春花の実
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人里離れた峠の茶屋で――。たまに訪れる親しい友人達をつかまえ、「ね、ね、今度の新しい団子の味はどうかな?」(そわそわ…。)と尋ねては「え…。」(ほ、本人目の前ではコメントしづらいな~。)返事に困らせ。あとは…いつ通るのかあてもない旅人のために、ただ黙々とお湯を沸かす日々。そんなことを、毎日繰り返し。気がつけば…私が峠に茶屋を開いてから、もう二年以上の月日が経っていた。話はさかのぼり――それはおよそ一年前のある日。私は友人の一人を訪ねて、都にある彼女の店に足を運んだ。店を開いてからまだ日も浅いというのに、店内それはそれは大にぎわい。しかし、それ以上に驚いたことは…店の面した大通りの広さと、そこを歩く人の多さ。…その日峠の茶屋に帰り、床について目を閉じてからも、その光景は私の頭から離れなかった。そして…あれから月日は流れて。今日、私は峠の茶屋とは別に、都にも新たな店を開くことにした。考えたら無茶な話だ。「峠の茶屋とは違う店にする。」これ以外のことは何にも決めずに、ただ手ぶらのまま都に来てしまったのだから。ま…いいか、失敗しても。その時はすぐに店をたたんで、また峠の茶屋に帰ろう。独り黙々とお湯を沸かす、今までの暮らしに戻るだけの話だ。
2005年03月31日
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