースのパフォーマンスは圧巻。 ふうん、スコットランドと仲が悪いとはいえ、やはりイギリス人同士、一緒にやるんだね。次に英連邦の国々の軍楽隊や舞踊団が。これもまあ、アリかな。インドや南アフリカともなると、エキゾチックで面白いしね。 そして登場したアメリカの軍楽隊。いや、これはかなりぎりぎりかな。「地上最大の作戦」なんてやっちゃってるし。ノルマンジー上陸60周年かなにかしらないけどね。ここらへんまでくるとかなり雲行きがあやしくなってくる・・・しかし何よりも不可解なのは中国人民解放軍。これはいったいなに?イギリスって中国と仲良かったっけ?いそいでプログラムを見ると、そこには去年の写真が。昨年は韓国の女性舞踊団をよんだらしい。ってことは来年あたり、たとえば日本も呼ばれたりするんだろうか?YOSAKOIとか。そこまで考えて、たぶん、その線はないかも、と独り言。だって、観客席をぐるりと囲んではためくゆうに200は越す国旗の数々、その中に、日本の国旗はなみえなかった(少なくとも私の席からは)。戦後まもなく始まったタトゥー。そういう歴史から考えても、世界大戦で敵国だった日本(古ッ!いつまで言ってんだそんなこと)に居場所はない。しかも最近、日本経済悪いし、国際会議なんかでも無視され続けだしね(ToT)そういうことを意識してかしないでか、中国は堂々たる長身の美女を揃え、日本の太鼓のようなものを引っ張り出し、鼓童よろしく、ちゃんちきおけさ(だったっけ?)のような節回しで踊ったりしていた。かなり不快な気分になる。何も全世界の人々が見ている前で日本のお株を奪うようなことをしなくてもいいんじゃないか、って思ったのは私だけだろうか?
2004年08月08日
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ヨーロッパ人はフェスティバル好きである。夏のこの時期になると、ちょっと気の利いた街ならどこでも何かしらフェスティバルが開かれている。勿論、観光客を引き寄せるための方策なのだろうが、そこはヨーロッパの歴史の深さ、かなり魅力的な催しがたくさんある。普通の観光に飽き足らなくなったら、こうしたフェスティバルを旅程に組み込んでみるのもいい。通り一ぺんでない、特別な旅になること請け合いである。さて先日、私は母や妹とヴェローナ音楽祭を見に行った。(注:ヴェローナは北イタリアの美しい町で、ローマ時代の遺跡やジュリエットの家があるので有名。)出し物は「アイーダ」。エジプトが舞台のイタリア歌劇の古典的名作だ。ヴェローナ音楽祭の場合、ローマ時代の遺跡である古代競技場(アレーナ)で行うので、そのスケールは壮大である。 チケットは、清水の舞台から飛び降りた気持ちで一番高い席をとる。今回はエージェントを通したので25000円もした。ネットで自分でとれば最高の席でも142ユーロ(2万円弱)である。断っておくが、私は決してお金持ちではない。むしろ物価の高い英国暮らしで結構、お財布はいつもピンチ状態。さらにいえばオペラファンでもないし、どちらかと言えばあまり好きではない方かもしれない。それでも一番高い席にしたのには近頃、人生一回きりなんだなあ、と日々実感するから。一生に何回あるかわからない体験。わずかの金額をケチって思い残しはしたくない。学生ならまだしも。そしてケチらなくてよかった、と思わせてくれるものは十分あった。だってそもそも入り口からして違う。まず通路にはレッドカーペットが敷きつめられている。 椅子も豪華仕様だし、シャンペンは飲み放題。なぜか水は有料なのだけれどね。周りはドレスアップした紳士淑女ばかりで気分がいい。しかも私たちの席は前から5番目。歌手の表情まではっきり見えた。さて、その夜のオペラは・・・いや、素晴らしかったですよ、ホント。私は何度もいうように、オペラファンではないです、クラシックは好きですが。でも舞台芸術の素晴らしさには目を奪われました。 第二幕のダンスも素晴らしかった。 夜の9時15分から12時半(!)まで、ちっともあきませんでした。いや、ホント。でもね、でも、私にはどうしても許せないことが・・・主人公のアイーダ(エチオピアの王女だが今はエジプトの奴隷の身)も、アイーダと恋に落ちるラダメス(若い武将)も、美男美女(のはずだよね?)。なのに、実際に目の前で足を踏ん張って熱唱してるのはこの太った二の腕ぷりぷりのおばさん。 いや、声は通るけどね。なんか、設定に無理がないか?しかもラダメスにいたっては・・・写真でお見せできないのが残念だが、太ったおなかで足元も見えないような中年のオジさんを、若く魅力的な戦士だと思え、ということであった。やっぱ、なんぼなんでも無理がありますっつーの。第三幕、二人のアリアがやたらと続く場面は、ほんとうは感きわまる場面なのだろうけど、ちょっとかなり退いてしまいました。すみません。そういうところが、実は私がオペラを好きになれない理由かもしれない。でも第二幕で登場したダンサーたちの身体はさすがに引き締まっていて美しく、熟女三人の目を楽しませてくれました。 私たちからさんざん夢見る目つきで素晴らしかったと聞かされた留守番組の夫は、悔しがって一人でドミンゴを見に出かけていきましたよ。ちなみにオンラインでチケットを購入される場合は下記サイトから。http://www.arena.it/eng/arenaeng.urd/portal.show?c=1(直リンク不可のようなのでコピペでお願いします><)
2004年08月07日
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