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履かなくなったGパンが沢山あるんだけど、ラグ的な物を十数年前に作ってまだ使える。本当に強い生地だと感心している。体調が少しずつ回復して来て縫物も少しずつなら出来そうなので、ちまちまと刻んで縫ってみようと思う。『「にゃん」の針しごと』さんのデニムの使い方がとても素敵なので、本を買ってみようと思って買い物メモ。【和布作家「にゃん」の針しごと藍古布とデニムで海と空色の袋物】和布作家「にゃん」の針しごと藍古布とデニムで海と空色の袋物 (レディブティックシリーズ) [ 和久亞子 ]
November 2, 2024
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『復讐のトレイル』C.J.ボックス著BLOOD TRAIL 野口百合子=訳 講談社文庫 2014年8月12日発行【中古】復讐のトレイル /講談社/C.J.ボックス(文庫)■あらすじその遺体には頭部がなく、狩られた獲物たちと同じような「処理」が施されていた。まるで狩猟が生き物を面白半分に殺す行為だと世界に訴えるように。ワイオミング州知事からの特命を受けた猟区管理官ジョー・ピケットは、ハンター連続殺人の背後に卑劣な人間たちの深い闇が潜んでいることをつきとめていく。■著者情報 C.J.ボックスワイオミング州で生まれ育つ。牧場労働者、測量技師、フィッシング・ガイド、ミニコミ誌編集者などさまざまな職業を経て旅行マーケティング会社を経営。2001年、猟区管理官ジョー・ピケットを主人公にしたデビュー作『沈黙の森』で絶賛を浴び、主要ミステリー新人賞を独占した。その他の著書に『凍れる森』『神の獲物』『震える山』『裁きの曠野』『フリーファイア』などがある。ワイオミング州シャイアンに家族と在住。■訳者紹介 野口百合子1954年、神奈川県生まれ。東京外国語大学英米語学科卒業。出版社勤務を経て翻訳家に。主な訳書にボックス『裁きの曠野』『フリーファイア』、グルーガー『闇の記憶』『希望の記憶』『血の咆哮』(すべて、講談社)フェイ『ゴッサムの神々』、フリードマン『もう年はとれない』(ともに創元推理文庫)などがある。■感想感想を書こうと思ってあらすじを読むと、アメリカではとても評判が高い事を知った。《デビュー作『沈黙の森』でアンソニー賞、マカヴィティ賞、ガムシュー賞、 バリー賞の各賞の新人賞受賞、エドガー賞 処女長編賞ノミネート。 3作目の『沈黙の森』でPrix Calibre 38 Award(フランスの賞)受賞》おぼろげだけど、『沈黙の森』と『凍れる森』を読んだ記憶がある。内容は憶えていないけど、パッとしない感じが残っている。20年以上前で、楽天ブログで読書感想を始める前に読んだらしくて、ここに残っていなかった。記憶違いかな~とあらすじを読んでみたが、私には面白くなかった記憶しかないんだなー。アンソニー賞マカヴィティ賞バリー賞を受賞でエドガー賞ノミネートなんて期待しない方がおかしいくらいのものなので、すごーく期待して読んでもやーとしたまま、そうだ、焦点が絞り切れないままで終わった気がして。登場人物で誰も好きな人がいなかったからかもしれない。シリーズものを始めから読んでいる方が入り込めたかもしれない。深い森の中での現場や移動が続いて距離感が掴めず、何がどう繋がっているか分からなかったりで、森を俯瞰してみる事が多かった。自然を満喫するには十分な感じ。ミステリ的には絶対ここ危険!が当たったり、これがヒントあれがヒントって思ったのが当たったり、あちこちつなぎ合わせるのは楽しめた。【『沈黙の森』あらすじ・ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット。 気持ちは優しいが、州知事を偶然検挙してしまうような不器用な男。 ある日裏庭で娘と見つけた死体は、かつて彼の銃を奪おうとした密猟者だった。 次いでキャンプ場にも2人の死体が……。2004年8月発行】【『凍れる森』あらすじ・広大なワイオミング州の自然と家族を愛する 猟区管理官ジョー・ピケットはエルクの大量殺戮現場に遭遇。 違法ハンターを追い詰めるも、死体で発見する。 森林局のキャリアウーマンと好戦的なFBI捜査官は、 森でキャンプを張る反政府グループに目を付けるが。 新人賞独占のデビュー作を超えたシリーズ新作。2005年10月発行】―2023年5月読了―
August 21, 2023
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『苦い林檎酒』ピーター・ラヴゼイ著「Rough Cider」1987年9月30日発行山本やよい=訳 早川書房【中古】 苦い林檎酒 / ピーター・ラヴゼイ, 山本 やよい / 早川書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】■あらすじアメリカ娘のアリスがはるばるイギリスへやってきたのは、このわたしが目当てだった。昔、戦時下のリンゴ園で起こったおぞましい殺人事件をめぐる裁判で、少年だったわたしは目撃者として被告に不利な証言をした。それもあって一人の米軍兵士が死刑となったのだが、アリスはその犯人が残した実の娘だったのだ。当時を覚えているわたしから詳細を聞き出し、今は亡き父の無実を証明する気なのだった。 リンゴ園の美しい娘にかかわる摩訶不思議な殺人……本格派の鬼才が第二次大戦下の殺人とその20年後の結末を描く芳醇なヴィンテージ・ミステリ!■感想主人公はセオ(セオドア)・シンクレア、男性、大学講師、31歳。セオの一人称で書かれている。物語りはイギリス、1940年代と20年後の1960年代が舞台となっている。 9歳だったセオは、1943年9月にサマセットに疎開してクリスチャン・ギフォードという小村のギフォード農場に引き取られた。そして農園に出入りしていた米兵たちと親しくなり、デューク・ドノヴァン二等兵とは特に交流が多かった。当時、農場の娘バーバラをしつこく付け回していたと思われるクリフ・モートンの頭蓋骨が農場で作られていたリンゴ酒の中から発見され、農場で働く人たちと交流していた米兵デューク・ドノヴァンが捕まり、絞首刑となった。1945年のドノヴァン殺人事件の公判当時11歳だったセオは証人として裁判に臨み、デュークに不利な証言をした。ドノヴァンと親しかったセオにとっておぞましくも辛い思い出だった。アメリカで暮らしていたアリス・アッシェンフェルターは母を交通事故で亡くし、書類で実の父の存在を初めて知り、父に何があったのか知るためにイギリスにやって来た。 大人になったセオの元にやって来たアリスに振り回され、記憶を繋ぎ合わせ、農場に戻って二人で調べて行く。農場の娘バーバラは43年当時、モートンに襲われた11月30日の二日後自殺を遂げていた。セオは美しくて明るいバーバラとデュークが好きだった。沢山の人達がリンゴ酒造りをしている様子が描かれ、街中で育ったセオに鮮明な記憶をとどめた事がうかがわれる。リンゴの収穫から圧搾機で絞る様子など、イギリスの田舎の農場の暮らしぶりと楽しいやり取りが続く。子ども時代の鮮明な記憶。アリスの強引さとセオの消極性ばかりが気になって、どちらも好きになれなかった。ドタバタがコメディっぽくて大事な心情をごまかしているような感触がした。セオの視点でしか書かれていないので、分かりやすい反面、狭い理解と視覚が面白味を消している感じ。ラヴゼイの仕掛けは納得の内容で人間の思い込みや視界の狭さなどを使った、いつの時代でもどんな人にも有り得るだろう問題だと思った。面白い内容だったけど、登場人物が好きじゃないと読み進めるのが遅くて遅くて時間がかかった。最初アリスの義父アッシェンフィルターはひどい男だと思っていたが最後の方で意外にも情に深い男性なんだと分かり、少し肩入れして読めたのが良かったかな。と言っても本編ではクズ男扱いのままだけど、いや、実際にデュークの妻と結婚した後に逃げ出し、結局サリーの元に帰ったのだよね。セオもアリスも最後まで興味が湧かなかった。――2022年7月2日読了――
August 17, 2023
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『栗色の髪の保安官』P・M・カールスン著―GRAVESTONE― 1994年3月31日発行延原泰子=訳 ハヤカワミステリ【中古】 栗色の髪の保安官 / P.M. カールスン, P.M. Carlson, 延原 泰子 / 早川書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】■あらすじ保安官助手になって五年も経つというのに、いまだにマーティが任されるのは小さな事件ばかり。今回もそうだった。郊外の丘陵で男性の惨殺体を発見したのはマーティだというのに、彼女が命じられたのは八年も前に家出した名家の娘を捜しだすことだった。が、やがてその娘の白骨死体が丘陵近くの洞窟で見つかり、二つの事件は意外な結びつきを見せはじめる。持ち前の勇気と正義感で事件に挑む保安官マーティ、さっそうと登場。■感想 (まとまりのない感想)読みやすくて面白かった。『栗色の髪の保安官』とはずいぶん甘い感覚の題名だなと思って手に取ると、爽やかなカバーに吹き渡る風と伸びやかな自然と緊張感と孤独感が伝わって来たので借りてみた。(原題の「GRAVESTONE」は墓石もしくは墓碑)主人公のマーティ・ホプキンズは栗色の髪の女性の保安官であり、9歳の女の子のママで、夢と憧れを追い求める夫の妻でもある。堅実で真面目で、観察力と洞察力の優れたマーティは生活のために保安官をしているが、とても有能。生活と夫と娘と仕事と自分の間で頑張って働いている様がとても好感が持てた。すぐにマーティが好きになって応援を始めたため、地道な捜査活動も私生活のドタバタも面白く読めた。久々のヒット作品に大喜びしながら読んだ。登場人物もそれぞれに癖があって面白く、人間と生き様が垣間見れて、初P・M・カールスンを大いに楽しんだ。インディアナ州の片田舎の女性保安官ものは初めてだと思う。田舎のものでも、おおよそ刑事が主人公なので保安官ものは珍しい。だから女性保安官は初めてだと思う。マーティの夫ブラッドはニューヨークの放送業界で名を成したくて現実よりも夢の力で突き進むため、マーティがそれに合わせて生きて来た。しかもブラッドは魅力的でカリスマ性があり、マーティはとても愛しているのだった。女性としての気持ちと、保安官としての強い根っこのような生きがいがせめぎ合う所も自然な感情として書いてある。むごたらしい殺人事件や昔の失踪事件に心を砕いて、コツコツと事実を積み上げて行くマーティの様子が良かった。ただ色んな人が怪しくて、なぜ証言を曖昧にしたまま捜査が進むのかちょっと納得が行かなかったけれど。一番謎だったウルフ教授は、魚のエサを撒くように遠いヒントを小出しにするのが、このままこの扱いで宜しいのか?と思ったり、教授の人間性が分かるにつれてニヤリと笑ってしまったり、最後まで振り回されて不思議な人物だった。そしてとても魅力的な人物だった。まるでヨーダや仙人などの達観した人物との謎の掛け合いみたいなやり取りが物語に深みを加えていて、人間を描いている感じがした。ミステリとしても、残忍な死体の背景や北部アメリカの人種差別や家庭内暴力などが浮上して、少しずつ少しずつ事件の糸がほどかれて行くのでとても面白い読み物だった。KKK団についてはある程度知っていると思っていたが、改めて色々知ることが出来て良かった。アメリカは広い国土に様々な人種や人々が暮らすため文化と言っても様々な事を尚知った。29年前の発行だったので、ネットや携帯電話のない世界ですれ違いや情報入手の遅れなどの中、自分の足で歩き廻って人々に会い、走り回って事実を繋いで行く所が面白かった。分厚い本だったけれど文章も分かりやすくサクサク読めたので、続編などを読みたいと思った。P・M・カールスンは女性のミステリ作家で、シスターズ・イン・クライムの会長をつとめた事もあり、アンソニー賞・マカヴィティ賞・アメリカ探偵作家クラブ賞・アガサ賞の候補に幾度も上がった事がある、優秀なミステリ作家だそうだ。だけど翻訳ミステリで出ているのは本書と『真夏日の殺人』だけらしい。充実した作家なのに残念。―2023年7月8日頃読了―
August 8, 2023
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『リバーズ・エンド』上下 ノーラ・ロバーツ著2000年5月1日発行富永和子=訳 扶桑社【中古】 リバーズ・エンド(上) 扶桑社ロマンス/ノーラ・ロバーツ(著者),富永和子(訳者) 【中古】afb【中古】 リバーズ・エンド 下/扶桑社/ノーラ・ロバーツ / ノーラ ロバーツ, Nora Roberts, 富永 和子 / 扶桑社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】■Nora Roberts ノーラ・ロバーツ1981年に『アデリアはいま』でデビュー。一躍ベストセラー作家となる。86年にはアメリカ・ロマンス作家協会初の名誉殿堂入りを果たした。邦訳作品は『モンタナ・スカイ』『サンクチュアリ』『悲劇はクリスマスのあとに』『イリュージョン』はじめ多数。現在、メリーランド州に夫と二人の息子とともに住んでいる。■富永和子東京生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒業。英米文学翻訳家。訳書に、ベリー・オショーネシー『証拠排除』、ダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルド『地底大戦』、ジョアンナ・エルム『ゴシップ』、パトリシア・カーロン『走り去った女』、ロバート・タイン『ノイズ』、ジェローム・アジュル編『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』などがある。■あらすじ〈上〉森のロッジ"リバーズ・エンド"で祖父母と暮らす十二歳のオリヴィアは、屋根裏部屋で忌まわしい過去の記録を見つける。それは、映画スターの両親の記録だった。母を殺したのは、やはり父だったのか……その夏、事件の担当刑事だったブレイディ―家がコテージを訪れたとき、オリヴィアはすべてを理解し、永遠に自分の胸に封印する。やがて大学生になったオリヴィアのもとに、ブレイディの息子ノアが訪ねてくるが、あの初恋の少年は、ジャーナリストとして過去の殺人事件を調査していた……華麗なる愛憎のサスペンス・ドラマ!〈下〉ノンフィクション作家として売れ始めたノアは、八年ぶりに訪れた"リバーズ・エンド"で、さらに美しく成長したオリヴィアに再会する。しかし、かつての恋心が蘇ったふたりの間には、殺人犯の娘と取材者という冷たい溝が横たわっていた。平穏な生活を守るため、彼を拒みつづけるオリヴィアだったが……そんな折り、母を殺した父親サム・タナ―が、二十年の刑期を終えて釈放される。脳腫瘍で余命いくばくもないサムは、事件の真相を解くため、ノアに全面的な協力を申し出る…愛と陰謀が交錯する壮大なミステリー・ロマンス完結編!■感想 ネタバレあり注意初めてのノーラ・ロバーツ作品だった。今情報を読んでロマンス作家だったのかー!どうりで、と納得した。何を納得したかと言うと、恋する感情や描写が懇切丁寧に書いてあり、そんなシーンまであからさまに書いてあるんだー、なんだこれは?と戸惑いながら読んでいたのだった。性描写があまりにも丁寧に書いてあるので、全然エッチな気分にはならずにここでこんな事をじっくり書く意味はあるのだろうか?とか、事実の提示と言うか、探り合わせと言うか、証拠の網羅と言うか、そういう現実の組み合わせの材料が少ないなと思いながら読んでいた。始めの方で、大体の筋や犯人は分かってしまったのだけど、登場人物の心理描写や心の動きや生活の様子がとても丁寧に書いてあったので、それが面白くて読んでいた。オリヴィアの心の防御壁が厚くて堅い理由がしっかり書いてあったし、ノアの原動力も、子供時代からの様々な事が積み重なって成長したのが納得できたし、オリヴィアの祖父母やノアの両親の事も書いてあり、人間に焦点を当てて書いてあるのが良かった。でも推理小説だと思って読んでいたもんで、どうしてこんなにロマンス色がたっぷりなの?まあ気楽に読めていいけども~、と思って感想を書くために眺めていたら、図書館のラベルが隠れていて「扶桑社ロ」まで読んで、ロってロマンスのロ?と今気付いたのだった。私が気付いていなかっただけだったんだねーって事だった。ロマンスは25年振り?くらいかな。その前は記憶がない。森の描写は瑞々しくて雄大でとても美しくて、ワシントン州に行きたくなった。森の大きなロッジでオリヴィアが本当に博物館を作り、森や山々を闊歩して暮らしているようだった。ただ残念な点が2つ。1つ目は真犯人の心理が殆ど分からなかった事。最期の最後に真犯人としては取って付けたように浮上し、それまでは細かい心理描写はまったく書いていなかった。サム・タナ―の話す事もわざと曖昧にしているように感じて、そこだけに焦点を当てようとし過ぎかなと思った。真犯人がなぜジュリーを殺すような心理状態に陥ったのか、どんな環境で育って何を育くんだのか全く書いてない。真犯人の親や故郷の話も出て来ない。真犯人とその状況、これらの問題、これらの殺人事件が起きたバックグラウンドが精査されないで終わってしまった。2つ目はエンディングがただただハッピーエンドで、ぼんやりふわっと終わってしまった事。殺されそうになったり殺したりの恐ろしい事件の後はショックが大きくて、かなり長い間、葛藤や恐怖や苦しみがあるだろうに。それを乗り越える所も少しはないと、それまで丁寧に書いて来たものだけに尻すぼみに感じてしまう。エンディングが尻すぼみだと、全体があやふやになってしまう。2人の若者がそこまで惹かれ合いながらまるで獣の闘いのように噛みつき合うような恋の駆け引きがずっと続いて、心の動きをしつこく書いていたのに、真犯人は本当に付け足しみたいになってしまったと思った。だからミステリ味と現実味が薄く感じるのかな。急いで後始末もそこそこに切り上げたラスト感が残念だった。祖父母と伯母の乗り越え方も書いて欲しかったし、ノアとオリヴィアのその後の現実味が欲しかった。ロマンスにしてはハードだったし、サスペンスにしては甘いやり取りが多くて証拠探しや推理がなかった。自然や家や人の描写はとても良かった。森に行きたいと思った。歩けるようになったら森に行きたい。―20230403読了―
July 4, 2023
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『博士を殺した数式』ノヴァ・ジェイコブス著-The Last Equation of Isaac Severy-原題直訳:「アイザック・セヴェリーの最後の式」高里ひろ=訳 早川書房 2020年6月15日発行博士を殺した数式 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [ ノヴァ・ジェイコブス ]【中古】 博士を殺した数式 / ノヴァ・ジェイコブス, 高里 ひろ / 早川書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】〈著者紹介〉カリフォルニア州ロサンゼルス在住の作家。南カリフォルニア大学の映画芸術学部にて美術学修士号を取得。アカデミーが主宰するニコル脚本フェローシップも受け取る。2018年に発表された本作は、著者デビュー作でありながら、〈ウォールストリート・ジャーナル〉で2018年度のベスト・ミステリーズに選出、2019年度のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞にもノミネートされ、今後の活躍に注目が集まる作家である。■あらすじシアトルで潰れかけの書店を営むヘイゼルのもとに、養祖父のアイザック・セヴリーが自殺したとの知らせが届く。ところがヘイゼル宛ての遺書には、天才数学者であるアイザックが命を狙われていて、極秘の”方程式”をある人物に届けてほしいとの依頼が。理系が苦手なヘイゼルに、なぜ遺書は託されたのか。数学の世界に放り込まれた素人探偵が方程式をめぐる殺人事件に翻弄されつつ、祖父の死の真相に迫る暗号謎解きミステリ。■感想(ネタバレ注意)気楽に読めて面白かった~♪まず表紙からワクワクしたよね。天才養祖父(血縁はなし)から託された手紙を基に、幼い頃や家を出るまでの思い出を辿り、少しずつ謎に迫って行く様子がまあちょっとどうして解けたのかはよく理解できなかったけれど、思い出をヒントに謎解きの視点で人を見たり、思い出を紐解いたり、自分の書店の事で苦しみながら頑張ったヘイゼルには拍手を送りたい。さて、読後一か月半が経って、ちゃんと感想を書こうと思ったら、なんと犯人や細かいディティールが思い出せない(笑)バックにどんな陰謀や利得が絡んでいたかはあちこち思い出して来た。でもヘイゼルがどうやって謎を解いたのか思い出せない(笑)幼い頃に最悪な環境から兄と共に養護施設に行き、里親から虐待され、最悪の中で里親の両親に引き取られてようやく平和が訪れたヘイゼル。30歳で書店オーナーになっている事が凄い。働いていた書店オーナーの遺産を引き受けたんだったかなー。書店経営の苦しみを恋人に打ち明けられず、店の奥で寝泊まりしていたヘイゼル。人を頼るのが上手じゃない。恐怖の対象である里親が刑務所から出所する事を妹に言い出せずに抱え込む兄グレゴリー。グレゴリーは妹よりもっと人を頼れない頑張り屋の刑事。出自や虐待された苦しみを、グレゴリーが全部一人で背負っていたのが気の毒。ヘイゼルはグレゴリーの苦しみを理解できたのだろうか?全体的に粘着性や陰湿さはなくて、湿度の低いカラリとした読後感。数学がふんだんに使われているが、数学に詳しくなくてもなんとなくからくりが分かるように書いてある。BSプレミアムで「リーマン予想」「abc予想」「ポアンカレ予想」等々の数学と数学者の番組を、分からないなりに観ている因数分解・連立方程式・証明問題(あくまでも中学生くらいの)が大好きだった私には数学がらみと言うだけでワクワクしながら読んだ♪ラストの上手く行き過ぎ感があるけど、苦しみ苛まれた分だけヘイゼルには幸せになって欲しいのは共感できる。これが最悪ラストだったら印象が全く違ってしまうから、これで良かったとしておこう。最期にお兄ちゃんについて一言欲しかったなぁ。ああ、事件の最中の精神状態が沢山出て来るのに、終結してからがあっさりしていたために何か腑に落ちていないものがあるのかもしれない。全体的に、虐待されていた主人公と兄の割には強烈な苦しみは残らない、読みやすい話だった。うーん、好きな人がお祖父ちゃんとお兄ちゃんくらいのせいか、他の人の人間性が見えて来ないので、特別な一冊ではなかった。欲を言えば、幼い頃に虐待を受けた人が養祖父母に癒されたとしてもこんなにさっぱりと生きられるのだろうかと感じていて、終わり方にもうひとつ深みが欲しかったかなあ。米で2018年3月に出たばかりの本で、2019年のエドガー賞にノミネートされた若い女性作家なれば、これからが期待大。今の所はこれ一冊しか出ていない。-2022年9月中旬読了-
