毎朝前を歩く高校生の中に、たった一人だけズボンを目一杯ずり下げている奴がいる。
県立の進学校だけに無駄口を叩く者も少なく粛々と学校へ向かう、まあ行儀のいい生徒たちだ。それだけに余計に目立つ。当然一緒に連れ添って歩く相手はいない。
限界まで下げているので非常に歩きにくそうだが、ガニ股で歩くことで何んとかふんばっている。それを誇りに思っているかのように堂々としてみえるが、内心はどうなのだろうか。
一時ずいぶん流行った”ずり下げ”スタイルはほとんど見なくなった。そんな中で、一人だけそれをやり続けることは勇気と根性がいる。
それも真冬の寒い中で殆ど腹が出ているような状態では寒かろうに、彼の心はそれを凌駕している。
何に対する抵抗なのか。
青春の一時期の誰でも通る、大人社会への不信感と、大人への道筋で抱える情緒不安、教師への不信や友達との意識のずれ。そんな中で自分の心を持て余し、そのはけ口に社会の正義に反発して抵抗することは一種の通過儀礼だ。
しかし、たった一人でそれをやり通すことは余ほどの事がない限り出来ない。
いつまで意地を通し続けるのか。彼の存在は学校でも評判になっているのか、それとも見事にシカトされているのか。
いずれにせよ、たった一人でやり続ける彼に”男の一分”を見る思いがする。
「がんばれー」と彼の背中に拍手を送りたくなる。
「日歌」が千首を超えたのを機に、 「游歌」 とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートすることにしました。
★ 「ジグソーパズル」 自作短歌百選
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