2004/12/24
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私の通っていた眼科には、地元では有名な院長先生がいました。数年前、久し振りに近くを通って、大病院になっているのに驚きました。

母は、先生の言い付けを守って、私にヤツメウナギの油を飲ませ、ほう酸を浸した脱脂綿で目を拭き、夜になると星を見せました。東京の夜空ですから、明るい星しか見えないのですが、それでも、星座早見板を買ってもらって、次第に星座や星の名前を覚えていき、そのうち、知らない星はないくらい、夜空はすっかり私の庭になりました。

眼科には、毎週、夏も冬も、そしてまた次の夏も通い続けました。こめかみや手に電極を貼って、口の中が金属臭くなる、微弱電流を流したり、双眼鏡のような機械を覗いて、赤い光を見続けたり。ノイロと言う名の、プスッと金属が飛び出す器具で、目の周りを物理的に刺激するのもありました。

最悪なのは、月1回くらい、眼球注射をされることです。それ自体はそれほど痛くないのですが、針が近づいてくるのが、ものすごくこわいのです。

全てが終わると、目を洗ってくれます。これが、至上の快楽でした。スポイトでちょっとずついろいろな薬をたらして、食塩水で流しながら目をマッサージしてくれます。看護婦さんも上手でしたが、院長先生の手は魔法の手でした。そのまま寝てもいいくらい気持ちがいいのです。

私は、お人形遊びで、よく「眼医者さんごっこ」をしていました。人形の目を洗ってあげたり、眼球注射したり、普通の子は絶対しないような遊びです。七夕の短冊には「眼がよくなりますように」と、毎年書いていました。夜なかなか眠れないときは、布団の中で「眼がよくなりますように」と何度も繰り返してとなえていました。

本を読むと目が疲れるので、音楽を聴くようになりました。たくさんの映画音楽のレコードがあったので、何回も聴いて、イントロクイズ出来るくらいになっていました。それから、ヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」はお気に入りで、よくこれで踊ってました。もちろん、でたらめステップですが。

1年後、視力検査で眼鏡をかけなくていいぎりぎりの0.7まで回復しました。自信をつけた母は、私がちょっとでも暗いところで本を読んでいたりすると、すぐに電気をつけるようにいい、本に眼を近付けて読んでいても、背中に和裁用の物差しを入れられました。

小学校は1年から3年までがクラス替えなしで進級し、3年になっても相変わらず、眼鏡の男の子は、それだけの理由でからかわれていました。



あるとき私は、ついに言ってしまって、しまった、と思いました。予想通り、いじめの標的は私に変わりました。

「こいつ、あの眼鏡とできてる。」
といって、いろんなところに「あいあい傘」を書かれましたが、バカ男子!と思って、私は徹底的に無視しました。そのうち、彼らも飽きて、また別の標的をみつけていました。

4年生の視力検査では、1.0になっていました。両親とも目がいいので、それでも家族の中では、私が一番、目が悪かったのです。そして、5年生、ついに、1.5になりました。一番下の字も、両目開ければ見えました。もう、視力検査はこわくありません。私の近視は、完全に治っていました。

この体験は私に多くの事を学ばせてくれました。夢は、それを諦めないかぎり、いつか必ず叶うこと。それまで、辛抱強く、時間をかけて取り組むこと。今思うと、私が一人っ子のせいもあると思いますが、両親は並々ならぬ愛情を私に注ぎ込んでくれていたんです。私がいまでも遠くがよく見えるのは、この両親のお陰だと思っています。

1997年に私たちが初めて競技に出場した6級戦。この入賞者の集合写真がダンス雑誌に載ったとき、「いつか、踊ってる大きな写真が載ったらいいなあ。」という夢がありました。

それが、2002年2月に出場したチャンピオン戦で優勝したことによって、ついに実現しました。私たちがパソドブレを踊っている大きな写真です。大応援団の友達も、さっそくその雑誌を買って、おめでとうのメールをくれました。

大切なのは、いつも夢と希望を持つこと。その光がないと、私たちは、どこに向かっていけばいいのか、ただ迷走するばかりです。大きく構える必要はなく、ただ「こうなるといいなあ」と思うだけでいいんです。「お金持ちになりたいなあ」、「頭よくなりたいなあ」、「きれいになりたいなあ」、何か心に浮かぶごとに、遠くに光が一つ灯ります。後は、それに向けて、歩きだせばいいのです。

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Last updated  2004/12/24 12:26:17 PM
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