GOlaW(裏口)

2005/06/30
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「―――今は、生きてるってことが嬉しくって、走ってる」
 レースに刻み付けた、己の死生観。
 それが僅かな期間に作りかえられていく。

 新しい死生観、新しい矜持。そのために走る―――。


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 …お、オフロード転向ですかっ!?
 すっかり油断していましたよ。これまでの木村君のドラマのパターンなら「勝つだろうな、やっぱり」と思っていましたから。
(…“某ドラマの『タイガーマ○ク』な主人公が頭から離れなかった”というのも、『勝つ』と信じていた理由の一つ)

 次郎は井原満にはなりませんでしたか…(←いい加減、そこから離れろFF中毒者)。

 でも我に返って考えてみれば。
「どんなに無様でかっこ悪くても走り続ける、それがお前じゃないのか」
 その言葉が次郎の本質なんですよね。

 ゴール寸前で車がクラッシュ、たとえ車を押して入ったとしても最下位。
 以前の次郎なら『んな、かっこ悪いことするなら、死んだ方がましだ』と思うかもしれません。


 子供達だって次郎と知り合って日が浅く、なおかつブラウン管の向こうでそれをみていたなら、『ダサい』と切り捨てていたかもしれません。

 でも次郎はいつ爆発するか分からない車を押してゴールしました(だから後で消防車が伴走していたわけです)。
 死ぬことの恐怖も抱えて、素顔を晒して、声を荒げて。
 それはレースに、チームに対するレーサーとしての責任を背負っているからです。

 その姿は自分が父に対してなりたくないと言っていた『大人』そのものの姿でした。

 だけどそれは本当にかっこ悪いのでしょうか?
 もし本当にかっこ悪いのなら、子供達は伴走なんてしなかったでしょう。

 それは子供達が焦ってなろうとしていた『大人』の姿とはまた違ったはずです。
 それは傷つき、危険を伴い、かっこ悪く、重いものを背負ってしんどい。
 そして『夢』さえも砕け散り、全てを失った姿なのですから。
 でもそれを観れたことを、『負けてよかった』と言い切るのです。



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 痛み、というのは常に、無意識の合間を縫って割り込みます。
 そして、それが結びついた記憶を呼び起こします。
 それまで一瞬たりとも考えないようにしていた『クラッシュの恐怖』が、痛みとともに何度もぶり返すようになるのです。

 それはレーサーとして、あってはならない『敗北』の幻視です。

 そして、『死』を連想させるものです。


 そんな彼にとって、『死の恐怖』は絶大でありました。

 次郎が朋美に抱きついたのも、“指の痛み”よりも確かな感触で、『勝利』のビジョンと安堵の感情を呼び起こしたかったからでしょう。
 …朋美、気づいてあげてよ、それくらい(苦笑)。

 まあ、朋美が気づかなかったのは、それだけ彼女が“レースという価値観”からかけ離れた人間だったからかもしれませんね。
 そしてそのかけ離れた部分が、レース後の彼を救うんですから。

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 朋美は“レース”に対して全く知識も無く、その価値観にもあまり実感がありません。
 だからこそ、強く『次郎は勝った』と言い切れたんです。

 次郎は『全てを失った』と燃え尽きてしまいます。
 彼の中には全く何も残ってはおらず、朋美の言葉も最初は素通りします。
 ですがいつしか朋美の強い言葉が、次郎に呼びかけます。何も残らぬ中に、朋美ごとその言葉を受け入れようと抱きしめるんです。
 せめて、そこから立ち上がるために。

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 子供達は次郎の絶望の理由を飲み込むのに時間が掛かりました。
 そして『約束』を破る嵌めになったことも、彼の絶望も、それらを“共感”し、全て“受容”するのです。

 “拒絶”しか知らなかった子供達は、風の丘ホームで“受容”を学び取ったのです。

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「子供達だけでサーキットは不安です。…保育士として」
 元一郎、恋敵に塩を送ってどーするっ(笑)。

「骨拾ってやってよ」
 …その言い回しはあまりに不吉過ぎます(←待てっ)。

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 父親と次郎の、レースの日の朝の会話も印象的でした。
 父親の気持ちを受け取った次郎。そして次郎が変わったことを知り、『風の丘ホーム』が無力ではなかったことを知った父親。

 父親は次郎との気持ちをようやく受け入れ、そして絆として、園を守ることを決めたんですね。

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 キャスト・スタッフの皆様、お疲れ様でした。
 『ださく、かっこ悪い』次郎を貫き通した英断と努力に拍手します。

 そして、ダサくかっこ悪い次郎の奥の、『これまでとは全く質の異なるカッコよさ』とともに演じた木村君が観れて嬉しかったです。
 最終回、レース当日の朝『弱気で、素直で、敗北と死に怯えながらも、迷いの無い少年のような表情』も、ここ数年では観れなかった表情だと思っています。それが観れたのが本当に嬉しかったです。

 素敵な作品をありがとうございました。

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「いつか返してくれればいい」
 その言葉が、全てをなくしたはずの次郎の居場所を許容してくれた。
 けじめをつけることを知り、大人になったはずの次郎への皮肉な、けれど優しい言葉。

 それがこれからも、次郎と車を結び付けていく。





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Last updated  2005/06/30 09:58:52 PM
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