December 24, 2022
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『切断点』リン・S・ハイタワー著 ―EYESHOT― 小西敦子=訳 講談社文庫2000年1月15日発行【中古】切断点 / リン・S・ハイタワー[著者]リン・S・ハイタワーテネシー州生まれ。1994年発表のデビュー作"Satan's Lambs"がシェイマス賞受賞。次いでシンシナティ警察のタフな女性刑事ソノラ・ブレアを主人公にした『引火点』(原題:FLASH POINT)が、リザ・スコットラインやレジナルド・ヒルの絶賛を浴びベストセラーに。本書は待望のソノラ・シリーズ第2作目にあたる。ケンタッキー州レキシントン在住。[役者]小西敦子(こにしあつこ)熊本県生まれ。出版社勤務を経て、翻訳家に。サラ・デュナント『最上の地』『裁きの地』『愚者の地』『女性翻訳家』、リン・S・ハイタワー『引火点』(以上、講談社文庫)、ジェイムズ・エリソン『不滅の恋 ベートーヴェン』、オースン・S・カード『奇跡の少年』(ともに角川書店)、キャロライン・ナップ『アルコール・ラヴァ―』(早川書房)など翻訳者多数。■あらすじセミナー参加中の人妻が失踪した。夫には「しばらく家へ帰れない」と電話が一度あったきり。宿泊先のホテルの部屋に残された新聞の切り抜きには、法曹界の大立て者である男の写真が……。2人の子供を持つ彼女に何が起こったのか?事件の背後に、邪悪な陰謀を嗅ぎとった女性刑事ソノラの執念の捜査が始まった!■感想シンシナティ警察殺人課の女性刑事ソノラ・ブレアシリーズの2作目。シングルマザーのソノラは14歳の息子と8歳の娘と犬までいるので、家の中は常に混乱している様子。その上時間に振り回される刑事という仕事の混乱。子育てのこまごました大変さと混乱。パートナーのサム・デラローサとの言葉遊び。これが私にはしんどくてくどくて、状況を把握するまで頑張って読んでみた。ふざけたりおちゃらけたりの実のない会話をいっつも二人でやっているんだよね。子育てしながらの刑事がどんなに大変かをそんなに丁寧に書かなくてもいいよと思ってしまった。まあ、子育てして分かり過ぎるほど分かるからうんざりしちゃうのかもしれないけど。後半は犯人が大物過ぎる社会変質者の方のサイコパスで、表と裏の顔を使い分けている様子が納得だった。何が納得かと言うと、私は高校で2人の強烈なサイコパス女子に会って散々振り回されたり利用された者として、周りの大人達も同級生達もみんな騙されているのを見てたんだよね。嘘が全く平気な人がいるなんてその時まで知らなかったし、自分の利益しか考えない人がいるっていう方は私は最近までしっかり理解できていなかったと自覚しているのだった。人の本質なんて自分でさえ騙されちゃうからな~と思っていて、それを色々思い出してはゾッとして読んでいた。このタイプの人は頭が良くて、人が思いつく事の何倍も予防を操作しちゃうよね。ソノラとサムの行動がすごく雑に見えてツッコミしていたんだけど、圧力にも負けず、全く引かずにぐいぐい行くとこは楽しかった。嘘が平気で実力行使をする人が相手の時は本当に何をしても無力に感じるので、ソノラが脅しにもひるまずに行動する所は頼もしかった。行方不明のジュリア・ウインチェルはテネシー州に住んでいてオハイオ州シンシナティで行方不明になり、ケンタッキー州にも関係しているのでグーグル地図を見ながら移動捜査を確認して読んだ。アメリカの広さはピンと来ないので時間軸が混乱してしまうから。それなりに楽しんだので★3つ半かなあ。整合性も表現力もあったので。――20220305頃読了――
July 29, 2022
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『暗闇に抱かれて』カレン・ローズ著You Can't Hide藤田佳澄=訳 早川書房 2008年2月25日発行【中古】 暗闇に抱かれて / カレン・ローズ, 藤田 佳澄 / 早川書房 [文庫]【宅配便出荷】■あらすじ精神科医テスの患者が、次々と謎の自殺を遂げた。捜査にあたる刑事のエイダンは、何者かの手で自殺に追いこまれたと断定する。だが、いったい何の目的で?テスはエイダンに協力し、犯人像のプロファイリングに取り組む。暗闇に姿を隠した犯人を必死に追いかけるうちに、いつしか惹かれ合っていくふたり。やがて判明した犯人の狙いは、テス自身だった………RITA賞受賞の注目作家による濃密なロマンティック・サスペンス■著者紹介ワシントンDC近郊で生まれ育つ。メリーランド大学で化学工学を専攻。オハイオ州シンシナティでメーカーに勤務していたころ、ロマンス小説を書きはじめる。2003年にDon't Tellで作家デビュー。第3作の『誰かに見られている』でRITA賞の2005年最優秀ロマンティック・サスペンス賞に輝き、続く第4作『復讐の瞳』も翌年の最終候補となった。本書は第5作。これまでに長篇7作を発表し、いずれもベストセラーに。現在はフロリダ州で、夫と2人の娘とともに暮らしている。■感想 ネタバレ満載なので注意してね!原題の『You Can't Hide』は「あなたは隠れることができない」という意味で、これは読みながらテスの事と思い、読み終わってからは犯人の事でもあると思った。本文が631ページの分厚い本で、エイダンとテスが反発し合う理由や、惹かれ合って行く様子は丁寧に書いてあって良かったんだけど、RITA賞を知らなかったので、途中からラブシーンが入り濃厚なシーン描写があったりでげんなりした。なんか賞を取っているので、読み応えがあるんだろうと思っちゃったんだよね。調べなかったのよ、RIAT賞って何かを。(リタ賞またはRITA賞は、ロマンスのジャンルのフィクション作品に贈られるアメリカ合衆国の文学賞。主催はアメリカ・ロマンス作家協会。傑出したロマンスの長編及び中編小説を表彰し、その素晴らしさを奨励するために創設された。賞の名は、RWAの初代会長リタ・クレイ・エストラーダにちなむ。)ロマンス小説の奨励賞だったんだねぇ。後半ではイケメン長身で誠実で賢いエイダンが、美人で賢くて迫害にも屈せず頑張るテスを同僚の前で「ハニー」と呼んだりしてげんなりした。ロマンティック・サスペンスを甘く見ていたよね。ロマンティック・サスペンスが好きな人には最高だと思う。後半のこれでもかこれでもかのおぞましい追い込みが、ラブシーンやうきうき心が描写されるとふらついて悲惨な状況が中途半端なものになってしまった。後半はサスペンス要素が曖昧に感じてどうでも良い感じになり、読み終わるのに根気が要った。最初から状況は怖かったんだけどね。あらゆる所に仕込まれた監視カメラや盗聴器。沢山の物証が見つかるのに何の痕跡も見つからない!テスの患者達が操られている。そこに加担した人達もどんどん殺され行く。そもそもの発端の人物を入れたら13人殺された。誰がそれほどテスを憎んでいるのか?何があったというのか?不安と恐怖に翻弄されているのに、13人も殺されて行くのにいちゃいちゃするので、緊張感が抜けて行く。追い詰められた心理状態での行為ならもっと動物的であろうに2人は恋心を楽しんでいる。本当か?訳が分からない状況で周囲の人がどんどん殺されたり襲われたりしているのに、「ハニー」とか言っている場合か?アメリカの「ハニー」状態は日本人には理解できないのか?ちゃんとサスペンスに集中しろよと言いたい。人間の生き様をちゃんと書き込めよと言いたい。そうよ、後半は人物が描かれていない気がする。状況だけが書かれている気がする。だから犯人の犯行の理由が腑に落ちない。あまりの犯行ゆえに、動機が薄い気がする。注!ここからは本当にネタバレです。犯人の数々のおぞましい犯行理由の原因が統合失調症って本当か?私の叔母は長い間統合失調症だけど、何かを隠す事が出来るほど自分も知能も制御出来ない。薬の副作用で細かい事が出来ないし、想像力が欠如している。発症すぐの頃は、常軌を逸していてもおとなしい人だったからか攻撃性は滅多に現われなかった。でも計画性や持続性は無かった。統合失調症の人がこんな事をするものか?厚生労働省によれば「統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。陽性症状の典型は、幻覚と妄想です」とある。ほかの病院の説明には《陽性症状》として●妄想「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、 実際にはないことを強く確信する。●幻覚 周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたり(幻聴)、 ないはずのものが見えたり(幻視)して、 それを現実的な感覚として知覚する。●思考障害 思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。 会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。《陰性症状》として●感情の平板化(感情鈍麻) 喜怒哀楽の表現が乏しくなり、 他者の感情表現に共感することも少なくなる。●思考の貧困 会話で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、 理解できなかったりする。●意欲の欠如 自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまう。 また、いったん始めた行動を続けるのが難しくなる。 自閉(社会的引きこもり) 自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションをとらなくなる。《認知機能障害》として●記憶力の低下 物事を覚えるのに時間がかかるようになる。●注意・集中力の低下 目の前の仕事や勉強に集中したり、 考えをまとめたりすることができなくなる。●判断力の低下 物事に優先順位をつけてやるべきことを判断したり、 計画を立てたりすることができなくなる。とある。これらの具体的な症状は、私の伯母に殆ど当てはまる。普段はおとなしいけれど、何かがきっかけで妄想の反応が出る時が年に一度くらいあったくらい。40年前は独り言と、同じ所をぐるぐる歩き廻るのがひどかった。現在、陽性症状は投薬によって穏やかになっている。陰性症状と認知機能障害は60年近く続いている。世間話や感性の話は全くできない。用事の話が出来るだけだ。だから、長年の訪問看護の方々とのやり取りで身に付いたらしい「ご苦労様」「気を付けて」を初めて言われた時はものすごく感動した。伯母のためのあれこれを頑張って良かったと思うくらいに。犯罪白書によれば、精神障害者による犯罪は1位が放火2位が殺人となっている。統合失調症の人が起こした殺人事件を見てみると、妄想型が追い込まれて家族を殺したり、突発的に殺したりするものの、自分の犯行を隠しながら複数の事件を計画的・緻密に行うなど見当たらない。腑に落ちないよねえ。この小説の犯人は反社会性パーソナリティ障害がぴったりだと思うんだけど。MSDマニュアルによれば 『反社会性パーソナリティ障害患者は, 個人的利益や快楽のために違法行為、欺瞞行為、搾取的行為、 無謀な行為を行い、良心の呵責を感じない: 患者は以下のことを行うことがある: 自分の行動を正当化または合理化する (例、敗者は負けるべくして負けたと考える、 自分自身の利益を追及する) 被害者を馬鹿だったまたは無力だったと責める 自分の行動が他者に及ぼす搾取的で有害な影響に関心を示さない 反社会性パーソナリティ障害について、 米国における12カ月間の推定有病率 (旧DSM基準に基づく)は約 0.2~3.3%である。 反社会性パーソナリティ障害は男性の方が女性より多く(6:1)、 強い遺伝要素がある。 反社会性パーソナリティ障害患者は、 器物の破壊、他者への嫌がらせ、 窃盗により他者や法律の軽視を示すことがある。 彼らは自分の欲しいもの(例、金、権力、セックス)を手に入れるために、 人を欺き、利用し、言いくるめ、操作することがある。 患者は偽名を使うことがある。 行動に対する後悔の念がない。 反社会性パーソナリティ障害患者は自分が傷つけた相手や (例、傷つけられて当然である) 世の中のあり方(例、不公平である) を責めることで自分の行動を合理化することがある。 彼らは人のいいなりになるまいとし、 いかなる犠牲を払っても 自分にとって最善と考えることをしようとする。 このような患者は他者に対する共感に欠け、他者の感情、権利、 および苦しみを馬鹿にしたり、それらに無関心であったりする。 反社会性パーソナリティ障害患者は自己評価が高い傾向があり、 非常に独断的、自信家、または傲慢なことがある。 望むものを手に入れるためには、 感じよく、能弁で、流暢に話すことがある。』とある。私は高校で2人この手の女子に出会ってひどい目に合った。このマニュアルの症状にぴったり。どちらも育成環境に問題があり、特に一人は気の毒な環境で育った。多分、小さい頃から虐待を受けて生きるために身に着けた武装状態だったんだと思う。でも嘘に罪悪感がないから態度が一貫している。明るくて陽気でおしゃべり上手だった。だからみんな騙されている事に気付いてもいなかった。私は超お人よしの天然、幼いメルヘン女子だったので、油断して私には裏の顔もいっぱい見せてた。でも私の話は誰も信じなかった。テスは精神科医なのに、何も気付かないはずはないと思う。十代から一緒に暮らしていたのなら小さな棘が沢山あって、精神科医になるために勉強したり、現場での差し迫った経験とかで少しずつ疑問が積み上げられて行くのじゃないかと思う。エイミーの異常性に気付かない訳がないと思う。気付かない理由として、テスは自分に関係する事はとても天然と言う設定だけどいやいや、それにしてもである。しかも事件後にはすぐにさらりと立ち直っている。それまではトラウマでエレベータ―に乗れないくらいだったのに。その辺のテスの状態は丁寧に書いてあった。だけど家族で親友だったエイミーがやった事のひどさを全く感じさせない終わり方で、仕事を辞めて、何年か隠れるくらいに苦しむだろうにと思うくらいに悲惨な目に合ったのに、事件後の駆け足状態も納得行かないので、50点くらいかな。ロマンス部分を差し引いてもプロットに無理があった気がする。途中で誰かが何かに気付くだろうし、いくら頭が良くて狡猾だとしても、人を沢山利用している分だけほころびも多いはずだ。それに何も13人も殺す事はなかろうに。話を盛り上げるために状況を追いこんだ、って事なんだろうけど……。13人も殺すほどの説得力がなかった。読者の視点をエイミーに集めないためか、エイミーの話があまりなかった。だから父親殺しをするほどの理由が見つからない。生まれつきの脳機能障害だったのか、お産で脳機能を痛めたのか、遺伝性なのか。父親の虐待があったのか。何も書かれていない。私が読み取れなかったのかな?すごく時間をかけて読んだのにラストの甘さにガッカリだったので、カレン・ローズの名前を憶えておいてうっかり読まないように気を付けよう。私には合わなかったので。ー2022年5月22日頃読了ー
June 1, 2022
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『血の咆哮』THUNDER BAYウィリアム・K・クルーガー著野口百合子=訳 講談社文庫【中古】血の咆哮 / KruegerWilliam Kent■あらすじまだ見ぬ息子を捜してほしい――老まじない師がコークに語ったのは70年以上前の驚愕の物語。農場からの脱走、差別的な白人との仕事、初めての恋。捜し出した息子は大企業を作り上げた伝説の人物だった。家族を思い友を敬う男たちの清貧さと強欲な人間たちの陰謀。クルーガー作品ベスト1の呼び声高い傑作!★サンダーベイは、 カナダ、オンタリオ州北部で2番目の規模を持つ 人口10万9,016人の都市。 スペリオル湖(五大湖の一番上流・西北)の西北部の街。 ウィスコンシン州の東北隣りあたり。 アイアン湖からサンダー・ベイまでは1000キロくらい!!! コークは2往復している。 すごいタフだよねアメリカ人。■感想オジブワ族の血を持つ、元警察官コーク・オコナー・シリーズ7作目。コークが住むのは、ミネソタ州アイアン湖畔の町オーロラ。州都ミネアポリスの西南部・左下にある。オジブワ族の老まじない師ヘンリー・メルーの物語が深々と心に降り積もり、いつまでも読んでいたかった。メルーの話が終わるのが残念だった。扉後ろのあらすじに「清貧」と言う言葉が出て来る理由が読み進めているうちに納得したのだった。これまでもメルーに惹かれたけれども、メルーが語る物語は、他に比べられない美しく瑞々しい話だった。生きる目的、理由、生き様、方向。真っ直ぐに生きて来たメルーの誠実さ、自然と己との関係の深さ、打算のない美しさ。そうなのよ、美しい人なのよ。だからメルーの話を読んでいると心地良くて心地良くて、自分の心までも澄んで透明になったような気になる。メルーはオコナーの名前を口にする時、いつも「コーコラン・オコナー」とフルネームで呼ぶんだけど、それも深々と積もって行くんだよね。オコナーの全てに呼び掛けているような感じがして、自分も人も大切に接しているのが伝わって来て、私まで大事にしてもらっているような気がして来る。私は自分を大切にする事が上手く出来ないのだけど、メルーを見ているとこれが自分を大切にするって事じゃないのか?と、分かったような気がして来る。出来るか出来ないかは別にして、とても大切な事を知った気がして心地良い。自分を取り囲む自然を大切にして自分の周りの人々を大切にして自分を大切にする。私はこの時代で生きにくいと感じ続けて来たけれど、何が大切で何を大事にしたいのかが世の中の多くの人と違うからだと改めて思ったのだった。読んでいる間、呼吸が楽になった。人の芯に強く触れるお話だった。メルーの話の感想しか書いていないね(笑)サスペンスとしての感想は★3、5くらいだけど、メルーの話が加わると何倍にも膨らみ、全体としては娘の話に少々違和感を感じて‐0、5で★4、5だった。でもメルーの話が良くて中古で買ってしまった(;^ω^)――20220125ごろ読了――訳者あとがきに分かりやすい説明が載せてあるので、抜粋しときます。――――――――――――――――――――家族のためにミネソタ州タマラック群保安官の職を辞し、私立探偵のライセンスをとったばかりのコーク・オコナーは、心臓の病で倒れたオジブワ族の老まじない師メルーから奇妙な依頼を受ける。72年前にもうけて、一度も会ったことのない息子を探してほしいというのだ。手がかりは、年齢、母親の名前、彼女の写真の入った金時計、そしてカナダのオンタリオ州にいるらしいということだけだった。コークは、メルーの説明に合致するヘンリー・ウェリントンという男を見つけるが、彼は父親の鉱山会社をカナダ有数の大企業に育てあげた伝説の人物であり、いまは謎めいた隠遁生活を送っていた。母親はすでに亡くなっていた。いったいどんな事情で、メルーは婚外子の父親になったのだろうか?なぜ、いまになって息子を探そうとするのだろうか?一方、コークの家庭にも問題が起きていた。長女ジェニーの作家志望の恋人が、名門大学への進学を控えた彼女を連れてパリへ行きたいと言いだしたのだ。自分も父親として悩みながら、コークはメルーの父親としての願いをかなえるためにウェリントンが隠遁生活を送るカナダの小さな島に向かうが、そこにはメルーの過去から紡ぎだされた奥深い陰謀と罠が待っていた。――――――――――――――――――――2008年 アンソニー賞長篇賞ノミネート、ディリス賞受賞。ディリス賞とはアメリカ独立系ミステリー専門書店協会の"本屋大賞"(Independent Mystery Booksellers Association、以下略称:IMBA)によって1992年から毎年贈られる賞。その年に書店が「最も楽しんで売ることができた」推理小説に贈られる。IMBAは、主にミステリを売る小売書店のための組織である。アメリカには独立系ミステリー専門書店なるものが存在するんだね。すごいなぁ。
April 23, 2022
