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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。高校の後輩である小平由樹枝と恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。M大学に進学し、1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、飲み過ぎて記憶喪失し矢代美恵子と関係してしまった。何とか別れたい悠介であったが、美恵子は別れてくれない。数か月後、アパート代を出すとの約束でようやく別れてくれた。そして由樹枝との仲を戻すべく努力したが、完全に振られた、写真はネットより借用===================================宛先の住所が書いてなかった。と言う事は美恵子がここまで来たと言う事である。ここまで来て郵便受けに手紙を入れたのである。悠介は慌てて自分の部屋まで急ぎ、封を開けてみた。「今週、金曜日、18時頃私の部屋に来て下さい。料理を作って待っています。」と書いてあった。金曜日の予定はない。いや金曜日以外でも何の予定もない。学校とバイト以外は何の予定もなかった。それで寂しいとは思わないが、由樹枝の件では寂し過ぎる。その寂しさを美恵子の手紙が少し癒してくれる。部屋に来て欲しいと言う事は、抱いても良いと言う事か? とそこがどうなのか、と気になった。そして酔っ払って美恵子の部屋に行こうとした事を思い出した。今の救いは美恵子だけである。だが恋人になろうとは思わない。由樹枝のいない寂しさを美恵子で補おうとしているだけなのである。悠介にとって、美恵子は都合の良い女のようである。金曜日はすぐにやって来た。悠介は帰宅すると風呂で汗を流して綺麗な身体になり出発した。途中、ウィスキーを1本買った。何も持たないでは訪ねられない。美恵子が部屋を出て行ってから初めて会う。どんな顔して訪ねたら良いのか、悠介は分からなかった。歩きながら思ったのであるが、手紙を貰ってから、断ろうと1度も思わなかった事に気が付いた。別れてくれと言って別れたのであり、普通ならば断るはずである。美恵子は悠介が由樹枝に振られた事を知らない。美恵子と別れたので、元の鞘に収まっていると思っているかも知れない。なのに誘いをかけて来た。美恵子の心が分からない。そして悠介も由樹枝との仲が元に戻っていたら、美恵子の誘いを断ったはずである。2度と同じ過ちを犯すまいと硬く誓ったのである。しかし由樹枝との仲に関して一縷の望みを捨てていないので悠介の言動にも矛盾がある。その矛盾に悠介は気が付いていない。そんな事を考えながら歩いていたら、美恵子のアパートに着いた。「久しぶり、元気だった? 浮かない顔してどうしたの? 上がって。」美恵子は機嫌よく悠介を迎えてくれた。「図々しくお邪魔しに来ました。」「何言ってんの?私が誘ったのだから図々しいもないでしょう? でも来ないかも知れないと思っていたのよ。でもね来ないと言う連絡がなかったから、今日は必ず来ると思って準備したの。」「すまんな。」悠介はテーブルの上に並べられた料理を見ながら言った。「さぁ、座って、飲みましょう。」美恵子が悠介のグラスにビールを注いでくれた。悠介も美恵子のグラスにビールを注いだ。美恵子が言った。「乾杯!」「何に乾杯?」「う~ん、新しい部屋かな? で良いでしょう?」「うん、乾杯!」「乾杯!」悠介の心は晴れ上がっていないものの、ビールは美味しかった。あれ以来、毎日飲んでいるが無理やり飲んでいるような状況であったからである。「あのね、寺ちゃん、私、お礼を言いたくて誘ったの。」「お礼?」「そうアパート代を出してくれた事、それも1年分も。」同棲していた時には何も話さなかったが、美恵子は母子家庭で育ったようである。それでお金にはいつも不自由していた。大学に行く費用もなかったが、美恵子は優秀な部類に入る頭脳を持っていたので、何とか学費は自力で稼ぐからと入学金のみを母親から出して貰ったとの事だった。しかしながら、彼女にとって仕送りがゼロで、学業とバイトを行って生活費を稼ぐのは困難を極めたのである。アパート代も払えなくなり、男の部屋に転がり込んで何とか生活をして来たと言う。身体を売って生活をしているようなものであったと言うのである。周りからも良い噂が聞こえて来ない、そんな生活に心苦しさを覚えながら我慢してやって来たのだと言う。それが、身体の要求もなく、アパート代を1年間も支払ってくれて初めて何の心配もなく生活が出来て、そして勉強が出来る。これほど有難い事はないと言うのであった。「そうか、大変だったのだね。」「うん、人には言えない事だから。何とか卒業して良い仕事に着かないと。」「これから何とかなるの?」「私もバイトしているから、食べる位は大丈夫、でも来年のアパート代は難しいかなー。何とかしないとね。」悠介は考えた。自分はバイト代が全部貯金になっている。仕送りで生活しているからだ。バイト代も値上げしてくれたから貯金も増えるはずだ。特にお金が欲しいと言う理由もない。ならば、来年分のアパート代も悠介が支払ってあげても問題はない、美恵子がそんな大変な家庭で育ったとは思っていなかった。===================================
2021.04.17
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。高校の後輩である小平由樹枝と恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。M大学に進学し、1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、飲み過ぎて記憶喪失し矢代美恵子と関係してしまった。何とか別れたい悠介であったが、美恵子は別れてくれない。数か月後、アパート代を出すとの約束でようやく別れてくれた。そして由樹枝との仲を戻すべく努力したが、完全に振られた、写真はネットより借用===================================1学期は別れる別れないの問題があり、学校には出席していたが、学業は疎かになっていた。今も勉強どころではないほど落ち込んではいるが、何とか頑張らねばならないと言う気持ちは持っていた。「おー、寺本、久しぶり! 真っ黒だなー。」「ほんと、久しぶりだ。彼女は元気かい?」「あぁ、元気よ。夏休みに、彼女の家に呼ばれて行って来たよ。」「そうか、良かったなー。」悠介の唯一の友達と言える高橋だった。昨年バイトで知り合った1歳年下の彼女がいる。今年就職したはずである。自分の境遇に比べて幸せ一杯の高橋が羨ましかった。「それで、その後、どうした?」矢代美恵子と別れた事はまだ言ってなかった。由樹枝に完璧に別れを告げられた事も言ってなかった。「今夜、時間ある?新宿でも行って飲もうよ。話したいこともある。」全てを打ち明けて気分を楽にしたかった。高橋とは彼が気落ちしていた時も、飲みに行ったり付き合った仲なのである。「実は、夏休みに色々とあった。」「そうか、楽しい話ではなさそうだな。」高橋は、ビールを飲みながら、そして悠介の態度を見ながらそう言った。「そうなんだ、矢代美恵子とは別れた。」「それは、良かったじゃーないか。彼女、あんまり評判良くないからな。」「そんな悪い人とは思えないけど、別れてくれたんだ。そこまでは良かった。これで、前の彼女と元に戻れると喜んだんだ。」「それで?」「全く駄目よ。完全に怒らせてしまった。全て俺のせいだから仕方ないのだけれど、あの冷たい態度は初めてだった。」「会ったのか?」「あぁ、先々週だ。まだ最近なんだ。」どうして由樹枝がいるのに美恵子と関係してしまったのか、飲み過ぎを悔やんで高橋にその時の状況を詳しく説明した。おかしいなー、と高橋が疑問を口にした。記憶喪失したと言っても、関係したことも覚えてないのか? と。「いくら酔っていると言っても、セックスした事も覚えてないかい? 夢精したって気が付くじゃーないか? 射せいしたらそこで気付くだろう?」「そうかな? でも全く覚えていないんだ。やったかやらなかったかさえ分からない。美恵子から無理やりやられたと言われたんだ。翌日の朝。」「それは、騙されたんじゃーないの? 彼女らの戦略だよ。」「そうだったんか? 翌日の朝も、美恵子は積極的に望んできたんだ。1回やられたら2回も3回も同じだ、と言って。」「たぶん、それで、既成事実を作ろうと思ったんだよ、きっと。」悠介はそう言われて見れば、そうかも知れないと思い始めた。いくら泥酔状態とは言え、セックスしたら、増して射せいしたら気付くはずだ。朝も2回目にしては、せい液がたくさん出たように記憶している。「そうか、北村さんと美恵子に嵌められたか?」「今更行っても仕方ないけど、その可能性が強いよ。」だが悠介は美恵子を攻める気にならない。飲み過ぎたのは自分であり、一緒に生活している時も親切で献身的であった。高橋が言うような悪い女には思えない。それよりも由樹枝と元に戻りたいと言う思いが強い。あれだけ明確に別れを告げられても信じる気持ちになれないのである。その前の3年に近い期間、共にした時間が別れを感じさせないのである。それほど相性も良く喧嘩した事もない。受験勉強も一緒で楽しかった。それほど外には出かけなかったが、由樹枝の部屋で過ごす時間は貴重であった。今でも鮮明に覚えている。「由樹枝と元に戻れないかなー?」「今は、無理じゃーないの? もう少し時間を置いて、彼女にも冷静になって貰って、それから手紙でも出せば良いんじゃーないの?」「手紙も出さないでくれと言われた。」「それは、頻繁に出せばそう思うだろうけどさ、数ヶ月後位に出したらどう?」「その間に、新しい彼氏が出来たら困る。彼女はもてるから。」「その時は、それこそ運命だと思って諦めるしかないだろう。」「そうだな、今でも戻ってくれないのだから、数ヶ月語でも希望は薄い。」「あんまり力を落とすなよ。」「あぁ、聞いてくれてありがとう。少しすっきりしたよ。」高橋と別れアパートへ戻る途中、すっきりしたと思った胸の内に、又寂しさがやって来た。くよくよと考えてしまう。アパートに着いたら、1通の手紙が郵便受けに入っていた。矢代美恵子からに手紙であった。===================================
2021.04.10
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。高校の後輩である小平由樹枝と恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。M大学に進学し、1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、飲み過ぎて記憶喪失し矢代美恵子と関係してしまった。何とか別れたい悠介であったが、美恵子は別れてくれない。数か月後、アパート代を出すとの約束でようやく別れてくれた。そして由樹枝との仲を戻すべく努力したが、完全に振られた、写真はネットより借用===================================食堂のお姉さんがビールを運んできた。そしてお酌をしてくれた。悠介はそれを一気に飲み干した。「あんまり飲み過ぎると良くないわよ。誰だって失恋位するから。」そう言いながら、又、お酌をしてくれた。親切心が身に染みる思いである。又、一気に飲もうとして、お姉さんに止められた。「ゆっくり飲みなさい、誰も邪魔しないから。何かおつまみサービスするわ。」「はい。」悠介は力なく頷いた。どんな言葉を返して良いかも分からない。「どうぞ。」野菜のたっぷり入ったお皿にコロッケが2個乗っていた。悠介が良く頼むつまみである。箸を取って食べた。味も良く分からない。ビールで流し込んだ。ビールの2本目を頼んだ時、知り合いの職人さんたちが入って来た。「おー、寺ちゃん、久しぶり、どうした? 元気だったかい?」ビールを1本飲んで少し酔い始めた悠介は、3人の職人さんに向かって答えた。「元気じゃーないです。」「どうしたんだ? そう言えば、あの綺麗な彼女はどうした? 来ているの?」「振られました。」「えー? 振られた? あんなに仲睦まじかったのにか? 何があった?」3人が悠介の座っているテーブルにやって来て座った。「俺たちにも、ビール頂戴!」「そう言う時は飲むに限る。」「元気出せって言ったって元気は出ないさ。時が解決してくれるんだ。」「今夜は飲もう!」口々に言って、お姉さんの持ってきたビールを悠介のコップに注いだ。「まぁな、今は何を言っても無理だよな、飲むに限る。俺たちも皆失恋の経験はあるんだ。力は入らんし、寝ても覚めても振られた彼女の事ばかり考えてしまってさ、でもな、2、3ヶ月すれば、楽になるよ。」悠介には先の事は考えられない。由樹枝と元に戻れないのは、人生に先がないのと同じに思えるのだ。「又、彼女は出来るよ。なんたって、世の中半分は女なんだから。」皆、親切に言葉をかけてくれるが、その言葉も悠介の胸には入って来ない。悠介の人生始まって以来の失恋である。考えて見れば、悠介のこれまでの人生で挫折を味わった事がなかった。元々、慎重で無理をしない性格であった事もあるが、高校受験も大学受験も希望通りであった。希望が叶わない事はなかった。全て順調に生きて来たのである。ビールから酒に替わった。コップ酒である。皆に声をかけられながら悠介は飲んだ。呂律が回らなくなって来た。これ以上飲むと記憶を喪失するシグナルである。職人さん達と飲んでも気持ちは休まらない。無理して別れて貰った矢代美恵子に会いたくなった。「すみません、行く所があるので失礼します。」「そうか、大丈夫か? 真っすぐ歩けるか?」ふらふらしながら悠介は立ち上がった。足元はおぼつかないが、外へ出た。暑い夏の夜である。美恵子に慰めて貰いたかった。あれほど別れたいと願い、何とか別れて貰ったにも関わらず、自分勝手な考えである。「やっぱり帰ろう。」美恵子へのアパートへ半分位来た所で悠介は立ち止った。かなり酔ってはいたが、まだ正常な心が残っていた。あまりにも手前勝手であると反省したのである。美恵子の肢体がちらちらと頭を掠める。抱きたい、抱きしめて貰いたい。しかし、その想いを振り切り、ふらふらと来た道を戻って行った。翌朝、ぐっすり寝たものの頭が重かった。それでも、起きてバイトに出かける準備した。考える時間は欲しくなかった。何かをして気持ちを紛らわしたい。仕事をしていた方が気が紛れる。体にも力が入らない。何か食べねばならないと無意識の内にも思う。食べ物は買い置きのパンしかない。仕事をする為にも食べねばならないと満腹食堂へ向かった。朝定食が何種類かあるのだ。ご飯と卵を食べたいと思った。「あぁ、お早う! 昨夜はたくさん飲んだわね? 大丈夫?」「ええ、良く寝ましたから。」「水、飲む?」「いえ、お茶下さい。それからノリたま定食下さい。」「はい、ちょっと待ってね。」悠介は卵かけご飯が好きだった。食欲がない時でも、するするとお腹に入っていく。好きな冷奴もあった。ご飯を食べると、力が湧いて来たような気がして来た。胸のもやもやは消えないが、仕事に行く気力には必要な力であった。バイトの毎日が過ぎ去り夏休みが終わった。===================================
2021.04.03
