時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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July 6, 2010
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「親鸞のこころ」 (小学館)。表題は「親鸞のこころ」fだが、中は更に2部に分かれており、法然との関係から親鸞について述べた第1部「親鸞のこころ」と、一般にはそれほど名を知られていないが、仏教史における大きな役割を果たしてきた仏教者たちのことを述べた第2部「時代を拓いた求道者たち」から構成されている。

○「親鸞のこころ」(梅原猛:小学館)



 まず第1部「親鸞のこころ」であるが、親鸞が宗祖の浄土真宗と言えば、我が国最大の仏教宗派である。その親鸞が、浄土宗の祖である法然の弟子であったことは周知の事実であろう。

 浄土宗、浄土真宗で言う浄土とは、極楽浄土のことで、阿弥陀如来の浄土である。これらの宗派の特徴を一口で言えば、念仏による阿弥陀如来の救済を信じるということだろう。もちろん念仏と言うのは、法然以前にもあった。しかし、法然以前の念仏は観想念仏が主体であったとのことだ。法然は、そのような難しいことをしなくとも、誰でも往生できるはずだとの平等思想から、口唱念仏こそ本来の念仏であるとの考えに至った。そして、その平等思想は、悪人往生、女人往生に繋がる。悪人往生、女人往生こそ、法然の思想の要であるという。

 親鸞は、法然の弟子なのだが、どちらかと言えば異端の弟子であったらしい。決して法然の弟子の中では主流ではなく、当時は無名に近かったようだ。それが、時代を経て、現在のような大教団となるのは、ひとえに天才的な布教者である本願寺八世の蓮如の功績なのだが、これは知る人ぞ知るといったところだろう。

 法然は、念仏のみが必要であると説いたが、自らは厳しく戒律を守った。しかし、親鸞は煩悩に悩み、あの時代に公然と妻帯に踏み切っている。極めて人間臭いのが親鸞の魅力だ。それでは、肝心の親鸞の思想とはどのようなものだろうか。親鸞と言えばすぐに「歎異抄」が思い浮かべられるが、これは、弟子の唯円が、親鸞の死後30年後に、師に関する記憶を頼りに書いたものである。当然唯円のフィルターがかかっていると見るべきだろう。梅原氏によれば、親鸞の思想を知るには、彼が渾身の力を込めて書いた「教業信証」によらなければならないという。そして、その中心思想は、良く知られた「悪人正機説」ではなく、「二種廻向」だということだ。「二種廻向」とは、廻向には、念仏により阿弥陀如来に救われる「往相廻向」(往きの廻向)と救われた者が現世に帰って、念仏を広めて人々を救うという「還相廻向」(還りの廻向)があるということのようである。いかにも、煩悩に悩みながら人々を救おうと考えていた親鸞らしい思想ではないか。

 次に、第2部「時代を拓いた求道者たち」だが、紹介されているのは次のような人々だ。第1部とは、直接的な関係はなく、1部とは完全に独立した内容となっている。第1部だけでは薄すぎるため、一緒に収録したのだろうか。

○泰澄


○良源
 比叡山では、伝教大師最澄と並んで、元三大師良源が尊敬されており、天台宗の中興の祖であるという。

○覚鑁
 真言宗中興の祖であり、真言密教研究の場である大伝法院を高野山に建立したが、宗派内の対立により根来寺に移った。

○世阿弥
 父の観阿弥とともに、能楽を大成した人物。梅原氏は、この書を書く1年くらい前から世阿弥にとり憑かれているという。氏によれば、能を理解するには、日本の宗教についての理解力をもち、「怨霊」と言う概念を考えなければならないそうである。

 第2部の宗教者だけでなく、第1部の法然や親鸞にしても、私たちはあまりにも知らないのではないか。盲目的に宗教を信じていた時代ならともかく、現代においては、仏教が葬式宗教になってしまったことと、私たち自体が、科学というものを知ってしまったことに大きな要因があるのではないかと思う。しかし、これらの思想は、日本人としての考え方の源流ともなっているものだろう。我々は、もっと、日本の宗教について、理解を深める必要があるのではないか。しかし、それは、決して宗教を盲信するということではないだろう。

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Last updated  July 6, 2010 07:09:25 AM
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