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『闇に浮かぶ牛』P・J・トレイシー著―DEAD RUN-ミネアポリス警察署殺人課シリーズ中谷ハルナ=訳 集英社文庫 2008年5月25日【中古】【古本】闇に浮かぶ牛 集英社 P.J.トレイシー/著 中谷ハルナ/訳【文庫 日本文学 集英社文庫】■P・J・トレイシー母パトリシア・J・ラングトンと、娘トレイシー・ランブレクトの母娘チームのペンネーム。03年『Monkeewench』でデビューし、バリー賞、アンソニー賞、カムシュー賞、ミネソタ文学賞の新人賞を受賞、一躍売れっ子作家の仲間入り。現在、パトリシアはミネソタに、トレイシーはカリフォルニアに住み、好調な執筆コラボレーションを続けている。(どちらも大変な美人でそっくりだ)★ミネアポリスはミネソタ州の州都■あらすじ異様な静けさに包まれた町に迷い込んだ3人の女たち――グレースとアニーは天才サイバー集団「モンキーレンチ」メンバー、シャロンはFBI心理捜査官――は、そこで恐ろしい事実に気づく。携帯電話さえ「圏外」のこの場所で、命を狙われることになった3人の、決死の脱走劇が始まった!一方、彼女らを案じる男たちも捜索に出るが……。大人気のミネアポリス警察署殺人課シリーズ!■感想これを読む前に読んだ『血の咆哮』もミネソタ州の話で、五大湖のスペリオル湖西部の街サンダー・ベイに飛び、去年読んだ「氷の闇を越えて」スティーヴ・ハミルトン著もスペリオル湖の東南岸だった。続くねえ、スペリオル湖近辺物語。と言ってもこの『闇に浮かぶ牛』は湖岸には至らないで、スペリオル湖の南のミシガン湖の街、グリーン・ベイに向かっていた3人の女性が道に迷ってフォーコーナーズと言う小さな町(集落くらいの)で脱走劇を経験するんだけど、始まりのフォーコーナーズの出来事を読むとするする読めたので借りたのに、主人公達が出て来たらすごく読みづらい文章になって現在57ページで立ち止まってしまった。アメリカは広くて、土地勘も全くないためグーグルマップを見ながら読んだりしている。ミネアポリスからグリーン・ベイまでは200キロくらいかな。フォーコーナーズと言う地名はすごく沢山ある。どの辺か全く分からないけど、森の多い湧き水の湖がある牧場が出て来る。グリーン・ベイはウィスコンシン州。ウィスコンシン州の州都はワシントン。地理が全くダメなのでお勉強の良い機会です。始めの牧歌的な文学作品みたいな日常が、突然恐ろしい展開になり、脳が拒絶した。受け入れられないままにモンキーレンチの登場となり流れに乗れないぞーになってしまった。ああ、恐ろしや恐ろしや。いきなりの大量殺戮?大事故?に乗り切れず、しかも主人公たちが出て来たら読みにくくなり、途中あちこち拾い読みをしたものの楽しくなくて断念した。――20220210ごろ断念――
April 2, 2022
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『少年時代』上下 ロバート・R・マキャモン著BOY'S LIFE 二宮磬=訳 1999年2月10日 文藝春秋『中古』少年時代〈上〉『中古』少年時代〈下〉 (文春文庫)●1991年度ブラム・ストーカー賞受賞●1992年度世界幻想文学大賞受賞(ブラム・ストーカー賞とは アメリカ合衆国のホラー作家協会が毎年主催する、 その年に出版された最も優れたホラー小説、 ダーク・ファンタジーなどに贈られる賞。 1992年度世界幻想文学大賞受賞とは1975年に創設された、 ファンタジー作品を対象としたアメリカ合衆国の文学賞。 SFやホラーも視野に入れている。 スペキュレイティヴ・フィクションに与えられる賞としては、 ヒューゴー賞・ネビュラ賞に並ぶ三大賞のひとつと見なされている)●訳者紹介1945年静岡県生れ。慶応大学卒。主な訳書に、ジャーキンス『いたって明解な殺人』、マキャモン『少年時代』、キング『ジェラルドのゲーム』、トゥロー『囮弁護士』『無罪』などがある。にのみやけいと言う名前は路線図と辞書を調べてつくられたペンネーム。法学部出身。tj早川書房で『SFマガジン』【世界SF全集】などの編集を担当。のちに集英社系列会社に移り、28歳の時に角川書店に入社して15年間下訳と編集の腕を磨いて翻訳一本の道に入った。■上のあらすじ十二歳のあの頃、世界は魔法に満ちていた―1964年、アメリカ南部の小さな町。そこで暮らす少年コーリーが、ある朝殺人事件を目撃したことから始まる冒険の数々。誰もが経験しながらも、大人になって忘れてしまった少年時代のきらめく日々を、みずみずしいノスタルジーで描く成長小説の傑作。日本冒険小説協会大賞受賞作。■下 あらすじ初恋、けんか、怪獣に幽霊カー。少年時代は毎日が魔法の連続であり、すべてが輝いて見えた。しかし、そんな日々に影を落とす未解決の殺人事件。不思議な力を持つ自転車を駆って、謎に挑戦するコーリーだが、犯人は意外なところに・・・・・?もう一度少年の頃のあの魔法を呼び戻すために読みたい60年代のトム・ソーヤーの物語。■感想(自分用なので終わりの方でネタバレが沢山)いやあ、ずっとワクワクドキドキが止まらない楽しくて不思議で愛情たっぷりの特別な1冊だった。若い頃に出会っていたら、私の最高の親友になったろうなあ。1964年のアメリカ南部アラバマ州、人口1,500人の小さな町ゼファーに住む11歳の少年コーリーは3月の早朝、父の仕事を手伝うためにピックアップトラックに乗っていて事件に遭遇した。この素晴らしい物語は、39歳になったコーリーが1964年の3月から1965年1月までの11歳から12歳になった11か月間の思い出を一人称で綴った形になっている。今から57年前の田舎町ゼファーの様子は序章の部分に書いてあり、抜き出すと「どの家にもテレビがあるわけではなく、ブライト・スター・カフェ、ウールワース、小規模な食糧雑貨店、理髪店。郡内はアルコール禁止で、密造酒業が繁盛していた」とあり、当時の日本の田舎町より 格段に豊かで進んでいる様子が分かる。どの家にも車や電子レンジがあるあたりの電化製品の普及率と生活レベルはだいぶ違うようだ。だけどアメリカの田舎の人々の間にも暖かい思いやりや倫理観があり、世界は今よりずっとおおらかな時代だった。マキャモンがこの作品を書き上げたのが1990年。2021年からは31年前。そうか、1990年が30年も前の事なんだと感慨深い。アメリカも日本もその頃は、レベルの差はあれども善良で誠実で真面目なのが当たり前とされていた時代だったと思う。田舎ではどの家も鍵をかけていなかった。その頃の私はラーを育てていた。宗教も曹洞宗からクリスチャンになって勉強勉強の日々であり、世俗から離れて子供番組しか見ておらず、本も読まず音楽も聴かず、ただただ必死にお母さんをしていた。今思うと近視眼的な追い詰められ方をしていて、多分もう甲状腺癌の影響でホルモン異常になっており体調不良に苦しみ始めた頃だった。動けは疲弊して慢性疲労症候群の状態だったし、泣きながら寝転がっていたなあ。ラーの小学校の入学式には行けなかった。人間の事も健康や病気の事も知らなかった。小さな意識で生きていたなあ。でも一度欺瞞に目覚めてしまったからので、この世界の毒々しい利己主義の牙からいかに身を守るかにかかっている現状では、ゼファーの人々の暮らしは気持ちが暖かく安心感のある物語だった。郷愁が刺激されてとても複雑な気持ちになった。とは言え、ホラーとされている事もあり、不思議な展開が沢山待ち受けている。それも楽しくて、ワクワクしながら読んだ。笑いながら驚く展開が沢山あって、全く飽きずに楽しく読み通せた。殺人事件の他にも沢山の謎や不思議が盛り沢山で、コーリーと一緒に冒険をし、何度も命がけの危険を乗り越えたり、不思議な体験や町内のイベントを楽しんだりした。少年が見ている世界を味わう事が出来て楽しかった。コーリーは素直で正直で誠実で夢想家で友情に篤く、頑張り屋で観察力と洞察量に富んだちょっと控えめで内向的な豊かな心の少年で大好きだ。主人公が好きかどうかで、その本が心に残る位置が変わるよね。第一、コーリーは誠実で暖かい両親に愛されている。愛されている子供がどれほどのびのびと生きて育つのか改めて提示されたように感じた。私が愛されたらどんな生き方をしたのだろうか?伯母が穏やかな環境で育ったら、統合失調症にはならなかったのではないか?父があんなに我慢の人生で早く亡くならずに済んだのではないか?などなど、だいぶ振り返りの多い一冊だった。手元に置いて、時々自由に空を飛んでみたいと思った。誠実で正義感の強いお父さんが殺された人の夢を見続けて心が蝕まれて行く様や、特別な力を持つ黒人のザ・レディとその夫ムーン・マン達との交流。町の理髪店主のおしゃべり。牧師とピアノを弾く老嬢と教会での騒動。暴力でのさばる悪ガキ達。天才野球少年の悲哀。川に棲むオールド・モーゼズの伝説。不思議な自転車ロケットとの出会い。なんと言っても夏休みが始まる前日の親友たちと犬たちで空を飛んだ俯瞰!自分の住む町を俯瞰するなんて。今も想像するだけで心は空を舞いワクワクしてしまう。こんなに心を飛ばしてしまえる小説はなかったのではないかな。最後に、なんでも直してしまうマーカス・ラットフットに会えたのは最高のプレゼントだった!でも一番気になっていたヴァーノンがどこでどうしているのか知りたかったなぁ。他にも伝説のガンマンが出て来たり、キャラの立った面白い人が沢山出て来る。160人以上の登場人物で彩られる話。希望のある終わり方で、何もかも楽しんで面白かった。手元に置いておきたい最高の一冊だった。アマゾンのレビューで楽しい感想を書いていた人がいた。少年の頃に読んで、コーリーと共に時代を経験したそうでそれはそれは素晴らしい少年時代だったろうなぁ。すべての少年少女に読ませてあげたい一冊だった。いやいや大人にも読ませてあげたい最高の一冊だった。そして全ての功績は翻訳者の二宮磬氏にあると思う。愛情深い筆致で暖かい眼差しが感じられる。楽しまれたのだろうとも思う。本全体に豊かな愛情と暖かさと優しさと広い視野が感じられる。英文を日本語に置き換えるのは、想像が付かないくらいに至難の業だと思う。良い翻訳者さんに出会えたのも、この本の力だろうなあ。―2021年11月中頃読了―●世界幻想文学大賞受賞で読んだのは2002年 長編 『アースシーの風』The Other Wind, アーシュラ・K・ル・グイン2006年 長編 『海辺のカフカ』 村上春樹しかなかった。
December 31, 2021
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『嘲笑う闇夜』ビル・プロンジーニ&バリー・N・マルツバーグ著―THE RUNNING OF BEASTS― 内田昌之=訳 文春文庫 2002年5月10日嘲笑う闇夜 文藝春秋 ビル・プロンジ-ニ / 文春文庫【中古】afb■あらすじ田舎町で凶行を重ねる”切り裂き魔”犯人には犯行時の記憶がなく、自分が殺人鬼だと自覚していないという。恐怖に覆われた町で戦慄する男たちがいた――切り裂き魔はおれではないのか?疑心暗鬼と狂喜が爆走する中で展開される、反則ぎりぎり、極限のフーダニット。鬼才コンビの伝説的超絶パルプ・サスペンス、登場。解説・折原一■感想これは1976年に発表された、プロンジーニとマルツバーグの共著を、26年後の2002年にようやく和訳出版されたサイコ・サスペンス。2021年の今からみると45年前の作品だ。45年前にこんな作品があったんだと驚いた。私は大昔にプロンジーニの初期作品を読んだ気がする。最近、過去の事すら消えてしまうので『誘拐』『失踪』『殺意』と言った題名に記憶がある程度なんだなぁ。そして当時私は全く反応しなかったので、以来プロンジーニはスルーしていたのだった。図書館でたまたま見つけた表紙に興味を惹かれて読んでみたら、複数人の視点が次々に出てくる形で、なかなか面白かった。小さな田舎町で女性が次々と殺されて行く中で、ニューヨークからやって来た精神科医が放った「切り裂き魔は自分が犯人だと知らない」説は住民に呪いのように浸み込んで、不安と恐怖を倍増して行く。その様子が、一人一人の視点にじわじわと影響を及ぼしていくのが伝わる。人間は初めて出会った情報が浸透してしまうそうで、最近のコロナ騒動でも何が真実かに関わらず、やたらとテレビで取り上げるものしか伝わっていない怖さを実感しているので人間の危うさを改めて考えた。45年も前に、情報・報道の危険性を認識していたなんてね。(いや、私が長年うかつだっただけだけど)ここに出てくる人たちは不安感に苛まれ自分を信じられなくなって行く、もしくは思い込む、もしくは思い込もうとしている。最後には畳みかけるような疾走感に煽られて、何が起きているのかしっかり読み込みもせずに走り抜けてしまった。人間の不安定な面を強調してあるためか、好きな登場人物はいなかったなぁ。病んでる人ばっかりで、誰もかれもが怪しくて、思い込みだけが書かれているのか事実としての情報なのか分からないものだから、途中からは誰の事も遠い視点で見るようになった。退屈じゃなかったよ。途中までは面白かったよ。後半は不安感が乗り移って怖かったよ。だから著者の勝ち!って感じですかね。人間は弱くて脆いから危ないよって、希望は感じられない読後感だった。もうプロンジーニはいいかなぁ。ほとんどの翻訳ミステリは訳者があとがきを書く。これは作家の折原一氏が解説を書いていて、編集者の意欲が感じられた。(多分、折原一の作品は読んだことがない)表紙も邦題も良かった。―2021年9月18日読了―
November 3, 2021
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『パーソナル』上下 リー・チャイルド著ーPERSONALー 小林宏明=訳 講談社文庫2018年3月5日初版【中古】 パーソナル 上 / リー・チャイルド, 小林 宏明 / 講談社 [文庫]【宅配便出荷】【中古】 パーソナル 下 / リー・チャイルド, 小林 宏明 / 講談社 [文庫]【宅配便出荷】■著者イングランド生まれ。'97年『キリング・フロアー』で作家デビュー。アンソニー賞最優秀処女長編賞を受賞。以後、ジャック・リーチャーを主人公としたシリーズは現在まで23作が刊行されて、いずれもベストセラーを記録。本作は19作目、2014年の作品にあたる。■あらすじ(上)フランス大統領が演説中に狙撃された。未遂に終わったが、1キロ以上の射程距離を狙えるスナイパーはひと握り。かつてリーチャーが逮捕した米軍の元特殊部隊兵士もその一人。捜査に加わったリーチャーは、海を渡り真相を追うと、第二の暗殺事件が――映画化され全世界で大人気のシリーズ、待望の新作登場!(下)潜伏中のスナイパーを探して、ロンドンの暗黒街に足を踏み入れるリーチャーとCIAの才媛ナイス。無法のセルビア人組織や、ギャング集団ラムフォード・ボーイズを相手に、ふたりは命を賭して闘いを挑む。事件を計画した、意外な黒幕の正体は――シリーズ最高潮、一気読み必至のアクション・サスペンス!■感想(上)初めてのリー・チャイルド。リーチャーものの日本語訳では12冊出版されていて本作は11作目。リー・チャイルド原作の映画は2013年『アウトロー』と2016年『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』にトム・クルーズが主演している。主人公のジャック・リーチャーは家も車も持たず、放浪の旅を続ける米軍の元警察捜査官。だから、元上司からの連絡は『アーミー・タイムズ』の退役軍人を探す広告。しかも恩のある元上司と自分の名前が書いてあり、断りようが無い。リーチャーはこうして事件に巻き込まれて行くが、無駄のない会話で淡々と進んで行く。軍上層部とのやり取りも、狙撃犯を絞り込んでいく様子も常に張り詰めた緊張感の中で淡々と進む。これが面白くて、あっという間に読み終わった。(下)上が面白くて下も借りて来た。でも、ロンドンでの危険な潜入がいきなり過ぎて、なかなか入り込めなかった。この辺から、読むスピードが落ちて来た。米英露の軍関係者が入り乱れる中で、リーチャーは揺るがず、ナイスを伴って進んで行く。もちろん19作目とあって、いろんな事情は省いてあるためこれまでの状況を想定しながら読んだのだが、詳しく知らなくても読めてしまうのが凄い。2014年の作品なのでリーチャーは54歳。落ち着いた確実な選択と行動で青年ではないなと思っていたので納得。下での深堀りを期待していたのだが、人間性が見えて来なくて楽しくなくなった。スタートとして上はスピード感があって良かったんだけどな。下の後半は飛ばし読みしてしまった。どうやら一人称は珍しいらしい。本作品はあまり評判が高くないので機会があれば他の作品を読んでみたい。ついでに訳文のひらがなが気になる。ひらがなより漢字の方がすぐに意味が伝わるのに、簡単な単語がひらがななのはなぜだろう?この頃、訳文でよく見かけるんだよね。どうして無理やりひらがなのか?問題。―2021年8月10日頃読了―
October 13, 2021
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先日書いたDr.Isiguroの「食べても太らず、免疫力がつく食事法」の続きの実践版が出たので楽天で買って読もうと思った。医師がすすめる 少食ライフ【電子書籍】[ 石黒成治 ]【楽天ブックス限定特典】医師がすすめる 少食ライフ(書籍未収録の書き下ろしPDFデータ配信) [ 石黒 成治 ]●「食べても太らず、免疫力がつく食事法」石黒成治著 感想メモ
July 5, 2021
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「氷の闇を越えて」スティーヴ・ハミルトン著―A Cold Day in Paradise―訳=越前敏弥 早川書房 2000年4月15日出版【中古】 氷の闇を越えて / スティーヴ ハミルトン, 越前 敏弥 / 早川書房 [文庫]【宅配便出荷】■あらすじわたしの心臓のそばには銃弾がある。14年前、警官時代にローズという男に撃たれたときのものだ。最近、私立探偵となったわたしの身辺で連続殺人事件が起き、自宅にローズと署名のある手紙が届いた。手紙には殺人は自分の犯行だとあった。刑務所にいるはずの男がなぜ?わたしは深い謎へと踏みこむが・・・・・探偵マクナイト登場。アメリカ私立探偵作家クラブ賞(シェイマス賞)受賞。1997年私立探偵小説コンテスト最優秀作(PWA)。1999年アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀処女長編賞。↑賞名がどこか間違っているかも。 調べれるほどに混乱しちゃって。■感想成り行きで探偵業を始めたアレックス・マクナイトはミシガン州パラダイスという小さな町の行きつけの店〈グラスゴー・イン〉で仲間とポーカーをし、父が残した狩猟小屋の管理をし、4分の3の障害年金をもらい、ロッジで静かに暮らしていた。五大湖湖畔が舞台になった推理小説は多分初めて読むのかもしれない。凍てつく冬を前にした秋の話だ。国境線近くのアメリカでそんなに寒けりゃカナダはすごく寒いんだろうなあ、カナダの気候とか文化について考えた事がなかったと気付いた。後で調べなくっちゃ。カナダの小説はモンゴメリの『赤毛のアン』シリーズしか読んでいないかもしれない。アレックスは警察官時代の銃撃事件で心身に傷を負い、苦しんでいる。仕事をこなし、友人に振りまされつつトラウマに苦しみつつ、そのままを受け入れて暮らしている。まあ、諦めている感じがするけど、誠実で正直で知的な感じがする。内に秘めた情熱も感じる。つまり、アレックスの心情が丁寧に描かれている。一人称で描かれているので解りやすい。何が起きているのかも分からないうちにぐいぐい引き込まれていた。これは何が起きているのか?少しずつ犯人を絞り出して行く地道な積み重ねと推理が面白かった。アレックスの人柄も好きだった。行きつけの店主ジャッキーや使えない元探偵プルーデルも好きだった。友人エドウィンとその妻シルヴィア、エドウィンの母セオドーラ、弁護士アトリー、警察署長のメイヴン、みんな強烈な個性の人ばかりだった。だからみんな怪しい。淡々と描かれる風景描写や人物描写もとても良かった。途中で分かったつもりになって最後まで騙されたし、なるほど沢山の賞を取った訳だった。次作も読んでみたい。―2021年3月5日頃読了―
April 18, 2021
