GOlaW(裏口)

2010/08/06
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「レゴリスってどんな意味?」
「月の砂」
 その名前にこめた願いも、名づけたときの気持ちも遠く。
 その違和感に彼は戸惑う。――自分は、そんなことを思っていたのか?


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◆ インド。

 その単語に盛大に噴いた人はいるのでしょうか。
 脚本スタッフが仕掛けたネタに気づいてしまった、数少ない人間がここにいます。
 今回の小ネタは、直前の『ホテル』という舞台から仕込みが始まっているのです。


 昔、『ブラックビスケッツ』の解散はとあるホテルで始まりました。
 その夕食で解散が決定、そのまま南々見狂也(南原清隆さん)とケディはそのホテルに泊まった(という番組内の設定だった)のでした。その夜、南々見の父親にして南々見グループの前社長が枕元に立ち、インドに行けと示唆した……というシーンがあったのです。
 その後、南々見とケディがインドで2本の映画を撮ったのは、『ウッチャンナンチャンのウリナリ』を見ていた人ならご存知のとおりです。

「……見事にエピソードをなぞり過ぎ!」
 このスタッフのネタ好きぶりには噴きました。どの視聴者層を狙って仕込んだんですか(ツッコミ)。


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◆ バイリンガル・フェチによる今回のツボ

 もうひとつの個人的なツボは『風見がシュウメイにレストランでささやく』シーン。
 真実は違うから、と聞かれても困らないように冗談めかして中国語でささやくところがいいんですよね。
 毎回のことですが、唸っちゃいました。

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◆ 大貫の誇り、柚月の誇り

 今回の見所のひとつといえば、柚月の成長でしょう。
 『家族の誇り』、『個人の誇り』。それを分けて考えながらも、その両立を目指そうとする彼女がかっこ悪いわけが無い!(きっぱり)


>『私の父親なんだから』
 自分の父親だから、誇れる存在でいてほしい。
 相手が汚いからと同じ所まで堕ちるのではなく、自らの誇りを持って正々堂々としてほしい。
 父親への深い想いと誇りがこもった言葉と表情が本当に素敵で、同性ながら思わず惚れてしまいました。




 柚月は父親の過ちについて、きちんと葉月にフォローをいれます。
 それが例え、自分の気持ちを傷つけ、恋敵に塩を送るような行動になってしまったとしても。
 でも、父親の代わりに謝罪したりはしません。父親と自分の立場に、よい意味で境界を引いてるから。謝るべきなのは自分ではないとわかってるから。
 その態度が、観ていてどこか心地よかったです。


 彼女は家族に誇りを持ち、でもそれだけでは自分に足りないとようやく自覚しました。

 その足りない部分を補おう、そう思えるだけ彼女はとても強いです。
 自分の欠点や足りないものに向き合うのは、とても辛くて、心の体力を消費するのに。でも彼女は一人で向き合い、立ち向かおうとしていました。その姿は痛々しいけれど、でも凛々しいと私は思ったのです。


 うん、これからの柚月を全力で応援したい!

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◆ 真絵美の気持ち

 友人を応援するために、ずっと封印している『好きだ』という想い。
 それは風見によってレストランに繰り出したときに、激しい傷みによって噴出しました。彼女は痛みをこらえるために、悲鳴のように毒を放ち続け、そして逃げ出したのです。


 友人の前では完全に自制してしまうが故に、その傷はどんどん深くなり。
 そしてその痛みに耐えられずに――『仕事をやめる』と言いだしてしまうのですね。

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◆ 風見の真絵美への感情

>『勝ちたい』
 その願いだけで、彼は耐え忍び、ずっと復讐の牙を研いでいました。

 真絵美に近づいたのも、彼女が葉月のよき理解者であるから。
 そして彼女の中で葉月の存在が大きいと気づいたからこそ、彼の執念は燃え上がったのです。彼女の心を奪うことが、葉月に対する自分の優位を証明することになると思ったから。
 だから風見の真絵美への想いは、純粋な恋愛感情ではないのでしょう。


 きっと、風見が真絵美を葉月とシュウメイのデート現場に連れ出したのも、作為的なものだったのかもしれません。
『自分は葉月社長、あなたに負けていない』 
と胸を張るためだったのか。
『真絵美さん、葉月社長を諦めなよ』
とダメ押しするためだったのか。
 あるいは両方の意味があったのかもしれませんね。

