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フランツ・ウェルザー=メスト指揮、クリーヴランド管弦楽団によるヴェルディの《レクイエム》のライブ録音を聴く。
筆者はウェルザー=メストとクリーヴランド管の、引き締まった清潔感のある演奏が気に入っており、特に自主レーベルが始まった頃からよく聴いてきた。
この曲には、オペラティックな派手な演出で聴かせるアプローチもあるが、今回の演奏はあくまでも宗教曲という枠組みの中での解釈だ。
独唱陣も、昨今の国際的な声楽事情を反映した多彩な背景を持つ歌手が揃っている。
指揮者の指示によるものだろうが、いずれもオペラティックな誇張はなく、端正な歌唱に徹している。また、しばしば見られるような独唱者の誰か一人が突出することもなく、全体として非常によく統制されている。
その中では、クウェート生まれのドイツ人であるバスのタレク・ナズミの美声が目立っていた。トルコ系ドイツ人のメゾ・ソプラノのデニズ・ウズンは、メゾにしては声につやがあり、好印象だ。
個人的に注目していたアルメニア系リトアニア人のソプラノのアスミック・グリゴリアンは悪くないものの、圧倒的なパフォーマンスとまではいかなかった。以前の印象ではもう少し明るい声だったように思うが、これは気のせいかもしれない。
メキシコ系アメリカ人のテノールのジョシュア・ゲレーロは太い声の持ち主だが、その分やや暗めで地味な印象がある。もう少し明るい声だったら、さらに魅力的だったのではないかと思わせる。
普通なら混濁しやすい合唱も各声部の分離が良く、冒頭の「キリエ」で合唱が入ってきた瞬間、声部ごとに別々の方向から音が聴こえてきて驚かされた。
この合唱団は、シーズンごとにオーディションを行い、合格した140名あまりのアマチュアによって構成されているそうだ。それにもかかわらず、とてもよく訓練された清潔な音楽を聴かせており、ウェルザー=メストの音楽に相応しい団体だろう。
オーケストラは均整が取れており、フレージングも清潔で申し分ない。
オペラティックでスペクタクルなサウンドを期待する向きも多いと思うが、今回の解釈ではそうした要素を極力排している。
だからこそ、宗教曲としての静謐な気分が味わえるとも言える。
速い曲では速めのテンポと引き締まった表現によって、機敏な動きと推進力が生まれている。オペラティックではないとはいえ、「オッフェルトリウム」ではオペラの重唱ならではの醍醐味を感じることができる。
重唱にありがちな微妙なずれも感じられず、隅々まで統制された仕上がりが実に気持ちよい。
ライブ録音であり、演奏自体もオペラティックな華やかさを抑えているため、サウンドはそれほど華麗ではないが、全体のバランスは良好だ。
あまり前面には出てこないものの、バスドラムだけが妙に大きく、皮の張りまで感じさせるようなサウンドになっているのが不思議な録音だった。
ということで、聴き手を驚かせるような仕掛けこそないものの、優れたアンサンブルと引き締まった表現によって、作品そのものの姿をじっくり味わうには適した演奏だろう。
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