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私は読書を始めて60年くらいにはなると思う。孤独な子どもにとって読書は、自分の世界を構築したり観察して生き抜くために必要不可欠だったと思う。だけど私は、文豪の小説を読んでも名作と言われる小説を読んでも、殆ど無反応だった。『嵐が丘』のヒースクリフにとても同情したとか、(ウィキペディアのあらすじを読んでみると 経験値のせいか、 全く違うものを感じる)『老人と海』では大変な苦労をしたなあとか、『変身』は映像が見えてぞぞぞとしたとか、太宰治の『人間失格』では自分が益々嫌いになって自分を責めるクセが強められたとかはあったけれど、『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『若きウェルテルの悩み』『車輪の下』『風と共に去りぬ』『ジェイン・エア』『白鯨』『異邦人』『ライ麦畑でつかまえて』『雪国』『伊豆の踊子』『怒りの葡萄』などなど思い出せるものは、ぼんやりした感想しか残っていなかった。ああ、でもジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』はワクワクして大好きだったし、夏目漱石の『吾輩は猫である』『坊ちゃん』も面白くて大好きだった。『アンクル・トムの小屋』は理不尽さに衝撃を受けてずーっと泣いていた記憶がある。小学生の時に、人種差別をはっきりと知った学びになった。今調べて初めて、ハリエット・ビーチャー・ストウという女性が著者で、1800年代にアメリカ合衆国の奴隷制を廃止するのに尽力した人物と知った。はぁーー、この時代に女性が表で活動するのはとても大変だったろうと思われ、愛情深い筆致も思い出された。今思えば、小学生~十代の私が読んでも把握できない訳だったと思う。だって二十代になってから読んだSFも好きな作家は沢山いたんだけどレイ・ブラッドベリは面白さが分からなかった。四十代になって読んだ村上春樹が分からなかった。『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』が全然分からなかった。題名のセンスはとっても好きだけど、多くの人が感銘している事が私には分からないという事が分かった。共感力があり過ぎて、些細なニュースでさえ傷つく私が理解できない世界と言う謎。そして最近、ピースの又吉直樹さんがYoutubeチャンネルを開いている事を知り、たまたま「インスタントフィクション」のコーナーで短いフィクションを解説しているのを見て驚愕した。私には矛盾だらけで訳が分からない文章だった。でも、又吉さんの解説で文章の矛盾は矛盾ではなく、秘められた繋がりがあり、表に出さない意味が含まれていてすべてがつながっている、と言う事を知り衝撃を受けたのだった。そんな短い文章で、そんなに多くの思いが語られていたなんて!そんな見方があるなんて!そうか、だから私には村上春樹が理解出来ないんだろうなと思った。曖昧な文章の向こうにいる人の生活と思いをくみ取れないからなんだなと思った。だから海外ミステリしか楽しくないんだよね私、と思った。数学的な起承転結があるものしか楽しめないんだよね、私。数学の証明問題が大好きだったもの。曖昧な文章の先を読み取れないんだもの私。日本の文学って俳句的じゃない?一つの単語を支えている歴史的な意味合い。「プレバト」で夏井先生の話を聞くと国語がすごく分かりやすくて、まるで見えるものになったと感じたように、(つまりそれまでは国語って曖昧で 見えない縛りばっかりな気がしていた)又吉さんの解説した文章は人によって世界が全く異なる事をまるで見えるようにはっきり教えてもらった、と感じたのだった。私は数学的な思考の人間なんだろうなあと思い、短絡と言われていた父とそっくりなんだと思った。だけど私は三十代から感情的なものに蹂躙されていて自分を見失っているのは気付いていた。なぜ自分を見失っているのか、ずっと不思議で謎を解こうとしていたのだった。それが又吉さんの解説を聞いて見えて来た。数学的な脳使いの私が感情的なものに振り回されて来たために己を見失っていたのだ、と。感情面と理論面を両掌に載せてためつすがめつすれば良いのだと思った。感情面ばっかり大事にしていたために、自分の腑に落ちやすい理論面を後回しにし過ぎたのだと思った。私には感情はとても大事だけど、理論面も大事な人間でした。そのバランスが崩れているのだと思ったのだった。さて、それに気付いたのであれば自分を取り戻しに行こうじゃないか。そして角度を変えただけで見える世界がそんなにも違うんだと教えてくれる人が随所にいてくれてありがたい!と思ったこの頃だった。
April 17, 2021
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「娘を呑んだ道」スティーナ・ジャクソン著訳=田口俊樹「THE SILVER ROAD」Stina Jackson【中古】文庫 ≪海外ミステリー≫ 娘を呑んだ道 【中古】afb■あらすじ 三年前、スウェーデン北部の村で十七歳の少女リナが失踪した。地元の高校で数学を教える父親のレレは、今も単独で娘の捜索を続けていた。 同じ頃、村に流れ着いた母娘がいた。母親が男を変えるたび、娘もメイヤもあちこち転々としてきたが、これほど遠くまで来たことはなかった。 その夏、リナが失踪した国道からほど近い場所でまたひとりの少女が消えた。この事件をきっかけに、レレとメイヤの運命が大きく動き出す。 スウェーデン推理作家アカデミー「最優秀犯罪小説賞」、「ガラスの鍵」賞、スウェーデン「ブック・オブ・ザ・イヤー」に輝いた傑作スリラー!■感想北欧の、デリケートでしっかり作り上げられたミステリを読みたいと思って借りてみた。思った以上に繊細で緻密だった。冒頭は、3年前に失踪した娘を探して、夜間になると車で国道を走りまわる高校教師のレレの様子が淡々と描かれている。あの時こうしていれば、こうしていればと毎日毎日己を責め続け、妻と離婚して一人で探し回る。濃密な悔恨の夜は巡り、娘を求めるレレの心の叫びはつぶされて朝になる。次に出て来たのは、母親がネットで知り合った男の家にやって来たメイヤの話だった。初めての田舎に戸惑い、母が男に出会っては別れる流浪生活に突き合わされて疲れ、いつも絶望と諦めと渇望に喘いでいるような少女だ。レレとメイヤの視点が丁寧に描かれている。それは苦しく、先の破綻が見えているような事ばかりで、読み進めるのに苦労した。人の思いがしっかり描かれているけれど苦しいお話だった。文章も構成もしっかりしていてその点では読みごたえがあった。最後の希望が救いだった。でも、暗くて次作は読みたくはない。病人が冬に読むには堪えた。―2021年1月25日頃読了―
April 10, 2021
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「沈黙の叫び」マーシャ・マラー著 原題「LISTEN TO THE SILENCE」訳=古賀弥生 2004年3月15日発行【中古】 沈黙の叫び 講談社文庫/マーシャ・ミュラー(著者),古賀弥生(訳者) 【中古】afb■著者マーシャ・マラー1944年、ミシガン州デトロイト生まれ。ミシガン大学でジャーナリズムを専攻し修士号を取得。ロス・マクドナルドの作品を読んだのがきっかけでミステリーの創作を始める。77年にシャロン・マコーンが主人公の『人形の夜』を発表。82年の第2作『タロットは死の匂い』以降はシリーズ化され、本作が21作目。他に美術界を舞台にした2つのシリーズを持つ。93年にシェイマス賞の巨匠賞、94年に『影の中の狼』でアンソニー賞を受賞し、サラ・パレツキー、スー・グラフトンと合わせて女性私立探偵小説御三家として高い評価を得ている。ビル・プロンジーニの配偶者でもある。 ■あらすじサンフランシスコの私立探偵シャロン・マコーンは、父の死をきっかけに自分が養子だったことを知ってしまう。ショックを受けた彼女だったが、自分のルーツを確かめようと母方の一族であるアメリカ先住民ショショニ族の保留地を訪ねる。しかし、彼女の生い立ちには現在の犯罪につながる事件が隠されていた⁉■感想(最後にネタバレ注意)訳者あとがきに、1980年代にすばらしい女性探偵がぞくぞくと登場し、そのブームのさきがけとなったのがマーシャ・マラーのシャロン・マコーンシリーズ第1弾『人形の夜』だと書いてあった。私はその頃、SFと科学誌ばかり読んでいたので、女性ミステリ作家による女性探偵の活躍を全く知らなかった。図書館でも見つけられなかったなあ。結局見慣れた名前ばかり見つけてしまうのだろうなあ。五十代になってから本屋さんで、たまたまパレツキーの『サマータイム・ブルース』を見つけて買って読んだんだけど、当時の私には刺さらなかったのだった。だから、表紙が妙に今どきイラストの『サマータイム・ブルース』が本棚にはある。スー・グラフトンは昔『アウトローのO』を記憶なく2回も読んでしまった。こちらも他作品を読んでいないところを見ると私にはピンと来なかったらしい。でも最近は、女性作家の緻密な設定や描写がとても読み応えを感じると思い、女性作家を探していた。本書『沈黙の叫び』はマコーン・シリーズの長編第21弾目だそうで、驚く長期シリーズだ。ウィキペディアには、2011年に29作目まで出ているとある。日本語訳では本作で最後となっているようだ。内容は、40歳になったマコーンがルーツ探しに奔走して隠された腐った膿を掻き出してしまったけど、最後に事実にたどり着いたお話というところかな。マコーンは車や飛行機、自家用セスナを駆使して東奔西走しているので、グーグル地図と風景写真で確認しながら、馴染みのない南西部アメリカを一緒に旅した。アメリカ先住民の習慣や世界観が織り込まれた異文化の織り込まれた一冊だった。コツコツと事実を拾い集めるマコーンの誠実で愛情深く、理知的で行動的な人柄がとても好感が持てた。小さなパーツを拾い集める謎解きとしては調べるほど謎が深まり面白かった。ここからネタバレ注意。ただね、読後しばらく経ってからなんかもやもやしてる感じがした。マコーンは最初に育ての母に向き合ってしっかり事情を聞けば良かっただけなんじゃないの?あんなに粘り強い人が1回で諦めるかな?何もあんな危険な目に合わずに済んだんじゃないの?育ての母に聞いたら、人が傷つけられたり、殺されたりせずに済んだんじゃないの?あの人も無駄に暴れて人を殺さずに済んだんじゃないの?って、思っちゃうんだよね。あんなに丁寧に調べまわる事ができるなら、始めに母親を口説けば良いんじゃなかったの?感情的な母親に対して、うまく情に訴える事だって出来たんじゃないの?と感じると言う事は、最初の導入部分に無理やり感があると私は感じているらしい。知的で計画的な所と無謀で出たとこ勝負な所が、私の頭の中では1人の人としてうまく混ざらないみたいなんだよね。う~ん、75点てところで。第1作目の『人形の夜』を読んでみようかな。時代と熱量の違いを感じるかもしれない。―2020年12月12日頃読了―
March 25, 2021
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「喪失」モー・ヘイダ―著原題「GONE」北野寿美枝=訳 早川書房2012年12月15日初版発行2013年2月25日再版発行【中古】喪失 / モー・ヘイダー■あらすじ■当初は単純な窃盗と思われたカージャック事件。だが強奪された車の後部座席に乗っていたはずの少女はいっこうに発見されない。捜査の指揮を執るキャフェリー警部の胸中に不安の雲が湧きだしたとき、今回とよく似た手口の事件が過去にも発生していたことが判明した。犯人の狙いは車ではなく、少女だったのか!事件の様相は一変し、捜査に総力が注がれる。だが姿なき犯人は、焦燥にかられる警察に、そして被害者の家族に、次々と卑劣きわまる挑発を・・・・・・屈指の実力派が、MWA賞(アメリカ探偵作家クラブによるエドガー賞とも言われる)最優秀長編賞の栄冠を射止めた力作■モー・ヘイダ―■英国エセックス生まれ。15歳で学校を辞め、バー・メイド、警備員、英語教師などの職業を経験。東京でホステスをしていたこともある。2000年に『死を啼く鳥』で作家デビュー。バース在住。■感想■ちょいネタバレ含むジャック・キャフェリーを主人公にしたシリーズ作品の第五作。シリーズ開始当初はロンドン警視庁の圏内重要犯罪操作隊に所属していたが、2作目では数年後にエイボン・アンド・サマセット警察の重大犯罪捜査隊に移ってからの話になり、そこで過去を背負って歩き続けるウォーキングマンや潜水捜索隊隊長のフリー巡査部長と出会う。そして本作(翻訳された物としては3冊目だが、シリーズ物では5作目に当たる)では、フリーのことでキャフェリーが怒りで一杯になって不安定になっている。フリーはフリーで秘密を抱えている。どちらも危険をはらんでの思いや行動がしょっぱなからハラハラし通しだった。しかも被害者家族の心情を懇切丁寧に描いてあるため、一緒になって苦しみ悲しむ。情景描写も丁寧で、まるで映像が見えて来そうだ。登場人物一人一人への設定・肉付け・感情描写・風景描写が隅々まで表現されていて息苦しいほどだった。事件の深刻さが増すにつれて左右に揺れっぱなしの天秤のように振り回される。最後は息を飲む思いで疾走した感があり、娘を誘拐された母親達の不安・恐怖・怒り・失望・悲しみ・希望を味わい、泣いてしまった。鋭い観察力と感性を持つゆえに部下のブロディにもハラハラした。フリーの部下とのやり取りも関係性が見えて良かった。追い込まれて行くキャフェリーとウォーキングマンとの関係が、別の軸になってすごくありがたかった。半分くらいで犯人が分かったつもりだったので、この分厚さの真ん中でこんなにみっちり書かれてあり、この後はどうなるんだろう?と疑問に思いながら読んだ。すると後半は別の意味で濃くて、ここからが始まりだったのか!と思うほどだった。色々騙された。事件の全貌が分かるのはラストで、真犯人が分かっても別のおぞましさで一杯になった。狭い部屋で卓球をしているみたいに思いがけない所にはね返り、ぶつかって来て、一瞬たりと油断できない。そんな一冊だった。疲れたーー。ラストに救われたー。読み応えはたっぷりで、くどいくらいに濃厚かつ綿密。デリケートで強力。これまで読んできた推理もので、ラストで油断し過ぎてぬるく感じてしまうものが多い中、これは最後までしっかり描いてあり読後感が充実していた。 モー・ヘイダ―のキャフェリー警部ものを1の『死を啼く鳥』から読もうかな。*エイボン州は1994年まで存在したイングランドの州。 現在のブリストル州、サウス・グロスターシャー、 グロスターシャー、ノース・サマセット、 バース・アンド・ノースサマセット。 今までは、コッツウォルズなんて 石造りの家々や、風情ある風景しか知らない所だった。 エイボン&サマセットは イングランドの南西部地域。 ロンドンの南西部、ウェールズの北側。 イギリスでも明るい地方と思われる。 最長で200キロ弱くらいかな。 結構広域なんだな。 対比として『ヴェラ~信念の女警部』の舞台は イングランド北東部ノーサンバーランド。 エディンバラの南東に位置している。 ヴェラを見なければ石垣に囲まれた 牧歌的な牧草地帯と思い込んでいた。 イギリスの真ん中あたりで スコットランドに近い。 最長100キロくらいかな。――2020年9月22日頃読了――
February 25, 2021
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「つながれた山羊」ジェレマイア・ヒーリイ著〈私立探偵ジョン・カディ〉 原作「The Staked Goat」1986 菊池よしみ=訳 ハヤカワミステリ S63年5月31日出版(楽天さんでは見つかりませんでした。)●あらすじ全身に煙草の火を押しつけられ、性器を切り取られた無惨な死体――警察はホモの猟奇殺人と考えていたが、死体の左手の小指が折れているのを見た私立探偵ジョン・カディは確信した。戦友アルは拷問されて殺されたのだと。戦争中、アルはカディに向かい、もし敵に殺される時には自ら小指を折ると言っていたのだ。カディは友の仇を討つべく調査を始めた。アルの"敵"は何者なのか?彼がわざわざボストンまで来ていたのはなぜなのか?カディは手がかりを求め、アルの故郷ピッツバーグへ飛んだ。精力的に調査を続けるその行手にやがて差すベトナム戦争の影――カディは自らの過去をも振り返りながら、さらにペンタゴンまで探り始めた。だが、危険がすでに背後に忍び寄っていようとは、彼には知る由もなかった!やさしくもタフなボストンの探偵カディの、命をかけた復讐行を描く待望の第二弾!私立探偵小説大賞受賞。〈著者紹介〉ボストン在住。現在、ニューイングランド・スクール・オブ・ローの法学教授。1984年、本シリーズ第一作『少年の荒野』でデビュー。(多賀城図書館のミステリは「文学・文芸書」 などの分類シールが貼ってあって、 それが調度あらすじの所を7行読めなくしている)(`・´)(著者紹介もバーコードで半分読めない)(`・´)●感想ジェレマイア・ヒーリイは1985年デビュー作でアメリカ私立探偵小説新人賞にノミネートされ、1987年2作目の本作で長編賞を受賞した。最近の作品は日本語で出ていないが34年経った2019年にもアメリカで作品を出している。法学教授とあれば、話題には欠かないだろうな。デビュー作の「少年の荒野」が読みやすくてカディにも好感が持てたので2作目を読んでみた。ネタバレ注意してね!省いて感想書けない短絡な今日の私。読みやすくて事実の紡ぎ方も好みだけど、今回は復讐劇とあって私としては問題作なわけで。私立探偵だから出来た事がね。うーん、NCIS~ネイビー犯罪捜査班とNCISLA(ロス)とNCISNO(ニューオーリンズ)をひたすら観まくっている人間としては、境界線がブレるのは不快なんだと思う。私立探偵なら許されるのか?ベトナム帰還兵だから許されるのか?友情とは?誠実とは?信頼とは?周囲の人を煙に巻いても自分を騙すことは出来ない。自分だけは知っている。知らない振りをしても常に芯の部分で気付いている。何を正とし義とするか。私的には悩ましい問題だな。デビュー作で殺されそうになったカディは2作目で3回ほど殺されかける。いや、殺されていたはずで私立探偵の単独捜査は危険極まりない。そして後味は良くなかった。なんちゅう終わり方するんじゃあと荒げた言い方になってしまったな。まあ、3作目に続く・・・なんだけろうけど。それまでは温和で誠実で亡くした妻を愛し続けている、不正を断ったために会社を辞めざるを得なくなり私立探偵になった男気のある人が、ベトナムで一緒に戦った親友のためとは言え、一線を超えるためにはもっと苦悩すべきじゃないのかな?とか、他にやり方があったんじゃないかな?とか。悶々としちゃったな。戦友アルの妻や友人達については詳しく書いてあるのに、アルを殺った人についての描写は読む側も怒りが限界を超えそうになるほどじゃなかった。つるっと読んでしまった。人間が見えて来なかった。もうちょっと情報が欲しかったな。小狡いえげつないヤツで終わってしまった。私の脳があちこち欠けているから読み込めなかったのかもしれないけど。戦友とは言え、アルの失敗について甘くなり過ぎじゃないのか?困窮していたら何をしても良いのか?良心的なクーパー夫妻の事はもっと苦しむのでは?それは3作目以降に続く?秘密の組織は?2つの事件が交錯してカディを追い詰め、冷静さと混乱がとっかえ引っ変えでやって来る。そう云う点では読み応えがあった。「つながれた山羊」と言う題名についてはベトナム戦争の悲しく恐ろしく苦い思いに繋がり、これはとても感慨深い。ベトナム帰還兵の繋がりの強さは特別なものなんだろうと、時代を経てから考える者として思う。でも3作目は止めとこうと思う。何を書くのか、が一番大事だと思うから。法学教授が現実で出来ない事を小説でやってみました感がして醒めてしまったようだ。感想も混乱してるなぁ。●ちなみに「私立探偵小説大賞」について(ウィキペディアより)アメリカ私立探偵作家クラブ(アメリカしりつたんていさっかクラブ、Private Eye Writers of America、略称:PWA)は、1981年に設立されたアメリカ合衆国の作家団体。ロバート・J・ランディージが呼びかけ、ジョン・ラッツ、マックス・アラン・コリンズ、ビル・プロンジーニ、マーシャ・ミュラー、マイクル・Z・リューインらとともに結成した。1982年より、私立探偵小説を対象とするシェイマス賞を主催する。また、功労賞として不定期にジ・アイ(THE EYE)賞を授与している。エドガー賞を主催するアメリカ探偵作家クラブ(Mystery Writers of America、略称:MWA)とは別の団体である。毎度ウィキペディアさんありがとう!――2020年09月03日頃読了――
September 26, 2020
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「少年の荒野」ジェレマイヤ・ヒーリイ著中川剛=訳 早川書房 昭和61年10月15日出版(西暦1986年)【中古】HPBミステリ1478 少年の荒野表紙はこれです↑■あらすじ■失踪人捜査に限っていえば、一匹狼の私立探偵より大きな探偵社を使うほうがはるかにいい。あらゆる情報を収集し、組織的に捜索するのが一番の早道だからだ。ボストン郊外の町ミードの名家キニントン家の一人息子であるスティーヴンの場合も、当然一流の探偵社が捜索にあたった。だが失踪から二週間、手がかりは何ひとつ得られなかった。私立探偵ジョン・カディに、業を煮やしたスティーヴンの祖母エリノアから依頼が持ちこまれたのは、そんな時だった。依頼の仲介をしたスティーヴンの担任教師ヴァレリーの話では、少年はきわめて高い知能の持ち主だという。四年前、母親が酔払い運転で川に落ちて死んだ時、精神に異常をきたし一年間を棒にふったが、いまは十四歳という年齢では考えられない知識を持っていた。その彼が、突然アウトドアの装備を携えて姿を消したのだ。不思議なのは、父親のキニントン判事の態度だった。町を牛耳る権力者である判事は、息子の捜索にまるで熱意を示していなかった。それどころか、彼の腹心の部下ブレイキーは、カディに捜査をやめるよう脅しさえした。判事の真意は?少年を駆り立てたものの正体は…?練りに練った緻密なプロット、軽快な筆致、やさしくもタフなヒーロー像―スペンサーに敢然と挑むボストンの新・私立探偵ジョン・カディ、注目のデビュー作!■感想■私立探偵ジョン・カディ第一弾でジェレマイア・ヒーリイのデビュー作。ものすごく久々に推理小説を読んだ。ずっと医学関係の本ばかり読んでいたし、年末と5月に胃腸を悪くして死にそうになり、入院もしたしで読書は遠いものだった。秘策でようやく回復しつつあり、読書が出来るようになったヽ(=´▽`=)ノ昭和51年というと、子育てで全てを切り離して生きていた頃。ジェレマイア・ヒーリイは初めて読んだ。文章はひねりが入りつつも読みやすく、主人公のジョン・カディの人柄も好みだった。カディが兵役後に長年努めていた保険会社の賠償調査室長を辞めて探偵になった理由、独り身の理由がさらりと書いてあって、カディの信念が見えて好感が上がった。殆どヒントのない状態からの少年の探索はとても好みだった。コツコツとほころびを探して行く様子が、私の物事の構築の仕方と似ていて分かりやすかった。ただ、ラストがあまりにも畳み掛けるように進み、共感する力が弱ってしまった。まるで静かな田園風景でのスローライフが急に早回しになった映画みたいで、ラストをもう少し丁寧に書いて欲しかったなあ。そしたら意外な状況を、もっと理解できたかもしれない。ここまで書いて、何が足りなかったのかが分かった気がした。行方不明の少年スティーヴンの具体的な情報が少なかったので、感情移入が薄弱になったのかもしれない。多分。キムとミズ・ムーアの発言でようやくスティーヴンの肉付きが見えて来たので、もう少しスティーヴンが見えたら良かった。カディシリーズ2作目が楽しみになって来た。現代に近づくほど、この社会を反映して悲惨で複雑でむごい内容になって来た推理小説。この時期のものをこれから発掘できる楽しみが見つかった!