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。高校の後輩である小平由樹枝と恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。M大学に進学し、1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、飲み過ぎて記憶喪失し矢代美恵子と関係してしまった。何とか別れたい悠介であったが、美恵子は別れてくれない。しかし、数か月後、アパート代を出すとの約束でようやく別れてくれた。写真はネットより借用===================================夏休みに入っていた。悠介は毎日バイトに出かけている。仕事をしていても頭の中は全て由樹枝の事である。作業は熟知している。型枠を作り鉄筋を切断、土の上に配筋し配筋をワイヤーで縛る。砂と砂利とコンクリを混ぜて捏ね、そのコンクリを配筋の上に流す。コンクリを棒で突いて均一にする。タンパーで表面を整える。手慣れた作業である。上の空でも間違いなく作業は進められた。作業中も食事中も寝ても覚めても、由樹枝の事を考えている。しかし考えても考えてもいい案は浮かばない。全ての責任は自分にあるのだ。春休みに由樹枝との幸せ過ぎる短い期間を過ごした。あれで慢心してしまったのかも知れない。由樹枝が自分から離れるはずがないと自信を持ってしまったのだ。だから美恵子の誘惑に負けてしまった。記憶にないが心の奥底に慢心があったに違いない。反省しても時は取り戻せない。兎に角、謝るしかないと長野まで行くことにした。考えるだけでは埒があかない。山脇に由樹枝との話し合いの場の設定を依頼した。悠介から手紙も出せないのでどうしようもない。8月も半ばを過ぎた暑い日であった。悠介は朝早く東京を出発した。何としても謝り元通りの恋人に戻れるようにしたい、その一心であった。話し合いの場は長野市の静かにジャズが流れるカフェであった。11時待ち合わせであるが、悠介は20分も早く着いてしまった。11時少し前に山脇がやって来た。小平由樹枝は11時ぴったりに来た。白いシャツにブルーのスカート、暑い日ではあったが、涼しそうである。もう既に何度も性体験をしているとは思えないほど清純そうに見せる。しかし、顔の表情は硬い。山脇は、「それじゃー。」と行って帰って行った。山脇が去ると悠介は、深々と頭を下げて、「申し訳ない。勘弁して欲しい。」と言った。「もう駄目です。私はもう以前の私ではないです。あなたを信じられない。」「それは、そうだと思う。自分でも信じられない経緯でそうなってしまった。飲み過ぎて記憶がなくなってしまったのだよ。俺は、誰よりも、由樹枝を愛している。それは間違いない。どんな時でも、いつだって、由樹枝を一番愛している。それだけは、本当の事だ。間違いない。」「そう言いながら、他の女性と同棲しているって信じられません。どのような釈明をしても同棲は事実、言葉ではごまかしです。」「分かってくれ、俺も辛かった。毎日のように部屋から出て行ってくれと頼んでいた。でも出て行かなかったのだ。困り切って先輩に相談し、アパート代を1年分支払う事で、ようやく出て行ってくれたんだ。」悠介は、今までの出来事を事実をありのままに説明した。何とか、由樹枝の心を取り戻したいと熱心に口説いた。由樹枝の表情は硬く微笑みも全くない。悠介は説明疲れで喉が渇いた。冷えたコーヒーを口にした。暫く無言が続いたが、「私は、何度説明されようが、私と言う人がいながら、他の女性と同棲していた事実は信じられません。許せません。私は、それが言いたくて来ました。これが最後です。2度と会う事はないでしょう。手紙も、電話もお断りです。楽しい幸せな期間もありました。それについては礼を言いますが、同棲と言う事実が、その幸せさえ色褪せさせました。私は帰ります。さようなら。」最後の言葉は、力強く、由樹枝の意志の固さを言い表していた。悠介は呆然として帰る由樹枝に言葉も告げられず見送った。もうこれで駄目だ、とガックリ肩を落とす悠介であった。自分が悪いのは間違いないが、これほどまで由樹枝が頑なであるとは思わなかった。こんな態度は、付き合い始めてからなかった。いつでもにっこり笑っていたのである。悠介は何も考えられず、トボトボとカフェを出た。頭の中は真っ白だった。どのように帰って来たかも覚えていないが、東京のアパートに帰り着いた。腹は減っているが、食べたいと思わない。酔っ払いたい、酔っ払って全てを忘れたい、そう思った。行き付けの飲める所は満腹食堂しかない。ふらふらと立ち上がって満腹食堂に向かった。お姉さんが言った。「あら、寺ちゃん、久しぶりね? どうしていたの?」そう言えば、矢代美恵子と同棲していた時には、一度も満腹食堂には来なかった。美恵子が食事を作ってくれたこともあるが、由樹枝と一緒に行った満腹食堂へ美恵子を連れて行きたくなかったのである。「元気がないわねー? 冴えない表情よ。」「・・・」「どうしたの? 彼女に振られたの?」悠介はこっくりと頷いた。「まぁ、それは可哀そうに。あの綺麗な娘さんよね? 仲よかったのに。」お姉さんに声をかけられ奥の席に座らされた。「ビールにする?」「飲みたい。」「ちょっと待ってね。」===================================
2021.03.24
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チェンマイに佇む男シリーズ、第2章がデジタル書房より発売されました。「山川純一の場合」です。詳細は後述しますが、出版65冊目であります。チェンマイに佇む男達シリーズ、第1章は、既に販売中であります。第1章 鈴本誠一の場合あらすじ 鈴本誠一は一流会社のエリート社員で、取締役候補まで昇進したが、引き上げて くれた常務が退職し、その後の誠一の昇進はなくなった。その頃妻から熟年離婚を 要求され定年まで待つよう依頼する。左遷された資料室で、超美人の女子社員と 深い仲になる。定年を期に長年連れ添った妻と別れ、女子社員と第2の人生を 歩もうと 夢を膨らませていた。しかし、定年直前のクリスマス、女子社員から結婚する ので別れてくれと言われ絶望を味わう。定年で仕事を失い、離婚で妻を失い、 結婚で愛人を失い、三重苦の生活となった。耐えられぬ苦しみの、その後、紆余 曲折を経て、チェンマイに移住、戸惑いはあるものの、徐々に新しい生活に馴染 んでいく。原稿用紙1500ページに及ぶ、大作です。1080円で販売中。第2章が、新発売であります。第2章 山川純一の場合あらすじ 山川純一の場合、中学を卒業して、夜間高校に通いながら働き、29歳にして、会社 を設立、その後順調に業績を伸ばし、資産も貯め込んだ成功者であります。 しかしながら、長女は結婚せず、長男は子供を作らず、孫を抱けない寂しさを持って います。さらに、妻に先立たれ、何をして良いかわからず、チェンマイに向かいます。 ガサツで、腹も出て、タレ目で、外見は全く社長には見えない男ですが、女性にはモ テるのであります。15歳で童貞を失ってから、100人切りと豪語しています。チェン マイで、どのような女性と出会い、どのような生活となるのか、人生の喜びと悲哀が、 綴られた小説であります。原稿用紙270枚、980円で販売中。表紙の写真は、コムローイにしました。素晴らしく綺麗ですね。これが、PDFで作成した原稿の表紙です。でじたる書房で、アジアの星一番の作品を見る場合ですが、以下の手順で検索して下さい。「でじたる書房」で検索し、ホームページに入る著者名の欄に、「アジアの星一番」と入力して検索する。海外では、デジタル書房は開けられませんので確認できないのですが、今は、著者名の検索がないらしいです。デジタル書房に確認しました。それで、タイトル欄に、「アジアの星一番」と入力して検索して下さい。タイトルにアジアの星一番と付くものは一覧で出て来ます。立ち読みと言って無料で抜粋された部分は読むことも出来ます。是非、検索して見て下さい。出版された中での一番人気は、「黄山紀行」です。一番売れています。黄山を歩いた時の紀行文ですが、中国人、台湾人、女性大生などが出て来ます。出版65冊の内、ほとんどは世界の旅と称したブログを本にしたものであります。しかし、上述した3冊は、旅紀行と小説であります。ちょいと高いですが、期待を裏切らない内容だと自負しております。購入するのも面倒なようですが、是非、お買い求め頂き、読んで貰いたいものと熱望するものでございます。それでは。
2021.03.17
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。写真はネットより借用===================================それから、1週間もしない、夏休みに入る前、美恵子がアパートが見つかったので、明日、引越しをすると言った。悠介のアパートから、それほど遠くない所に見つかったらしい。この辺りは学校に近いので、便利なのである。その夜は、二人の最後の夜になるので、二人とも、感傷的になっていた。お互いに激しく燃え、何度も交わった。快感を口にしながら、美恵子が言った。「又、たまには会ってね、家にも遊びに来て!」「うん。」悠介も、そう答えた、愛しているのかいないのか分からない状況である。だが行為は間違いなく、恋人同士である。悠介は由樹枝の事は考えないことにした。今、由樹枝の事を思うのは、美恵子に対してあまりにも悪いと思うのであった。翌日、悠介はバイトを休んで引越しの手伝いをした。美恵子の荷物は少ない。家具も調理用具も悠介の準備したものを使っていた。洋服類や化粧道具、教科書など、段ボールに4箱で済んだ。車は北村がどこかから調達してきた小型トラックである。美恵子は助手席に、悠介は荷台に乗って引越し先に向かった。車で5分ほどで着いた。歩いても20分もあれば着きそうである。段ボールを部屋に運び入れた。ワンルームであるが、悠介の部屋より広そうである。段ボールを運び入れて北村が言った。「これから寝具とか、キッチン用具を運びに行くので、アパートまで送るよ。」「手伝わないで良いですか?」「あぁ、大丈夫、向こうにも手伝ってくれる奴がいるから。」アパートまで送って貰った。美恵子が車から降りてきた。「じゃー、行くから。」「はい、お世話になりました。」「元気でね。キャンパスも違うから会う事もないかな?」「そうですね。」「寂しかったら、連絡を頂戴?」「はい、ありがとう。美恵子さんも元気で。」「じゃー、行くわよ。」美恵子は、悠介にハグして車に乗った。これで、完全にお別れだと悠介は、すっきりしたような寂しいような複雑な気持ちだった。部屋に戻り、美恵子の物が何もない部屋に一人座った。あれほど悩んだ事があっと言う間に解決し、気が抜けた感じである。悠介は、早速、テーブルに向かい、由樹枝に手紙を書き始めた。元の恋人に戻れると思うと心が躍った。浮き浮きした心を持て余すように、ペンを走らせる。「何とか別れることが出来た。これまでの事は、申し訳ない。弁解のしようもないが、全て自分の責任である。酒を飲み過ぎさえしなければ、由樹枝を悲しませることもなかった。どんな事でもして罪は償うので、何とか勘弁して欲しい。」と言う意味の内容の手紙である。読み返して見て、これでは反省が足りないと、もう一度、全てを書き直した。どれだけ由樹枝に会いたかったか、どれだけ愛しているか、それらを加えて書き直した。許して貰えれば、いつでも長野まで会いに行く旨も書き足した。毎日、毎日、由樹枝からの返事を待った。バイトに出かけてアパートに帰る楽しみは、由樹枝の手紙が来ているかどうか、だった。しかし、毎日、その期待は裏切られた。もっとも、手紙を出してから、すぐに由樹枝が返事を書いて出しても、4~5日は掛るのである。1週間が過ぎても返事は来ない。10日が過ぎても返事は来ない。悠介は焦った。美恵子と別れさえすれば、由樹枝との仲は復活すると思っていたのである。しかし返事が来ないことを考えると、相当怒っていることが察しられる。手紙では埒が明かない。電話をかけようと思ったが居留守を使われては、話もできない。それで又、中学の友人に頼ることにした。地元の役場に勤めている山脇である。前回も一度電話して貰って状況は分かっている。電話でようやく部屋に居座った女性と別れた。由樹枝に手紙を出したが返事も来ない。何とか、返事を貰いたい。旨、伝えて欲しい。又、以前のような恋人に戻りたい、と。山脇にその返事も聞きたいので、数日したら、又、電話するとして電話を切った。その数日後、山脇に電話した。由樹枝の返事は、もう完全に悠介の事は忘れた。手紙も出さないで欲しい。両親にも悠介とは別れたと説明した、との絶望的に返事であった。悠介は呆然とした。全身から力が抜けるような気がした。美恵子と別れさえすれば、由樹枝との仲は復活すると信じ込んでいた悠介である。手を尽くした。知恵も使った。1年間バイトして貯めた金も全部使って、恵美子と何とか別れることが出来たのに、由樹枝の返事には絶望である。会いたいと思った。会って話をすれば元に戻れるのではないか? そう言う希望があった。何とか会える方法を考えよう、絶望の中に光を見出したい悠介であった。===================================
2021.03.15
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。写真はネットより借用===================================「それはそうだろう、同棲を始めてから、まだ2ヶ月半位じゃーないか?」「そうですが、初めから出て行って欲しいと頼んでいたのです。」「だって、あの飲み会の帰り、ずいぶん、しつっこく、泊まって行けと言っていたぞ。初めから出て行って欲しいなんておかしいじゃないか!」「それは、全く覚えていないのですよ。本当に申し訳ないのですが・・・。」「それが本当としても、同棲を続けていたのでは、信用出来ないな。酔った勢いだけじゃない。」「それも意志薄弱で申し訳ないとしか言えないのですが、ずるずると引き延ばしてしまったのです。若しかしたら、矢代美恵子さんを好きになるかも知れないと思ったこともありました。ですが、日にちが経てば経つほど、小平由樹枝を好きで、とても別れられないと思うのです。」「そんな事では、矢代さんも納得しないし、怒ると思うよ。」「そうなんです。今まで何度話しても堂々巡りで、同じなんです。それで、紹介して貰った北村さんに相談したのです。」悠介は必死であった。美恵子を説得する自信はない。このままではずるずると同棲して別れられないことになってしまう。何とか、第3者の北村に説得して貰いたい。「話してみるけど、説得する自信はないな。彼女、寺本を気に入っているんだろう。初めからそんな感じだった。」「同棲していて申し訳ないのですが、僕は好きだと思った事がないのです。いつも頭にあるのは、小平由樹枝なんです。」「話してみるけど、単に好きでないから出て行ってくれでは納得しないよな。」「僕の出来ることは何でもします。」「何でもって何がある?」「例えば、引っ越しして貰うアパート代金を支払うとか・・・。」「そうか、金か。それは良い考えだな。」「アパート代、1年分位なら、バイトで貯めた金があります。」「1年分と言うと、10万円位か?」「その位になると思います。」「そうか、そうだな、それで話をしてみるか?」「お願いします。恩に来ます。」悠介は大学入学以来、土日は休まずバイトを続けて来た。夏休みは毎日である。小遣いらしき支出はない。食事だけである。遊びたいと思った事もないので、辛いとか大変だと感じたこともないが、それほど働いて1年と少々貯めた金が10数万円である。そのほとんどを恵美子へ支払うつもりでいる。それほどまでして恵美子と早く別れ、由樹枝との仲を修復したいのであった。この出来事の本質は北村と恵美子にあり、彼らの作戦にまんまと嵌まってしまった悠介であるが、そんな作戦とは全く知らない悠介であった。北村と話したその日も、悠介は美恵子と同じ部屋でご飯を食べそしてテレビを見ている。悠介は美恵子に対して申し訳ないと思うが、愛する気持ちになれないのであった。従って、別れるしか道はない。性の面では相性は悪くない。いつも積極的でサービス精神は満点である。その点もあるので出て行って欲しいと強引に言えないのであった。数日経った日、夕食が終わった後、美恵子から話があると言われた。悠介は、北村から話を聞いた結論であるとピンと来た。「北村さんから話は聞いたわ。」「・・・」「どうしても別れたいの? 私は出来ればこのまま悠介と一緒に暮らしたい。」「大変申し訳ない。夕食も作ってくれたり、そのほかの面でお大変よくしてくれた。それは間違いない。でも、駄目なんだ。愛する気持ちと違うんだ。自分でも自分自身にうまく説明出来ない。僕は前の彼女が忘れられない。それが愛情だと思う。大変申し訳ないが、別れて欲しい。」「分かったわ。態度からも私は愛されていないと感じたけど、毎晩、愛してくれたから気持ちも変わって来ていると期待していたの。アパートを探すからそれまで待ってね。1年分のアパート代を払ってくれるって本当?」「うん、本当です。貯金を見たら、12万円溜まっている。それを全部使って貰って構いません。3ヶ月も一緒に住んで申し訳ないけど、そんな事しか出来ない。」悠介は必死であった。これで出て行って貰ったら、全てが元通りになる。あの安心した幸せに浸れるのである。由樹枝の事がなかったら、美恵子と暮らしても良いと思うのだが、比較したら、どうしても由樹枝になってしまう。振り返って見れば、悠介がつれない態度であっても、美恵子は怒りもせず、尽くしてくれた。食事も作ってくれたし、性の面でも満足であった。美恵子が理解を示し、アパートが見つかり次第出て行くとなると、名残惜しい気になった。出て行くまでは抱いても良いのだろうと都合よく思った。===================================
2021.03.08