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◆ 風見の復讐心が揺らぐとき

 風見はとうとう、葉月への復讐への切り札を見出します。
 『インド進出』、その無謀ともいえる暴走から切り崩せると暗躍を始めるのです。
 ……かつてシュウメイをいさめた、その言葉を証明するように。

 しかし、彼がその手札を切る前に、『油圧ポンプ事故』によって葉月は自滅を始めるのです。


 風見は、復讐のためにどれだけの時間をかけたのでしょうか。
 その強大な壁に、どれだけ心を殺してきたのか。あせる気持ちに鍵をかけてきたのでしょうか。
 そしていよいよ復讐を始めようと――その復讐の愉悦に身をゆだねようとした矢先に、勝手に崩れてしまったのです。


 風見の中に荒れ狂っていると思われるのは、おそらくは『憤り』。
 自分が必死になって倒そうとしてきた、その労力と時間はどこへ行くのかという、理不尽な怒り。
 そしてそれと同じくらい湧き上がるのは『虚しさ』。
 自滅する哀れで小さな存在、それを超えたところで、何も彼を満たすものは無いのですから。


 ラストシーンの風見の、複雑な表情がとても印象的です。 

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◆ 手放したくない

 葉月はシュウメイに出会って変わったのでしょうか?
 彼は確かにシュウメイに執着するようになりました。彼女に癒され、彼女を求めるようになりました。

 けれど彼は彼女に執着し、彼女のために余裕をなくすようになり。
 そして今回、初めてシュウメイのために凶暴性を示すようになりました。

 そしてシュウメイが求める『仕事に対する要望』に妥協することは、最後まで決して飲みません。


 彼は『仕事』という『存在意義(レゾンテール)』と、シュウメイの板ばさみになります。
 ですが真絵美との会話を通して、自分の気持ちと向き合います。そして最後の苦肉の策を放つ決意をするのです。
>「結婚」
 つまり、『仕事』以外のすべてを差し出すと。


 でもその選択では、シュウメイを救うことなどできないとわかっているのに。

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◆ シュウメイの惑い

 シュウメイは葉月が垣間見せた凶暴性に対し、戸惑うと同時に必死に考えます。
 『工場という社会』とまったく違う『企業』、『一個人としての生活』から突然放り込まれた『社会から注目される立場』。知らないことだらけの世界を、わずかな知識と想像、偏った情報をつなぎ合わせてある結論を出すのです。
 ……自分の存在が、彼を苦しめているのだと。

 『工場を守るため』には葉月をつなぎ止めないといけない。
 『葉月を守るため』には葉月から離れなければならない。

 彼女もまた、二律背反する思いの板ばさみになりながらあがいているのです。



 知り合いにシュウメイのことを聞く機会があったのですが、知り合いは『ストーカーみたいで気持ち悪い』とばっさり。
 シュウメイ好きの自分はその発言にこっそり凹んだのはいうまでもなく。
 でもその理由が『愛情とは違う気持ちが入り混じって、理解できない』という理由ならば理解できます。

 シュウメイは純愛とは違う感情――葉月の呪縛とも言うべきもの――にまだ、縛られているのでしょう。
 この歪みからはやく解き放ってあげたいものです。

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◆ 家具だけは壊せなくて

 葉月は自滅しました、自分のやり方に従うことによって。

『自分の名前をすべての人に覚えていてほしい。
 そのためにはもっと確固たる立場と、常に話題になることを』
 その願望が果たせないと知ったとき、彼は荒れ狂いそうになりました。

 ですが、寸前で『家具を壊す』のを止めたのです。
 その止めるだけの理性を生んだのは、やはり『REGOLITH』という名前にこめた想いだったのではないでしょうか。
 部下に家具屋としての理想を語った時の思いは、決して消えていないと私は思いました。


 彼がこの絶望から這い上がるとしたら、その家具への想いしかないと思います。

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 零れていく。
 これまで彼が必死に積み上げていたものが。
 彼のレゾンテールとも言うべきものが。

 その事実を必死に否定し、自分を保とうとしながらも、彼は不吉な予感に体が震えるのをとめることはできなかった。






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Last updated  2010/08/06 09:21:22 AM
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