August 11, 2020
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「図書館猫デューイ/町を幸せにしたトラねこの物語」ヴィッキー・マイロン著 羽田詩津子=訳 早川書房 2008年10月15日初版【中古】 図書館ねこデューイ 町を幸せにしたトラねこの物語 / ヴィッキー・マイロン, 羽田詩津子 / 早川書房 [単行本]【宅配便出荷】■あらすじ1988年、アメリカの小さな町の、こごえるような冬の朝。出勤してきた図書館長のヴィッキーは、本の返却ボックスのなかでうずくまる子ネコをみつける。その赤茶色の子ねこは、救いだされると健気にしもやけの足で立ち上がり、ヴィッキーの手に頭をすりつけて挨拶をした。信頼しきった大きな目と、人なつこい表情――この子は図書館に必要な存在だ、とヴィッキーは直観する。こうして、2人の物語は始まったのだ。来訪者を出迎え、ひざの上で眠る「図書館ねこデューイ」に、子どもたちは笑顔になり、大人は心をいやされた。やがて人々はデューイに会おうと図書館に集い、語らうようになる。そしてデューイとヴィッキーは小さな図書館にいながら、町の人を勇気づけ、アメリカじゅう、さらに海外へとあたたかい物語を伝えていくこととなった。自身の病気や子育てに苦労しながらも、デューイの世話をし、ともに図書館をもりたててきた図書館長が、町の人びとに、そして世界じゅうに愛された1ぴきのねこの一生を愛情をこめてつづる。■感想ちょっとした癒やしを求めて借りた猫本だったけれど、テレビでも観たことのある図書館ねこデューイの物語は図書館長ヴィッキーの物語でもあり、この図書館のあるアイオワの小さな田舎町スペンサーの物語でもあった。勤勉な町スペンサーの成り立ちや、幾度も経済危機を乗り越えて来た歴史や、アメリカの抱える格差社会の問題や、どれほど図書館ねこデューイがスペンサーに喜びと誇りと希望をもたらし、人びとを励ましたかなどが丁寧に書いてあった。そう誇り!デューイは人びとに誇りをもたらした。どうやって?先を読みたくなるよね!ヴィッキーが氷点下の返却ボックスで奇跡的に生き延びた子猫と出会った時に、彼女とデューイの間にこれまた奇跡的な意思の疎通と信頼関係が生まれた。そしてヴィッキーが奔走してデューイを図書館に住まわせる事が出来たことで、一匹の猫が、図書館や町の人びとを動かして優しさや愛情が相互作用して、愛がどんどんあふれて広がる様が描かれている猫と人々との愛情の物語だった。そう、ヴィッキーとデューイの愛情や優しさや思いやりや触れ合いが世界中の人びとを呼び寄せ、そして町や自分への誇りをもたらした。もちろんデューイのお茶目な所や困った所もあふれる愛情で書いてあった。デューイと輪ゴム、かくれんぼ、脱走、病気。丁寧に丁寧に書いてある。デューイはスペンサーだけではなくて、世界中から人びとが会いに来る猫だった。私は50匹以上の猫を飼って来て、一度だけデューイと似た猫と一緒に暮らした事がある。茶トラの「タム」と言う、賢くて温和でどこでも連れて行ける、私を庭で遊ぼうと誘う猫だった。茶系の猫は温和で賢くてものに動じなくて人間と意思の疎通をする事が多いのではないか?などと持論を思い出したりした。少しアメリカの農場問題に詳しくなり、スペンサーの町の人びとを愛おしく思い、ヴィッキーの視野が広くて行動力のある人と成りにも詳しくなり、愛情深い人たちと一緒に時間を過ごした気持ちになった。愛情・奇跡・優しさと、くどい文書になったが本当にこんな感情が生まれる本だったよ。20190920頃読了――
November 23, 2019
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「匿名原稿」スティーヴン・グリーンリーフ著黒原敏行=訳 ハヤカワ・ミステリ 1992年11月30日発行【中古】 匿名原稿 / スティーヴン グリーンリーフ, 黒原 敏行 / 早川書房 [文庫]【宅配便出荷】■あらすじ見に覚えのない罪で刑務所入りした主人公が復習を誓い、出所後に自分を罠にかけた人物をつきとめようとする――弱小出版社の社長の机のうえに忽然とあらわれた原稿は、ベストセラー間違いなしの傑作だった。だが、原稿には肝心の結末が欠けており、著者の正体も不明だった。私立探偵ジョン・タナーは出版社の社長から、著者をさがしだして残りの原稿を手に入れてくれと依頼された。原稿に目をとおしてみると、たしかに圧倒的な迫力があった。もしかすると、これは著者の実体験をつづったノンフィクションではないのか。そう考えたタナーは、原稿の記述を手がかりに調査をはじめた。過去に実際起きた事件を描いたものならば、主人公をはめた犯人は、いったい誰なのか?そして、作者はどのような結末を考えているのか?出版界を舞台に、知性派探偵ジョン・タナ―が現実と虚構のはざまから真実を探り出す異色ハードボイルド!〈著者紹介〉1942年ワシントンDC生まれ。カリフォルニア大学卒。サンフランシスコの私立探偵ジョン・タナ―を主人公とする(多賀城図書館の青シールで続きが見えない(`・´)・・・・・好評を博している。ジョン・マーシャル・タナ―シリーズ7作目■感想スティーヴン・グリーンリーフ初小説。存在すら知らなかった。これが、久々に文章を堪能して読書を楽しませていただいた。文章も人物もストーリーも大変好みだった。ストーリー展開は、少しずつヒントが出てくる謎解きもので最高に面白かった。私立探偵タナ―と同じヒントを元に読者も一緒に謎解きをして行くのがワクワクした。謎の原稿の文章が各章の前に少しずつ書いてあり、その原稿の内容もとても面白い。謎の原稿を『ハムラビ法典を讃えて』にした題名も後半になってようやく理解できた。この小説は『ハムラビ法典を讃えて』という匿名原稿を巡る探偵の物語で、小さいヒントから少しずつ少しずつ真実に辿り着く話だ。主人公タナ―の一人称で書かれてあるので、時間軸も混乱せずに、状況や行動に共感できる。(理解力記憶力が落ちた読書好きにはありがたい)このタナ―さん、とても誠実で優しく慈悲深く愛情深くて辛辣で機知に富んでいて柔軟性がある。タナ―の優しい語り口調で、会話のようにさりげなく出版業界の闇や大国アメリカの貧富の差と人々の暮らしについて、教育問題についてしっかり書いてある。うっかり何年代の物語か書き留めていなかったけど、確か1980年代1990年頃の話だったかなぁ。携帯電話が出て来る前の話だった。だから情報集めは足で稼ぐ。それで目の前で少しずつ人物や事実が構築されて行く。タナ―は元弁護士なので法律にも詳しく破綻がないのでストレスなく読めた。各章の前に少しずつ載せてある『匿名原稿』の展開もミステリアスで興味津々だった。初めはその題名から、ハムラビ法典の研究書なのかなと思っていたが、知的で簡潔で意味深い文章は面白くてどんどん惹き込まれて行った。匿名原稿の作者が分かって少々引いたけどね。私は最後まで分からなかった。全部を踏まえても、文明社会の問題点について思わずにいられなかったので、力量ある一冊だと思う。真っ白いページに僅かなヒントが記されて、早く次のページをめくりたくなるような、そんなワクワク謎解きとタナーの心理・人物・環境の描写が美しい文章で描かれていて、読んでいてとても楽しかった。久々に堪能できる一冊に出会えて感謝!!――2019年9月7日頃読了――
October 23, 2019
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『さらに「いい家」を求めて』改訂3版 久保田紀子著 感想メモ【中古】【古本】さらに「いい家」を求めて/久保田紀子/著【生活 ごま書房】■久保田紀子1960年 東京都日野市に生まれる。2001年 「外断熱の家」を新築。 その後「住み心地体感ハウス」を建築し、 『さらに「いい家」を求めて』(ごま書房)を発刊した。2009年 「新換気SA-SHE」の家にリフォーム。 「住まいのアドバイザー」として活躍中。■勝手にあらすじ著者の久保田さんがお嫁入りした家が竹林にに囲まれた、西日だけが差し込む夏の午後がひどく暑くて冬はとても冷え込む寒い家だった。夫を早くに亡くし、小さい子供を抱えての悲しみから家相にはまり込み、土地整理区画での引っ越し仮住まい。ようやくの新築に際して、家相へのこだわりからとんでも物件になりそうな家を設計し、施工直前で沢山の思い込みに気付かせてくれたマツミハウジングとの出会いや、様々な体感ハウスでの忌憚のない素直な感想。外断熱の家での快適な生活。「住み心地体感ハウス」建築。「新換気SA-SHE」リフォーム。「家」と家族の中心にいて母・女性としての「家」という建築物と「家」での暮らし、生活についての感想、日々の「家」での体感や様々な「家の建築」「心地よい家」について素直に丁寧に久保田さんの経験が書いてある。著者の人生丸ごと家体験レクチャー本。■感想家の建築、リフォーム番組が好きでよく観ている。でもこの本を借りた理由は忘れちゃったヽ(゚∀。)ノ外断熱と内断熱の違いを初めて知った。現在の家がどれほど進化しているか初めて具体的に知った。湿気や寒さ暑さ、外との温度差に苦しむ事がない、カビもいなくて冷暖房費がほとんど掛からない快適な家があるなんて!!!そう言えば東日本震災の時、塩釜市のイオンタウン近くの写真屋さんは津波の海水が家の中に入って来なかった、と言う話を知人から聞いた事があった。なんて密閉度の高い家なんだろうと驚いたのだった。あれは外断熱の家なのかなと思った。津波の濁流に負けなかった家の造りがようやく理解できた次第。家を建てる時に、塀やアプローチとの兼ね合いもとても大事な判断材料だと再確認。これから家を建てようと思っている人や、家の在り方を考えている人にとって凄いヒントになる本だと思う。久保田さんが家相にはまった事で、弱り目に祟り目にならなくて良かった。家相とは、その環境に適した家の在り方なんだと勉強になった。湿気も外との気温差もなくカビも生えない、爽快・快適でストレスのない家で暮らすために奔走した久保田さんの「家を建てる」知恵袋の一冊だと思う。だって家にいる時間はとてもとても長い。爽快・快適な家で過ごせたらそりゃあもう心地よい暮らしだよねぇ。私は冬寒く、夏暑く、湿度とカビに苦しみ季節の気温に左右された家での生活なので、毎日スマホで湿度や温度をチェックは欠かせない。ああああ~~マツミハウジングの家に住みたい!!!。・゜・(/Д`)・゜・。諦めないでとことん突き詰めて行くあたり粘りと実行力のある著者だとため息が出た。――20190831読了――
September 19, 2019
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「償いの雪が降る」アレン・エスケンス著 原題-The Life We Bury- 務台夏子=訳 創元推理文庫 2018年12月21日初版【中古】 償いの雪が降る 創元推理文庫/アレン・エスケンス(著者),務台夏子(訳者) 【中古】afb■あらすじ授業で身近な年長者の伝記を書くことになった大学生のジョーは、訪れた介護施設で、末期がん患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、仮釈放され施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとインタビューに応じる。話を聴いてジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが……。バリー賞など三冠の鮮烈なデビュー作。■アレン・エスケンス紹介アメリカ、ミズーリ州出身。ミネソタ大学でジャーナリズムの学位を取り、その後、ミネソタ州立大学マンケート校などで、創作を学ぶ。25年間、刑事専門の弁護士として働いてきたが、現在は引退している。デビュー作である本書は、バリー賞・ペーパーバック部門最優秀賞など三冠を獲得し、エドガー賞・アンソニー賞・国際スリラー作家協会賞の各デビュー部門でも最終候補となった。■感想静かな図書館でぱっと目に入り、題名に惹かれて図書館で借りた。主人公のジョー・タルバートは課題のためになぜ介護施設に行ったのか。大好きだったおじいちゃんの代わりに介護施設の入所者を探していたのかな。アルコール依存症的なシングルマザーの母親と自閉症の異父弟の世話をしながら貯めたお金でようやく家を出て大学に通い始めたのに、何故しがみつくいかれた母親のためにお金を出すのか?バーで用心棒をしながら大学に通い、勉強しながら弟を守る。あっちに走りこっちに走り、いつも一生懸命で誠実でちょっと間抜けで問題だらけで必死に頑張っているジョー。そして介護施設で紹介してもらったカールの事件。調べていくと徐々に矛盾点が見えて来て、母親と弟の世話で培われた世渡り術と言うか生き方と言うか乗り超え方と言うか、粘り強く接して行く主人公。苦労人なのにすれていないジョー。素晴らしい資質を沢山備えたんだねジョー。なんて思いつつ、ジョーのトラウマとカールの思いが重なる。ジョーの爽やかな青春も垣間見つつ気持ち良く読み終わった。ちょっと無謀過ぎる感はあったけどね。収束の仕方が気持ち良かった~♪誠実さが顧みられるのってほんと気持ちいい。英語が苦手な私はあちこちで翻訳してみた。「The Life We Bury」・私たちが埋める人生・我々が埋める生命・我々が埋める命・私達が葬るライフ「私たちが葬る人生」がぴったりかな。「償いの雪が降る」はカールの人生を思い出させてとても良い題名だと思った。これからは雪が降り出したら、日常の奇跡に思いを馳せるかもしれない。担当の方、ナイスだ~ヽ(〃v〃)ノ 2019年6月末読了
July 13, 2019
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「温かな夜」リンダ・ラ・プラント著 原題「COLD HEART」 奥村章子=訳 早川書房 1999年10月31日発行【中古】 温かな夜 ハヤカワ・ミステリ文庫/リンダ・ラ・プラント(著者),奥村章子(訳者) 【中古】afb■あらすじ酒への欲求は抑えられても、心の渇きは癒せない。探偵事務所を移転したロレインは将来への不安と激しい孤独感に苛まれていた。そんな折り、彼女は会社社長ネーサンの妻から調査の依頼を請け負った。ネーサンが何者かに殺され、彼女に殺人容疑がかけられたので濡れ衣を晴らしてくれという。調査を開始したロレインのまえに、やがて彼女自身の過去にまつわる衝撃の事実が!新時代の女性ハードボイルド三部作・感動の完結篇。■感想(後半ネタバレ注意です)図書館でたまたま手にしたもので、調べないで読み出すと三部作の完結篇だった。(あらすじに書いてあるっちゅうの!)ほら、またやっちゃったよ。次回は知らない作家さんの場合はスマホで調べてから出版順に借りよう!!と文字にしておけば思い出すかもしれない・・・ヽ(≧ω≦)ノ 後で調べると、塩竈市民図書館には一作目の「凍てついた夜」があった。今の記憶がもう少し曖昧になったら、一作目から読んでみようかと思う。何しろ三作目なので、導入部分がすごくぬるく感じてしまい、都合の良い進み方だなぁと思ってしまった。美人探偵の退屈なミステリなのかなぁと思いつつ、主人公のロレインと助手以外は「お金・物欲・我儘・自己中・主観的・強欲・性欲」などなどの欲望まみれのすさまじい人ばっかりが出て来るので、この世界の嫌な所だけ見せつけられているようで、メンタル弱い私には厳しい始まりだった。何度か中断しようかなと思いつつ調べてみるとリンダ・ラ・プラントはイギリス警察ドラマ「第一容疑者」の脚本家であり小説化も手がけているので、これは面白くなるかもしらんと頑張って読んだ。(小説は読んでいないけどドラマは全部観た)これまでの事情を知らないんだから致し方無しと自分に言いながら毎日少しずつ読んでいたら、三分の一を過ぎた頃から点探しが少しずつ積み重なって、後半は点と点が線で結ばれて来た。読者には見えていた状況が、ロレインにも見え始めた頃からワクワクして来た。そうだロレイン、そこが大事!それだロレイン、見逃さないで!ああロレイン、気を付けて!!段々応援し始めていた。状況は金に群がる亡者だらけなんだけどロレイン視点の犯人探しが面白かった。最後は色んな出来事を駆け抜けるようにして全部拾ってしっかり終わった。でもヤンチャな大型犬タイガー(ジャーマンシェパードとウルフハウンドか アラスカン・マラミュートあたりのミックス)が最後に出て来なくて残念だった。あちこちぬるくて感傷的だったけど謎解きは面白かったので★3つかなぁ。さて、ここからは内容に触れるのでこれから読む人は読まないで下さい。これは本当にただの個人的感想。―――●ネタバレ注意!●―――三作目から読んだ私がいけないんだけど、ロレインに感情移入した頃にはこれまでの過酷で悲惨な出来事を埋め合わせるように突然恋に落ちて素晴らしい日々を過ごす・・・。私は娘を「先読みのピー」と呼んでいるくらい非常に先読みの鋭い人で、ドラマや映画やアニメを一緒に観ていると「こんな状況だとこうなるかも」とよく先を言い当てる。つまり娘はフラグが立っているのに敏感でこの十数年は鈍い私も幾ばくかは教育された。それでロレインの突然の幸せ一杯を読んでいるとフラグが立っていそうで、ああロレインよ幸せであれ!幸せのままであれ!と願っていたのだった。そうだよね、ドラマ脚本家で完結篇だもの激しい結末じゃないと終われないよね。どん底から始まったシリーズ物だから、ハッピーエンドにはならないよね。だけど植物人間になったロレインの死出の旅までの独り言はいらないんじゃないかなあ。恋愛と植物人間の思考の所が感傷的でリアル感を削いでる気がした。それかな、感傷的過ぎる演出に萎えた感じかな。被害者の一番目の夫人の性格が焦点を絞りにくくて、私の中では一人の人格にならない。表現もずいぶんまちまちに感じる。視点の違いからか、全く別人を描写しているように感じた。長い間法を破って来た人が、突然良心の呵責に陥って元夫の三番目の妻の殺人の濡れ衣を晴らそうとするかな。でもその後は何もしていないし。なんかなぁ。ネットであちこちの感想を読むと、一作目の「凍てついた夜」は評判が良いようなので一作目は読もうかな。一作目「凍てついた夜」の原題が「COLD SHOULDER」で二作目「渇いた夜」の原題が「COLD BLOOD」三作目「温かい夜」の原題が「COLD HEART」。これはなんぼなんでも早川書房の方が邦題の放題をしとると言いたい(笑)関数グラフみたいにどんどん離れて行った。―――2019年5月末頃読了―――
June 17, 2019
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「猫探偵ジャック&クレオ」ギルバート・モリス著 羽田詩津子=訳 早川書房 2009年8月20日出版 感想メモ【中古】 猫探偵ジャック&クレオ / ギルバート・モリス / 早川書房 [文庫]【ネコポス発送】■あらすじ黒猫ジャックとラグラドールのクレオの飼い主、ケイトと息子のジェレミーは、遠い親戚が遺した海辺の動物屋敷に引っ越してきた。問題はもう一人の相続人、ジェイクと同居せねばならないこと。同居生活には問題が目白押しのうえ、近所では殺人事件が起きてジェレミーが容疑者になってしまった!ジャックとクレオは人間たちの大騒ぎに呆れつつも愛らしく彼らを支え、事件解決の手助けまでしてしまう!?心温まる猫ミステリ。■感想表紙の雑な猫のイラストが気に入って借りた本。題名に「猫探偵」なんてあるので、最初からストーリーにあんまり期待はしていなかった。原題は「What the Cat Dragged In」なので直訳だと「猫が引っ張ったもの」「猫が引っぱり出したもの」あたり?早川書房さんは、どうして「猫探偵」にしちゃったのかな~猫人気で釣りか?とか思いつつ読んだ。人の心情や風景の描写が丁寧で、主人公の人間のケイト・ジェレミー・ジェイコブは人柄がよく描けていた。猫達も個性が分かりやすかった。とても信心深くて誠実だけど家事が苦手なシングルマザーのケイト。料理通で家事や整理や機械にも強い元刑事で作家志望のジェイコブ。人懐こくて温和なメス猫クレオパトラ。凶暴で運動能力に長けているサヴァンナと家猫のミックス、雄の切り裂きジャック。聖句が時々出てきて、聖書に対してとても真摯に向き合っている作家さんだと思った。こんなに誠実に真面目に短絡に聖書と生活を結びつけている現代のお話はとても珍しいと思った。そう、短絡で大分都合の良い向きがあった。昔のアメリカ男女的なふざけたやり取りがあったり、人生と聖句を結びつける思考が巡らされたり、経験による推察もあったりして、ケイトとジェイコブは老成と未熟の違和感があった。作家が二人くらいで各々の得意な所を書いているみたいに何かこう貫く人物像にならないみたいな。でもまあ、会話を楽しんだり楽天的な感じで苦しまずに気楽に読めた。浜辺で暮らす個性的なリアノンとお祖父ちゃんはその家族の事だけで絵本が出来そうだった。あんまりミステリじゃないほのぼの小説だった。動物屋敷なのに、動物のお世話の話がほとんど出てなくてそこもリアルじゃなかった。3匹の猫のお世話だけで毎日必死な私にはかなり突っ込みたい所だった(笑)作家のギルバート・モリスはアメリカ開拓時代や南北戦争時代の作品を数十冊出しているそうだ。その中で現代物は珍しいらしくて、日本ではこれ一冊だけのようだ。1929年5月24日生まれなので90歳!!思ったより楽しかったけど、現代のおとぎ話みたいだったなぁ。何か残ったかと言えば、この世界はこの半世紀で急速に変わってしまった、と改めて思った事かなぁ。5月10日頃読了
