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2024年1月29日、さらば外務省!(天木直人/著)読了。副題:私は小泉首相と売国官僚を許さない奥付を見ると2003年10月8日第1刷発行となっている。副題が強烈。米国に留学したいがお金がかかる。外交官試験に受かれば外交官として外務省に入り2年間は勉強期間として実質的な留学ができるので外交官試験を受けることにした。大学三年生の時にお試し受験をしたら合格してしまったので、大学を中退して外務省に入った。大使の役目は現地に食い込み状況を把握し本国に意見具申することで、本国の指示通りに動くのであれば大使は不要だ。しかし、煙たがられ出世の妨げとなるから意見具申する大使は少ない。著者が駐レバノン特命全権大使の時に国連決議が得られず米国が単独でイラクを攻撃するときに日本は米国に追随すべきではないと総理にも届く形での意見具申をしたが、無視された。そして、米国が単独でイラクへ攻撃を仕掛けた。著者は再度最上級の電報を本国に送ったがこれも無視された。そして、事務次官からの辞職勧告。著者は憤慨し外務省勤務で分かったことをさらけ出すことにした。外務官僚・政治家についていろいろと書いてある。目次に出ているが、竹内行夫、小和田恆(皇后陛下の実父)、斎藤邦彦、栗山尚一、松永信雄、野上義二、田中均、田中真紀子、鈴木宗男、川口順子等々、いいことは書いてない。松永信雄に付いて書いた下り。大正12年生まれで外務省退官後、顧問として外務省に部屋があり、色々と用事を作っては外遊をしていて、訪問先では大使館が丁重にもてなす。イラク戦争に関して「ショウ・ザ・フラッグ」ってのがあって、自衛隊を派遣することになったが、「ショウ・ザ・フラッグ」と言って柳井大使に迫ったとされるアーミテージはそんなことは言っていないと証言している。米国は日本の外務官僚が捏造したことを知っていながら黙っていたのだ。松尾克俊官房機密費搾取に始まり、数々の外務省不祥事が表に出たがそれらは政治家と共に必死のもみ消しをしたが表に出たものだけだし刑事罰もないどころか、省内で処分された者達がその後立派に出世しているのを見ればおぞましい組織だということが分かる。内閣官房に官房機密費があって政権交代すると空っぽになるという噂のもので何に使ったかは常に闇。しかし、それが佐藤政権の時に足りなくなり椎名外務大臣が外務省機密費を20億円融通し、それ以降慣例なったがマスコミもグルなので誰も追及しない。田中真紀子が外務大臣の時に表に出しそうになったので潰された。毎日新聞が報じた在オーストラリア日本大使館での公金流用についてだが、公明党及び創価学会が絡むので小泉総理はじめ総がかりで闇に葬った。著者がアフリカ二課長の頃、南アフリカのアパルトヘイト廃止に挑戦したがあっさり左遷されてしまった。日本は貿易取引額のトップでとても重要な国とされていて日本人は名誉白人とされて白人と同じ扱いになった。このことで世界中の非白人が日本に刃を向けてきた。ところが経済界は外務大臣に経済制裁をしないように陳情に来ていた。「外務省はいつから共産党員を課長にするようになったのか」、「黒人が差別されようが殺されようが、我々企業には関係ない」など。そんな折、著者はアパルトヘイトを題材にした映画「遠い夜明け」をしりこれを使って反アパルトヘイトの世論を作ろうとしてそれなりに国民に浸透し、南アと関係の深い企業への不買運動が起きたりしたので、企業側も自主規制を始めるようになってきて、政府も規制処置を強化せざるを得なくなってきた。著者は南アのアパルトヘイトを糾弾する本を書き上げたが出版の許可は出なかった。マンデラ政権ができた後でやっと出版できた。著者は内閣安全保障室へ出向となった。中曾根総理が新設した内閣機能の強化が目的だったが左遷で仕事が無かった。仕事は年に一回の防衛庁の予算を承認することだけだった。毎日10時頃出勤してお茶をゆっくり呑み各新聞を隅々まで眺めて昼のニュースの時間にニュースを見て午後は回覧されてくる資料をじっくり眺め用事もないのに電話をしてみたりするうちにラジオ体操が流れてくると夕刻のニュースの時間になりそれらを見て退庁する。