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。写真はネットより借用===================================悠介はこの打開策を美恵子を紹介した北村に相談することにした。近頃バイトに来ていないと言うので、社長に伝言を頼んだ。「相談したいことがあるので会って貰いたい。」と。駿河台キャンパスのベンチで北村と矢代美恵子が座っている。「どうした、寺本とうまくいってないのか? この前聞いた時は、ばっちりだと言っていたじゃーないか?」「どうして? そんな話聞いた?」「寺本から相談したいことがあると言って来た。きっと君の事だろうと思って、話を聞いてから会おうとしているんだ。」「まぁ、落ち込みが激しいのよ。あまり食べないし、痩せて来たみたい。」「そうなのか? 一緒に住んでいるのだろう?」「住んでいるけど、前の娘が忘れられないようなのよ。私が手紙を出して、その娘には引導を渡したのだけどね。」「小平とか言っていたな、その娘は。一度会ったけど、綺麗な娘だったよ。しかし、君と一緒に暮らしたら、忘れると思ったけどな。」「意外と純情で頑固見たい。」「困ったな。」「別れてくれ、出て行ってくれと、今も言われているのよ。」「あっちの方は、やっているんだろう?」「そっちの方は、やっている。若いからね、気持ちと身体は別でしょう。」「君はどうしたいんだい?」「このまま暮らしても良いけど、仲々、こちらを向いてくれないから、ちょっと疲れて来たよ。」二人の話は続いている。実は、北村は、良い学生がいないかと美恵子から相談を受けて、寺本を紹介しようと言う事になったのである。彼が飲むと意識不明になるのでそれを利用しようと北村の書いた筋書きだったのだ。新入生歓迎会で、美恵子と悠介を会わせた。途中、美恵子に確認すると私の好みよ、と言う事で筋書き通り実行しようと、二人で飲ませたのである。「寺本と会ったら、何といえば良いかな?」「う~ん、困ったよ。いい子なのよ、純真で。私も好きになっているし・・・」「じゃー、別れるな!って言うかな?同棲しているのに、別れるのはおかしい、って言うのは、不自然ではないし、経緯からしても彼に拒否権はない。」「そう言う筋書きだけど、なんだか可哀そうなのよ。」「情が移って来たか?」「まぁね、毎日一緒にいるのだからさー。」「それでも別れたいと言ったらどうする?」「そうねー、お金で解決するかな? 今、追い出されたら行く所ないし困ってしまうよ。バイトで稼いだお金を結構、持っているみたい。」「そうだろう、あいつ、真面目に1年以上働いているからな。遊んでもいないようだし、結構溜めているだろう。」「でも、別れなくて良いなら、そっちの方向で話してね?」「分かった。小平とかが忘れられないなら、そこを無理してまで一緒にいるのもどうかと思うけど、とにかく話してみるよ。」由樹枝は、悠介から3度手紙を貰ったが、返事を出していない。別れたと言う話もなく、同棲が続いているようだし、一番好きだ、愛していると言われても信用できない。あれだけ信頼しあっていたのが信じられない。2ヶ月近く経って、心を絞られるような苦しさも減っている。その間、バドミントンに打ち込んでいた。ようやく悠介なしでも生活できると思うようになっていたのである。始めの頃は、苦しくて苦しくて、涙が止めどなく流れるし、どうして? どうして? と思いつめ、悠介に直接聞きたい、話したいと思っていた。その時期を過ぎたら、心が虚ろになって何もしたくない期間になった。バドミントンには出かけていたが、心ここにないと言う感じで真剣になれなかった。もう悠介と話したい気持ちはなくなっていたが、寂しさを乗り越えられない。それが、つい数日前より、吹っ切れたと言うか、もういいや、と思えるようになった。ここまで来るのに、2ヶ月を要したのである。6月下旬、北村から満腹食堂で会おうと言って来た。しかし、悠介は満腹食堂の知人が沢山いる中で、話をしたくなかった。言いたいことが言えないと思ったのだ。行ったことのない食堂や茶店も沢山ある。北村と一緒に食べたいとも思わないので、茶店へ行くことでお願いした。「どうした?」北村が何食わぬ顔で、悠介に聞いた。「矢代美恵子さんの事です。」「あー、同棲しているらしいな? 結婚でもするのか?」「とんでもないです。彼女にアパートから出て行って欲しいのですが、出て行かないのですよ。」===================================
2021.02.17
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。写真はネットより借用===================================高橋を廊下に呼び出し性急に要件を伝えた。「その女性って、矢代美恵子じゃーないのか?」「え? どうして分かった?」悠介は、もう既に同級生の間で噂になっているのかと驚いた。北村以外は知らないはずである。「ほら、新入生歓迎会の時、北村さんと彼女が寺本の所に来たじゃーないか?」「あぁ、高橋が席を外したので、どうしてかと思ったよ。」高橋の話によれば、矢代美恵子について悪い噂を聞いていたと言うのである。それは、男の学生の所に転がり込んで、そこに居ついてしまい、生活費も面倒見て貰うとの事である。まさに悠介が困っているそのものである。「それは確かか?」悠介は驚いて聞いた。「いや、噂だよ、誰の部屋に転がり込んだとか、そこまでは知らない。そう言う噂を聞いていたもので、悪かったが、あの時席を外したんだ。」「だとしたら、俺はまんまと引っかかってしまったようだ。」その噂はもっと前に聞きたかった。今となっては遅すぎる。美恵子と深い関係、それも1度だけではなく、気は進まなかったが毎晩である。さらに由樹枝への手紙はもう今日、投函されているはずである。どんなに弁解しても分かって貰えないはずだ。美恵子は事あるごとに、深い関係であることを口にだし同棲を強要する。対策は不十分でも何かせずにはいられない。由樹枝に手紙を書くことにした。返事は、高橋宛に出して欲しいと。内容は、事実を正直に書くことにした。「酔っ払って意識不明となり気が付いたら自分の部屋で美恵子と寝ていた。出て行って欲しいとどれだけ頼んでも住みついてしまって帰ってくれない。自分自身も大変困っている。必ず別れるので、少しの間時間が欲しい。誓って言うが、自分が愛しているのは由樹枝だけだ。それは分かって貰いたい。」このような内容にした。封をしてすぐに出した。これで美恵子の手紙と同時か1日遅れで届くことになる。そして手紙が届いても信用しないようにと言う山脇の伝言も伝わっているはずである。由樹枝は山脇の電話になんだろう? と危ぶみながら出た。山脇と親しい話しをした事がないからである。ただ顔と名前は知っていた。悠介の同級生であったからである。要件は、「変な女性から手紙が届くが信用するな。」と言う事であった。何の事かさっぱり分からない。山脇はそれだけを言って電話を切った。手紙と言えば、悠介から届かないなー、と思っていた矢先である。きっと勉強とバイトに忙しいのであろうと推測していた。春休みの充実した日々が思い起こされ自然と口元に笑みが浮かんでしまうのであった。あれほど楽しく充実した日々が、産まれて来てあったろうか? と思うのである。翌日、矢代美恵子なる女性から手紙が届いた。いきなり寺本悠介の新しい恋人である、と記載されており、びっくりした。何これ? と思った。まさかそんな事があり得るはずはないと確信している。それから、一緒に住んでいて、毎晩愛していると言われて幸せである。従って、もうこれから、一切、寺本悠介との連絡もしないで欲しい。会うことも厳禁である。と書いてあった。由樹枝には全く信じられない。あれほど硬い愛の約束をしたのが、わずか10日程前である。それが、急に新しい恋人が出来たなんて、嘘に決まっていると思った。そして、これが、山脇の言っていた事か、と昨日の電話を思い浮かべた。急にこんな手紙を貰って驚いたし、そんな事はあり得ないと確信を持っていても、心配は心配である。万が一、そうであるならば、悠介が何か言ってくるはずだ、とその連絡を待つことにした。その翌日、悠介からの手紙が届いた。慌てて封を切り読み始めてびっくりした。なんと、昨日貰った恵美子と言う人と一緒に住んでいると言うのである。あの手紙は嘘でなかった。由樹枝は頭が真っ白になった。持っている封筒の手が震えているのが自分でも分かった。自分の愛しているのは由樹枝だけだとも書いてあったが、ほかの女と一緒に住んでいて、その言葉も信じられない。涙が出てきた。手紙をもう一度読む気にならない。何もする気にならない。何もかもが信じられない。5月の連休に東京へ行くのを楽しみにしていたが、それも叶わないこととなった。これからどうしようと思う気持ちにもなれず、まさしく茫然自失の状態である。それから数日が経った。高橋の所に手紙が来ていないか、毎日確認しているが届いていない。それから、さらに数日経っても山脇からも連絡はない。居ても立ってもいられない気持ちで授業も上の空である。もう由樹枝が来ると約束していた5月の連休が来る。しかし、由樹枝は絶対に来ないであろう。きっと怒っているはずである。来られても美恵子が居るので修羅場になるだけだ。八方塞がりのまま連休がやって来た。何も出来ないまま時間がどんどん過ぎ去る。いつのまにか5月が過ぎ去り6月になっていた。その間、2回由樹枝に手紙を出した。しかし返事は来ない。美恵子とも別れていない。何度も出ていくように言ったが、全く意に介さず出ていく様子はないのである。===================================
2021.02.08
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。写真はネットより借用===================================翌週、悠介が学校から部屋に帰ると、美恵子が鬼の形相で待っていた。「この手紙は何よ!」それは、由樹枝から届いていた多くの手紙である。机の奥に仕舞って置いたものである。「今日、来た手紙がこれよ。あなた、別れると手紙出してないの?」「・・・」悠介は何も答えられない。心の重さに耐えながら、表向きは恋人のように同棲を続けている悠介と美恵子である。どうしようと思いつつ、美恵子にも何も言えず、由樹枝にも手紙は出せなかった。「何、これ? 読んでみてよ。5月の連休に来ると言っているよ!」悠介は、渡された由樹枝からの手紙を読んだ。「春休みの1週間は夢のような期間であり、如何に悠介を愛しているか再認識しました、悠介から愛していると言われて、私たちは強く愛し合っていると確認できて、とても嬉しい。これからも良い仲を続けていこうね。又、連休には1週間ほど行けると思う。それを楽しみに生きています。大学生活も順調です。」などと書いてあった。由樹枝の申し訳ない気持ちで一杯である。自然と頭が垂れてくる。「どうするつもり?」「申し訳ない。俺は、この人を愛している。」「何言ってんのよ! あなたは、毎日、私を抱いておきながら、そんなこと言う権利があるの? 頭が狂っているよ!」「申し訳ない。どうしていいか分からないんだ。」「すぐに、恋人ができた、あなたとは別れると手紙を書きなさい。」「そんな事は書けない。」「私を裏切るつもり? 私はあなたと別れないわよ。もう深い仲なんだから。」酔って正体をなくした翌朝と同じ事の繰り返しである。違うのは、その後、毎夜交接している事であった。悠介に申し開きは出来ない。しかし、由樹枝と別れると言う手紙なんぞ書けるはずもない。美恵子とこのような仲になっても、由樹枝を愛していることに変わりはない。「分かったわ、あなたが書けないなら、私が書いて明日出すから。いいわね。」「それは困る。」悠介は言ったが、小さい声であった。悠介は何とか、この事態を脱出したかった。手紙は書けない。返事が来たら美恵子に読まれてしまうからである。電話をかけようと思った。しかし、現実に美恵子と同棲している状況なのに、何と話したらいいのか? 現実は語れない。美恵子と別れてからならば、何としても言い訳は立つ、今は何も言えない。悠介は袋小路に入ってしまったように、何も出来ないのである。美恵子は、テーブルに向かってペンを走らせている。住所も名前も分かっている。多くの由樹枝からの封筒があるのだ。悠介は時間稼ぎをしたかった。美恵子を何とか説得して別れるまでの時間だ。美恵子は由樹枝と違って男の経験は間違いなくある。悠介と初めて行なった時に既によがり声をあげていたのだ。相当な経験があるに違いない。その事実を元に別れを迫るしかない。それにしても時間がかかる。悠介はそう思った。手紙は明日出されてしまう。そちらは時間がない。考えた末、高校の同級生に頼むことにした。それしか方法がないのである。翌日、大学の公衆電話から、地元の役場に勤めている山脇を呼び出した。事情を大急ぎで説明し、由樹枝に変な手紙が届くが信用しないでくれと伝えて欲しい旨依頼した。しかし山脇から言われたのは、どうして女と同棲しているのか、と言う事である。由樹枝を愛しているなら、一刻も早く、その女と別れろ、でなければ、由樹枝に伝えたとしても嘘になる、と言うのである。一番厳しい所を突かれた。それが最も問題なのである。別れるが込み入った事情があり、少し時間がかかる、とそれだけ説明した。自分で電話しろとも言われた。しかし女が部屋にいる現在、直接電話し難い旨説明し、何とか状況を分かって貰いたいと懇願した。最終的に山脇は同意し、「変な手紙が届くが信用しないでくれ」と伝えることを約束した。そして、事情があり本人から電話も出来ないとも、伝えることになった。これで一応の対策は取ったと悠介は思ったが、これで解決する訳でもない事は自分でも理解している。さらに対策も不十分であるとも思った。女が自分の意志にかかわらず部屋に住みついてしまった事を打ち明けねば、到底、由樹枝の理解を得られまいとの考えに行きついた。しかし、手紙を出してその返事が来れば、美恵子の怒りはますます強固になるであろうことも推測できた。それで又、同級生に頼ることにした。盛岡から来ている高橋である。彼の住所に手紙を送って貰うのである。良い考えであると、早速、高橋を探した。彼がいそうなキャンパスを探したが見つからず、教室に戻ったら彼がいた。===================================
2021.01.30
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。写真はネットより借用===================================北村と話しても、結論は出ない。全て矢代美恵子次第だからである。1日中、仕事にならなかった。食欲もない。力が出ない。頭の中は、どうしよう、どうしようばかりで何の進展もない。この日の相棒は、1年前から一緒に働いている、長友に吉武である。この二人に仕事を仕込まれた。最近は、1人前に見られて仕事を任せてくれることも多い。しかし、この日は、仕事に熱中出来ず。失敗を重ねた。「おい、寺本、どうした体調でも悪いのか? 顔色も良くないな。」年長の長友が言った。「はい、体調は悪くないのですが、頭が重く、考えが纏まらないのです。」「どうした? 飲む過ぎか? あんたは飲み過ぎると、記憶が飛ぶ悪い癖があるからなー。去年の忘年会でも読まされて酷い状況だった。」吉武も思い出したように言った。「昨夜、飲み過ぎて失敗しました。」「やっぱりそうか。あんまり無理するな。失敗したら余分な手間がかかる。」悠介は、昼食を食べたら、少し力が戻って来た。だが頭の中は混乱している。仕事に集中せねばならないと、自分に言い聞かせて、何とか1日の作業は終わった。アパートに戻った。部屋は整理されている。料理をしている匂いがした。「あ、お帰り、今、夕食の支度をしているからね。お風呂に入って。」美恵子が当たり前のように、奥さんのような態度でそう言った。悠介はどう対応して良いか分からない。何か言いたかったが声が出ない。風呂に入った。そして風呂から出て来ると、おかずがテーブルの上に並んでいた。「ビールでしょう?」「あんまり飲みたくない。」「ダメよ、迎え酒、飲むと体調が良くなるわよ。」グラスを持たされてビールを飲んだ。喉に染み入るようで美味い。「良い飲みっぷりよ。その調子。でも昨夜のように飲み過ぎないでね。」悠介は、美恵子の元気付けに、出て行って欲しいと言えず、ビールを飲んでいる。美恵子は3年になり、和泉キャンパスから、駿河台キャンパスに変わった。ここから駿河台キャンパスは近いから便利だというような事を話す。悠介はまだ2年なので、和泉キャンパスである。ここからだと駿河台キャンパスは、すぐ近くである。美恵子は、和泉キャンパスから駿河台キャンパスになったばかりである。確かにここならば便利である。先輩たちも3年、4年を考えてこのアパートを借りているのであった。飲んでいる内に悠介は考えるのが面倒になった。酔って来たのであろうか? 今朝からの混乱した頭が続いている。昨夜は酔っ払って寝たのか寝てないのかも自分では分からない。ただ疲れているのは自覚できた。料理を食べ飲み終わったら、急激に眠くなった。ごろりと寝ころんだら眠ってしまった。「こちらに寝なさいよ、そんな所に寝たら風邪ひくわよ。」美恵子の言葉で目が覚めた。3時間近く寝たのであろうか? 時計は22時半を指していた。悠介はのろのろと起きて、パジャマに着替えた。布団の中に入った。美恵子は電灯を薄暗くすると当然のように悠介の隣に入って来た。悠介は短時間であるがぐっすり眠ったせいもあり、頭の重さは取れている。美恵子が隣に入ってきたら、性欲が突き上げてきた。美恵子も抱き付いている。「もうこんなになっているよ、強いのねー。」美恵子が体を押し付けながら言った。悠介は由樹枝の事をちらっと思ったが、こんな状態になって行動を抑制出来なかった。記憶にないが、既に1回行っていると言われている。1回も2回も変わらないと自棄になっていた。愛撫も手抜きで強引に美恵子を抱いた。それでも美恵子は濡れており、喜びの声をあげている。「すご~い、すご~い」と言われ、悠介も興奮した。力強い律動に合わせて美恵子の声も苦しそうによがり声をあげている。そして終わった。「凄いのね、悠介君、大きいから壊れちゃいそうよ。」「・・・」悠介は黙って、美恵子を抱きしめた。その位しなくては悪いと思ったのだ。愛しているとか、恋しいとか思う気持ちはなかった。好きでもないのに、気持ち良かったと悠介は不思議に思った。これでは、部屋から出て行って欲しいと言えないとも思った。泥沼に嵌まってしまっているようである。美恵子は悠介の胸の中で寝息を立てだした。悠介は眠くはなく、目がさえ頭もしっかりしている。眠ったので頭の重さはなくなった。しかし、胸の奥の押し付けるような辛さはなくなっていない。こんな事をしていて、どのように美恵子と別れ、由樹枝との仲を続けるとか、そればかり考えている。こんな事では、由樹枝に手紙も出せない、と思いつつ眠りに落ちていた。===================================