May 21, 2019
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「死と踊る乙女」上下 スティーヴン・ブース著宮脇裕子=訳 創元推理文庫 20060728死と踊る乙女 下 /東京創元社/スティ-ヴン・ブ-ス/スティ−ヴン・ブ−ス、宮脇裕子/創元推理文庫【中古】afb『中古』死と踊る乙女 上 (創元推理文庫)『中古』死と踊る乙女 下 (創元推理文庫)■あらすじ【上】リンガム荒野にそびえ立つ遺跡〈九人の乙女岩〉で、 女性の惨殺死体が発見された。 伝説にあるように、 まるで踊っているような姿勢を取って‥‥‥。 つい数週間前、別の女性が重症を負い、 記憶喪失となる事件に続けて起きた惨劇に、 地元警察は色めき立つ。 『黒い犬』に続き、現代英国警察小説の息吹を鮮やかに伝える、 《ベン・クーパー&ダイアン・フライ・シリーズ》 第二弾の登場。【下】〈九人の乙女岩〉で起きた殺人事件を解決するべく、 イードゥンデイルの警察官たちは奔走していた。 クーパー刑事は現場周辺で聞き込みをおこない、 かたやフライ臨時部長刑事は、 最初の被害者である女性と面会して、 犯人の手がかりをつかもうとする。 次第に暴かれる関係者の秘密。 だが、荒野ではまたしても女性が襲われる事件が‥‥‥。 英国警察小説に新風を吹き込むシリーズ第二作。■感想イギリスの中央に位置するリンガム荒野の遺跡〈九人の乙女岩〉で発見された女性のを殺した犯人を、イードゥンデイルの刑事ベン・クーパーと臨時部長刑事ダイアン・フライが事実を探り出して行く。一冊では分厚すぎるのか、このごろ(と言ってもこの本は2006年初版とある)本を読む人が減ったせいか分厚い文庫本を見かけなくなった。持ち歩くには薄い方が楽なんだけどね。そしてベン・クーパー&ダイアン・フライシリーズ二作目とあって(一冊目の『黒い犬』はこれから読もうかどうしようか)二人の関係・感情をどう読み解くのか分からず、(文章そのままなのか含みがあるのか)下の真ん中くらいまで保留とした。(おそっ!)なんでまた二作目から読むかな私。(図書館で見つけてそのまま借りたから)どんな背景・立地での事件なのか知りたくて〈九人の乙女岩〉やイードゥンデイルをネットで調べたが、何時間も費やして曖昧なままだった…(T_T)始めにダービシャー警察とピーク・パーク・レンジャー・サービスへの感謝が書いてあるのでイードゥンデイルは架空の町なのかな。本書では秋の終わり、冬の始まりの物語のせいか終始モノトーンの寒い感じがした。登場人物の人生の描写や現状が続き、風景も人々の暮らしぶりも厳しそうだ。どこにヒントが隠れているか分からないので隅々まで読まないと事件も登場人物の問題も解けなくなってしまうんだけど、人々の生活が語られていくと、私は苦しいところばっかり受け取ってしまうのかな。再びグーグルで見るとストーンサークルのあたりは樹木のない緑の丘や牧場や低い山の稜線が連なる美しい土地で、広々して気持ち良い所じゃないか~♪でも本作の映像としては「ヴェラ~信念の女警部~」のようだなと思った。緻密に描かれた人々の暮らし、生き様。最後は畳み掛けるように疾走する事件と刑事たち。人々の暮らしや家族について読み応えがあり、事件の事はあまり大事じゃなくなったらしくて読了後に時間が経ってしまったら私は犯人が誰か分からなくなってしまった!(T△T)シリーズものは最初から読まないと関係が見えてこなくて、二人の主人公に感情移入できなかったのかもしれない。他の人達の事情もちょっと遠い感じがしたなぁ。20190218読了
April 11, 2019
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『「もう一人の私」があらわれるとき』 ―― 異常心理のカルテから福西勇夫(精神科医)著 彩流社 1999年12月5日 初版第一刷「もう一人の私」があらわれるとき 異常心理のカルテから [ 福西勇夫 ]【中古】「もう一人の私」があらわれるとき−異常心理のカルテから− / 福西勇夫■内容第一線の精神科医が心の病をサイコミステリーのように解読する。「自分の顔」に整形したがった美人モデル、私の真似ばかりする親友、極端な潔癖症、理由のない自殺願望、臓器移植後に起こった「事件」、テーブルが恐い…悲鳴をあげる「もう一人の私」!現代人の心のメカニズムが明かされる。目次1仮面―ナルシシズムでメイクされた美人モデル2性的トラウマから生まれた”もうひとりの私”3臓器移植後の不可解な事件4不安と恐怖の淵に佇む”もう一人の私”■感想著者が症例から、精神状態や原因などを解明して行く。とても分かりやすい説明だった。私は何でも飲み込んで、自分の苦しい感情に気付けず生きていた人間だったので、なぜが人間が自分を騙すようにあちこち省いたり、都合の良さそうな事だけで構築したり、色んな思い込みで決めつけて生きているのか理解できなった。この本はそんな所を噛み砕いて書いてあり、人間の感情、心についてよぉ~く解った気がする。そして、認知バイアスは心理的ショートカットであり、レベルの違いはあれど全ての人間が持ち合わせている感情・整理の仕方・自己防衛であって、つまり人間はみんな違っていて不完全で混乱しているって事を再確認した。この世界の混乱ぶりを分かりやすく語ってくれている本だと思った。P83、84には、免疫系と心の(この先を書いていなくて、 いつかまた借りて書かなくちゃいかんね(⌒・⌒)ゞ)ただ、小説みたいな文章が多くて飛ばしたくなる所が多々あった。簡潔な文章で、症例をもう少し増やしたら最高だと思う。20181117読了
February 18, 2019
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「吊るされた女」―Crime School―キャロル・オコンネル著 2012/6/29務台夏子=訳 創元推理文庫吊るされた女 / 原タイトル:CRIME SCHOOL (創元推理文庫) (文庫) / キャロル・オコンネル/著 務台夏子/訳【中古】吊るされた女 / キャロル・オコンネル■あらすじキャシー・マロリー、ニューヨーク市警刑事。完璧な美貌の天才的ハッカー、他人に感情を見せることのない氷の天使。相棒の刑事ライカーの情報屋だった娼婦が吊るされた。美しい金髪は切られて口に詰めこまれ、周囲には虫の死骸。臆測を巡らす他の警官を尻目に、マロリーは事件を連続殺人鬼の仕業と断定する。だが……。ミステリ史上最もクールなヒロインが、連続殺人鬼に挑む。■感想(ネタバレあり)すごい一冊を読んでしまった。主人公のキャシー・マロリーは多くを語らず、ほとんどが相棒のライカーや友人のチャールズや新人刑事のデルースらの視点からの展開で事件やキャシー・マロリーを知っていく事になる。キャロル・オコンネルのミステリは。「クリスマスに少女は還る」1999年と「天使の帰郷」2003年と「愛おしい骨」2010年を読んでいたが、キャシー・マロリーものの一作目「氷の天使」は何度も題を見たせいか、読んだと思ってた。だけど、どうも読んでいないらしい。いや、一度借りて読めなかった気がするキャシー・マロリーは知らないなぁと思いながら読み終わり、今更調べたら、「天使の帰郷」はキャシー・マロリーものだったんだぁぁぁぁ( ̄Д ̄;筋はなんとなく覚えているけど。キャシー・マロリーがそこまでインパクトのある刑事だったとは気付かなかったなぁぁぁぁ( ̄Д ̄;この「吊るされた女」では、あちこちに散らばった欠片が徐々にどれほど大事かが解って来る。ライカーの行動への疑問が次々に湧いて来て、それがトンネルでの驚きに繋がり、キャシーの子供時代の解明にもなる。前半はなぜ?がどんどん膨らみ、後半はそのなぜ?が少しずつ繋がってキャシーの事を知り、小さな子供がどんなに頑張って生き抜いたのかを理解し、驚くべき小さなキャシーを守りたくなる。そして小さい欠片を集め終わって最後に出来たものは光り輝くダイヤだった。そんな一冊だった。脇役もみんな魅力的で面白かった。特にライカーとチャールズと亡くなった養父のマーコヴィッツとスパローは表に出さないけれど、キャシー・マロリーや人間に対する深い愛情や尊厳や誠意に強く惹かれる。新人刑事デルース、娼婦達の言動や反応にも作家の愛情深い視点を感じる。「クリスマスに少女は還る」「愛おしい骨」で人間に対する愛情深さがひしひしと伝わって来て、忘れられない作家ではあったんだけれど、この「吊るされた女」は冷徹な視点と観察や素晴らしいストーリーと深い愛情で、もうね、すごい一冊でした!!!!!一作目の「氷の天使」を読んでから「天使の帰郷」も読み返さねば。2018年9月17日読了
November 17, 2018
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「悲しみのイレーヌ」ピエール・ルメートル著 感想メモ 橘明美=訳 文春文庫 2015/10/09【中古】afb_【単品】_悲しみのイレーヌ_(文春文庫_ル_6-3)■あらすじ 異様な手口で惨殺された二人の女。 カミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下たちと捜査を開始するが、 やがて第二の事件が発生。 カミーユは事件の恐るべき共通点を発見する……。 『その女アレックス』の著者が放つミステリ賞4冠に輝く衝撃作。 あまりに悪意に満ちた犯罪計画―― あなたも犯人の悪意から逃れられない。 解説・杉江松恋■感想(ネタバレすごくあり注意!) 私は『その女アレックス』2014/9/2を読む前に この本を手に取った。 デビュー作から順番に読もうと思ったから。 だけど、主人公のカミーユ・ヴェルーヴェンに 感情移入すればするほど、 人柄と賢さが好きになればなるほど、 これから彼がどんなに哀しい目に合うのか考えてしまって、 読み進めるのが大変になった。 だって、表紙の写真も題もネタバレだからだ。 なぜ原題の「Travail Soigne 慎重な仕事」に 近い題にしてくれなかったのかな。 「その女アレックス」が売れたから その後でデビュー作品を出す時に 似た題にしたんだろうけど、 ネタバレもいいとこだよね文春スタッフさん(`・ω・´) お蔭で充実した作品にもかかわらず、 私は途中から速読に切り替えた。 辛いし、結末はすぐに解ってしまったので 感情移入は抜いたのであります。 作品は素晴らしいと思います。 映画を観ているように映像が浮かぶんであります。 登場人物がとっても魅力的であります。 売り方に問題ありと思います。(`・ω・´)2018年8月30日読了
October 16, 2018
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「毒蛇の園」ジャック・カーリイ著三角和代=翻訳 文藝春秋 2009/8/4【中古】毒蛇の園 (文春文庫) ジャック カーリイ、 Kerley,Jack; 和代, 三角■あらすじ惨殺された女性記者。酒場で殺された医師。刑務所で毒殺された受刑者。刑事カーソンの前に積み重なる死―それらをつなぐ壮大・緻密な犯罪計画とは?緊迫のサイコ・サスペンスと精密な本格ミステリを融合させる現在もっとも注目すべきミステリ作家カーリイの最新傑作。■感想カーソン・ライダーの3作目。カーソンも相棒のハリーも大好きでしっかりプロットを組み立ててあるのも大好きなのだけど、本作は後半であちこち歪みが感じられてもったいなかった。それにカーソンの恋人ダンベリーへの気持ちが全く伝わらなかったし、ダンベリーの対応もリアル感がなかった。クレアとのやり取りはすごく情が伝わるのに。ううん、なにかこうキンキャノン一族そのものが消化し切れていない気がする。必然性が繋がらないというか、整合性が雑というか。ルーカスは面白そうだったので、もう少し書いて欲しかったなぁ。カーソンがすぐに殺されなかった理由が分からない。いたぶりたいから生かしておいたのかな?ちょっと「都合」が良すぎたかなぁ。もうちょっとしっかり煮詰めて書き直して欲しいなぁ。「不安定会社」って何だろうか?ってずっと不思議だったので、原作を読んだ方がいたら教えて下さい。もう近くの図書館ではジャック・カーリイを借りてしまったので、他館取り寄せしなくちゃいけない。好みの作家さん発掘しなくちゃなぁ。2018.08.04読了
October 11, 2018
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「災厄の町」CALAMITY TOWN エラリィ・クイーン著 青田勝=訳 2005/4/1【中古】 災厄の町 ハヤカワ・ミステリ文庫/エラリー・クイーン(著者) 【中古】afb■あらすじ結婚の前日に姿を消して三年、突然ジムは戻って来た。ひたすら彼の帰りを待ち続けた許嫁のノーラは、何も訊かず、やがて二人は結婚して幸福な夫婦となった。そんなある日――ノーラは夫の読みさしの本の間から世にも奇妙な手紙を発見した。そこには夫の筆跡で、病状の悪化した妻の死を報せる文面が……これは殺人計画か?こんなに愛している夫に、わたしは殺される……。美しく個性的な三人の娘を保つ旧家に起こった不思議な毒殺事件。架空の町、ライツヴィルを舞台に、錯綜する謎と巧妙な奸計(かんけい・意味わるだくみ)に挑戦するクイーンの名推理!■感想私は小学校や中学校の図書室でミステリものを沢山読んだけれど、一番好きなのがエラリイ・クイーンだったと思い出し、クイーンの何が好きだったのか知りたくなって50年も経ってから読み返してみた。ライツヴィルシリーズ第一作として書かれた「災厄の町」は1942年に書かれた話だ。76年前のアメリカの話。エラリイがライツヴィルに着いて、町の様子を観察し、楽しく歩き廻る様子から始まる。今のアメリカよりもずっと堅実で真面目な暮らしぶりに感じる。旧家のライト家に起こる出来事に巻き込まれて、一つの家族と町が変わって行く様子がていねいに書いてある。エラリイが観察者の役割を果たし、裁判の様子も書いてある。そしてエラリイの人間としての苦悩も、町の人々が些細な事で揺れ動く弱さもていねいに書いてある。単なる謎解きや推理だけではなく、人々の暮らしや人生を愛情深く描いてある所が、好きだったのかもしれない。作家の誠実さや暖かさも好きだったのかもしれない。これも体調不良で、途中までしか感想が書いてなかったのでちょっと曖昧な感想になってしまった。2018年5月20日ごろ読了
October 2, 2018
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「百番目の男」ジャック・カーリィ 三角和代=訳 文春文庫 2005/4/1【中古】 百番目の男 文春文庫/ジャック・カーリイ(著者),三角和代(訳者) 【中古】afb■あらすじ連続放火殺人を解決、異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには秘密があった。誰にも触れられたくない暗い秘密だ。だが連続斬首殺人が発生、事件解決のため、カーゾンは過去と向き合わねばならない…。死体に刻まれた奇怪な文字に犯人が隠す歪んだ意図とは何か。若き刑事の活躍をスピーディに描くサイコ・サスペンス。■感想ジャック・カーリィのデビュー作。20年以上、広告代理店で仕事を続け、初めて書いた作品はボツになり、次に書いたのが「百番目の男」。「イン・ザ・ブラッド」でも思ったのだが、状況や情景がありありと脳裏に浮かぶ文章の分かりやすさと表現力が素晴らしくて、映画を観ているような気になった。そして始めからしっかり作られた人物と世界観がブレないので、中に入り込みながらも傷深くなり過ぎず、(今、私はとても過敏に反応してしまうので)話をどんどん進む楽しさがある。カーソンもハリーも大好きな人間で、応援したくなる頑張りと組織内のハードルと、緻密にたぐり寄せる事実とでナゾ解き大好き人間にはごちそうの一冊だった。2017年11月21日頃読了
September 28, 2018
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「ブラッド・ブラザー」ジャック・カーリイ著 三角和代=訳 文春文庫ブラッド・ブラザ- /文藝春秋/ジャック・カ-リイ/ジャック・カ−リイ、三角和代/文春文庫【中古】afb■あらすじきわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の深の目的とは?強烈なサスペンスに巧妙な騙しと細密な伏線を仕込んだ天才カーリイの最高傑作。ラスト1ページまで真相はわからない。■感想カーソン・ライダーシリーズ四作目。始まりからフルスピードの流れに乗せられて、主人公のカーソン(アラバマ州モビール市警の刑事)と一緒に理由も分からず飛行機に乗り、あっちこっちに連れていかれ、殺人現場では槍の視線にさらされ、兄ジェレミーの兇行を食い止めようと駆けずり廻る。まさに駆けずり廻るカーソンと同じ経験をしたような一冊だった。カーソン・ライダーシリーズでいつもの面々の他に、ニューヨーク市警の個性派が沢山出て来る。ブラッド・ハウンド犬のように哀愁を帯びたシェリー・ウォルツやずっと噛み付いてくるアリス・フォルジャーとその部下達など個性派ぞろいだ。私はジャック・カーリィの人物設定が面白くて大好きだ。分かりやすくて、頭の中で映像化しやすい。それは訳者の三角さんが、カーソンに「僕」という一人称をあてがった事や、ユニークな表現を損なわない訳文の力によるものでもあると思う。文春文庫さん、この組み合わせをありがとう!そして、まさかの有り得ないオチに繋いでいく伏線と、解明のみごとなこと。小さなヒントを見逃しては、ラストの醍醐味が薄れてしまうので丁寧に読んだ。五作目の「イン・ザ・ブラッド」から読んでしまった私は、ジェレミーの事は幾分か解っていたので安心して読めた。今はハラハラドキドキが多大なストレスになるもので(^^ゞそれでもジャック・カーリィの本は推理好きにはたまらない逸品なので止められない。最後の解説「すべては驚愕の真相のために―川出正樹」には2010年6月19日に日本の本格ミステリ作家クラブ設立10周年を祝う大賞の初受賞者としてジャック・カーリィ「デス・コレクターズ」が選ばれたことが書いてあった。そしてジャック・カーリィの作品からあふれ出す魅力について、私も感じているけど拙い文章力では表せない沢山のことばが書いてあり、共感に次ぐ共感だった。堪能しました♪2018年4月13日頃読了
September 19, 2018
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「三つの棺」ジョン・ディクスン・カー著三田村裕=訳 ハヤカワ文庫 1935年著【中古】文庫 ≪海外ミステリー≫ 三つの棺 新訳版 / J.D.カー【中古】afb■あらすじ 生命に関わる重要な話があるので、 後日訪問したい―― 突然現れた黒装束の男の言葉に、 酒場で吸血鬼談義をしていたグリモー教授は蒼ざめた。 三日後の雪の夜、謎の人物が教授を訪れた。 やがて教授の部屋から銃声が聞こえ、 居合わせたフェルー博士たちがかけつけると、 胸を撃ち抜かれた教授が血まみれで倒れていた。 しかも密室状態の部屋から、 客の姿は煙のごとく消えていた・・・・ 史上名高い〈密室講義〉を含むカー不朽の名作!■感想 明瞭で細部までていねいで客観的な視点の文章が、 ゴシック的な感じがしてとても面白かった。 どこを読み拾っても濃くて、 みっしりと密度の高い文章がとても好きだと思った。 酒場と言っても、 男性会員制だけの高級クラブのような所で、 1935年当時のイギリスの世界を感じた。 ヒントが随所に転がっていたと気付いたのは 全体が解ってからで、 文章の面白さについ推理を忘れてしまっていた。 この頃の密室ものと言うと、 どうも胡散臭く感じてしまうのだけれど、 カーの世界はドロドロした人間の強欲の描き方も面白く、 50年ぶりくらいで読んだカーの小説は とても楽しかった。 2018年2月12日ごろ読了