住居は官舎だったから当然公務員が住んでいる。盆暮れになると大蔵省や経産省のキャリアの住宅前には大きな箱が置かれて「留守の時にはここに入れてください」と書いてある。大蔵省キャリアの息子の口癖は「大きくなったら東大法学部から大蔵省に入る」だ。著者の息子の友人に大蔵省の息子がいて、自分宅ではできないゲームをしに著者宅へ来て息子が遊んでいようがお構いなしに取り上げてゲームを楽しんで平然と帰っていく。公務員住宅がある町内会では年の瀬に夜回りをやっているがキャリアは忙しいから金をやるからと参加していなかった。配偶者から著者に出てくれるように依頼があり出てみたら、町内会の人達はとても暖かく迎え入れてくれた。高級官僚とは町内会活動などの経験の全くない連中なのだ。同僚の話。警察官僚は「多くの警察官を部下に持てるのはさぞ快感だろう」、防衛庁幹部自衛官は「艦船の艦長になると地の果てに行こうが上等な刺身やフィレ肉など好きなものが食べられるし、風呂の温度は39.5度だと叫べば毎日船員がきっちり用意して安心して入浴できる。自分はもうすぐ艦長なので楽しみだ。」等々。官僚の不祥事の発覚は後を絶たない。高級官僚といえども給与だけではおいしい生活はできないのでたかりまくる、それを見ているノンキャリアも真似をする訳で、国民の為の行政ができるわけがない。海部首相アセアン諸国歴訪の時、マレーシアのマハティール首相は東アジア経済連携を提案しようとしていた。しかし、東アジア経済連携はいいが日本が入ることは許されないとした米国。自らは北中米で欧州も統合へとなっているときに勝手な言い分だ。しかし、日本政府は米国の言いなりだった。平成になり天皇がマレーシアを訪問した時にマレーシア国王が歓迎の晩餐会スピーチで天皇に直訴したが、天皇のスピーチでは全くそれに触れず完全無視だった。その10年後にブッシュ大統領が参議院本会議場で演説するにあたり国会議事堂の正面玄関から入ったが、ここは国家元首しか通さないところで天皇陛下でさえお一人で行かれるのに、ブッシュは側近や護衛を引き連れて入っていった。外務省と言えば外国と上手く付き合って行く為の役所で在外大使館や公使館員がそれにあたるはずなのだが、大蔵省に始まり経産省が続き防衛庁にその他の省庁も今では独自にその省庁にとって重要な国で勝手に行動していて、大使館などは無視されている。著者は腐れ切った外務省だけでなく日本の官僚機構を作り直さねばならないし、自民党も解体せねばという。そして9の提案をしている。①日米安保条約の歴史と変遷を学び、自分の意見を持つ②第二次世界大戦以降の日本の現代史を知る③憲法改正問題を避けずに直視する④アジア諸国への謝罪と天皇の戦争責任について考える⑤日本経済の真の原因を知り責任者を追求する⑥政治家、官僚にこれ以上特権を持たせない決意を固める⑦石にかじりついても政権交代を実現する⑧情報公開法をさらに改善し積極的に活用する⑨地方分権化を徹底して推進する私の読書記録索引はこちらをクリック。
2024.01.29
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2024年1月25日、慰安婦性奴隷説をハーバード大学ラムザイヤー教授が完全論破(ジョン・マーク・ラムザイヤー/著)読了。副題:娼婦・慰安婦は年季奉公契約をしていた奥付を見ると令和5年12月13日第1刷発行となっている。最近の本だ。この本は米国のラムザイヤー教授が書いた論文をまとめたものだ。論文は全部で4つだ。①戦前日本の年季奉公契約による売春制度②慰安婦と教授たち③戦時中の性サービスの契約④批判への回答貧しい農家が娘を女衒に売ったとされるが、売ったわけではないし奴隷でもない。日本に昔から在る年季奉公だ。これはちゃんとした契約で一定期間の労働の後に必ず終わるものだ。教授は人権、道徳、倫理、文化とかではなく、経済活動としてゲーム理論を用いて冷静に分析している。慰安婦問題は1983年に吉田清治が著書で自らやったと書いたことが発端でそれを朝日新聞が大々的に取り上げて報道したことによるし、その後吉田清治の著書の内容は虚偽であり朝日新聞は全ての記事を取り消した。教授はそのはるか前から日本の芸娼妓の年季奉公契約の研究をしていて研究論文を発表していた。