2021.01.13
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。写真はネットより借用===================================「悪いけど、ここを出て行ってくれないか?」悠介が恐る恐る、矢代美恵子に話しかけた。「何言ってるの? 夕べは泊まれ泊まれとしつっこくて、私を抱いたら、もうお役御免と言う事? 冗談じゃーないわ。夕べの約束は守って貰うからね。」「夕べの約束って?」「ここに私も一緒に住むって事よ。それに生活費は貴方が全て出す。それが、夕べの約束よ。そう言う約束だから、始めて会ったあなただけど、愛しているって何度も言うし、身体を許してしまったのよ。」「そんな・・・」悠介は居たたまれない気持ちである。まだバイトに行くのには早いが、作業着に着替えた。「俺、バイトに行くから。」「鍵は置いて行って。私、荷物を取りに行って、ここに来るから。」「それは、困る。俺には彼女がいるのだ。」「何言っているの! 彼女がいるのに、私を抱いたの? 騙したのね!」「騙したなんて・・・」「そうでしょう! 騙したのじゃーなくて、どう言うこと?」「いや、すまない、全然覚えていないんだ。飲み過ぎたんだ。」「大変な事をしておいて、飲み過ぎで済まそうと思っているの? 私、絶対に許せない。」「じゃ、どうしたら良いの?」「約束を守ってくれる事よ。」「それは、困る。」堂々巡りである。矢代美恵子は、絶対に引きそうにない。あくまで同棲生活を始めると言う。それが約束だからと言うのである。確かに身体の関係を持ってしまったら、美恵子の言う事も一理ある。悠介には言い訳が出来ない。美恵子はさらに追い打ちをかけた。「私は、もう貴方のものよ。夕べ愛していると言ったのに偽りはないよね? 北村さんと新宿からタクシーで送って来た。泊まって行け、愛していると言った言葉は、北村さんも聞いている。証人もいるのだからね。恋人同士になった事は、もう北村さんに知られているのだからね。」悠介に言葉はなかった。何も言う事が出来ない。「その彼女と言う人とは別れてよ。1日も早く。もう絶対にその人と会ったらだめよ。私がいるのだから。」由樹枝と別れるなんて事は考えられない。つい先週、離れがたい生活を送ったばかりなのである。わずか1日で、とんでもないことになってしまったと、悠介は悔やむ。打開策はなさそうだ。時間を置いて、何とか美恵子を説得しようとバイトに出かける事にした。部屋の鍵は、美恵子に差し押さえられた。強引に持って部屋を出る訳には行かない。悠介に落ち度がある故、仕方なく鍵を渡したのである。悠介は頭が重いし、朝食を食べる意欲もない。バイト先に出かける為玄関へ向かった。ドアを開けるとまだ全裸の美恵子が言った。「行ってらっしゃい!」元気な声であった。もうここに住みつく事を決めたような挨拶である。バイト先の事務所には、まだ誰も来ていなかった。早過ぎるのであるが、あのまま美恵子のいる部屋に留まりたくなかった。これからどうしよう、そればかりが頭をぐるぐる廻っている。しかし、解決策がない。出て行ってくれと頼むしかないのである。暫くすると従業員たちが三々五々集まった。北村も来た。「お早う、寺本、大丈夫か? 昨夜はずいぶん酔っていたな。」「お早うございます。覚えてないのですよ。」「矢代さんはどうした? 君が泊まって行けとしつっこく誘っていたけど?」「そんな事言いましたか?」「言ってたよ、かなりしつっこかったぞ。矢代さんも君を一人で置いて帰れないって、止むなく泊まると言っていたけど?」「そうなんですか・・・」「覚えてないの?」「全く覚えていません。」「矢代さん、コンパの頃から、寺本を気に行っていたようだから、泊まって行けと言われて、嬉しかったのじゃーないか? どうしているんだ?」「どうしているって、部屋にいるのです。困りました。」「困る?」「だって、北村さんも知っているように、僕には恋人がいます。」「そうだったか。それにしては、昨夜の言動は良くないな。矢代さんをその気にさせるよ。」「困りました。本当に困りました。荷物を持って引越して来ると言うのです。」===================================コロナ感染の容疑者であり、自粛生活中故、執筆活動の時間は十分にあります。構成を練り、執筆にも力が入ります。悠介の人生を決める難しい場面に遭遇しています。はてさて、この難関を切り抜けられるのかどうか?どんな展開になるのでありましょうや?
2021.01.06
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京にやって来た。短いが二人の同棲生活である。写真はネットより借用===================================矢代美恵子はそう言うと、悠介に握手を求めて来た。女性から握手をして来るのは珍しい。悠介は、少しおどおどしながら手を差し伸べた。由樹枝以外の手を握るのは始めてかも知れない。「今日は、無礼講だ、がんがん飲もうぜ。」北村はそう言うと、悠介の為にウィスキーの水割りを持って来た。自分のグラスと矢代美恵子のグラスも持って来た。「乾杯!」「乾杯!」悠介は飲み過ぎに注意しないといけないな、と思いつつ、美味しいのでグイっと飲んだ。「あら、強いのねー。逞しいわ。」美枝子が頼もしそうに悠介を見る。悠介もそう言われて悪い気はしなかった。美恵子は由樹枝と違った美しさがあった。由樹枝の方がずっと美しいと悠介は思うが、美恵子には、何故か人を惹き付ける何ものかがあった。大人の魅力のような妖艶さである。悠介は飲まされて酔っ払って来た。新入生歓迎と言う目的にしては、新入生と一言も話してないな、と思いつつ、矢代美恵子との会話が楽しく、酔い過ぎては行けないと言う感覚も忘れてしまっている。北村も時々来ては、悠介に酒を薦めて、又、別のグループへと去って行く。2時間半余りの新入生歓迎コンパも終わりの時間が迫っているようである。司会者がその旨告げている。悠介は飲み過ぎて気が大きくなっていた。もっと飲みたい気分なのだ。これが、悠介の一番いけない所である。意識不明になった事が数回あるが、今夜もそうなりそうな気配がしている。本人は気分が良くて、何ら気にしていない。北村がやって来た。「寺本よ、2次会に行こう! 矢代さんも一緒だ。」気分が高揚している悠介は、後先も考えず、「行きましょう!」と返事した。2次会は、そんなに遠くない新宿の居酒屋へ行った。北村と矢代美恵子、さらには、悠介の知らない男女が数人一緒だった。それから、悠介は、何杯かウィスキーを飲んだまでは覚えているが、その後は全く記憶を失ってしまった。気が付いたのは、自分の部屋であった。頭が痛かった。寝返りを打ったら、柔らかい肌が手に触れた。いつのまに由樹枝が来たのかと思い、抱きしめた。由樹枝もそれに答えて、腕に力を入れたようだ。頭は重いが由樹枝ともっと肌を合わせたくて横向きになった。しかし、何かが違う。由樹枝とは感覚が異なるのである。おかしい? と思い、半身を起こすと、そこには、矢代美恵子が寝ているではないか?「えーーー、どうしたんだ?」悠介は頭が混乱した。どうして、自分の部屋に矢代美恵子がいるのだ? しかも彼女は全裸である。悠介自身も全裸だ。夢か? と思った。しかし夢ではない。悠介は頭を掻きむしった。「どうしたの?」美恵子が起きたようだ。「どうなってんだ? どうして貴女がここに寝ているんだ?」「何言ってんの? 貴方が無理やり泊まるように迫ったんじゃないの?」「いや、俺は、知らない。何にも知らない。」「あなた、責任回避するつもり? 昨夜、何て言ったの? そして私に何をしたの? 愛しているって何度もいったわ!}「し、しらない、俺は、何にも知らない。」悠介は、慌ててパンツを穿き、パジャマも着た。そしてそこに座り、夕べ何があったのか、思い出している。新入生歓迎コンパに参加した。ウィスキーを飲んだ記憶がある。その後、誘われて2次会に行った。そこまでは覚えているが、その後の記憶がない。全く記憶が飛んでいる。とんでもない事をしでかしたのかも知れない。悠介は焦った。全裸の矢代美恵子は布団を被って天井を見ている。悠介の顔を見て、矢代美恵子が言った。「あなた、責任を取ってくれるのでしょうね? 夕べの約束。」「夕べの約束? 何も覚えていない。」「しらばっくれるつもり? ひどいよ! ここに来て一緒に住もうと言ったわね。それに同意もしていないのに、貴方は私を抱きしめて、無理やりしたわ。」「え? 何をした? 俺は覚えていない。」「ずるいよ、なら、どうして私もあなたも裸なの? あなたは私を犯したのよ。」悠介は焦った。何も覚えていない。しかし、状況は全く不利である。新宿からどのように部屋に戻ったのかも分からない。まして、美恵子を抱いた記憶もない。美恵子は犯されたと言っている。由樹枝と言う愛する恋人がありながら、他の女性に手を出す自分ではないと、重い頭で考える。こんな所を由樹枝に見られたら、どんな風に思われるのか、それを考えると恐ろしい。どうしたら良いか、どうしたらこの状況から脱却出来るのか? 考えても考えても思い浮かばない。悠介は虚ろな目をして頭を抱え込んだ。=============================================
2020.12.31
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第102回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。===================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京にやって来た。短いが二人の同棲生活である。写真はネットより借用===================================悠介も由樹枝も、大きな喜びと快感、その疲れでぐったりと横になった。「ハァハァ」と大きく息をしている。暫くそのまま動けない。のろのろと悠介は起き上がって、テッシュを取った。由樹枝の中心の後始末をしてあげる。そこに触れると由樹枝はびくっと身体が動いた。達した後の余韻である。悠介も自分の部分を綺麗にすると、再び由樹枝の横に寝そべった。「良かったよ、気持ち良かった。愛しているよ。」「わたし・・・、こんなの始めて。怖かった。」「そうかい、積極的でよかったよ。」「エクスタシーって言うの? それが来たみたい。」正直に快感を語る由樹枝が愛おしい。悠介は静かに口づけをした。衣服を付けて二人は満足感に浸りながら、ぐっすりとした眠りに落ちて行った。悠介は全く目が覚めずに朝を迎えた。由樹枝は既に起きて朝食を作っている。バイトに行きたくない気持ちである。悠介は仕事が好きだった、嫌いではない。行きたくないのは由樹枝と一緒にいたいからであった。でもその気持ちを振り払って悠介は起きて布団を片付けた。今夜も明日も由樹枝はいる。明後日長野に帰っても、5月の連休には、間違いなく会える。そう思えば気持ちを切り替えられるのであった。「準備出来たよ。そちらに持って行くね」テーブルは既に出してあった。「良い天気だなー。」窓の外を眺め、悠介が言った。心からの幸せを感じている。明日1日したら、その翌日は長野に帰ってしまう由樹枝だ。それを思うと寂しい気もする。由樹枝は手放せないと思う。絶対に愛し続けて行くと、悠介は自分に言い聞かせた。あっと言う間に2日間は過ぎた。由樹枝が長野に帰る日である。名残り惜しそうに朝方もこの日は交わった。暫く会えないと思うと愛撫にも気が入った。由樹枝もその愛撫に答える。愛し合う者同士、心のこもった快感を伴う行為である。1週間以上滞在したが、あっと言う間に過ぎ去った。短い期間であるが、始めて二人だけで過ごした。二人の関係は以前にも増して、濃密となった。お互いに言葉を交わさずとも分かりあえる仲である。信頼し合っている。この関係がどんなことがあっても壊れるはずがないと二人とも思っていた。東京まで由樹枝を送って帰って来た。東京駅で別れる時は、他の人の目も気にせず、しっかり抱き合って送り出した。アパートへの帰り道は何かを落としてしまったように心に空洞が出来たようである。寂しさとこの1週間余りの楽しくも心地よい時間を思い出して複雑な心境である。悠介は電車の中でこの1週間の事は絶対に忘れないと思っていた。二人だけの生活となると会話が少なくなって気まずい思いはしないかとか、そんな事さえ心配していた。しかしながら、気まずい事など全くなく、楽しい事ばかりであった。悠介が産まれて来て、こんなに楽しい日々はなかったと思うのである。由樹枝が長野に帰って2日目、新学期が始まった。そして次のバイトの朝、先輩の北村から声をかけられた。新入生歓迎コンパがあるが出ないかと言う事である。悠介は興味ないので断ったが、先輩、特に2年生の人数が不足している、何とか出て欲しいと熱心に誘われた。北村は、悠介がアパートを引き継いだ橋本の後輩であり、引越前から世話になっている。その北村から熱心に勧誘されており、無下にも断れなかった。コンパは、来週の金曜日、4月14日との事。気は進まないが、面白くなければ、早く帰ってくればいいと参加する事にしたのである。歓迎コンパ当日である。場所は新宿の大きなレストランであった。立食パーティ形式であるが、凄い人数の学生が集まってる。70~80名はいるであろうか? 政治経済学部だけでなく文学部も来ていると聞いた。同学の高橋も来ていた。盛岡出身で一時期、東京生活に嫌気をさしていたが、バイト先の本屋で女子高校生と出会い、恋人になった。彼女のお陰で大学を中退しなくて済んだのである。「まだ、彼女と付き合っているんだろう?」「付き合っているよ。彼女、もう就職したんだ。」「そうか、良かったなー。」一頻り、高橋とその後の近況などを話し合った。ビールも飲んでいる。体調が良いのか、満腹食堂と違う雰囲気が良いのか、ビールも進んでいる。北村が、綺麗な女性を連れてやって来た。高橋はその二人を見ると、じゃーな、と言って別の場所へ移動していった。「矢代美恵子さんだ。寺本君の1年先輩、俺の1年後輩だ。」「寺本です。」「矢代です、よろしく。」===================================
2020.12.25
