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2024.06.02
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。
このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。






羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊

<「BOOK」データベース>より
謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。

<読む前の大使寸評>
このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。


rakuten 中国共産党支配の原理


第6章で共産党の死角が語られているので、見てみましょう。
p242~246
<ウクライナに残された中国人7000人>
 中国外交を見てきて最もあぜんとさせられたのが、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻をめぐる対応だ。米国は1年以上前からロシア侵攻のリスクを把握し、日本や欧州だけでなく、中国にもくり返し伝えてきた。
 2022年2月の侵攻前には、米国のインテリジェンスを信じて日本や欧州の主要国はウクライナにいる自国民に退避勧告を出した。2月中旬には退避を事実上終えていた。

 対照的な対応を取ったのが中国だった。たとえば侵攻2日前の中国外交部の記者会見で、「ウクライナに駐在する中国大使館のスタッフは全員大使館にいるのか。ほかの公的機関はどうか」との記者の質問に、汪文斌副報道局長はこう答えている。

「ウクライナ東部情勢に重大な変化が起きた。中国大使館はすでに在留中国公民と企業に対し安全を守るよう注意喚起した。中国外務省と大使館は引き続き在留中国公民、企業と緊密に連絡を取り、領事保護・支援を迅速に行い、その安全と正当な権益を確実に守る」。あとでわかることだが、事実何もしていなかった。

 恥を忍んで白状するが、じつはこのときまで筆者も中国の判断が正しいのではないかと考えていた。ロシアの侵攻はないのではないか。なぜならウクライナ侵攻の直前に習近平氏がプーチン氏と会談していたためだ。2022年2月24日の北京冬季五輪の開幕式に合わせてプーチン氏を主賓として招待し、食事会まで開いている。共同声明では「上限のない協力」を謳ったばかりだった。

 その中国が2月下旬になっても自国民をウクライナから退避させていないということは、ロシアの侵攻は「脅し」ではないかと推理した。だがものの見事に外れた。

 侵攻した当日の中国外務省の記者会見はやはり歴史に残る内容となった。「現在、どれだけの中国公民がウクライナにいるのか。彼らに何か最新の指示を出したか」との記者の問いかけに華春瑩報道局長はこう答えた。「具体的人数については現在まだ把握していない。中国大使館は安全注意情報を出した。中国人民には団結奮闘し、互いに助け合うよい伝統がある。困難に遭遇したら、助け合うことを希望する。大使館は全力で支援する」

 侵攻が始まっても中国が何の手も打っていなかったことがわかる。現地で団結して助け合えとはあまりに無責任な言い方だ。のちにウクライナに7000人以上の中国人が取り残されていたことが判明する。ロシアと蜜月を謳う中国はウクライナ侵攻をめぐる情報を何もとれていなかったことが、白日のもとにさらされてしまった。

<ダイナミズムを欠く組織体質>
 再び『失敗の本質』に戻る。同書は3つ目の失敗パターンとして「自己改革が起こらないダイナミズムを欠く組織体質」を挙げる。日本軍の最大の過ちは「言葉を奪ったこと」だと言う。戦争のやり方が歩兵と艦隊から空母機動部隊や航空機、重火器に移っても内部で声が上がらず、イノベーションが起きなかった。組織の末端や情報やアイデア、問題提起が中枢につながることを促進する若くて柔軟な「青年の議論」が許されていなかったと指摘する。

 海外メディアの報道によれば、米国はウクライナ侵攻のリスクをくり返し中国に伝えたが、「西側のバイアスがかかった情報」と顧みることはなかった。だが7000人以上もの自国民がウクライナに残されている以上、退避の方法は最低限検討しておくべきだった。

『失敗の本質』が指摘するいわゆる「青年の議論」がまるきり欠けていた。それが中ロ首脳会談で侵攻の情報をとれず→ゆえに侵攻はない、あってはならない→侵攻リスクにかかわる情報はすべて遮断・・・との判断に傾いていたとしたら、組織の病巣は深いと言わざるをえない。

 「失敗の本質」から抜け出せなかった日本軍は、米国や中国との無謀な戦争に突入し、最後は無条件降伏まで追い込まれた。共産党が同じ病にかかっているとしたら、事態は深刻だ。東シナ海や南シナ海、台湾海峡で米国や日本、台湾と双方が予知せぬ衝突が待ち受けているかもしれない。

<公務員試験に殺到する若者>
 ここから先は、いまの若者の視点から共産党が中国をどのような方向に導いているのかを見ていきたい。若者や女性ほど社会情勢の変化に敏感で、この国の未来を映し出す鏡となるためだ。

 習近平氏を頂点とした共産党・国務院(政府)への権力が集中する状況を目の当たりにした若者は、民間企業への就職から公務員試験に殺到するように変わった。若者は自分の未来に真剣だ。リスクを恐れ、無難にやることが生き残る最善の道という風潮が、蔓延し始めている。
 2023年1月7,8日に実施された国家公務員試験は、一部の職種の倍率は6000倍に達した。習近平指導部がIT(情報技術)企業などへの締めつけを強化し、民間企業離れが広がっていることが影響している。


『中国共産党支配の原理』1 :習近平氏の怖さ





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Last updated  2024.06.02 00:40:22
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