時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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July 11, 2010
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 樋口有介といえば、ちょっと斜に構えた中年探偵の活躍する「柚木草平シリーズ」が有名だが、「林檎の木の道」や「風少女」などの青春ミステリーもなかなかいい。この 「プラスチック・ラブ」 (東京創元社)もそんな青春ミステリーの一つである。

○「プラスチック・ラブ」(樋口有介:東京創元社)



 この作品は、短編集であり、主人公はどれも、木村時郎という高校生だ。面白いのは、話毎にヒロイン役を務める、彼の彼女が違うということ。別に、時郎が彼女をとっかえひっかえしている訳ではないようで、それぞれ、設定を変えて、仕切り直しをしている感じだ。だから、それぞれの話の間には、前後関係はないし、関連性も無いようである。冒頭に書いたように、分類としては青春ミステリーということになるのだろうが、必ずしもすべての話をミステリーとは呼べないかもしれないだろう。しかし、収録されている、各話とも、青春のほろ苦さというものを感じさせてくれる。

 掲載されているのは、以下の8編。
・雪のふる前の日には
・春はいつも
・川トンボ
・ヴォーカル

・団子坂
・プラスチック・ラブ
・クリスマスの前の日には

 登場人物は、家族や友人に問題を抱えているのだが、殆ど言いがかりに近いような彼女たちの頼みにより、時郎が首をつっこんでそれなりの解決をしていく。彼は、作中では、「ネクラでクールで皮肉屋だが、意外とボランティア体質」の少年として描かれてくる。実は、柚木草平も表題作「プラスチック・ラブ」にゲスト出演と言った感じで登場するのだが、彼が子供の頃は、きっと時郎のような感じだったんだろうなということを思わせる。もしかすると時郎も柚木草平の分身として、作者はイメージしているのかもしれない。

 ところで、読んでみて、いくつか公孫樹が情景描写として使われているシーンがあることに気付いた。

 「立ちあがって、ぼくは公孫樹の舞う空を眺めてから、美波のマフラーをつまんで、軽く上にひっぱる。」(プラスチック・ラブ)

 「自転車を押している里奈子の背に、ひらりと公孫樹の葉がふりかかる。」(クリスマスの前の日には)


 情景が目に浮かぶようで、いかにも青春時代の思い出というようなものを良く表現しているのではないだろうか。

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Last updated  July 11, 2010 08:29:14 AM
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