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京にやって来た。短いが二人の同棲生活である。写真はネットより借用===================================翌日も良く晴れた良い日であった。浅草の雷門から仲見世でお土産を見ながら歩き浅草寺に行った。それから、上野動物園へ行き、上野公園や不忍池を歩いた。今夜もどこかで食べようと悠介は思っていたが、由樹枝はアメ横を歩いていて、今夜は刺身を買って家で食べましょう、と言い出す。豪華な食事も良いけど、悠介と二人で部屋で食べる方が落ち着くらしい。昨日、今日と歩き詰めだったから疲れた事もあるのだろう。大きなマグロの刺身を買った。疲れたと言うので、早めにアパートに帰った。由樹枝は早速、マグロを切っている。「冷凍だから、早めに切らないと、解凍できないよね。」「今夜はマグロで一杯だな。楽しみだ。」悠介はテレビを見ながら、由樹枝に返事をした。幸せだなー、としみじみと感じる。これ以上の幸せはないよな、と自分に言い聞かせる。「何か手伝う事ない?」「いいよ、テレビ見ていて。マグロを切って、野菜を切るだけだから。 マグロと生野菜で良いかな? あと、何か作る?」「いいよ、俺、マグロ大好きだし、沢山あるから、ご飯も食べられるかな?」「6時頃から食べられると思うよ。まだ2時間あるわね。」「早いけど、風呂の準備するかな? 笑点を見たいからさー、早めに入ってゆっくりしよう。」悠介は、日曜日の5時半から始まる笑点を楽しみにしている。特別な用事がない限り毎週見ている。大学生になってからは、バイトで遅くなる時が多く、見られない。この日のように見られるようならば、準備して見たいのである。風呂を準備しゆったりと入っても5時半にはまだ時間があった。笑点までぼんやりして過ごした。そして、ようやく笑点が始まった。司会は、立川談志である。メンバーは、三遊亭圓楽、林家こん平、毒蝮三太夫、桂歌丸、柳亭小痴楽の5名、高級な番組ではないが、笑えるのであった。夕食の準備も終え、由樹枝も風呂に入り一緒に笑点を見る。面白い。悠介と由樹枝は時々、顔を見合わせながら、テレビに見入る。30分はあっと言う間に過ぎ去った。「じゃー、食べようね。」「そうしよう。」「解凍出来たけど、まだ少し冷たいよ。」「そう?」悠介が一切れつまんで食べて見た。「大丈夫、大丈夫、問題ない。美味しいよ。」お互いのコップに、ビールを注ぐ。「では、乾杯!」「昨日、今日と、東京見物、ありがとう!」「いや、もっと行きたい所もあったけど、これから、いつだって行けるし、面白い所、探しておくよ。コンサートとかも行きたいよね?」「うん、行きたい。」悠介は、由樹枝と色んな所へ行きたいと願った。これからの楽しみが増えた。由樹枝が大学受験の3月まで、会いたいけど会えない日々が続いた。これからは、最低1ヶ月に一回は東京に来ると言う。その時は、バイトを休もうと思った。部屋でゆっくりしても良いし、どこかへ出かけても良いし、二人だけの時間をたっぷり楽しめる。他愛のない話しをしながらも楽しい夕食は終わった。由樹枝は片づけを行う。悠介は、テレビを見ている。「8時だよ、全員集合!」を見たかったが、それは土曜日の放送であった。「明日、明後日はバイトで、その次の日に帰るんだったね?」「そうよ、早いわね。」「じゃ、水曜日はバイト休んで、東京まで送って行くよ。」「大丈夫よ、無理しないで良いよ。」「別に無理している訳じゃーない。社長にも彼女がいる間は休んでも良いよ、って言われているんだ。」「社長さん、お小遣いはくれるし、気を使ってくれるわね。」その後も寝転がってテレビを見ていた。由樹枝の横顔を見ていて、悠介は急に興奮して来た。毎日、寝る前に交わっているが、最近、悠介の部屋に来てから、由樹枝の興奮度が以前とは違うように感じている。以前は声を押し殺しているような感じであったが、今は、自然と声が迸るようになっているのである。自ら、気持ち良いとも言う。大学にも合格して、悩みが消え、性交に気持ちを注げるようになったからかも知れない。そんな由樹枝に絶頂感を与えたいと悠介は思うようになった。よーし、今夜は時間もあるし、十分な前技を行い、行くまでやってやるか、と悠介は、早いけど寝ようと、由樹枝に声をかけた。===================================
2020.12.22
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幻冬舎からメールが届きました。出版をして見ないか? と言う内容です。実は、これは、推測していました。実は、今年の5月から6月にかけて、小説コンテストに応募したのです。 黄山紀行 チェンマイに佇む男達 山川純一の場合の2作をメールに添付して送付しました。下記の写真のように、締め切りは6月10日です。発表は、8月末と言う事でした。本件、どなたかから応募を進められたのですが、幻冬舎はお金をとって個人出版を薦める会社なので、その商売の一環だろうなと思いました。でも、メールで送付ならば、お金もかからないので、応募して見ようと送った次第です。しかしながら、作品が届いたとの返信も、何らありません。8月末の大賞発表にも関りがありません。(当然ですが。)作品が届いた位の返信はあって当然であろう、と思いましたわな。何と非常識な会社であろうとも思いました。しかし、そんな事は忘れてしまいました。そしたら、数日前に、出版しないか? とメールを受領したのです。やはり商売の為に、セカンドライフ小説コンテストを行ったのです。応募者全員にメールを出している事でしょう。その内容は、電子書籍出版ならば、費用180万円、印税は30%紙本では、1130部作って、費用は270万円、印税は不明。と言った内容です。そんな金出して、出版する訳ないでしょう? 阿保か! と言いたい。180万円もあったら、チェンマイで2年近く暮らせます。それに、アジアの星一番 は、「でじたる書房」で既に64冊を出版していますが、出版費用は無料です。そして、印税は50%です。印税のお金も手数料無料で振り込んでくれます。その他、アマゾンのキンドル(Kindle)だって出版手数料は無料ですよ。キンドルの場合、送金時に色々とお金が必要なので、問題はあり、と聞いていますが。ま、そう言う事で、出版数だけならば、アジアの星一番 は既に大作家でありますし、幻冬舎なんぞで、出版するつもりはありませぬ。あいつら、メール送信しても返事もよこさなかったので、今回のメールに対しては、こちらも無視する事にします。
2020.12.20
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京にやって来た。短いが二人の同棲生活である。写真はネットより借用===================================「だって、悠介と初めての東京デイトだから。」「いいよ、何でも買ってあげるよ。」由樹枝は絵葉書を買った。気分に応じて、原宿や明治神宮、表参道など、机の上に飾りたいとの事である。もっと高い物を買えば良いのに、と思う悠介であった。原宿から少し戻る事になったが、表参道も歩いた。そして明治神宮に行った。神宮内には、結婚式らしい花嫁花婿、そして親族らしい方々が列をなして歩いていた。由樹枝はそれを見て言った。「ねぇ、悠介、私たちはいつ結婚出来るかな?」「そうだなー、まず大学を卒業しないとね。」「まだ、長いね、先が。」「そうだけど、由樹を愛する気持ちは変わらないよ、何年でも。」「ふふ、嬉しいわ。私も変わらないからね、絶対!」由樹枝が繋ぐ手を固く握りしめた。「渋谷へ行って、夕食にしよう。今夜はご馳走だ。」「あんまり無理しなくて良いよ。ラーメンでもカツ丼でも何でも良い。」「いや、社長から食事でもしろと、お金を貰っているんだ。」「そうなの? 社長さん、優しいのね。」「うん、だから、豪華な夕食を食べて、社長に報告しないと。」「分かった、じゃー、ご馳走になります。何食べる?」「フランス料理のコースにしよう。お店は調べてあるんだ。」二人は、渋谷への道を歩きながら話している。明治神宮から渋谷まで、ゆっくり歩いて、20分少々である。夕食には丁度良い時間となった。その店は、道玄坂を少し登り、左手の2階にあった。白が基調の清潔そうなお店である。2名である旨告げると、ウェイターが席に案内してくれた。そして、椅子を引いて、席を薦めてくれた後、メニューを恭しく差し出した。「フランス料理は初めてです。良く分からないので教えて下さい。」と悠介は正直に話した。ウェイターは、コース料理を選ぶか、単品で注文するか方法は二つあると説明する。悠介は決めていた通り、コース料理を頼んだ。コース料理は3種類があった。料理の内容も分からないので、社長さんから貰った小遣いの範囲内の一つを頼んだ。「緊張するなー。フランス料理なんて初めてだから。」「私も初めてよ。それにフォークやナイフがこんなに沢山ある。どれを使ったら良いか分からないよ。」「それも聞いて見るけど、外側から使えば良いと本で読んだよ。」「それなら分かり易いね。」飲み物の注文を取りに来た。「コースの肉料理に合う赤ワインをグラスで下さい。それにお水を。」無難に注文を終えて、暫くすると、オードブルが運ばれて来た。グレープフルーツとタコのマリネである。ウェイターが丁寧に説明してくれた。有難い。初めてであると言ったことで、一品ずつ説明してくれるようである。次は、ベーコンと玉ねぎのコンソメスープが来た。「う~ん、これ美味しい! タマネギの甘みがあるね。」「そうだね、ベーコンの旨みもあるよ。美味しいな。」メインは、鮭のムニエル。口直しには、桃のソルベである。いつ飲んで良いのか分からないが、赤ワインは既に運ばれて来ていたので、飲んでいる。肉料理は、牛フィレステーキだ。「柔らかいね。良い味。」ワインのせいで、ほんのりと桜色に頬を染めた由樹枝が言った。「美味しいなー。料理は日本食と思っていたけど、フランス料理も仲々良いね。」牛肉を食べてお腹も膨れた。満足な夕食である。ナイフやフォークも間違いなく使用したようで、スプーンが残っているだけである。「デザートのクリームブリュレでございます。」こんがりと焼けた表面にスプーンを入れると表面がパリッと割れた。中にはトロっとしたクリームが入っている。「あぁ、美味しかったねー。」小さなお菓子とコーヒーが運ばれ、コーヒーを飲みながら悠介が言った。「それぞれの量が多くなかったから、お腹一杯になるかな? と思いながら食べていたけど、食べ過ぎるほどよ。ほんと、美味しかった。ありがとう!悠介。」由樹枝が満足そうに笑みを浮かべながら言った。「喜んでくれたら、俺も嬉しいよ。俺は、由樹の作ってくれる料理で大満足だけど、こんな雰囲気の所で食べるのも良いね。」「うん。たまにはね。」「バイトで稼ぐから、次に来た時もどこかに行こう。お店を探しておくよ。」===================================
2020.12.08
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京にやって来た。短いが二人の同棲生活である。写真はネットより借用===================================悠介がタオルで身体を拭きながら風呂から出て来た。「ビールね?」由樹枝は、冷蔵庫からビールを取り出して、悠介の前に置いた。「由樹も座れば?」マーボー豆腐を持ってテーブルに置いた由樹枝が言った。「ちょっと待ってね。飲んでいて? もう一品炒めてからね。」美味しそうなマーボー豆腐である。ほどなくして、豚肉野菜炒めを作って持って来た。「由樹も少し飲めば?」悠介が由樹枝のコップにビールを注いであげた。「じゃー、乾杯だ。」「うん、乾杯!」「どう、料理は?」「うん、美味しいよ。受験で忙しかったのに、どこで覚えた?」「全然、今日、料理本を買って、その通りに作ったの。」「そうかい? 仲々、美味く作れているよ、大したもんだ。」「私、料理を作るの好きみたい。毎日、作るからね。」楽しい会話である。バイトの疲れも全く忘れてしまうようである。「土日だけどさ、東京のどこへ行きたい?」「う~ん、分かんないけど、渋谷とか行きたい。」「渋谷か、何があるのか分からないけど、渋谷へも行こう。」食事の間、東京見物の話題が続いた。浅草や、上野、東京タワー、皇居などへも行く事になった。悠介は、それを元に、もう一度、ガイドブックで行き先を確認しようと思った。悠介はビールを飲み終えたが、まだ飲み足りない気がする。ウィスキーも買ってあった。それを水割りで飲み始めた。記憶が飛ぶので、飲み過ぎに注意せねばならないが、由樹枝もいる自室である。安心して飲めるのであった。こんな毎日が続くならば、結婚って良いなー、と心底思った。翌日も翌々日もバイトであった。帰れば由樹枝が料理を作って待っていてくれる。二人で話しながらの食事も楽しい。夜は一つの布団に一緒に寝る。由樹枝も悠介も寝る前には必ず交合をするものと思っている。若いのである。毎晩でも全く問題はない。誰にも邪魔されず心行くまで愛し合う。そして心地よい疲れに熟睡する。これほど健康で健全な暮らしもないであろうか?土曜日がやって来た。ようやく1日中、一緒にいられる日である。年寄り臭いかもしれないが、まず皇居に行った。アパートから近い事もあったが、皇居を散歩したかった。観光客はいたが、大混雑でもない。二重橋も見た。ここに天皇陛下が住んでいるのか、と雲上の人の事を思った。皇居をゆったりと手を繋いで散歩した後は、東京タワーへ行く。大展望台が地上150m、特別展望台は250mもある。二人は特別展望台の地上250mまで登った。快晴のこの日。遠く富士山まで見える。「ねぇ、アパートは、どの辺り?」「あそこが今行って来た皇居だろう? その向こう側がアパートのある所だよ。」「見える?」「分からないなー。」東京湾も良く見える。絶好の観光日和である。「ねぇ、見て見て! あそこ、凄い桜見たい。行って見たい。」「皇居に近いね。たぶん、千鳥ヶ淵じゃーないかな? 桜の名所だよ。」「行こうよ、あの桜、近くで見たい!」「良いよ、渋谷へ行く予定だったけど、その前に、靖国神社も行こう。」東京タワー付近で昼食を食べ、靖国神社へ移動する。多くの人達が歩いている。千鳥ヶ淵の桜は、満開である。「凄い綺麗ね。」「桜も凄いけど、人も凄いな。これじゃー、迷子になりそうだよ。」「綺麗ねー!」二人は手を繋いで、千鳥ヶ淵を横目に見て、そして満開の桜を見ながら歩いた。これだけの人がいるのに知り合いはいない。混雑の中で二人だけを感じながら。靖国神社へもお参りした。二人とも、戦争は全く知らないが、戦没者の人達が眠っているのは知っている。次は若者が多いと言われる原宿を目指した。まだこの頃は竹下通りもない頃である。それでも若者は多い。アイスクリームを買って舐めながら歩いた。「何か買いたいものある?」悠介が聞いた。「う~ん、そうねー? 記念に部屋に置くものを買うかなー?」===================================
2020.11.27
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。写真はネットより借用===================================「ありがとう。6時頃には帰れると思う。」「分かった。それまでに、準備しておくから。」悠介は、由樹枝に送られてアパートを出た。悠介の心のように晴れ晴れした青空が天空に広がっていた。由樹枝は悠介を送ってから、食器を洗い、部屋の掃除も行った。綺麗になっているので、さほど時間がかからなかった。食材は昨日買ってある。不足はないと思われるが、何を作るかによって、買物もしなければならないかも知れない。由樹枝は多少、母親を手伝って料理を作った事はあるが、それほど得意ではない。しかし、悠介に食べさせる料理を作ると思うと張り切った気持ちになる。部屋の片づけが終わったあと、本屋さんへ出かけた。料理の本を買う為である。悠介もそうだが、由樹枝も分からない事があれば本に頼るのである。午前中は、料理の本を読み、何を作るか考えた。メインはマーボー豆腐に決めた。一品では少ない。その他、何か作りたいが思いつかない。お母さんがどんな物を作ってくれたか食卓を思い浮かべようとするが、思いつかない。漬物はいつもあったように思う。献立を考えるのは大変だなー、と思った。毎日、毎日、献立を考え、買物をして、一日3度も料理を作ってくれている母親は凄いなー、と改めて感謝の念が湧いてきた。料理の本を見ながら、白菜とキューりの漬物を作る事にした。塩揉みすれば、すぐに食べられるようである。それから豚肉野菜炒めも作る事にした。魚も買ってあるが、それは明日にする事にしたのである。白菜ときゅうりの塩揉みだけ行って、不足の豆腐を買いに外出する事にした。桜が咲き始めている。この調子だと、悠介と東京見物する頃には、サクラは満開になりそうである。青空が広がり爽やかな風も吹いている。清々しい気持ちでの散歩である。昨年は、受験の事で頭が一杯であった。どこを受験するかも頭を悩ませていた。それが今は、不安は一切ない。希望だけがある。大学生活も楽しみたい。受験で中止していたバドミントンも大学に入ったら再開したい。悠介に会いに来るのも楽しみである。毎週でも来たいがそう言う訳にも行かないだろう。昨夜と今朝、抱きしめられた肩が少し痛い。甘い痛みを感じながら歩いている。バイトに出た悠介は、1日が長いと感じられた。帰れば由樹枝が部屋で待っている。それを想うと心が浮き浮きするのであった。いつもに増して、作業は慎重に行った。浮き浮きして事故でも起こしたり、間違えて施工しては後の祭りである。その程度の冷静さは悠介も持っていた。「いやに、にこにこしているな? 良い事でもあったか?」バイトを始めて以来、ずっと一緒に仕事をしている、いわば上司の吉武に言われた。昼食を食べながらである。「ええ、まぁ。」悠介は、笑みを堪えて、曖昧に答えた。彼女が来ているのですよ、と言いたい気持ちを抑えていた。ようやく、夕方、仕事が終わった。長い1日であったが、待ちに待った帰宅時間である。吉武の運転で、事務所に戻った。小柳社長がいた。「寺本よ、彼女が来ているらしいな?」「え? どうして知っているのですか?」「事務所では、その話で持ち切りだよ。綺麗な彼女らしいな。」「そうなんですか?」「早く帰りな、待っているのだろう?」「はい、すいません、帰らせて貰います。」「あ、これで、彼女と何か食べてくれ。」小柳社長から封筒を渡された。悠介と彼女を食事にでも招待したいが、窮屈だろうから、食事の代わりにあげるとの事である。悠介は貰うのは辞退したが、何度かやり取りがあり、有難く頂いたのである。親身な社長である。「ただ今!」「お帰り!」由樹枝がドアを開けて悠介を迎えた。部屋から良い匂いがして来る。食事の用意は出来ているようである。「ね、お風呂に入るでしょう?」「そうだね、作業で汗かいたから、風呂に入るよ。」「その間に、出たらすぐ食べられるように料理を作っておくからね。それから洗い物は、籠に入れて置いて。」由樹枝はすっかり主婦気分である。マーボー豆腐は既に作ってある。温めなおす必要もないほど、出来上がったばかりだ。豚肉野菜炒めは、炒めれば良いように準備完了である。充実した気分の由樹枝であった。「あ~ぁ、さっぱりした。気持ち良いよ。」===================================
