『頭ぐしゃぐしゃ』の彼方に・・・

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chang-wei

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August 13, 2006
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カテゴリ: こころについて
先日、 映画「ゆれる」
個人的には、微妙に揺れ動く心もようをテーマにしたこういう映画は大好きだ。
ちょっと直截的ではないように聞こえるかもしれないけど、なんとはなしに、学校や職場の「いじめ問題」にも通じる心の変容を描いた作品にも思えた。

母親の命日に故郷へ戻った売れっ子カメラマンが、自分の兄と、兄の稼業であるガソリンスタンドへ働きに来ている若い女性を伴って、近くの渓流へドライブに行く。
そこにあった古い吊り橋を渡る女性と、彼女について橋を渡ろうとする兄。
カメラマンははるか先に同じ吊り橋を渡って、少し離れた場所にいた。

そこで、女性が吊り橋から落ちて死んでしまったのだ。
兄は女性を橋から突き落としたとして、殺人容疑で起訴される。


以下、ネタバレ。
映画が進むにつれ明らかとなるのだが、実際のところ、この兄貴というのは、自他共に認める根っからの真面目人間で正直者で通っており、女性経験にも乏しい。裁判がはじまってからも、自らの過失を隠すことを積極的にやろうともしない。
カメラマンの弟が、父方の伯父にあたる弁護士に多額の現金を積んで、裏からなんとか無実の方向にもっていこうとするが、兄自身が乗ってこないのでうまくいかない。

実はこの弟、帰郷の折に出会った、この死んだ女性を、兄に内緒で寝取ってしまったのだ。
「寝取った」というか、30代半ばで独身の兄が、なかなか積極的に職場の同僚であり幼馴染でもあるこの女性に迫っていかないところを、横から掠め取ったような形なのだ。
それがよりにもよって、彼女の死ぬ前夜であった。
弟には、兄に対するそういう後ろめたさもあってか、懸命に兄をかばい、無実を証明しようとする。だがなかなかうまくいかない。

ところが次第に、この兄の誠実な態度は、裁判の流れにも影響を与えていくことになる。
まずは検察。検事がわざと意地悪く、
「あなたは死んだ○○さんにはほかに交際していた男性がいたことを、本当は知っていたのではないか? それで感情的になり彼女を突き落としたのではないか?」
と質問するのに対して、

と、傍聴席に深々と頭を下げる始末。検事は苦りきり、裁判は一瞬被告有利な展開に。

で、次回公判で弟が証人として証言することとなるのだが、公判当日、弟は兄が女性を突き落とした現場をこの目で確かに見たと証言。
兄は最終的に殺人罪となって懲役7年の実刑判決が下る。

公判で弟が証言することとなったとき、伯父である弁護士は彼の被告有利な証言を期待して嬉々とした表情になり、検察に拘束中の兄も明るい表情をみせ、面会に訪れた弟に、自分の釈放後の人生などを語ったりする。

ところがここで弟は困惑するのだ。映画ではっきり説明はされてないが、いろんな葛藤が頭を渦巻いたに違いない。

被害女性の恋人への謝罪にと傍聴席へ頭を下げたのは、自分へのあてつけじゃないのか。
また、その負い目のために自分が兄を庇っていることを、兄は気づいているんじゃないか? という疑念。
そして、これは冒頭で「いじめ問題にも通じる」と書いた動機と思うのだが、いわゆる「勝ち組」の自分が、「負け組」の兄にこれだけ献身的に尽くしていることに対する自己矛盾。

困惑しきった顔の弟に向かって、見透かしたように兄は云う。
「誰に対しても、それが身内であろうと、ハナから人を疑ってかかる、それがお前だ」と。
弟は逆上する。誰のためにここまで金と時間を費やしたと思っていやがるんだ!
ここのところの心の動きというのが、いじめっ子がいじめられっ子とはじめのうち仲良くしてたのに、急に態度を変えていじめに転じる瞬間にさも似たり。

ラストシーンで、兄の勤め先の同僚に諭された弟は、出所した兄を迎えに行き、和解を求めようとする。
兄はにっこり微笑む。ここで映画は終了。和解できたのかは我々の解釈に委ねられる。

自分がこの兄だったら? とふと考える。出所後、弟の和解に果たして応じるだろうか。
正常な感覚だったら、絶対和解なんかしないね。
一所懸命これまでマジメに生きてきて、ちょっと息抜きに好意を抱く女性と行ったドライブで、ちょっとしたことが原因の事故で女性が死んで、それが自分による殺人と疑われ、社会的信頼の高い弟に濡れ衣を着せられて有罪にさせられたのだ。
バカにするのもいい加減にしろ! ってなもんである。

だから自分モードだと、この兄のラストの笑顔は、こういう意味だ。
「おお笑わせてくれるよなあ。あれだけこのオレをコケにして、お前の気まぐれで人生をめちゃくちゃにしておいて、今ごろになって仲直りかよ、おととい来いよ」
けど、そういう過去の恨みつらみも超越した兄弟愛、家族の絆というのもあるのかもしれない(悲しいかな私はまだ体感できてない)し、この兄は聖人君子なのかもしれない。
または本当に女性を殺したのだったりして。

解釈の仕方は、映画を見た人それぞれなのだと思うし、おのおのの感性に導かれた想像こそが、きっと答えなのだろう。
あなたは果たしてどう感じるだろうか(って、水野晴男っぽく問いかけたりなんかしちゃったりして・・・)。

配役は、主演・カメラマンの弟がオダギリジョー、殺人犯にされた兄が香川照之、つり橋から落ちて死んだ女性が真木よう子、兄弟の父親が伊武雅刀、弁護士の伯父が蟹江敬三、検事が木村祐一。





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最終更新日  August 13, 2006 06:44:29 PM
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野鳥大好き @ Re:ちょいと試みに・・・(11/21) あのな…、解ったよん。
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) 野鳥大好きさん >やれやれ…でしたね。あ…
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) setattiさん >私のPCも時々おかしくなる…
野鳥大好き @ Re:やれやれ・・・(11/20) やれやれ…でしたね。あはは、赤ちゃんなん…
setatti @ Re:やれやれ・・・(11/20) 私のPCも時々おかしくなるから困ってるん…

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