慰安婦の年季契約は場所が戦場になっただけでそれまでの娼婦の年季契約と何ら変わらない。「慰安婦=性奴隷」となりようがない。教授が嵐のような攻撃にさらされることになるのは第3論文が発表された後、産経新聞が要約を載せると韓国を震源地として凄まじい攻撃が始まり、教授の命の危険まで及んできたが、教授は冷静に論破してしまった。米国の大学教授が左に傾き過ぎていて冷静な論戦を阻んでいる。特に人文系はほとんどが左だ。そんな中にラムザイヤー教授の論文が投げ込まれたのだ。最初の論文は20世紀初頭の年季奉公としての売春婦とその親及び業者の関係だ。中世から娘を売ることはおこなわれてきたが、年季奉公の売春婦は期限が付いた契約で契約金額の多くを前受け金として受け取るし、稼ぎが契約書の金額に達すれば契約終了となるのが普通だった。期間はおおむね5~6年だ。戦前の日本の売春業は規制産業だったし、問題もあったから政府の公式記録は勿論のこと業者側の記録も膨大に残っている。著者はそれを調べたのだ。年季奉公の名の下に連れて行かれた売春婦が騙されて奴隷となるとの仮説があるが、そのような記録は発見されていない。それどころか多くの売春婦は契約期間よりも前に年季明けとなっている。著者が示すデータの中に昭和9年の東北地方から都会に働きに出た女性の平均年収が示してある。公娼が884円、芸者が575円、酌婦(多くが売春込み)が518円、女給(これも売春込み)が210円、その他が130円。公娼が高給取りであったことが分かるし、希望しても全てが公娼になれたわけではない。東京の場合で希望者の6割だった。当然公娼になれない女性が私娼になって営業をすることはあったが教授が研究したのは公娼だ。江戸時代から続く年季奉公としての売春が明治の初めの頃に問題となった。ペルー船から逃走した中国人の取り扱いでの争いで日本の年季奉公売春が奴隷だとして問題となった。その後色々の変遷や混乱はあったが年季奉公には稼働契約と金銭貸借契約が混在しているが、稼働契約として長期間拘束することはできないが金銭貸借契約は有効だとなった。日本の売春婦は金で縛られて騙されて借金が膨らみ性奴隷として働かされたと現代の多くの学者が主張するが、実際に残っている様々なデータは契約は正しく履行されて多くの女性が年季前に契約を終了していることを示している。年季奉公で業者が多額の前渡金を売春婦側に渡すことで売春婦を拘束したと主張するが、金を渡して拘束できる訳がない。全く逆で、労働者を拘束したければ労働者の稼ぎの一部を預かるのが常套手段で、途中で逃げれば没収するのが常だ。売春婦の前受け金は全く逆なのだ。売春婦側が前受け金を欲しがったのだ。性奴隷だったとする学者が朝鮮人慰安婦が20万人とか40万人とか言うが当時朝鮮人の若い女性が何人いたのかには言及しない。1日に20~30人を相手にしたと言うが20万人が毎日20~30人を相手にしたのなら400~600万人の日本兵が毎日買いに行ったのか?戦争は誰がどうやってやっていたのかとの問いにはそれを主張する学者は答えない。そんなことにはお構いなしに非難する学者は非難するのだ。慰安婦だったと称する女性たちの証言に一貫性がない矛盾だらけの話が多々ある。著者はいくつかの矛盾だらけの証言を示している。戦前の日本に於いても売春を禁止するように運動する者はそれなりに居たが、娘を強制的に連れて行くことに反対した者や、売春を強要されたと訴え出た者は居ない。日本政府は戦争するために軍人が性病に罹ることを重大な問題と認識していた。戦争をするにあたって感染症は重大な問題なのだ。それ故、毎週の性病検査、コンドーム使用、行為後の消毒液での洗浄を義務付け、軍人には慰安所以外を利用しないように徹底した。前線での慰安所の契約は通常の売春婦を参考にされていたが、期間がかなり短くなっていた。最長でも2年で、通常は半年くらいだったし、ほとんどが期間満了前に終了していた。慰安婦の収入は相当に高く、朝鮮人でも家を購入したり宝石を沢山買ったりとか親に楽をさせたりとかしていた。戦争末期に大量に朝鮮女性が慰安婦として連れ去られたとする学者が居るが、実際は慰安婦や酌婦などが工場労働者の不足分として工場へ移されたのだ。戦況は売春などをやっている場合ではなくなってきていたのだ。私の読書記録索引はこちらをクリック。
