Gun's Free

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Apr 17, 2007
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カテゴリ: 日記小説
 4.

 今は誰も居なかったが、例えその姿を所内の誰かが見かけたとしても誰も疑念を抱くことは無かっただろう。
 ヤニがてら、プライベートでケータイを一件。
 確かに、内容はプライベートであった。
 だが、その通話内容を知ったら、所内の誰もが驚愕するだろう。それは完全な背任行為だった。
「同志ツツイ、それは本当なのか。心身機能を飛躍的に向上させる合法ドラッグ、だと」
 相手の声は、スクランブラーを通しての機能上に留まらない、疑念を含んで歪んでいた。
 合法ドラッグ。通例の麻薬と違い、常習性や心身を破壊しない市販されている安全な”クスリ”を指す。
「本当です同志。現に日本軍はその開発者であるミユキ・アンドウを保護すべく然るべき手順を発動させており、陸上自衛隊の特殊1コ班が任務に就いています。現在は行方不明ですが、最新情報は常に私の手にあります」

「同志ツツイ。ミユキ・アンドウの確保を命じる。日本軍に先駆け必ず確保するのだ。必要な支援は与える」
「了解です、同志」
 通信、終了。
 男は独りほくそ笑んだ。
 そして、もう一本タバコを悠然と灰にしてから彼の職場である執務室に戻った。
 席に着くなり。
「課長、アルファから定時連絡です。まだ発見できておらず接触もなし。以上です」
 彼はそれを、いつもの表情、つまり人生に面白いことなどあるものかという、彼独特の、世間一般でいう苦虫を噛み潰した様な表情で受け、軽く頷いた。それが彼一流のポーカーフェイスだった。
 そう、ここに勤務する誰も、全く何も疑っていなかった。
 この、筒井純敬課長、二佐が、中国情報部とのダブル・スパイであることなど、だ。

 美由紀とジーマの奇妙な共同生活は続いていた。

 ジーマが一言、もう出ていけ、と口にすれば、美由紀はさっさと退散するつもりだった。一宿一飯の恩だけでも十分だった。ホームレスの生活は見た目以上に過酷だ。自身が無産者であるのに加え、更にもう一人穀潰しが増える意味は美由紀ならずとも判る。しかしジーマは何も言わなかった。美由紀はその恩に甘え続けることに決めた。故あってのホームレス生活だが、当たり前だが美由紀には何のスキルもなかった。つい、先日までは、フツーに高校に通うただの女子高生だったのだ。うちに帰ればゴハンが食べられて、小遣いも過不足なくあって、国内の多くの同輩同様、日々、何の不自由もなく暮らしてきたのだ。
 それが家を焼かれ、家族も失い、何者かの追跡を受け、こうして逃亡生活を送っている。
 まるで、ドラマかマンガの様だと美由紀は苦笑するが、これは紛れもない現実だった。
 ジーマは、少々放浪癖があるようで、その”住居”をかなり頻繁に変えていた。
 どういう手品なのか。ジーマは軽自動車を一台保有していて、移動の際に使用した。

 一緒に暮らす内に、美由紀も薄々ジーマの正体が判ってきた。
 恐らく、ジーマのこの姿は仮のもので、ジーマは”好きで”ホームレスを”演じて”いるのだ、と。
 そうでなければ、あの軽の維持も(さすがに車検を通した形跡はないが)ときおり持ってくる銀シャリも、説明がつかない。いわば”趣味”のホームレスなのだ。実際は、かなりの資産家に違いない、と。
 その見当が付くと美由紀は安心した。のびのびとこのまま甘えることが出来た。





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Last updated  Apr 17, 2007 08:45:45 AM
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