2020.11.09
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。写真はネットより借用=============================================悠介は、ビールを頼んだ。最近はビールを飲むのが楽しみなのである。バイトを終えて部屋に戻り、お風呂に入って、それから満腹食堂に来る。そして、冷えたビールを飲むと、もう社会人かと思えるような大人になった気がするのである。学生の仲間より、バイトの先輩たち、そして満腹食堂の常連との付き合いの方が多い。「おー、綺麗な姉ちゃんやな! 悠介の彼女か?」常連の一人が悠介に声をかけて来た。「そうです。僕の彼女なんですよ。」「へぇ~、ほんと、綺麗な姉ちゃんや、お前には勿体ないな。」「何言ってますか! お似合いでしょう?」「由樹枝と言います。よろしくお願いします。」由樹枝は、酔っ払いのおっさんにも、殊勝に挨拶した。満腹食度のお客さん全員が由樹枝を見た。そして、「よろしくな!」と言った。「由樹枝さん、悠介を頼むぜ! 真面目で良い奴なんだ。」「そうそう、真面目だから、彼女がいるなんて思わなかったよ。」口々に、悠介の事を話している。由樹枝は、悠介が皆さんの中に溶け込んで楽しく暮らしている事を知って、安心した。一人寂しく部屋に籠っている事も想像したことがあるからだ。寂しい事から、新しい女性と付き合い始めないか、心配もしていたのである。そんな心配は、取り越し苦労であると分かり、安心したのであった。始めは、声をかけて来たが、その後は気を使ってか、二人だけにしてくれた。労働者階級の人達であるが常識もあり優しい。由樹枝もビールを注いで貰ってひと口飲んだ。苦いと感じるが、冷たくて気持ち良い。悠介は、アルコールに強い。昨年、小柳社長主催の会食があり、飲まされてべろべろになり、記憶が飛んだ経験があった。それで、その後飲み過ぎに気を付けていたが、忘年会で、先輩の北村が妙に親しくして来て飲まされた。そして再び記憶が飛んでしまったのである。従って、飲み過ぎても吐く事もせず、どんどん飲める、そして記憶が飛んでしまう事を自覚して、飲み過ぎには注意している。記憶がなくなるほど飲んだのは、2回だけであった。この飲み過ぎが、悠介を不幸にし、由樹枝との仲にも大きく影響するのであるが、この時、悠介も由樹枝も全く想像すら出来ないでいたのである。満腹食堂で、夕食をとり、皆さんに挨拶して、部屋に戻った。少し酔って気分が良い。お腹も膨れている。由樹枝も大学に合格し、悠介も2回生になる。勉強も順調であるし、バイトも任される事も多くなって、これまた順調である。これから、由樹枝と会える回数も増える。心配な事は一つもない。悠介の人生で、これほど順調で幸せだったのは、この時かも知れない。由樹枝と彼女が滞在時の予定について話し合った。悠介はずっと休んで由樹枝と一緒にいたいが、由樹枝から普段の生活をして欲しいと言われ、東京見物に2日間休み、それ以外の日は、バイトに出かける事にした。寝る時間となった。布団は2組ある。しかし、由樹枝が一つで良いと言う。一緒に眠りたいと言うのである。3ヶ月振りの愛情交換である。既に由樹枝は興奮しているのか、頬が熱くなっている。くちづけをしてその興奮が伝わって来た。勿論、悠介も興奮している。時間はある。たっぷり時間をかけて、愛撫を行った。若い二人は、激しく愛し合い、疲れて深い眠りについた。そして朝方、もう一度愛し合った。「朝食が出来たわよ。」由樹枝がキッチンから声をかけた。悠介は、既に布団を片付け、テーブルを出していた。そこへ料理が運ばれる。朝食だから簡単である。卵焼きや納豆、味噌汁が並んだ。「いただきます。」二人で声を揃えて言った。「朝ご飯を一緒に食べるのは、1年ぶりかな?」「そうね。うん? でも長野に来てくれた時もたべたわよ。」「あぁ、そうだったか。でも、長野は慌ただしかったから、忘れてしまったよ。」「そうそう、ゆっくりしたのは、1年前の引っ越しの時ね。」「でもあの時は、由樹の手料理でなく、満腹食堂だった。」「そうか、そうだね。」そんな思い出話も楽しい。何を話しても笑みがこぼれる。仕事に行く悠介の着替えも由樹枝が手伝ってくれた。幸せそのものである。「夕食何を食べる? 時間があるからね。しっかり準備出来るよ。」「何でも良いよ。ビールは飲みたいな。」「分かった。何か考えるね。私、料理するの、好きみたい。」============================================
2020.10.20
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。写真はネットより借用===================================1972年3月28日、火曜日、由樹枝は東京にやって来た。悠介19歳、由樹枝、18歳の春である。桜の蕾が大きく膨らみ始めたポカポカ陽気の良い天気である。悠介は、御茶ノ水駅まで迎えに行った。東京駅着の時間は聞いていた。東京駅まで出迎えても良いのであるが、東京は広い。もし出会えなかったら困るので、御茶ノ水駅にしたのである。由樹枝も1年前に一度来ているから、どのように来るか知っている。改札から由樹枝が出て来た。小さく手を振っている。白いブラウスにライトブラウンのスカート、そしてレデッシュブラウンのカーディガンを羽織っている。いつにも増して清楚な感じがして抱きしめたくなった。「よく来たな。」「久しぶり、会いたかったよ。」「S大学、合格おめでとう! 頑張ったなー。」「ほんと、合格して良かったー。悠介のお陰よ。教えて貰ったのが、役立った。」「そうだとすれば、嬉しいけど、受験は本人の努力さ。由樹の頑張りだよ。」由樹枝の大きなボストンバッグを悠介は持って歩きだした。悠介は、綺麗好きとは言えないまでも、いつも部屋は乱雑ではない。しかも、由樹枝が来るので、念入りに部屋の隅々まで掃除をした。それで、片付いているし、綺麗である。「へぇ~、綺麗にしているねー、男性の部屋じゃない見たい。」「そうかい?」「まさか、誰か掃除に来てくれる人がいるんじゃーないよね?」「いる訳ないよ。由樹以外、女性としゃべった事もない。」「そう? 怪しいなー?」由樹枝が笑顔で、悠介を突いて来た。その手を掴み、由樹枝を抱きしめた。久しぶりの由樹枝の感触である。受験があったので、正月の里帰り以来会っていない。3ヶ月ぶりである。「これから、1週間一緒にいられるのだね?」「うん、もっと長くいたいけど・・・。」悠介は左手で背中を、右手でお尻を掴み、由樹枝にくちづけした。由樹枝も答える。愛し合う若者の行いである。際限なく、飽きることなく二人は抱き合った「コーヒーでも飲む?」悠介が、由樹枝の身体を離して言った。「私が淹れるよ。お勝手、使うわよ。」「遠慮なく、使ってくれ。ここは、俺と由樹の部屋だ。」コーヒーを飲みながら、由樹枝の受験の経緯などをじっくりと聞いた。彼女の友人の進路なども聞いたが、悠介には、誰が誰なのか良く分からない。もう2年程前になるであろうか? 由樹枝の編んだ毛糸の手袋を持って来てくれた由樹枝の同級生がいた。その娘は東京の大学に合格したとの事である。由樹枝は大層羨ましそうに彼女の話しをしている。今でも、由樹枝は東京で悠介と暮らしたいと思っているようだ。悠介も大学の授業の話しもしたが、多く話すこともなかった。授業に出て帰るだけで、話すこともなかったのである。それよりもバイトの話しに熱が入った。面白いのは、家庭のブロック仕事である。10時に3時と、お茶を出してくれる家が多い。その時、先輩達と奥さんの会話を聞いている。おしゃべりな奥さんが多く、子供の学校の話しや、旦那さんの話、近所の奥さんなどの身近な話題から、芸能界のゴシップまで休憩時間一杯、話している。それが、悠介には面白く聞けるのであった。そんな話に、由樹枝が興味があるとも思えないが、頷き、相槌を打ちながら聞いている。由樹枝は聞き上手である。二人は近所へ買物に出かけた。八百屋に肉屋に魚屋などを廻り食事の買い物である。悠介は、そんな買物などした事はなかったが、楽しそうに品物を選ぶ由樹枝を見て、自分まで楽しい気持ちになって来る。新婚生活みたいだなー、と経験はないがそう思った。食材は揃ったが、夕食を作り始めるには時間が遅すぎた。それで、昨年も行った、悠介の行き付けの満腹食堂へ出かけた。「いらっしゃい!」「こんばんわ!」「あら? 以前、一度、見えたわよね?」「はい、去年、来ました。」「そう、又、一段と綺麗になったみたい。」お店のお姉さんとの会話である。悠介は、由樹枝を誉められて嬉しくなった。東京にいても、由樹枝のような美人には、出会わない。大学にも沢山の女子大生がいるが、由樹枝に匹敵する女性はいない。この1年で、由樹枝は益々、綺麗になったと悠介も思う。つくづく、恋人で良かったと感じるのであった。===================================
2020.10.11
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。写真はネットより借用===================================翌年になって、由樹枝の入試が始まった。3校ほど受験するようである。東京は両親の反対にあって、受ける事は出来ない。長野市と長野県内の大学に限ると制限されてしまったのである。悠介としては予定通りとして受け止めた。由樹枝が東京の大学に入り、一緒の生活をする事も考えた。由樹枝はそれを希望していたからである。しかし、そうなった場合、今現在の生活、学校と勉強とバイトの生活を続けられるか、不安があった。由樹枝と毎日暮らせる喜びは格別であろうが、不安もあったのである。否応に関わらず、東京での二人の生活は無くなった。昨年から由樹枝と会うのは、2ヶ月に1回ほどしかなかった。最低1ヶ月に一度は会おう、会いたいとお互いの了解はあったのである。しかし、受験勉強を最優先した結果、そんなに会えなかった。受験生から、大学生になれば、東京と長野に離れていても、会う機会は増えるはずだと悠介は思う。由樹枝が泊まり掛けで東京へ出て来ることも可能である。それは、手紙でも確認していた。3月初旬、嬉しい便りが由樹枝から届いた。希望校のS大学に合格したとの事である。悠介は思わず、「やったー。」と、こぶしを突き上げていた。一昨年は、勉強を教え、そして昨年は、デートも控えめにして受験を応援したのである。自分のこと以上に喜びが溢れて来た。大喜びしている由樹枝の破顔が目に浮かぶようである。手紙の最後に、「春休みに1週間程、東京へ行きたい、泊めてね」、と書いてあった。悠介は、すぐに返事を書いた。まずは合格おめでとう! である。よく頑張った、心よりそう思うので、その通りに書いた。そして、春休みの日程についていつにするかも書いた。バイトは1週間休んでも良い。休まずバイトはしているので、お金もずいぶん溜まった。仕送りもして貰っているので、生活は仕送り代で暮らせている。バイト代は全て貯金しているのだ。使う予定もない。東京見物に連れて行きたい。洒落たレストランで食事もしたい。そして、合格祝いにネックレスでも買ってあげたいと、想いは膨らんでいる。返事はすぐに来た。日程は、3月末から4月初めの1週間ほどになった。バイトは休まなくて良いと言う。一緒に居られれば、それで幸せだからと言う。買い物をして料理を作って待っていると新婚の奥さんのような事が書いてあるのだ。悠介は、嬉しさを通りすぎて涙ぐんでしまった。幸せだなー、と実感する。春休みが待ち遠しい。結局、バイトは2日間休むことにした。由樹枝を東京見物に連れて行きたかった。悠介も東京生活1年になるが、アパートと学校の往復、たまに新宿で飲んだ位で、東京を見ていない。バイトの先輩方とも、食事をして飲むだけである。バイトでは、東京だけでなく、埼玉方面とか、千葉まで足を延ばして現場へ行くが、車に乗せて行って貰うだけであり、行き方も覚えていない。東京の観光に関しては、ほとんど知らないと言っていい。悠介は自分の知らない事に関しては本に頼る。早速、東京観光の本を買って来た。皇居、浅草、渋谷、東京タワー、明治神宮、上野、見るべきヶ所は多い。1日では廻り切れない。やっぱり2日バイトを休むのが正解である。由樹枝からの手紙で、S大学の事も分かった。全学部の1年生は松本キャンパスで学ぶようである。従って、由樹枝は松本に下宿しなければならない。長野から松本まで毎日通うのは無理である。そして、2年生以降は長野キャンパスになるとの事である。そうなれば、自宅から通学が可能となる。由樹枝は教育学部に合格した。教師になるのが夢だと言う。そう言われれば、そんな事を言っていたなー、と1年前を思い起こしていた悠介である。由樹枝は、自分の希望、夢をしっかり持っている。悠介は、自分は夢も希望も持っていないなー、と反省する。安易な方向に流れる性格のようなのである。大学も始めから難関校は狙っていなかった。ワンランク下であっても、そこで、上位の成績でいたいのであった。その点、希望通りの学生生活を送っている。就職活動は、まだまだ先であるが、何になりたいとかの希望もない。普通のサラリーマンで良いと思っている。政治家になるとか、学者になるとか、自分とは関係ないと思ってしまう。それで良いのか? と自分に問うて見る時もあるが、希望がないのであるから、それしかないと言う結論になるのであった。春休みになった。バイト三昧の生活である。悠介は、建設業の仕事が嫌いでないようである。勉強よりも楽しい。それでお金も貰えるのであるから、これ以上良い事はない。悠介は、商学部で勉強している。建設とかとは全く関係ない。会社で言えば、総務とか経理であり事務職である。悠介は、バイトでの仕事の楽しみより、事務系でなく技術系の方が良かったかなー? と少し後悔していた。もう入学して1年が過ぎた。今更後悔しても遅いのである。===================================パーイで、あまりにゆったりした生活をしていたもので、小説を執筆する意欲を失っておりました。ご隠居さんにコメントでお叱りを受けてしまいました。まだ悠介は大学生、人生の先は長いです。話しを進めないと、小説も長すぎます。既に95回です。400字詰め原稿用紙では、500ページ近くになっています。出来るだけ、取り進めるようにしたいと思っています。
2020.09.18