2024.01.25
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2024年1月17日、素朴な疑問(安部司/著)読了。副題:食品の裏側から くらしの中の添加物・調味料入門奥付を見ると2017年6月20日第1刷発行となっている。著者は食品添加物を駆使して、できるだけ安く、簡単便利で似たような味の食品を作り上げる仕事に長年携わってきた。その技の内で調味料に関することをこの本で披歴している。最初に出てくるのはコンビニのサンドイッチで、マヨネーズは入っていない、原材料名を見れば一目瞭然。東日本大震災での原発事故を受けて原発の是非がいろいろ言われているが、反原発の人達は電気の恩恵を受けられない生活を送れるのか? 電気については個人のレベルでの選択が難しいが食品の選択は簡単だ。変なものは口に入れなければいいだけ。コーヒーや紅茶に付き物のミルクは大抵小さなプラスチック容器に入っているが、中身に牛乳は入っていない。清涼飲料水などにノンカロリーと称して売っているが、それは砂糖や果物を使ってないからで、合成甘味料を使って、ビタミンCは合成のもので、色は着色料で何でもござれ。お茶は入れた直後から変色していくし味も変わっていくが、ペットボトルのお茶は変色しない。不思議ではないか。著者が名付けた「とりすぎ三兄弟」だが、塩分、糖分、油分で単体で大量に摂取しようとすると体が拒絶するのだが、食品添加物を駆使すると美味しく大量に摂取できてしまう。代表食品、塩分はインスタントラーメン、糖分はスポーツ飲料、油分は即席カップ麺天ぷらそば。激安ハンバーグに高い牛肉は使わない。豚肉と鶏肉に添加物を駆使して牛肉の味にする。安くて、簡単便利でウマイ、インスタント食品、外食、持ち帰り総菜、お湯を注ぐだけの「○○の素」、などの味の元は全て同じ。醤油など発酵食品を作るには時間が掛かるので、塩酸などでタンパク質を短時間でアミノ酸にしてしまう。塩酸を使っているが最終段階でアルカリで中和するから表示義務がない。うま味調味料はいろんな種類を混ぜて使うから「調味料(アミノ酸等)」と書けばいい。「○○エキス」の表示があるが牛、豚、鶏、鰹、などの残りかすのような部分から塩酸などの薬品を駆使して抽出されたもの。食品表示に表れない「遺伝子組み換え食品」。トウモロコシはコメの国内生産量の1.8倍が輸入されていてその8割が遺伝子組み換えと考えられている。厚生労働省が「安全性が確認された」としている遺伝子組み換え作物は300品種を超えている。そして、これらを使った加工食品の内で指定されたものだけが「遺伝子組み換え」の表示を義務付けられている。食品の表示には例外規定があり、実際には遺伝子組み換え作物が使われていても消費者には分からないことが多々ある。店頭に並ぶ安い醤油やサラダ油の原料は輸入の大豆や菜種です。何のために食品添加物が使われるのか?①安い「もどき」を作る②製造・調理の手間を省く③便利になる④きれいに見える⑤おいしく感じるハムの原料に「卵、大豆、乳成分」だったり、和風だしの原料に「ゼラチン、豚、乳成分」って変でしょう。著者は伝統的な調味料、醤油、酢、みりん、味噌などを使って作る保存のきく調味料を紹介している。「かえし醤油」「甘酢」「タマネギ酢」「みりん酒」「甘味噌」。「化学調味料不使用」と書いてあれば安心かというとそうではない。現在では呼び方を「うま味調味料」としているだけで、しかも「化学調味料不使用」と書いたりする。「○○無添加」「○○不使用」に安心してはダメ。自動車は便利であるが毎年何千人もが殺されているし怪我人は数知れず。食品添加物も便利で安く日持ちがするしとても便利なのだが癌になるかもしれない。しかし、自動車と異なるのはその危険が目に見えるか見えないかだ。発がん性物質となっても厚生労働省がそっとリストに載せるだけで多くの国民はそのことを知らないし、知ったところで既に大量に食べた後。現在身体に変化がないからと言ってそれが「安全」の印ではない。私の読書記録索引はこちらをクリック。
2024.01.17
