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2014.05.11
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カテゴリ: 環境問題
『美味しんぼ』“被ばく描写”問題……環境省、「住民に鼻血が多発しているとは考えられない」

問題となっている『美味しんぼ』では、主人公・山岡士郎たちが福島第1原発を見学した後、疲労感や鼻血が出る症状を訴えるシーンがあり、ネット上を中心に「福島への風評被害を助長するのではないか」と懸念されていた。
この描写に対し、福島県双葉町は小学館に対し「風評被害を生じさせている」として厳重抗議。また、環境省は住民などから不安の声が多数寄せられているとして、「放射性物質対策に関する不安の声について」と題した文書をホームページ上に掲載。「東京電力福島第一原子力発電所の事故の放射線被ばくが原因で、住民に鼻血が多発しているとは考えられません」とした。
なお、小学館側では「鼻血や疲労感の表現は、綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載させていただきました」と公式サイトにて説明。鼻血や疲労感が放射線の影響によるものと断定する意図、風評被害を助長する意図のどちらもないと釈明している。
また、作者の雁屋哲氏は「私は真実しか書けない」と、自身の取材が確かなものであると強調している。

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非常に初歩的な点から。漫画の中で(現物は未見ですが、報道を見る限り)、主人公は福島第一原発の取材後に体調が悪くなった、というストーリーになっているようです。福島でも、一般住民は福島第一原発から20kmの警戒区域内には基本的には立ち入れないので、「住民に鼻血が多発しているとは考えられません」という環境省の言い分(それが事実かどうかはともかく)と、原発に立ち入って取材した主人公が鼻血を出す、というストーリーは、必ずしも対立的であるとは限りません。

また、双葉町の公式ホームページは

福島第1原発の事故直後から全町避難を強いられていますが、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません

と書いているそうです。しかし、体調不良を訴える先は通常は医者であり、それも鼻血程度で医者にかかる人が多いとは思えません。私も子どもの頃はよく鼻血を出しましたが、鼻血で医者にかかったことは一度もないし、まして役所に訴え出たことなどありません。
つまり、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民がいないからと言って、そのような症状が存在しない、とは断定できないはずです。
実際に、先の記事でも引用したように、双葉町の前町長は、騒動を受けて「自らも同様の症状がある。風評被害ではなく実害だ。」と言っています。また、報道によれば、この漫画のために見地を取材した雁屋哲自身が、鼻血に悩まされたことがあったのだといいます。

もちろん、どの程度鼻血が多いのか、という定量的な分析がされているわけではありません。ただ、そのような分析(住民に対する大規模な調査を要する)は、行政機関か、その協力を受けた機関でなければ不可能でしょう。また、鼻血の多発があったとして、それと被曝との因果関係は分かりません。

では、鼻血がどの程度多い、という定量的な分析が行われなければ、また鼻血と被曝の因果関係が証明されなければ、そのようなことを書いてはいけないのでしょうか。
学術論文ならそうでしょうが、『美味しんぼ』が学術論文ではないことは、言うまでもありません。


もし、本当に健康被害が生じているのだとすれば、それは、元町長が言うとおり、風評被害ではなく実害であるはずです。それを取り上げることを「風評被害」だと言って、「触らぬ神にたたりなし」とばかりに黙っているのが、正しい解決策なのでしょうか。
ずっと昔に、類似の出来事があったような気がします。水俣病をはじめとする公害病も、その発生初期は、わけの分からない風土病と見られて、被害者が差別を受けたり、漁獲や農作物が売れなかったりするから、みんな被害を隠そうとしたのではないでしょうか。
被害を隠して、それで被害がなくなるならいいのですが、もちろんそうはならず、むしろ解決を遅らせる結果になったわけです。

もちろん、福島の放射能汚染による健康被害が、公害病に匹敵するものかどうかは分かりませんし、前述のとおり、そもそもそれが放射能のせいだと証明できているわけでもありません。放射能の健康被害について、あまりにも煽りすぎな主張が一部に存在することも事実です。とはいえ、証明されていないことは主張してはならぬ、とでもいうような風評被害論には、強烈な違和感を感じるのです。
こうやって「風評被害」の名の下に、健康被害(かもしれないがはっきりしないこと)を取り上げることすら忌避するのは、もし本当に健康被害が生じた場合にも、その存在を圧殺して、かえって被害を拡大することにつながるでしょう。





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最終更新日  2014.05.12 20:15:19
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