GOlaW(裏口)

2011/10/10
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 ということで遅ればせながら『ブルドクター』見終わりました!
 『法医学教室=事件物』という思い込みがあったのですが、今回はむしろホームドラマや仕事や恋愛をメインにミステリ風味を加えた感じですね。その着眼点が新鮮に感じました。
 無論、かなり欲張った感じで突っ込んでほしい部分も多かったかな。でも後味がさっぱりしていたおかげで気楽に見ることができました。
 また、公式HPの『法医学の基礎知識』のコラムと合わせて見ると、また違った感慨もあります。まだ除いていらっしゃらない方は是非、お勧めです。

 それでまず最初に。ここから先のレビューは『後出しじゃんけん』的な部分があります。あれだけの要素を放り込んでまとめたスタッフの皆さんの努力はすごいものですし、それを否定するものでは無い事を最初に申し上げます。

 結論から言えば、もう少し、キャラクターの背景に関わるエピソードを作って、その揺れる心情を丁寧に描いた方がよかったかな? やりたい事が沢山ありすぎて拾いきれず、背景に関わる部分を説明台詞と役者の力量に頼ってしまった感じがしました。
 いや、その分だけ『脇役好き』の自分は役者さんの演技に十分に見とれることができちゃったので、得したかもしれませんが(一SMAPファンの本音)。

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★ スティグマを抱えたブルドーザー

 私も自分のことを『猪女』と呼称することはありますが(苦笑)、さすがに大達先生には負けますね。 

 ドラマの主軸は彼女の暴走。ただ、彼女は正義感や倫理観で暴走しているのではなく、実際には『心の欠落』を埋めるための暴走だった訳なんです。
 大塚英二さんが著書で『スティグマ』という言葉を使っていますが、「欠落や異端部分といった傷を持つがゆえに、代償としての力を持つ」というタイプのキャラクターなんですね。
 暴走系の主人公をスーパーマン的に描かないところは、すごく良かったと思います。

 残念なのはその『欠落』に関する説明が台詞だけということ。
 第七話が一番いい機会だったのですし、『なぜ家庭を崩壊させるまでの欠落を抱えているか』ということを、時間を割いて描写すべきだったのでは。あまりに珠美に迷いが無かったために異常性だけしか浮かび上がらなかったのが残念。そこで知佳にもっと踏み込ませて欲しかったと思います。
 高弘をきっかけに『自分が苦しんでいるのと同じように、医療ミスを犯してしまったかもしれない医師が苦しんでいる』という点に気付かせて葛藤させれば、もっと彼女の『欠落』を印象付けたうえで共感も呼べたのではと思います。

 できるなら『欠落』を本当の『信念』に昇華し、『盲進』を『前進』に変えるような、そんな描写があればもっと良かったでしょうか。
 『欠落』を免罪符に仕事で暴走するのは、『弱者の理論で倫理を捻じ曲げる』ぐらいの違和感があるので。

 また最終回直前に家庭を省みる機会があったのは良かったですが、その直後に家庭を壊すようなことをするのは止めようとも思ったり(滝汗)。

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◆ 揺れる知佳

 非常に脆くて、でもいきなり方向転換した感じの知佳。でも根底にあるのは『一人一人を救わなきゃ』という部分だったのでしょうか。


 『いきなり名倉先生の心に踏み込む』とまで言われた彼女ですから、常識があるだけで根は暴走マシンなのでしょうね。
 だからこそ彼女には珠美の心の欠落に踏み込んで欲しかったし、名倉先生が虚勢を張っていることに早い段階で気付いて踏み込んで欲しかったかな。そして『ほんとはそんな人じゃない、守らなきゃ』という風に動いた方が、ラストの『私が守る』という発言に説得力が出た気がします。
 ただそれをすると最後のドンデン返しがはぐらかされちゃうので、それで泣く泣くカットした気がします。

 上司に嫌味を言われたり、死にかけても無視されたり、大変だったけれど。
 それでも彼女は信念を見据えることでしっかりと今の刑事課に居場所を作ったのですね。

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 最後のドンデン返しの為に一番描写的に損をしてたかもしれないのが彼ですね。
 最後の告白につなげる伏線も張ってはあったのですが、もう少しあっても良かったかな。
 理想は彼の過去に類似した事件を解決するエピソードが欲しかったのですが、せめて第二話ラストに『母親というものに対する疑心暗鬼』を入れておくと良かったと思います。
 後は『縄文寺の誘いを受けたふりをしていたこと』から、「彼を信用してなどいなかった。なぜなら最初から誰も信じてないから」というように、電話のシーンの前に捻りを入れておくと良かったかも。

 でも彼の設定そのものは魅力的だったと思います。主人公とはまた違う『欠落』を抱えていたという点において、鏡のような存在だったのかもしれませんね。
 自分を信じられず、故に周りへの協調性をひたすらに求める彼。そのあたりを知佳を使ってもっと描写してくれると深みが増した気がします。
 第二話ラストや気道確保のシーンでの優しさと、普段の冷たさを感じさせる部分と。そのギャップが非常に魅力的だったと思います。

 ちなみに余談ですが、ICレコーダーに録音する先生に、某ゲルマン系弁護士さんの日記を思い出しました。

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 私が『あれ、こんな風にしたら良かったのでは?』なんて思えたのは、題材やキャラクターそのものの造詣が良かったからではないでしょうか。
 それだけ真剣に見れるだけの魅力をこのドラマは持っていたのだと、私は思っています。

 気軽に見れて、視聴後も気持ちよく、それでいてツッコミも含めて真剣に見れたすごくいいドラマでした。
 スタッフの皆さん、キャストの皆さん、お疲れ様でした。また次のドラマも楽しみにしていますね!

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 されどその欠落こそが、力となる。そんな物語。





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Last updated  2011/10/10 09:41:15 PM
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