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2024年1月6日、村田良平回想録下巻(村田良平/著)読了。副題:祖国の再生を次世代に託して奥付を見ると2008年9月30日初版第1刷発行となっている。上下巻同日発行だ。この下巻は事務次官時代からだ。中曾根総理の後任選びで並び立った竹下・安倍・宮澤が中曾根に一任したことで中曾根が竹下を選んだのを著者は他の二人より院政がやりやすいとみている。そして、宮澤については後に総理になったがその器ではなかったとも。外務大臣当時に数知れず説明に参上したがそれへの対応が単なる評論家でしかなかったし、財政通と言われながらバブル後の対応がまずく、教科書条項、従軍慰安婦問題、今上陛下訪中の三点は宮澤に大きな責任有。中曾根は総理になった後靖国参拝を止めてしまったことを除けば戦後最も優れた総理大臣だった。昭和天皇の御大葬へのブッシュ大統領夫妻の参加が同盟国として当然だとの主張があるが、米国内では「太平洋戦争忘れたのか」との反対論を抑えての参加であるだけでなく、崩御の3日後の参加表明をしてくれたことが重要だ。著者は次官の後駐米大使となるのだが、色々な理由から就任を拒んでいたが総理や外務大臣や元総理などから強く推されれば公務員として拒めなかったとしている。色々な理由の中に米国は日本を無意識に保護国と見做していることを挙げている。著者の駐米大使の時には色々と起きている。日米経済摩擦、東西ドイツ統一、イラクのクウェートへの侵攻、ソ連邦崩壊、等々大変な時期だ。駐米大使は大変多忙だ。米国は合衆国なので中央政府だけでなく各州との連携が必須。特に東のニューヨーク州と西のカリフォルニア州が重要だ。米国には日本から政府だけでなく議員や企業などが押し寄せてくるのでその相手だけでも大変だ。著者の在任中はソ連の力が落ちて、日本の経済力が米国の脅威となっていて、米国の最大の敵が日本になっていた時代で大変だった。貿易収支も問題だったがそれ以上に日本企業が不動産や企業を買収しまくったことが米国民の反感を買った。理由の一つに戦争に負けて、その後の米国の庇護で経済成長したくせに生意気だとの感情があり、著者は憤りを感じている。日米構造協議に関して著者は敗戦の影響だと憤慨している。又、構造協議の過程で著者の前任者が離任後数ヶ月しか経っていないのに協議の特使として派遣されたことだ。それをした海部総理とそれを受けた松永前大使に著者は怒り心頭だ。日本という国は正式代表たる大使を軽んじているので、現地の信用はがた落ちで、こんなことでは大使なんかやってられない。構造協議はその後米側が日本の内政に干渉する要求を出してくる先例を作ってしまった。駐米大使経験者がその後、他国の大使となるのは戦後著者が最初だ。中々異例なことだが、東西ドイツ統一直後の時期なので著者が選ばれたようだ。望まなかった駐米大使で大変だっただけに、著者が好きなドイツでの大使は嬉しかったようだ。ドイツは連邦国家で各州がかなり独立しているし企業活動も全国に遍くその活動拠点が分散しているから在任中にすべての州を公式訪問し主な企業にも表敬訪問をした。著者が着任した時は統一後1年半で、旧東ドイツを西並みにすることで必死になっている頃だ。旧東ドイツで共産主義思想で教鞭を執っていた教授などは一掃されていた。一方日本では、冷戦終結でそれまで教えてきたことが出鱈目であったことが白日の下に晒されたにもかかわらず、東大を始めそれらの教授陣をそのまま崇め続けているし、名誉教授にまでなった人が居るのが信じられないし、マスコミもソ連崩壊前の主張を恥ずかしげもなく反省もなく、言葉巧みに白々しく続けているのが信じられない。東京サミットの時にはG7だったがクリントン大統領がエリチン大統領を入れてしまい、次のブッシュの時にG8になってしまった。先進民主主義経済大国の集まりのはずなのに、民主主義でもなく、経済大国でもなく、先進国でもないロシアを入れるなんてと著者は憤慨している。日本の首相が竹下⇒宇野⇒海部⇒宮沢⇒細川⇒羽田⇒村山⇒橋本と目まぐるしく変わり経済もパッとしないので外交なんかまったくもって話にならないと嘆く。自衛隊についても、ドイツ軍が憲法の制約があるにもかかわらず世界で貢献しているのに、日本は憲法を盾に何もしないので世界での信用を得られないと嘆く。