August 22, 2018
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「病める狐」上下 ミネット・ウォルターズ著成川裕子=訳 創元推理文庫【中古】 病める狐(上) 創元推理文庫/ミネットウォルターズ【著】,成川裕子【訳】 【中古】afb【中古】 病める狐(下) 創元推理文庫/ミネットウォルターズ【著】,成川裕子【訳】 【中古】afb■あとがき【上】ドーセットの寒村シェンステッドに、 死と暴力が不穏な空気をもたらしていた。 深夜の電話は中傷の言葉をささやき、 移動生活者(トラヴェラー)の一団が村内の林を占拠する。 それらの背後には、フォックス・イーヴルと名乗る 謎の男がいた。 人々の緊張はなおも静かに高まり続け、 ついにクリスマスの翌日、事態は予想外の形で大きく動き出す‥‥‥。 『鉄の枷』に続く、二度目のCWA最優秀長編賞受賞作。■感想 冬の森にうごめくおぞましい存在。 から始まり、弁護士と海軍大尉とのやり取り、 村のあちらの家族、こちらの家族、 トラヴェラーの怯えた子供。 頭の働かない今の私にとっては 登場人物と場面転換が多くて全体像が掴みにくく、 何度か挫折しそうになりながらも ガッチリ大地に立っているような 切れ味最高な女性の大尉に惚れて読み進んだ。 上巻の終わり近くになって ようやく全体像が見えて来て、 一体何が起きて誰が何をしたのか? が、とても気になって下巻を手にした。 繊細に編み込んだレースのように すべての事が絡み合っている。【下】シェンステッドのいちばん長い日―― 2001年12月26日はゆっくりと過ぎていく。 村を訪れた女性軍人ナンシーは、 その身に迫る危機をまだ知らない。 すべてを操る謎の男のフォックスの、 いまだ判然としない正体と狙いは何か? 村の老婦人エルイサの死を中心に広がる いくつもの事件の環は、 居合わせた人々を巻き込み、 いま静かに閉じようとしていた。 ミステリの新女王、会心の傑作。■感想 ミネット・ウォルターズの小説は これで7冊目だろうか。 「昏い部屋」は好きだったけれど 「女彫刻家」は思い出すとゾッとする。 人間のオドロがいっぱい詰まった話が多かったなと、 今、作品紹介を読み返して思い出したのだった。 何が起きていたのか知りたくて 下巻はすぐに読んだ。 まあ、犯人は意外ではあったものの 何か釈然としない。 ―以下ネタバレ注意― 色んな人が救われて良かったし、 ベラもジェームズもそうなるだろうと思う所となり、 ほっとしたけれども。 ドロドロの噂話やら浮気話やら、 旧家の面子やら児童虐待やら、 不快な話が多かった割には 動機が今ひとつピンと来ない感じがした。 明確な主人公がいないのに、 最後まで読ませる力はとても強いと思う。 (2018年7月5日読了)
July 15, 2018
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「制服捜査」佐々木譲著 感想メモ【中古】afb_【単品】_制服捜査 (新潮文庫) _譲,佐々木■あらすじ札幌の刑事だった川久保篤は、道警不祥事を受けた大異動により、志茂別駐在所に単身赴任してきた。十勝平野に所在する農村。ここでは重大犯罪など起きない、はずだった。だが、町の荒廃を宿す幾つかの事案に関わり、それが偽りであることを実感する。やがて、川久保は、十三年前、夏祭の夜に起きた少女失踪事件に、足を踏み入れてゆく―。警察小説に新たな地平を拓いた連作集。(20081202発売)■感想「逸脱」「遺恨」「割れガラス」「感知器」「仮想祭」川久保巡査部長の連作短編集。道警の癒着が露呈してから短期での異動になり、15年も刑事を務めたのに初めて駐在所での勤務、という設定に驚いた。事実はどうなっているのだろうかとネットでを少し調べたけれど分からなかった。ただ、組織としての問題点はだいぶ理解した。日本では間違いや失敗があると責任追及ばっかりして、同じ事が起きないように環境や条件を改善して行くのが下手だよねぇ。だから隠したくなるし、悪循環は変わらないんだねぇ。正面から向き合えないんだねぇ。などと思う私。川久保巡査部長はとても誠実で、現場をしっかり調べて聞き込みをし、田舎町の有力者達との癒着の問題にも向き合い、コツコツと事件を収めていく様子がとてもリアルだった。推理ものとしてとても面白かった。2016年のメモから起こしたので、感想がちょいと曖昧だけども‥‥‥(⌒・⌒)ゞ―体調不良で書けなかった読書メモ―(2016年9月24日読了)
July 12, 2018
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「嫌われる勇気」―自己啓発の源流「アドラーの教え」―岸見一郎・古賀史健共著 ダイヤモンド社【中古】【古本】嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え/岸見一郎/著 古賀史健/著【ビジネス ダイヤモンド社】■紹介文■フロイト・ユングと並び「心理学のさん大巨頭」と称され、世界的名著『世界を動かす』の著者D・カーネギーなど自己啓発のメンターたちに多大な影響を与えたアルフレッド・アドラーの思想を、1冊に凝縮!!悩みを消し去り、幸福を生きるための具体的な「処方箋」が、この本にすべて書かれている。■感想■アドラーについての本を読んでおこうと思い、地元の図書館にあるものを借りました。これは、哲人と青年の対話形式でアドラー心理学を具体的に理解しやすく書かれた本だと思います。私的には、これまで探して集めた知識や思いを端的に書いてある本だと思いました。自分や人間みんなが持っている、思い込みや決めつけというバイアスに気付いたり分析したりする始まりには有用だと思います。ここから始まってあっちこっちに派生して色んな角度から調べたり考えるは良いと思いました。ただ、青年があまりにも反駁に徹していて、腑に落ちる所がなく進むために、心の整理整頓がスムーズに行かず、読後感が爽やかではないと感じました。折角の対話形式なのにどちらも一方的な所が不快に感じたようです。感情を切り離して資料にするのに良いかなと思いました。――体調不良で書けなかった読書メモ――(2017年11月1日読了)
July 9, 2018
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「いつか還るときは」シャーリン・マクラム著浅羽莢子=訳【中古】 いつか還るときは ミステリアス・プレス文庫/シャーリン・マクラム(著者),浅羽莢子(著者) 【中古】afb■あらすじかつてのスター歌手ペギー・マリアンに差出人不明の絵葉書が届いた。死んだ恋人からの脅迫としか思えぬ内容に怯えた彼女は、スペンサー保安官に助けを求めた。折りしも女子高校生が失踪する事件が起きて町は不穏な空気に包まれる。そしてペギーに再び不気味な葉書が・・・・・2つの事件の裏には一体何が?『丘をさまよう女』の著者が放つマクヴィティ賞受賞作。■感想だいぶ前にシャーリー・マクラムのアパラチアもの「丘をさまよう女」を読み、大きな視点で自然や人間を描いているところがとても良かったので、アパラチアもの第一作の本書を読んでみた。ウェイク郡の保安官スペンサーを中心に、田舎町に住む人々の日常がこまかく描いてある。ヴェトナム戦争に従軍して家族を失った人々や、帰還兵達の苦しみが理解できずに手探りしている人々。1986年当時のアメリカののどかな田舎町の不穏な出来事にじりじりしながら読んでいると、最後にあっけない終焉が訪れて力が抜けた。丁寧に日常が書かれていたのでどう収集してくれるのかと期待が膨らんだ分、後味が悪くてがっかりした。読む前にあとがきを読んだ時は、新保博久氏がマクヴィティ賞をいかに信用していないかをくどくど書いていあり、内容がなかなか分からなかった。読後に読んでみると実に共感してしまった!(笑)ただ、30年前のアメリカやベトナム戦争の爪痕を理解するのにとても勉強になった。―体調不良で書けなかった読書メモ―(2018年4月頃読了)
July 8, 2018
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「ユニット」佐々木譲著 感想メモ【中古】 ユニット / 佐々木 譲 / 文藝春秋 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】■あらすじ斬れて有能な刑事と評判の夫によるDVに耐えかねて、5歳の息子を連れて着の身着のまま旭川を逃げ出した門脇祐子。7年前に妻と幼子を17歳の少年に殺され、苦しさから逃れようと酒に溺れ、自暴自棄な日々を送っていた真鍋篤。妻に出て行かれて一人となった淋しさを抱えつつも、誠実に設備会社を経営する波多野正明。職業安定所で偶然すれ違った3人がある事件をきっかけに出会い、運命を共有して行く。■ 感想サスペンスだえけれど、犯罪被害者の苦しみが胸に迫るように描かれている。ニュースでむごい事件を知る度に思う当事者や家族の苦しみが、とてもわかり易く書いてある。ただ生きるだけで大変なこの世界で手かせ足かせ重荷を背負ったらどれほどの苦しみかを、犯罪者や無関心な人達にも知ってもらいたいものだと思う。でも救いと希望のある展開もあり、人間のたくましさや柔軟性に力付けられる。苦しんだ人間は、真価を見出したら何より強くなれると信じているのでとても励まされた。――・――・――・――・――・――・――・――この先はちょっとネタバレになるのでこれから読む方は読まないで下さい。夫からレイプ同然の性生活を強いられて来た祐子が、たった3週間でトラウマを乗り越えられるとはどうしても思えない。真鍋の人物像の厚みに対して、女性の人物像が薄くて残念。―体調不良で書けなかった感想メモ―(2016年10月7日頃読了)
July 8, 2018
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「こころと脳の対話」河合隼雄・茂木健一郎対談潮出版社 2008年7月19日発行2006年2月号、3月号、4月号、8月号月刊『潮』誌上のシリーズ対談(『脳とこころ』の不思議に迫る)を単行本のために構成しなおしたもの。【中古】 こころと脳の対話 /河合隼雄,茂木健一郎【著】 【中古】afb■内容こころと脳の専門家が、それぞれの専門分野を基軸に互いの謎を話し合う対談。■感想箱庭療法の意味、効果を初めて理解出した。河合隼雄さんの話し方が京都弁もあってか、とても感情豊かで愉快で楽しくて解りやすかった。多面的な思考と観察力と経験値の豊かな二人で話し合う事から、色んな方向にどんどん発展するのがとてもおもしろかった。P112の「世の中を縦糸と横糸で見てみる」では茂木さんが現代においての世界観について質問すると、河合さんは、現代を構築している横糸ばっかり見ていて横糸があるのを忘れているから、おもしろい事に気付かなくて腹立てるんじゃないか、と言うような事を話している。京都弁で語っているそのまま載っているので柔らかくて臨場感があって、するっと入ってくる。茂木さんは京都の河合さんの所で箱庭を作った事がとても大きな経験だったようで、その事から何度も二人の会話が弾んで発展して行くのが、私のこの頃のワークの経験値の発見にも似ていて共感した。茂木さんはよく「変な人」と言われる人について、それはその人が「変な人」なんじゃなくて、そういう世界で生きているとじゃないかと発言する。すると河合さんは、創造的な活動をする人は、みんなそっちに心が開かれてるので、常識と違うことをしても創造的だと許容される。ふつうに見える人がそれをすると勝手者と言われるけれど、縦糸を見ている人だから、と話す。P138では茂木さんが河合さんとの話し合いで「夢のなかでは『意味』というものが、現実の束縛から離れてつながっているんだ」と気付いた事によって夢の凄さに気付いた事が書かれていた。調度わたしは、「夢」関連の明晰夢の本も読んでいたので少し脳と夢について理解できたかもしれない。河合さんは箱庭の効果の脳活動の研究について質問し、色んな方向からの研究を提案している。そんな風な、視点の違う二人の思考と感覚と捉え方のキャッチボールがとても面白い。この話し合いから何が生まれたのか調べたくなった。こんなに刺激された対談ものは初めてだと思った。河合さんは2007年に亡くなっていて惜しい方を亡くしたものだと今頃思った。目次で興味を持った所を読み返すのも面白そうなので目次を残しておく。■目次・第一回ユングは人間の何を見ようとしたのか12学生時代の箱庭体験16安易に「言語化」することの怖さ21夢の意味を自分で考えてみる23心の盲点が夢に現れる28「気づき」の感覚を忘れた科学31「関係性」とは心のつながり34「愛は盲目」は脳科学的に正しい38「中心統合」の欧米、「中空均衡」の日本40「三年に一人、本物が出ればいい」43無用な決まりごとが多すぎる47「診断を下す」ことが患者を苦しめる50「私」とは「関係性の総和」54変化という「可能性」に注目する57脳科学では心の一部分しか見えない61近代科学が排除してきたもの64ひとつの事例は普遍に通ずる66話を聞くだけで疲れてしまう人69人は極限で同じ心の動きをする74・第二回箱庭のなかの「生」と「死」80「わからない」ことを大事にする84ニワトリが牛耳る不思議な世界86箱庭をして帰って行ったゴリラ88世界全体を見ている「誰か」90そのアイテムを選ばせる「無意識」93東洋人の箱庭には自然が多い96無意識をつかみ出すとっかかり98「シンクロ」はどうして起こるか102非因果的連関をおもしろがる104因果のしがらみを解きほぐす106箱庭で体験するシンクロニシティ109世の中を縦糸と横糸で見てみる112関係性でのみ成り立つ確実性114科学主義との果てしない戦い117箱庭をしているときの脳活動119科学と「人生」との乖離123身の上話に夢中になる運転手126「運命の人」も文脈のせい?128・第三回脳治療の倫理的課題132脳科学に限界はあるか136夢のなかで「意味」がつながるとき138言語に依存しすぎの現代人144相手の苦しみを正面から受け止める147「中心をはずさずに」151相づちの達人157相手の「魂」だけを見つめる160治療が必要かどうかの見きわめ164「偶然」というものを大事にする167何年も経って意味がわかる夢171全体に、平等に注意力を向ける176数学から心理学の世界へ178脳科学の「科学的真実」への疑問182現代人の不安の根本原因186「関係性」を扱う科学は生まれるか188答えを与えるより、悩みを共有する191「わかった気になる」落とし穴195●河合隼雄1928年、兵庫県生まれ。臨床心理学者。元文化庁長官。京都大学数学科卒。1962~65年、スイスのユング研究所に留学。日本初のユング派分析家となる。ユング心理学の普及、臨床心理学の発展に力をつくす。また、欧米と異なる日本人の心性を考えるために、日本の神話や宗教を研究。京都大学教育学部教授、国際日本文化研究所センター所長を経て、京都大学名誉教授。2007年逝去。●茂木健一郎1962年、東京都生まれ。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究所物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授のほか、早稲田大学、東京大学などの非常勤講師も務める。
August 20, 2017
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「殺人者の顔」ヘニング・マンケル著柳沢由実子=訳 創元推理文庫 20010126【中古】 殺人者の顔 創元推理文庫/ヘニング・マンケル(著者),柳沢由実子(訳者) 【中古】afb■あらすじ雪の予感がする一月八日の早朝、小さな村から異変を告げる急報がもたらされた。駆けつけた刑事たちを待っていたのは、凄惨な光景だった。被害者のうち、無残な傷を負って男は死亡、女も「外国の」と言い残して息を引き取る。片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。ヴァランダー刑事を始め、人間味豊かなイースタ署の面々が必死の捜査を展開する。曙光が見えるのは果たしていつ・・・・・・?マルティン・ベック・シリーズの開始から四半世紀――スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの幕があがる!■感想初めてクルト・ヴァランダーのTVドラマシリーズを見たのは、7~8年ほど前だろうか。スウェーデンで創られた1話2時間もので、だぶだぶの体で常に感情に揺さぶられているクルト・ヴァランダーだった。3作品ほど観た記憶があり、糖尿病に苦しみ、女性への欲望に苦しみ父親・離婚した妻・娘との交流に苦しむ刑事の話しで、事件を解決する事より私生活が中心になっているドラマだった。推理モノが好きな私は25点の感想だった。その次の年だったか、今度は英国BBC放送で創られた「殺人者の顔」を観た。そこには私生活で窮地に陥り苦しみもがきながらも、事件を緻密に調べあげて真実を絞り出して行く誠実な刑事ヴァランダーがいた。真っ直ぐに向かうあまりにいつも怪我だらけで痛みにうめきながらも事件解決だけに集中する所が非常に好感が持て、100点だった。正直、スウェーデンのヴァランダーとは別人のようだった。その後、BBCで観た続編はどれも秀逸だった。少しずつ事実をつなぎ合わせ、私生活での苦しみの中、命がけで事件に向かう。いつも満身創痍。苦しみながら、だけど諦めない。ヴァランダーを応援せずにはいられないのだった。それで今頃になって原作のヴァランダーはどんな人かと思い、今年の3月に読んだのが「目くらましの道」上下だった。(「目くらましの道」上・下)今回はクルト・ヴァランダーシリーズ始まりの「殺人者の顔」が塩釜図書館になかったので、取り寄せで読ませていただいた。実はこの少し前に違う人の推理モノを読んでいたのだが、面白そうなのに全然進まなくて進まなくて困っていた。もう私は推理小説は読めないのかな?と思うほど、一日1ページしか進まないのだった。所がリクエストを忘れた頃に届いたヘニング・マンケルの「殺人者の顔」は、ちょっと覗いたとたんに惹き込まれ、どんどんどんどん読んでしまった!それはそれは分かりやすい文章と流れで、ヴァランダーの持つ情報が何と何で、それを繋いでこう行動してこう思い、それからこのように推理して行き、間違いを認めて立ち返り、また真実を探るために書類を漁り・・・。畳み掛けるような展開に、自分も一緒に事件を解いている状態になるんである!他の刑事達の頑張りもすごく解るし、家庭の事や健康の心配も自分の事のように感じるんである!そのように、時間軸に沿って書いてあるから分かりやすいのかもしれないし、ほぼ、ヴァランダーの視点だけで書いてあるから情報も感情もヴァランダーに沿って考え集中して読めるから面白いのかもしれない。登場人物が沢山いて、その一人一人の視点で書いてある小説は多角的に読み取る事が出来て広がりがあるし深く読み解く事も出来るけれど、転換転換が続くと誰が何をしていたっけ?と状況把握に時間が掛かるので集中して読むのには辛いんだなと、今頃気付いた次第。ヘニング・マンケルの小説は私にとってとても読みやすい!一緒に推理出来て脳が喜ぶ!これだな( ̄ー ̄)VBBCで創られた「殺人者の顔」は数回観たのでストーリーは知っているのに、ヴァランダーの細かい視点や考えが分かって小説は小説で非常に理解が深まって面白かった。ドラマでは読み取れていない所が沢山あったんだなと事情がよ~く理解できた。太ってしまった不健康な理由も、孤独に苦しむ理由も、非常に個性的で頑固な父親との交流も、ようやく今頃腑に落ちた。でも私の中の、誠実でデリケートで優しくて不器用で真摯で、惑いの中で生きている刑事なのは変わらない。とても素晴らしい一作目だった。↓こちらはBBCのドラマ刑事ヴァランダー シーズン2 第1話 殺人者の顔【動画配信】
August 10, 2017