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はネットより借用===================================「久しぶりだなー!、真っ黒じゃーないか?」「うん、毎日、外で働いていたからな。日焼けを通り越しているよ。」「それだけ焼けていると、野球選手か、何か、外でやっていると一目で分るな。」「まあね。ところで、高橋は、何をやっていたの?」「お盆に故郷に帰ったけど、それ以外は、東京にいた。本屋でバイトだよ。」「ほぉー、本屋さんか、それは良いバイト口を探したな。本屋は楽しいだろう?」「本に囲まれて楽しいけど、意外と力仕事も多いんだよ。」「でも、冷房は効いているし、快適だろう? 俺なんか炎天下だからな。」「あぁ、その点は、楽だね。でも、給料が安いよ。」久しぶりに会ったので、夏休みの出来事で話が弾んだ。その夜、高橋と新宿の居酒屋へ繰り出した。高橋から話があると言われたので、付き合う事にしたのである。「寺本さぁー、俺、彼女が出来たんだ。」「えー、それは、良かったじゃーないか!」悠介は、心より、喜んだ。若しかしたら、夏休みに故郷に帰り、東京に戻って来ないのではないかと心配していたのである。それほど、ホームシック症状を来していたのである。「どこで見つけたの?」「バイト先の本屋さ。」「お客さん?」「違う。バイト仲間だよ。」相手は、高校3年、女子高校生である。進学はしないようで、既に就職先も決まっているとの事、従って、夏休みも十分な時間があり、バイトしていたのである。「俺さー、彼女のお陰で、東京に復帰出来たんだ。」「え? どう言う事?」高橋の話しでは、夏休み前は、大学を中退して、盛岡に帰ろうと思っていたとの事。それほどホームシックが酷かったらしい。だが、悠介の勧めもあって、バイトを探して、仕事に熱中したら東京も良いと思うようになるのでは、と本屋さんのバイトに応募したようである。そこで、彼女に出会って、毎日が楽しくなったと言うのである。盛岡に帰っても彼女に会いたくて、早く東京に戻ったと言う。女性の力は大きいなー、と悠介は感嘆した。あれほど落ち込んでいた高橋のやる気を出させてくれたのである。まさに、一人の人生を救ってくれたようなものである。悠介にとっても、由樹枝がいなかったら、どれだけ、東京の生活が寂しいものになっていたか、計り知れない。そう言った意味では、由樹枝に感謝したい。次にあったら、その事を言おうと思った。「高橋よー、彼女とずっと上手く行くと良いな。」「ありがとう、ほんと、そう思うよ。」「いつか、その彼女に会わせてくれ。」「そうだな、もう少し親しくなったら、寺本に紹介するよ。」悠介は、元気になった高橋と話していて、自分も楽しくなっている。友達とはいいもんだなー、と思うのであった。9月が過ぎ、10月も過ぎ、11月である。先日、夏の気配がしていたのに、秋も過ぎ去ろうとしている。冬の気配さえ窺えるこの頃である。悠介の日常は変わらない。授業も順調、バイトも順調、由樹枝とは、会える頻度は少ないが、二人の愛情は何ら変わっています。気になる事と言えば、先輩の北村に言われたことである。いつもの満腹食堂での話であった。良い女性がいるが会ってみる気はないか? と言われたのである。北村より1年後輩、悠介より、1年先輩、美人だぞ、と言われた。北村には、由樹枝の事は話していない。従って、彼女はいないと思っているらしい。悠介は、はっきりと、「彼女が欲しいと言う気はない」、と断った。理由は、授業、勉強、バイトで、忙しいし、充実しているので、今の生活を変えたくないと言う事である。北村は、「女性と付き合うと、世界が変わる、良いもんだ」、と何度も薦められた。よっぽど由樹枝の存在を言おうかと思ったが、言っても意味ないと考え直し、黙っていた。北村も、悠介が住む部屋で一時期、女性と同棲していたらしい。その頃の事を、懐かしみながら北村が話してくれた。事情があって別れたと言う。同棲は良かった、楽しいし、帰るのが嬉しいと、仕切に説明する。その紹介する女性が気にいったらと同棲したらどうかと言う趣旨のようである。悠介は黙って聞いていたが、再びきっぱりと断った。曖昧にしておきたくなかったのである。そんな話を聞く事さえ、由樹枝に悪いと感じるのだ。北村は諦めて、「まぁ、考えておいてくれ、まだ急ぐ訳ではない」、と歯切れの悪い言い方で、この話は終わった。この時、悠介は、この件は終わりであると思っていた。大きな問題に発展するとは考えもしなかったのである。===================================今日から、又、パーイへ行って来ます。たぶん、温泉三昧の生活でしょう。 温泉ばかりの記事で面白くないかなー?そうだとしても、お許し願いたい。
2020.08.24
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第91回、92回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。==========================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はネットより借用============================================「蕎麦を食べたい。蕎麦屋にしない?」旅館をチェックアウトして、悠介が由樹枝に言った。東京では、満腹食堂で、美味しい日替わり定食を食べている。しかし、蕎麦を食べていない事に気付いた。長野はそば処である。蕎麦を食べて東京に帰りたくなったのである。「良いよ。私も、食べたい。最近、食べてない見たい。」どこかにあるだろうと歩いて探した。最寄りの駅である篠ノ井駅方面へ向かうと途中にあった。「そう言えば、松本でも蕎麦を食べたよね?」椅子に座って、悠介が言った。上高地へ行ってからの帰り、初めて結ばれた日の、昼食であった。「覚えてる?」「忘れないでしょう? だって、二人の記念の日でしょう?」「そうだよな。絶対に忘れないよ。本当の恋人になった日だもの。」悠介も由樹枝もざるそばにした。悠介は、蕎麦は、ざるそばが一番美味しいと思っている。東京では、駅の構内にも蕎麦屋さんがあったが、何気なく覘いて見たが、かけそばを食べている人が多いように感じた。どうして、ざるそばにしないのかなー、と思ったものであった。二人で一緒に長野駅まで行った。ここで、二人とも乗換である。知り合いがいる可能性もあるので、手を繋ぐことも憚れられる。目と目を合わせ、さよならをした。又、1ヶ月以上の別れであるが、意外と寂しさはなかった。昨夜から、十分に愛を確かめ合ったし、心も身体も満足しているからであろう。1学期が終了して夏休みになった。悠介にとっては、全てが順調である。学校の成績も悪くない。単位は勿論すべて取得、無駄話をする友達も増えた。しかし、食事に行ったりする友人は、ごくわずかである。高橋とあとは、たまに数人程度である。バイトに忙しいので、友人を増やしたいとも思わない。むしろ、バイトの先輩や、上司っぽい人達と付き合う方が楽しい。彼らは、悠介に比べて人生経験が豊富である。お店なども色々と知っている。定期的に、悠介を食事に誘ってくれる。それから、満腹食堂での知り合いも増えた。学生もいれば、職人さん風の人もいる。連れだって、外へ飲みに行く事はないが、食堂で会えば、話し乍ら食べる仲になっている。悠介も時には、気分に任せてビールを飲んだりもする。学校の先輩であり、バイトの先輩でもある北村も、いつもではないが満腹食堂に顔を出す。その北村と話す機会があった。「どうビールは飲めるようになった?」「あ、はい、1本位で止めています。」「そうだな、寺本は、強いから、幾らでも飲める。しかし、あの時みたいに、記憶喪失になってしまうからな。気を付けて飲んだ方が良い。」実は、6月に、小柳社長主催の会食があった、その席で、悠介は飲まされてべろべろになり、北村や、先輩たちに、宿まで送って貰ったのである。しかし悠介は、その夜の記憶が飛んでしまっていた。飲んでいる途中以降、全く覚えていないのである。大変な醜態を演じてしまったと大いに反省していた。しかし、その後、先輩たちに話を聞くと、酔っ払っても、悪いことはなに一つせず、反省するような事はないと言う。単に記憶が飛んで、歩くにも危ういので、数人がかりで送って貰ったとの事であった。それでも、迷惑をかけた事に間違いないので、それ以来、飲み過ぎには、非常に気にかけていたのである。由樹枝とは、文通は順調であるが、6月は、由樹枝の試験で会えなかった。7月に会った。従って、大学に進学してから、まだ2回しか会えていない。だからと言って、由樹枝への愛情が薄くなったことはない。益々、愛しいと思うし、信頼もしている。夏休みに、東京へ来て貰って、東京見物に連れて行こうとしたが、夏休みは受験生にとって、最後の踏ん張り時、由樹枝にとてもそんな余裕はない。夏期講習がぎっしり詰まっているとの事である。1度は、会う事にしているが、それも、どうなるか分からない。全て由樹枝次第である。それで、悠介の夏休みはバイト三昧である。土曜も日曜もなく、毎日バイトに精を出した。仕事も面白くなって来ている。荷物運びから、一段上の仕事もやらせて貰えるようになったからである。鉄筋と鉄筋を針金で締め付ける道具のハッカーと言う道具も社長から貰った。それで、鉄筋を結わえるのである。ブロック積も教えて貰いながら行っている。垂直出し、水平出しは、先輩が行うが、そのお手伝いをしているので、やり方も分かって来た。結局、夏休みに由樹枝と会えなかったが、バイト三昧の夏休みも終わり、真っ黒に日焼けした顔で、9月、大学に登校した。============================================
2020.08.18
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はネットより借用===========================================高橋の話しを聞いていて、彼は、ホームシックになっているのではないか、と思った。故郷を語り過ぎるのである。東京の楽しさとか、東京の面白さは話さない。それで、悠介も、話しに付き合って、合いの手を入れ質問もした。18歳にして初めて生まれ育った故郷を離れ、誰も知り合いのいない東京に出て来たのである。寂しさがあって当たり前であろう。彼の家庭は、両親と妹の4人家族である事を知った。それに、年老いた祖父母も同居している。3世代家庭である。悠介も、岩手県と長野県の違いはあるが、高橋と似たような環境にある。しかしながら、悠介にはホームシックらしい感情はない。勉強とバイトで充実しているのも理由であろうが、由樹枝がいる事も大きいと思われる。長野時代と異なり、頻繁には会えないが、手紙が1週間に2通は来る。受験勉強中なのに、由樹枝は頑張って書いてくれるのである。その手紙を読み、そして彼女に手紙を書くのも楽しみであった。「高橋さぁ、彼女はいないの?」「今は、いない。」高橋は寂しそうに言った。「今はいないって、別れたの?」「高校3年の夏に別れた。受験勉強で焦っていたんだ。それでね。」悠介は、深くは聞かなかった。言いたくなれば、彼が、言い出すだろうと思ったのである。それに、悠介も同級生を見ているので、想像は出来る。悠介は、推薦狙いで勉強して来たので余裕はあった。しかし、同級生たちは、3年になってから、皆、目が血走ったように焦っている者が多かった。模試の結果に一喜一憂していた。夏休みは勝負時と言う時期で、彼女どころではなかったに違いない。高橋の実家は米農家である。それも悠介と同じだ。米作りに関して、高橋は饒舌に喋った。悠介も高校になってから、農家の手伝いはしなかったが、中学の頃は田植えや、稲刈りなど手伝ったので、農家を体感している。話は合った。悠介が小学校や中学生の頃は、結(ゆい)と言う制度が残っており、親戚や近所の人達が総出で、田植えや稲刈りを行った。子供達や中学生の悠介も借り出された。多くの人達がおしゃべりしながらの作業を行い、悠介も楽しかった。女衆が準備したおやつを食べるのも楽しみであった。高橋も同様な経験をしているとの事である。その結も、農作業用の機械が普及して、消滅していったようである。悠介は、その丁度、転換期にいたのであった。「いつ、盛岡に帰るの?」「まだ決めていない。お金もかかるし、帰ったら、東京に戻りたくなくなるのでは、と自分が怖いんだ。」「そうか。」「寺本は?」「俺は、1ヶ月に1回は帰ろうと思っている。」「そうかー、良いなー。寺本は、強いな。自信を持っている。」「そんな事、ないよ。訳分からないけど、一生懸命やっているだけだ。」「俺も、バイト探すかなー?」「暇つぶしになるし、金も貰える。それに社会人と直接話も出来る。」「うん。」「良い事だらけだよ。」高橋は、バイトをやる気になったようである。悠介は、「暇があると碌な事はない。余分な事も考えてしまう。だから、忙しい方が良いよ」、とアドバイスをした。高橋から、これからも、たまに付き合ってくれと言われた。勿論、悠介に断る理由はなかった。5月の連休は、目いっぱい働いて、その後、由樹枝に会う為、長野に帰った。どこで会うか、由樹枝と手紙で何度も連絡し合った。由樹枝が東京へ来るケース、東京と長野の途中のどこかで落ち合うケース、しかし、由樹枝の勉強を優先すると、悠介が長野へ行くケースが最良と言う結論になった。バイトは休んで、土曜、日曜をデートに当てた。1ヶ月以上、会っていないので、長野へ向かう列車の中では、心が躍っていた。悠介のおばさんの家は引き払っているし行けない。由樹枝の部屋で会うのも良いが、両親や妹がいる。それで、旅館を予約してある。二人だけで、誰に遠慮する事なく会えるからである。場所は、高校から離れた所にした。万が一、由樹枝の同級生や友達に会うのを避ける為であった。木々の緑が青々としている。空も晴れて爽やかである。由樹枝ととある場所で、待ち合わせし、その空の下を歩いている。自然と笑みがこぼれる。===========================================
2020.08.14
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はネットより借用===================================翌朝、新品のニッカポッカを穿き、新品の長袖シャツを着て、それにジャンパーを羽織った。靴下も新品である。地下足袋は悠介にとって初めてであり、新鮮な気持ちになった。歩いて見ると、靴と違って、地面が直に足裏に触るようである。これが、作業員と言うものか、と悠介は晴れがましい気分になっていた。始業式までの1週間が過ぎた。作業は、初日同様、荷物運びが悠介の仕事である。長友と吉武、3人での作業は同じであった。捨てコンから型枠作り、配筋、さらにはコンクリ流し、ブロック積み、一通りの作業を見た。作業の流れは分かったが、自分で施工するには、相当、時間が必要であると思った。当面は、材料運びと準備作業であろう。6日間、作業を続け、休みがなかったので、作業着を洗う暇がなかった。悠介は、もう一式、買わねばならないと思った。バイトの4日目、由樹枝から手紙を貰った。東京では世話になった。帰りの汽車では寂しくて涙が出た。あれから、受験勉強に取り組んでいる。悠介には無理をせず、バイトに頑張って欲しい。いつから授業が始まるか? などの内容が書かれていた。最後に、誰よりも悠介を愛しています、と結ばれていた。悠介は、バイトの疲れで、手紙を書いていなかった。慌てて、1枚の便せんに、返事を書いた。始業式の前までの6日間バイトしている。慣れないので、大した仕事ではないが、結構、疲れているようだ。受験勉強、頑張ってくれ。愛しているよ、あの夜は忘れられない、とか、そんな事を書いた。一人暮らしは初めてであるが、この世の中に、愛してくれる人がいると思うと、張り合いがある。食事も、朝はパンに牛乳、果物、昼は、今まではバイトしていたので、皆と一緒に弁当を買って食べた。学校が始まる明日からは、学食がある。夜は、満腹食堂で概ね定食を食べる。これで、不自由はなかった。面倒だなと、思うのは洗濯くらいである。面倒と言っても、橋本先輩から譲り受けた洗濯機がある、放り込んで、スイッチを入れれば、あとは、干すだけなのだ。大した手間ではない。作業着も洗って干した。始業式の日が来た。沢山の新入生が、大講堂に集まった。知ってる人は誰もいない。凄い人だなー、と辺りを見回す。女子大生も多い。綺麗な人もいるようだが、由樹枝より美しい人はいなかった。特に友人が欲しいとは思っていないので、必要な作業を行って、すぐにアパートへ帰った。学校にもすぐに慣れた。きちんと講義を聞いていれば、そう難しくもない事も分かった。学校とバイトの1週間、それを繰り返している。両方とも面白いが、バイトの方が、より面白い。毎日、毎日、状況が変わる。小柳社長は、悠介に、ブロック工事を覚えさせたいようである。小さな工事が多い。数日で完了するので、毎週、現場は変わっているようなものである。色んな所に行けて、それも楽しい。土曜の講義は、取らないようにして、土曜、日曜と、バイトに精を出している。新入生への勧誘は、色んなクラブや同好会からあった。しかし、悠介は、全て断った。由樹枝と行ったバドミントンには興味がないではないが、やはり断った。平日は、学校から帰ると復習に予習をした。受験勉強は経験していないが、高校時代から、普段の勉強は欠かさなかった。なので、勉強する事に関しては、何ら、苦にならない。由樹枝に手紙も書かねばならないし、暇を持て余すこともない。新入生歓迎会とか、銘打って、飲み会やらパーティもあった。隣の席に座っている盛岡から来た高橋とは、話し友達になった。素朴な良い奴で、悠介とは馬が合う。授業にも真面目に出席している。土曜日はバイトで出席しないと言ったら、いつでもノートは取っているので、必要なら言ってくれればいつでも貸すと、優しい親切な男である。その高橋から、飲みに行こうと一度、誘われた。平日は暇もあるし、断るのも悪いと思い誘いに乗った。悠介は、アパートの近くの、満腹食堂しか知らない。しかし、高橋は、先輩に連れて行って貰った事があるし、歓迎会に参加したり、2次会とかにも参加しているらしく、新宿を知っている。とある一杯飲み屋に連れて行ってくれた。新宿はお互いに乗換駅になるので、便利だったのである。彼は、あちこちの飲み会に行っているとの事で、悠介の知らない事を沢山知っていた。高橋は、東北訛りがある。それが気になって友達との交流に消極的になっていると語った。それに負けては行けないので、、無理して色々と参加しているとも言う。都会育ちの同級生とは話しにくい。悠介のような地方から出て来た人の方が話がしやすいと言うのである。悠介には、そのような気後れは都会人に対しても全くなかった。東北に比べて、訛りが少ないからであろうか?高橋は、盛岡の春について熱心に語った。北上川が流れ、その岸辺には綺麗な花が咲くと言う。それを聞いて、悠介も、千曲川河川公園を思い出した。由樹枝と初めて会った場所であったからである。===================================パーイへ行き、ミニ小説なんぞも書いたりしていたので、久しぶりの寺本悠介となりました。悠介は、大学生になりましたねー! 由樹枝も、高校3年生になりました。今朝は、涼しかったですねー! 連日、続く雨のせいでしょうが、昨夜からエアコンどころか、扇風機もかけず、でも、涼しく過ごせました。この位、涼しい日々が続けば、快適な毎日を過ごせるでしょう。日本は、とても、暑いようですが・・・。