著者の退官の時は駐韓、駐仏両大使だった二人と共に河野洋平大臣の挨拶を受けた。もごもごと何事か言ってさっさと帰った。そして次官からは何の挨拶もなかった。著者は憤慨している。一方で、天皇皇后両陛下からは茶会への招待や、午餐への招待と温かい労いがあった。「後に続く世代への願い」として色々書いてあるが、日本国憲法は外国語で外国人が書いて昭和天皇を人質として強要したもので、改定の規定の難しさなど無視して、日本人が新たに作ればいい。日本が平和であったのはこの平和憲法のおかげだと称する嘘を続けている勢力が居る。一部の著名学者、日教組や全教等の左傾した組合、朝日、毎日、NHK、岩波に代表されるマスコミがそれだ。まず、現行憲法の制定過程を明らかにして、無効宣言をし、5月3日の憲法記念日を廃して、制憲会議法を制定して一から制定すればいいと提案する。日米安保条約についても、占領時代の名残で冷戦も終わり世界の情勢は変化しているのに占領時代そのままにに続いているのに憤慨している。防衛だけでなく外交全般が米国に従属的なのも憤慨している。同僚の外務官僚にも憤慨している。著者は米国で「煙たい大使」と称されていた。9月11日事件は日本では世界中が米国に同情しているかのような報道であったが、世界を見渡すとそうではない国の方が多かったのではないかと著者は言う。日本はいい加減対米従属一辺倒から脱して独立国として行動すべきだ。この本の最後の章が「日本人よ、恥を知り、矜持を持て」なのだ。敗戦後の占領軍によって受けた「洗脳」と「去勢」で戦前までの誇り高き日本がどこかに行ってしまった。クラウゼヴィッツは言った「敵の軍隊を壊滅しても、国が残れば軍隊は再建できる。敵の国を壊滅しても、国民が残れば国は再建できる。しかし、国民の意志、魂を壊滅させれば、完全に敵国を壊滅できる。」と。今の日本だ。河野官房長官談話は完全な誤りなので本人は謝罪すべきとある。日本は孤立していると言われるが、そもそも、日本は地理的にも歴史的にも孤立してきたし今後も孤立を続けると著者は言い切る。しかし、孤立していることと国際社会で爪弾きになる事とは別だ。個性なのだからその個性の下、世界の国々と是々非々で仲良くすればいいのだ。著者は最後に2点として、祝祭日の在り方と、皇室への尊敬の欠如を嘆いている。私の読書記録索引はこちらをクリック。
2024.01.06
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2024年1月1日、誰のために(石光真清/著)読了。副題:石光真清の手記 4 ロシア革命この本は日清・日露・第1次世界大戦の時に満洲やシベリアで諜報活動に従事した陸軍将校石光真清の手記をその嫡嗣真人が真清の死後、整理して出版したものだそうだ。そもそも、個人の記録であり出版する意図などは全くなく書かれたものだし、諜報に従事していた人の書いたものなので時期や内容を吟味して出版したそうだ。この第4巻には副題にあるようにロシア革命の頃のことが書いてある。第3巻は日露戦争及び戦後無職となりそれまでの国へのご奉仕が全く役に立たず生活の基盤が何もなく大変だったが運よく三等郵便局長の家族揃って生活できるようになったところで終わっていた。波瀾万丈な人生を送ってきてやっと世田谷村に家族と落ち着いて借金の返済のめども立った頃に著者の弟で陸軍大佐が大陸へ行くようにと来訪した。第一次世界大戦の頃だ。清が倒れ支那は乱れ、長年の西欧列強による植民地化は着々と進んでいる頃だ。結局大正5年に錦州に商館を開くことになった。主な商品は皮革と薬草だ。錦州は交通の要衝であるから流通の要衝ともなっていたので支那を植民地にするべく活動してきた英国がほっておく訳がなく、日本人は英国の影響で住むこともままならなかったが著者の奮闘で徐々に日本人が食い込んで日本人も増えて日本人会も作られ初代会長に著者が選ばれた。大正6年の記述にロシア革命が出てくるが、ロシア革命後ウクライナとフィンランドがロシアから独立したとある。軍とは関係がない著者だが軍から請われて、革命で混乱しているロシアを調べてくれとの要請。断りたいがそうもいかず引き受けてロシアへと向かう。