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「黄昏に眠る秋」ヨハン・テオリン著 三角和代=訳 早川書房 2011年4月15日発行【中古】 黄昏に眠る秋 ハヤカワ・ミステリ文庫/ヨハンテオリン【著】,三角和代【訳】 【中古】afb■あらすじ霧深いエーランド島で、幼い少年が消えた。母ユリアをはじめ、残された家族は自分を責めながら生きてきたが、二十数年後の秋、すべてが一変する。少年が事件当時に履いていたはずの靴が、祖父の元船長イェルロフのもとに送られてきたのだ。急遽帰郷したユリアは、疎遠だったイェルロフとぶつかりながらも、愛しい子の行方をともに追う。長年の悲しみに正面から向き合おうと決めた父娘を待つ真実とは?スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀新人賞に加えて英国推理作家協会賞最優秀新人賞を受賞した傑作ミステリ。■ヨハン・テオリン1963年にスウェーデン、ヨーテボリに生まれる。ジャーナリストとして活躍するかたわら、新聞や雑誌に短編を発表。2007年に刊行されたデビュー長編である本書はたちまちベストセラーとなり、世界20カ国以上で刊行された。そのほか現在までに長編2作が刊行され、英国推理作家協会賞を受賞するなどいずれも高い評価を受けている。■感想過去の事は1936年7月、スウェーデン南東のエーランド島から始まっている。1972年9月に、3歳のイェンスが初めての冒険に繰り出し、霧深い石灰岩高原に出て行ってニルス・カントに出会う。それがユリアの息子イェンスの失踪の始まりだった。23年後のユリアは苦しみ抜いて酒浸りになり、看護師の仕事も長期休暇中で、暮らし向きの厳しさや精神面の混乱が長々と書いてあるので、読み続けられるのか?と始めは危ぶんだ。ユリアの父親の元船長イェルロフはリウマチの痛みに苦しみつつ身体の自由が利かない身で、孫イェンス失踪に関わる事実をコツコツと調べて行く。車から降りるだけでも大変苦労しながらもちょっとジョークをはさみつつ、出来る事をコツコツ調べて行くのだが、このイェルロフ船長が好人物で大好きになった。何でも自分で抱えがちで娘とうまく交流出来ない所も、船長という責任のある仕事をしていたからかなと思った。寡黙なイェルロフ船長は尊厳に満ちた感じがする。昔の事は、島の問題児のニルス・カントを中心に書かれており、現在のユリアとイェルロフの行動と過去の出来事が、徐々に終わりに向かって近付いて行く所が非常にスリリングだった。とても読み応えがあり、登場人物も奥行きがある人ばかりでとてもリアルだった。スェーデンでも島の話しは初めて読むので生活習慣や経済面などを知りつつ読んだ。通りを「ガータン」と言うのだが、この発音がとても気に入ってしまった。非常に丁寧に書いてあるので、エーランド島については詳しくなったような気がしたくらいだ。始めは丁寧過ぎるのかもと思いながら読んでいたが、最後の方で全部拾って繋がっていた。これが初長編だなんて驚きだ。★★★★★5満点
May 7, 2017
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「自己分析と他者分析―自分のこころをどう探るか」 (集英社文庫)岸田秀(著)町沢静夫(著)【中古】 自己分析と他者分析 自分のこころをどう探るか / 岸田 秀 / ベストセラーズ [単行本]【メール便送料無料】【あす楽対応】・岸田秀 日本の心理学者、精神分析学者、思想家、エッセイスト、和光大学名誉教授。・町沢静夫 日本の精神科医、評論家。 心理学や精神疾患、少年犯罪等についてマスメディアに執筆し、100冊以上の著書がある。これは岸田秀さんが自分の症状について町沢さんと語り、分析する本でした。とても具体的な内容で何をどう細分化して行くのか、どんな症状が何に属するのか、とても解りやすかったです。私の問題や、他の人についても具体的に分析しやすい内容でした。以下、読書メモです。p65町沢「うつの患者さんだけは非常に真面目な人が多い。誠実」p66岸田「インテレクチャライゼーション。 感情的なレベルを無視して、知的なレベルだけで考えて合理的な答えを出して、 解決したと思っている。」p67岸田「幼児期のコンプレックスから来ているなら、 感情的なものまで明らかにして、 感情的な体験として過去を再体験する必要がある。 強迫性人格障害の中でおそよ40%は、 強迫神経症も持っている。 つまり強迫性人格障害でも強迫神経症を呈しない人の方が多い。 強迫神経症というのは一つの果実みたいなもので、 それを生み出すのは性格上の問題。 強迫神経症で強迫性人格障害が背景にある人の治療は 性格分析まで必要。」p70 強迫観念の意味。p71 親子関係の問題とは別のところで、 強迫症状に悩んでいた。 p72町沢「強迫神経症の治療には、行動療法が効果がある。 強迫観念タイプ。 英語で言えばオプセッシブ・コンパルシブ・ディスオーダー。 つまり強迫性障害。 誰だってみんなそこそこおかしんだから、 ディジーズ(病気)というのはやめようというのがあって ディスオーダー(障害)になっている。」 ――――――――続きはいずれ―――――――――
March 18, 2017
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―――「目くらましの道」上 の続き――――「目くらましの道」下 ヘニング・マンケル著 柳沢由実子=訳 創元推理文庫?【中古】 目くらましの道(下) 創元推理文庫/ヘニングマンケル【著】,柳沢由実子【訳】 【中古】afb?■あらすじ斧で殺害し、頭皮の一部を剥ぐ凄惨な殺人。犯人は次々と犠牲者を増やしていった。元法務大臣、画商、そして盗品の売人。殺害方法は次第にエスカレートし、三人目は生きているうちに目を塩酸で焼かれていた。犠牲者に共通するものは?なぜ三人目は目を潰されたのか?常軌を逸した連続殺人に、ヴァランダーらの捜査は難航する。現代社会の病巣を鋭くえぐる傑作シリーズ第五弾。CWAゴールドダガー受賞。■感想若者が自分に火をつけて自殺する、この世界はいったいどうなってしまったのかとヴァランダーは苦悩する。暴力の犠牲になる人々を思いヴァランダーはなぐさめのない問いに苦悩する。立て続けに起きる事件にもみくちゃの中、あらゆる物証・ヒント・印象を整理しようとヴァランダーは時々一人で立ち止まって考え込む。フーグルンドに話しをしてまとめる。他の刑事達の話を聞く。実に誠実で堅実で賢い仕事振りで、私生活のダメっぷりとのギャップがリアルである。益々ヴァランダーが好きだと思った。それにしても犯罪とは、社会の傷からもれた膿のようだ。今回は、犯人に同情してしまい、何とも複雑な思いだった。本当にヘニング・マンケルは大切な気持ちを文章にするのが上手で、素晴らしい書き手だと思った。久々に推理小説を堪能した。ようやく更年期障害と大震災を乗り越えつつあるのかもしれない。
March 7, 2017
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「目くらましの道」上 ヘニング・マンケル著 柳沢由実子=訳 創元推理文庫【中古】 目くらましの道(下) 創元推理文庫/ヘニングマンケル【著】,柳沢由実子【訳】 【中古】afb?■あらすじ夏の休暇を楽しみに待つヴァランダー警部。そんな平和な夏の始まりは、一本の電話でくつがえされた。呼ばれて行った先の菜の花畑で、少女が焼身自殺。目の前で少女が燃えるのを見たショックに追い打ちをかけるように、事件発生の通報が入った。殺されたのは元法務大臣。背を斧で割られ、頭皮の一部を髪の毛ごと剥ぎ取られていた。CWA賞受賞作、スウェーデン警察小説の金字塔。■感想スウェーデン国営放送で作られた「スウェーデン警察クルト・ヴァランダー」シリーズのドラマを初めて見たのは随分前の事で、だぶだぶした大柄のおじさんがバタバタと日常を苦悩し、煩悩まみれの中でついでに事件を追う感じがあって、あまり良い印象はなかった。その後、英国とスウェーデンによって制作され、BBCで放送された「刑事ヴァランダー」シリーズは、主演のケネス・ブラナーも映像も脚本も他の役者も素晴らしかった。一見冴えない中年刑事の冴え渡る観察力、推理力、共感力、良心の呵責と苦悩と孤独にまみれているのに表現が下手なので家族との亀裂にあえいでいる。それでも深い愛情と正義感で、昼となく夜となく殺人犯を追い詰めるために自分を削ってすり減らしながら生きている様は、サスペンスとしても人間としても、大変魅了されて一番好きなドラマになった。先月、あちこち調べていたらヘニング・マンケルが2015年に亡くなった事を知り、もうこれ以上はあの繊細で人間を突き詰めたドラマを観る事ができないのだとがっかりした。そして、そう言えばヘニング・マンケルの小説は全く読んでいなかった事に思い至って、図書館から借りて来たのが「目くらましの道」上だった。最近の私の常で、集中力が全くないため始めの方を読むのに4日くらいかかった。その後、本題に突入すると今までドラマで見て来た、地べたをはいずるようにコツコツ捜査し、頑固な父親と別れた妻・娘との関係に苦悩するヴァランダーの心の内が詳しく分かって面白かった。そうか、この時こんな事を考えていたのか。あの時はこんな風に感じていたのか。ドラマでは分からなかった事情が理解出来た。事実を突き詰めて、少しずつ解明して行くのも、同僚達との小まめな情報交換や読み筋の交換など、丁寧に書いてあって、状況を理解するのにとても良かった。ドラマでは省いてある所があったり、細かい説明もされないので、見る側があれとこれを繋いだり接ぎ合わせたりするのだが、それでは足りなくて、録画したものを何度も見直したりしたものだった。小説にはヴァランダーの心情が書いてあるので、ドラマ映像を思い出しながら理解を深める事が出来た。ただ、ドラマの菜の花畑のシーンの印象が強くてその後の記憶がない。親族とのやり取りは覚えているのに。原作を読んでみて、益々BBCで放送された「刑事ヴァランダー」は原作に近くて世界観が見事に表されていると思った。上巻は本題に入ると止まらなくなった。人間の哀しみと恐怖と嘆きと怒りについて読んでいる感じ。 読み手は、途中で犯人が分かるのだが、私は推理が好きなので、普通は犯人が分かると面白みが薄れて止むを得ず惰性で読み切ったりする。でも本作は犯人の心情を知ろうと思ったり、その人までヴァランダー達がどうやって辿り着くのか、逆に面白くて止まらなくなった。繊細で細かい点も、ヴァランダーのドジで子供っぽい所も、仲間の反応や大きな流れも面白い。ヘニング・マンケルは非常に優れた作家だと思い益々残念だと思った。―――――下へ続く―――――
March 4, 2017
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「セラピストは夢をどうとらえるか―五人の夢分析家による同一事例の解釈」川嵜克哲著 誠信書房 2007年9月角野 善宏 (著), 大山 泰宏 (著), 皆藤 章 (著), 河合 俊雄 (著), 川嵜 克哲 (著, 編さん)セラピストは夢をどうとらえるか 五人の夢分析家による同一事例の解釈・角野善宏 京都大学教育学研究科附属臨床教育実践研究センター准教。・大山泰宏 教育学研究科准教授。・海藤章 日本の心理学者・臨床心理士。京都大学教授。・河合俊雄 日本の心理学者。京都大学こころの未来研究センター教授。 財団法人河合隼雄財団代表理事。日本ユング派分析家協会副会長。・川嵜克哲 学習院大学文学部 心理学科 文学部 心理学科教授5人の心理学者達による一人の患者の夢をどう理解するか、と言う珍しい内容だったので読み始めた。途中から速読に・・・と言うより拾い読みした。想定内の内容で、思ったほど面白くなかった。
February 18, 2017
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「南方熊楠英文論考「ネイチャー」誌篇」 単行本 2005/12南方 熊楠 (著), 飯倉 照平 (監修), 松居 竜五 (翻訳), 中西 須美 (翻訳), 田村 義也 (翻訳)【送料無料】 南方熊楠英文論考「ネイチャー」誌篇 / 南方熊楠 【本】――――――――――――――――――――読書感想文を書こうとすると挫けるので、これからは読書メモとしようと思う。読んだり書いたりの集中力が弱くて去年読んだものを全くメモすら出来ていない。メモなら気楽に書けそうだ。――――――――――――――――――――去年の12月だったか、BSで南方 熊楠の番組の再放送を見た。凄まじい天才であり、根気と努力で邁進するエネルギッシュな人だと知り、驚いた。知らなかった~~~!!■THE歴史列伝#22「奇人の天才博物学者 南方熊楠」 http://www.bs-tbs.co.jp/retsuden/bknm/22.html 「歩く百科事典」とよばれた奇人の天才博物学者。 明治中期に科学誌「ネイチャー」に50を超える論文を発表。 新種の粘菌を発見し、世界の学者を驚かせた。 のちに日本の自然保護運動の草分けになり、 生涯在野を貫いた信念の生涯を読み解く。――ウィキペディアより――●南方 熊楠(みなかた くまぐす、1867年5月18日(慶応3年4月15日) - 1941年(昭和16年)12月29日)は、日本の博物学者、生物学者(特に菌類学)、民俗学者。菌類学者としては粘菌の研究で知られている。主著『十二支考』『南方随筆』など。投稿論文や書簡が主な執筆対象であったため、平凡社編集による全集が刊行された。英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ラテン語、スペイン語に長けていた他、漢文の読解力も高く、古今東西の文献を渉猟した。「歩く百科事典」と呼ばれ、熊楠の言動や性格が奇抜で人並み外れたものであるため、後世に数々の逸話を残している。私の知らない事は山のごとしだが、知ったからにはもっと知りたいと思った。英国留学中に50を越す論文をネイチャーで発表したと言うので、調べると面白い題ばっかりなもんで非常ーに興味が湧いて、市民図書館から借りた(他館からの取り寄せ)。――目次――第1章 東洋の星座 解説 星をグループ化して星座とすること M・A・B 東洋の星座第2章 東洋の科学誌に関する小論 解説 動物の保護色に関する中国人の先駆的観察 コムソウダケに関する最古の記述 蛙の知能 宵の明星と暁の明星 網の発明 アミミドロに関する最古の記述 コノハムシに関する中国人の先駆的記述第3章 虻と蜂に関するフォークロア 解説 古代人のブーゴニア俗信についての質問 C・R・オステン=サッケン 蜂に関する東洋の俗信 『牛から生まれた蜂の古説(ブーゴニア)とハナアブの関係』C・R・オステン=サッケン 琥珀の起源についての中国人の見解 『古代人のブーゴニア伝説の解説への追補』Ⅵ中国と日本の文献に登場するハナアブC・R・オステン=サッケン ブーゴニア俗信に関する注記―インドにおけるハナアブの存在第4章 中国古代文明に関する小論 解説 北方に関する中国人の俗信について 洞窟に関する中国人の俗信 幽霊に関する論理的矛盾第5章 拇印説 解説 「指紋」法の古さについて1 「指紋」法 「指紋」法の古さについて2 第6章 マンドレイク 解説 マンドレイク1 マンドレイク2 マンドレイク3第7章 さまよえるユダヤ人 解説 さまよえるユダヤ人1 さまよえるユダヤ人2 さまよえるユダヤ人3 さまよえるユダヤ人4第8章 驚くべき音響・死者の婚礼 解説 驚くべき音響1 驚くべき音響2 驚くべき音響3 驚くべき音響4 死者の婚礼第9章 ロスマ論争 解説 シュレーゲルから南方熊楠宛書簡(四通) セイウチ 第10章 ムカデクジラ 解説 ムカデクジラ1 ムカデクジラ W・F・シンクレア ムカデクジラ2 スコルペンドラ・ケタケア1 スコルペンドラ・ケタケア ジェイムズ・リッチー スコルペンドラ・ケタケア C・C・B スコルペンドラ・ケタケア ジェイムズ・リッチー スコルペンドラ・ケタケア2 スコルペンドラ・ケタケア コンスタンス・ラッセル スコルペンドラ・ケタケア3第11章 日本の発見 解説・ 日本におけるタブー体系 概要 日本におけるタブー体系 日本の発見第12章 日本の記録にみえる食人の形跡 解説 日本の記録における食人の形跡 第13章 隠花植物 解説 ビトフォラ・オエドゴニア ビトフォラの分布 G・S・ウェスト ビトフォラの分布 ホオベニタケの分布 ホオベニタケの分布 ジョージ・マッシー 魚類に生える藻類 魚類に生える藻類 ジョージ・マッシー 粘菌の変形体の色1 粘菌の変形体の色2第14章 雑纂1――俗信・伝統医術 解説 貝合戦による占いについて1 貝合戦による占いについて2 虫に刺されたことによる後天的免疫 頭蓋の人為的な変形、および一夫多妻制に関する習俗のいくつか 魔よけの籠 石、真珠、骨が増えるとさること 古代の開頭手術 第15章 雑簒2――自然科学など 解説 エン麦の黒穂菌を画家の顔料として使うこと 水平器の発明 中国のペスト ライオンの天敵 トウモロコシ インディアン・コーン1 インディアン・コーン2 中国の蟹災害 タコの酢とクラゲのアラック 「オロコマ」という奇妙な哺乳類 花粉を運ぶコウモリと鳥あとがき『ネイチャー』掲載論文関連年表英文論文と関連する日本語著作 ■感想メモ これらは問答書簡形式で綴られていて、 色んな学者さん達と知識の交流でもあった。 2015年12月15日には 「南方熊楠英文論考[ノーツ アンド クエリーズ]誌篇」 が出版され、 これで南方熊楠の膨大な英字論文が 全部読めるようになった。 どんな事が書いてあるのかワクワクして読んだが、 ものすごい知識があるので、 何をしていても色んな関連が見えてくるらしくて 博学とは、博物学とはこう言う事を言うんだなと思った。 仰々しい論文が書いてあるのかと思っていたので、 分かりやすい文章や、 自分の知っている事と 身の回りのちょっとした発見との繋がりとか疑問とか、 私も普段興味を持ったり話したりする内容もありで驚いた。 「ムカデクジラ」も気になったのだが、 海の未確認巨大生物らしい。 へ~~そんな話しが昔からあったのだと ちょっと気が楽なった。 日本に食人の習慣があったのかと 恐る恐る読んだが、 甚だしい飢餓に苦しんだ末に 亡くなった人を食べる事や、 人柱など犠牲に捧げる事があったようだ。 中国から伝わった文書などの伝承があるようで、 自分の中では許容範囲だった。 あっちの知識とこっちの知識と 昔読んだ本の一節と目の前の発見が繋がる・・・。 沢山の言語に長けていたので アメリカや英国の図書館であらゆる本を読んだそうで 目に入るものが全部意味のあるものだったんだろうなぁ。 地球はあらゆる物を包含したもので 全てが繋がっている事を知っていて、 自然を守る事で人間を守ろうとしたんだろうなと思った。 熊楠が歩く百科事典と言われたのも納得である。 でも、それを画一的な人に伝えようとするのは 絶望的とも思われ、孤独であったろうと思う。 あらゆる知識にあふれていたのに驕ることなく 誠実に邁進した凄い人だったと思う。 面白い人を知ることが出来て 大変満足した。
February 6, 2017
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●読んだ本●「代官山コールドケース」佐々木譲著代官山コールドケース (文春文庫)/佐々木 譲 (著)文藝春秋【中古】■あらすじ■特命捜査対策室の水戸部裕の第2弾。三日前の川崎市で起きた強 姦殺人事件の現場にあった遺留品と同じDNAが、17年前に起きた「代官山女店員殺害事件」での遺留品にあった事が内々で発覚し、被疑者死亡で法的に処置してしまった警視庁の冤罪事件に発展しそうな状況が起きた。神奈川県警より先に犯人逮捕の命を受けた水戸部は、一課の女性巡査部長の朝香千津子と共に秘密裏に犯人捜査に繰り出す。■感想(少々ネタバレ注意)■非常に密度の濃い時間の流れで、一つ一つの事実と証言を再確認、新しい証言や視点からの角度を照らして事件を捜査して行く水戸部と朝香は非常に有能だ。緻密な思考、柔軟性、機転の速さや行動力、どれをとっても無駄が無く、しかも深慮に満ちた眼差しだった。 17年経ったから導き出せた証言や見逃された小さい矛盾を積み重ねて、少しずつ状況を明確にして行く。 霧に包まれていた感があった状況が少しずつ晴れて来る様はとても気持ちが良くて爽快だった。証明問題のように明確でワクワクした。部屋から3人の遺留物が見つかった事から発展家と見られていた被害者の中牧みちるが、夢を持って東京のファッション系の専門学に通い退学後も健気に生きていた様子が徐々に見えて来て、頑張る若い女性への暖かい眼差しが救いだった。人の生きる様を大切に見つめる眼差しが良かった。先入観なく緻密な事実の積み重ねで穴を埋めて行く推理モノはとても好きで、ぜひ第3弾も読みたい。
September 21, 2016
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