時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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March 24, 2010
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「カンナ」 シリーズの5巻目で、現在のところ最新刊である 「戸隠の殺皆」 。現代の事件に歴史の謎を絡めて、それを忍者の子孫である3人の若者が解決していくという、ちょっと変わった設定の、歴史系蘊蓄ミステリーである。もっとも、一番役に立っているのは、彼らに同行する忍者犬の「ほうろく」のような感があるのだが。この「ほうろく」、洋犬のミニチュアブルテリアなのに忍者なのだ。

○「カンナ 戸隠の殺皆」(高田崇史:講談社 )



 中心となって活動するのは、大したとりえのない神社の後継ぎで主人公の鴨志田甲斐(ただし、誰かが危ない時に一時的に忍者の技が出ることがある)、記憶力抜群で死んだふりだけは得意な現役東大生巫女の中村貴湖、そして大事なことはすぐ忘れるくせにつまらないことはよく覚えているという特技を持った柏木竜之介の3人プラス忍者犬のほうろくである。高田崇史の歴史系蘊蓄ミステリーというと「QED」シリーズが有名だが、この「カンナ」シリーズはあれほど濃い味付けではなく、さっぱり薄味感がするので、どっぷりと「QED」の世界に浸かった人には、多少物足りない思いがするかもしれない。こちらのシリーズの特徴は、とにかく忍者がいっぱいという感じで、色々な系列の忍者の末裔たちがたくさん出てくる。もっとも、派手な忍法と言ったものは出てこないのだが。

 今回、甲斐たちが訪れたのは戸隠。戸隠と言って思いだすのは、戸隠流忍術、天手力雄命の投げた天の岩戸の落ちたところ、そして鬼女紅葉の伝説である。この作品の性格からいって、当然のことながら戸隠流忍者の末裔は出てくるし、あとの2つもちゃんとモチーフとして織り込まれている。

 この物語のもっとも大きな謎は、甲斐の実家である出賀茂神社から盗まれた社伝「蘇我大臣馬子傳歴」。何か日本の歴史を覆すような事実が書かれているらしい。この社伝、甲斐が兄ともしたう諒司がとり返したのであるが、なぜかそのまま失踪してしまった。諒司の行方を訪ねて甲斐たちが、色々な歴史上の謎の残る地を訪ねるというのが、このシリーズの基本的なパターンである。

 今回、甲斐たちは、戸隠で波多野村雲流の連中に襲われ散々な目に遭う。彼らも社伝を追っているのである。いったい、社伝には、どんな謎があるのか。今回もその謎はお預けであり、これからの展開に目が離せない。

 面白かったのは、エピローグで、貴湖と甲斐の許嫁である聡美が、甲斐を挟んで、空中戦をやったこと。聡美の貫禄勝ちのような感じだったが、この聡美、だんだんとこのシリーズの中で存在感が大きくなってきているのだが、一体どんな役割を持ているのだろうか。一方、甲斐も、だんだんと隠された能力が目覚めてきているような感じで、このあとどう変わっていくのかも気になる。




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Last updated  March 24, 2010 07:11:57 AM
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