同行の士は安倍道瞑師と軍人2名。しかし、軍人2名は満州到着直後に現地で襲われて身ぐるみ剥がれて止むなく旅順に帰った。結局二人での旅となった。革命後の混乱の中何とか鉄道が動いていて、著者はその様子を描いている。革命の直後でそれまでの皇帝の下での将校や高級官吏も汽車に乗っているが哀れな様子。金目の物や衣類を取り上げられたり、使い走りに使われたりしているさまが書いてある。著者は安倍道瞑師と別れてブラゴベシチェンスクのホテルに逗留した。既に著者が来ていることは革命政府に知られていたようでホテルの部屋の電灯修理に来た見覚えのない男に知られていた。現地では中国人が暗躍していて、市場が混乱していた。中国人が買い占めをするし、それを彼らから購入するには紙幣は使えず、硬貨つまり金属及び貴金属や高価な物品が必要でロシア人、特に庶民の生活は困難だった。中国人は貴金属を中国側に運んでしまうから、ますます商取引ができなくなりロシア人は困っていた。そんな中、第一次世界大戦中となる。現地では連合国の兵力特に日本軍の援助で革命政府とは別にロシア東部で独立地帯を作ろうとしていた。日本軍も人を派遣して著者を首領に現地で活動させようとしていた。著者は話が違うとして躊躇したが受けざるを得ず諜報だけでなく調略もやることになった。しかし、だんだんと革命軍が迫って来て、著者の命が狙われるとの情報で退散することになった。シベリアはロシアの植民地と書いてある。シベリア共和国設立なんて表現も出てくる。反革命派の一部は当初英米仏を当てにしたが駄目で今では日本だけを頼みとしている。ブラゴヴェシチェンスクでは革命派と反革命派それに日本人自警団がそれぞれの旗を掲げて街を警備している。そんな中独墺軍がロシア領に攻め込んで来たとの情報があり、反革命派が元気になる。ロシアは徐々に赤旗が翻るようになってきた。著者が居るアムール州はそれになびくことをせず持ちこたえている。そんな中陸軍大臣が著者を解任したから即刻立ち去れとの電報が来て現地は騒然としたが、翌日、その電報を打ち消すとの電報が来た。なんだかんだと色々あったが、赤軍が攻めて来て簡単に撃破されてしまい、人々はほうほうのていで対岸の支那に逃れた。ブラゴヴェシチェンスクは赤旗で埋まってしまった。結局日本国は何もしてくれなかった。著者は兎に角責任を感じ、ハバロフスクの日本軍の所に向かった。結局革命勢力に征服されてしまったが、日本国民の生命財産は奪われることなく旧来に復したので、避難していた人たちも戻って来た。連合国軍としての日本軍が正式にシベリアに出兵してきたので著者の任務は終わりだと思い辞任して帰国しようとしたら、なんと正式に軍に招集されてしまい、アムール州政府を監視することになってしまった。第一次世界大戦も終結し、国内ではコメ騒動なども起き、初めての政党内閣である原敬内閣となっていた。日本のシベリア出兵はパッしなかった。アムール州の独立は不可能となってきて著者は辞任して帰ることになったら、またまた、ブラゴヴェシチェンスクで諜報をやれと細かい指示と共に命令されてしまった。しかし、著者はその命令に従うことはせずにウラジオストクからハルピンと昔を懐かしむようにして錦州の自分の会社に辿り着いたところ、そこは荒れていて従業員はだらしなく、そこに妻からの3通の手紙があった。義父が亡くなり、妻の体調は悪く、郵便局は官に召し上げとなりそうなところを著者が出征しているとして何とか接収を免れているとか大変なことになっている。そして、肝心の会社の状態は事業に失敗して莫大な負債を抱えている状況が分かり愕然とする著者。世界は大戦後の不況で大変なことになっており著者の小さな会社など、その存続は不可能だった。失意の中帰国したが、待っていたものは大事な郵便局が国へ召し上げと、その局長は著者ではなく他人が決まっているとのこと。大陸での負債を清算するために再び大陸へと意気努力するが成果なく失意の中帰国。日本では細々と生計を立てることに、そんな中95歳の母が亡くなるところでこの物語も終了となっている。私の読書記録索引はこちらをクリック。
2024.01.01
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