2020.08.05
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はyahooより借用===================================「いかん、ボォーっとしている場合ではない。」悠介は、バイト先へ行かなければならないと、急に思いついた。明日から、学校が始まるまで、まだ日数がある。それまでバイトに行こうと思ったのである。社長さんからも、引っ越して来たら、連絡してくれと言われていた。すぐに出発した。「こんにちわ!」「は~い。」社長は在社だった。いつも事務所にいるようである。前回も在社だった。「おー、良く来たなー。もう引っ越しは終わったかい?」「はい、昨日、着きました。」少し、時候の挨拶などしたが、社長より、早速明日から来てくれと言われる。「作業着などないのですが、ジーパンでも良いですか?」「ジーパンでも良いが、長く働くなら、ニッカポッカの方が良いな。」「ニッカポッカですか?」「あぁ、買う気ならば、明日、店に連れて行くよう手配するよ。」作業着用のお店があるそうである。どんな仕事か詳細は分からないが、橋本さんや、北村さんが長く働いたのだし、それほどきつい作業でもないと聞いたので、作業着を買う事にした。「それでは、明日は、ジーパンで来ますが、作業着を買う事にします。」始業式が始まるまでの6日間、バイトをする事になった。翌日は、7時半に社長の事務所に集合である。3月は、大学進学も決まり、受験勉強もなかったので、気楽な1ヶ月であった。この日は、気を引き締めて事務所に向かった。昨日は、由樹枝との別れがあり、胸を締め付けられるような苦しさ、寂しさがあったが、この日は、新しい事に立ち向かう事もあり、寂しさは薄れた。社長の事務所には、20名ほどの作業員が集まっている。既に作業分担は決まっているようで、社長は、長友と言う50歳位の監督を紹介してくれた。暫くは、この長友の下で働くようにとの事である。この日は、もう1人、吉武と言う人も一緒だ。悠介は、見習いで員数外の扱いである。社長から気長に仕事を覚えるようにと言われた。先輩の北村も来ていたが、「お早う」との挨拶だけで、早速出かけて行った。1日の作業が終わった。悠介は言われた事をするだけで悩むことは何もなかった。作業は材料を運ぶのが主な仕事である。ネコで砂利を運んだり、セメントの袋を運んだり、力仕事であった。しかし、休憩はあるし、力仕事と言ってもそれほど大した事はない。長友と吉武は、二人でセメントを練ったり、ブロックを積んだりしていた。ブロックは、水平に積むのが難しいように悠介には思えた。いつから、あのような仕事が出来るのであろうか。作業が終わり、事務所に戻る途中、作業着を売っているお店に連れて行って貰った。ニッカポッカも色んな色、そして、裾が違うものなど、沢山あった。悠介は、ニッカポッカに、長袖シャツ、ジャンパー、靴下、地下足袋を買った。悠介にとっては、大きな出費となったが、これからの為である、止むを得ない。事務所に戻り、部屋に帰ってシャワーを浴びたら、もう19時半を廻っていた。腹もペコペコである。そして気が付いたのは、由樹枝の事を忘れていたことである。単純な作業ではあったが、仕事に集中していたのである。いつもの食堂へ行って、日替わり定食を頼んだ。この日は、秋刀魚の魚定食である。長野は海なし県であり、魚を食べる回数は少なかった。それでも。秋刀魚は売っていたようで、悠介の家の食卓に何度も乗っていた。「ビールは飲まないの?」「はい、今日は止めておきます。一人では飲む気がしません。」「そう、飲まないでいられるなら、飲まない方が良いね。」お姉さんの名前を教えて貰った。礼子と言うらしい。彼女より、「礼ちゃんと呼んで。」、と言われた。しかし、いくつ違うのか分からないが、年上である。悠介は、礼ちゃんとは、呼べないな、と思った。作業は男だけだった。朝から女性と話していない。悠介は、女性と話すと心が和むなー、と思う。礼子は親切で愛想も良いし、優しい。それ故、余計に気分が良くなるのであろう。朝定食を食べられるので、この食堂は便利で良い。しかし、仕事に行くとなると、食堂まで来るのが多少ではあるが、時間もかかるし、面倒である。それで、朝食用に、パンと牛乳と果物を買った。パンと牛乳は、北海道の旅の定番の朝食であった。それを懐かしく思い出す。昨夜と、同様、一人の部屋である。独り住まいは初めてである。父母の実家、池田町。叔母の家、長野市、ずっと一人ではなかった。昨夜は、由樹枝が帰って、寂しく切ない夜を過ごした。しかし、今日は仕事をしたお陰か、寂しさは減った。激しい寂しさは、昨日、1日で過ぎ去ったなー、と悠介は安心した。===================================
2020.07.15
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第86回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。===================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はyahooより借用===================================二人が目覚めたのは、30分程たった頃であろうか? 気怠さの中の心地よさ、事が終わった後、このように二人で眠れたのは、初めてである。由樹枝の部屋で愛し合う時は、慌ただしい気配の中で行うしかなかった。終わった後も、すぐに後始末をして勉強に向かうのであった。由樹枝は、今、初めて絶頂感と、その後の心地よさを味わったのである。心も体も悠介を愛していると思う由樹枝であった。二人は、夜中にもう一度、朝方にさらにもう一回愛し合った。そして、疲れて寝入って、起きたのは、10時を回っていた。若い二人に疲れは残っていない。大きな満足感に相応しい、爽やかな目覚めであった。「気持ちいい、朝だなー。」寝起きの布団の中で、悠介は言った。「疲れてないの? あんなに激しかったのに?」「全然、もう一回でも出来るよ。」「エッチねー。」「腹減ったなー、起きるか?」「ええ、起きましょう。お腹空いた。」「帰したくないなー、ずっと一緒にいたいよ。」「それは同じだけど、仕方ないでしょう? 我慢してね。」二人は、起きだして、歯を磨き、準備をして、朝食と昼食兼用の食事に出かけた。いつもの食堂である。ここは、朝定食がある。もう昼近いが朝定食を準備してくれた。「ずいぶん、ゆっくりねー。昨夜は遅くまで起きていたの?」「もう、これから、ゆっくり会えなくなるので、話し込んでしまいました。それから、ぐっすり寝ました。」「若いとよく眠れるからね。」お店のお姉さんも若いと思うが、悠介達は、さらに若い。朝定食は、納豆に生卵に海苔と典型的な和食である。悠介は、ご飯をお代わりして2杯も食べた。「いや、食ったなー。腹一杯だ。」由樹枝も少しだが、2杯目のご飯を食べた。昨夜からの激しい運動と、朝食も食べていないので、お腹がすくはずである。「どうする? 東京のどこか見学してから帰る?」「いや、早く帰って勉強する。昨日は全く勉強なしだったし、ちょっと焦っちゃうわ。」「そうか、じゃー、駅まで送るよ。」そんな会話を交わした後、部屋に戻った。もう帰ってしまうかと思うと、寂しさが悠介を襲ってくる。まだ帰したくなかった。「お茶飲んでから帰る?」悠介が名残惜しそうに聞いた。「そうね、食べたばかりだし、もう少しゆっくりするかな?」お茶を飲みながら、これから、どのように会えるか、などを話し合った。由樹枝が東京へ来るケース、悠介が長野に行くケース、どこか中間点辺りで落ち合うケース、その位が考えられた。悠介が長野へ行くケースが、一番良いのであるが、それでは、ゆっくり愛し合う場所がない。そこがネックである。二人だけでゆっくりするには、由樹枝が東京に来て、悠介の部屋に泊まるのが良い。しかし、それでは、由樹枝の勉強の時間が割かれてしまう。少ない時間を有効に使わねばならない。話しても結論が出ない。由樹枝の勉強の進行に合わせて、どこで会うか決めようと言う事になった。由樹枝が大学に入れば、会う余裕が出る。従って、二人とも、この1年は我慢しようと言う事で一致した。しかし、最低、1ヶ月に1度は会いたい、との気持ちも一致している。何とか、都合を付けて、1ヶ月に1度は会おうと約束した。悠介は、もう一度愛し合いたい誘惑に駆られたが、何度してもキリがないと送る事にした。御茶ノ水駅まで送ったが、そこで別れるのは辛くて一緒に電車に乗ってしまった。そして東京まで行った。そこで由樹枝の家にお土産を買ってあげた。このまま長野まで一緒に行きたい気持ちになってしまったが、かろうじて堪えた。由樹枝が改札口に入って行った姿を見ると、涙が出そうになる。由樹枝は振り返り、元気に手を振って階段を登って行った。しかし、後で、その時の事を手紙で送ってくれたが、寂しくて悲しくて、汽車の中でずっと泣いていた、とあった。悠介も、東京駅から宿に帰る途中、そして、部屋に戻っても、寂しさが胸を襲い、どうして良いか分からなかった。何をしても手に付かない。ぼんやりとテレビを見ているだけであった。今までは、1週間に2回も会っていた。これから1ヶ月は会えないのである。しかし、もう2度と会えないのでなく、1日1日が過ぎて行けば、いずれ、会えると、気持ちを切り替えた。そして、これからの大学生活について考える事にしたのである。===================================
2020.07.08
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はyahooより借用===================================「何にする?」「う~ん、どうしようかなー?」由樹枝は、美しいか顔をしかめるようにしてメニューを見ている。「トンカツ定食にする。」「トンカツかー、美味しそうだねー。俺はどうするかな? 別のを頼んで半分ずつ食べる?」「うん、良いね。じゃー、八宝菜頼んでよ。」「オーケー、八宝菜にしよう。」お姉さんが、ビールを運んできた。「あら、綺麗な方ねー! 妹さん?」「いえ、違います。」「え? じゃー、恋人?」「はい、恋人です。長野から見学に来ました。」「そうなの、隅に置けないわねー、こんなにきれいで可愛い恋人がいるなんて。」由樹枝は、にこにこしながら、その会話を聞いていた。他人に恋人と紹介する悠介に喜びを感じているようである。長野では、同級生や他の人の視線を気にしていた。しかし、ここ東京では、全く気にする事はない。幸せである。「よろしく、お願いします。」由樹枝が言った。「こちらこそ。じゃー、誘惑出来ないわね。恋人がいるんですもの。」「はい、監視役も、よろしくお願いします。」「良いわよ。頼まれたからね。はい、ビール、今日は特別にお酌させて。」お姉さんが、悠介と、由樹枝のコップにビールと注いでくれた。「ありがとう。乾杯って言いたけど、何に乾杯かな?」「大学入学祝いと、引っ越し祝いね。 兎に角、おめでとう!」「ありがとう! 乾杯!」夕食は和やかだった。由樹枝は、アパートの部屋も見て、大学も見て、さらには、外からであるが、バイトする会社のオフィスも見た。取り合えず、悠介が活動する場所は、確認できたのである。「明後日から、又、勉強しないと・・・。」「そうだな。頑張ってくれ。俺は、暫くは慣れるよう頑張るよ。バドミントンしたくない?」「もうずっと、半年以上かなー? やってないよ。身体が鈍ったかな?」「まぁ、適度に歩いた方が良いね。」「学校の往復だけしか歩いてない。」「それだけでも、違うんじゃーないの?」「そうか、今は、我慢、仕方ないね。受験勉強最優先だから。」「しかし、明後日から会えないと思うと、寂しいなー。」「それは、勿論、私も同じよ。勉強も教えて貰えないし。」「1ヶ月に1回は、必ず、会いに行くよ。バイトして金貯めて。」「私も来たいけど、勉強もあるし、泊まりは難しいかな?」「気にする事はない。俺が行くからさ。」寂しい気持ちを抑えて、お互いに励まし合う。恋人になってから、長い期間離れるのは、初めてである。なので、不安もある。悠介は、遠距離になって関係が離れるほど、そんな簡単な愛情ではないと思っている。しかし、由樹枝は、新しい環境に身を置いた悠介に、色んな誘惑がありはしないか心配している。女性だけではない。遊びでもそうだ。どんな遊びがあるか由樹枝は知らないが、東京は遊ぶところが多くて、楽しい事が沢山あると聞いている。そんな事に溺れて由樹枝の事を忘れてしまうのではないか、とそれが心配なのである。「手紙を書くわ。電話は高いから、手紙で話をしましょう? そして、たまには、声も聴かせてね。」「うん、そうしよう。俺も、手紙書くよ。」ビールを飲んで、ご飯も食べた。お姉さんに挨拶して、アパートに帰った。「よーし、風呂に入ろう。実は、初めて入るんだ。前に泊めて貰った時は、入らなかったから。小さいから二人では無理だな。」「先に入って。準備して、テレビでも見ているから。」悠介は、今夜の期待に胸を膨らませている。二人だけで泊まるのは、上高地以来である。これから、離れ離れになる。何回でも、出来るだけ愛し合いたい、と思うのであった。風呂から上がると、布団が敷いてあった。由樹枝は既にパジャマに着替えている。ピンク色の可愛いパジャマである。悠介は軽く抱いて、口づけをして、風呂に入って来な、と由樹枝を送り出した。ビールを飲んだが、酔いは醒めているようだ。もう少し飲みたい気分であるが、ビールの買い置きはないし、癖になるとよろしくないと、我慢する事にした。===========================================
2020.07.03
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。写真はyahooより借用===================================日帰りが難しいと言う事は宿泊せねばならない。由樹枝の両親が許可を出すかが問題である。悠介は無論のこと、由樹枝が東京へ来てくれるのは大歓迎である。是非来て欲しい。しかし、悠介から両親に話はしたくない。もう既に身体の関係は出来ている。それを、疑われるとか、それが心配なのである。由樹枝は、自分が両親の許可を貰うと言う。ダメだと言われても、行くと強硬である。住む所や大学を見ないと、悠介の想像が出来ない。それは辛い事だと言うのである。それで、両親への説明、説得は由樹枝に任せる事にした。その結論を得ないまま、おばさんの家を出て、池田町の実家に帰った。翌々日、由樹枝から池田町の実家まで電話があった。悠介の下宿に行くとは言えず、友達と東京見物に行くと言ったようである。その時に、悠介にも会うとは伝えたようである。嘘をついて二人で東京へ行くのは後ろめたい気もするが、大学生にもなっておらず、自立出来ていない自分が、由樹枝の責任を持つとも言えない故、何とも仕方がないと、自分にも言い訳をする悠介であった。早く堂々と由樹枝と宿泊もしたいが、いつになるのであろう、と情けなく思う。3月末日、悠介は、由樹枝と松本駅で待ち合わせた。特急で東京へ向かう為である。由樹枝は、受験勉強用の参考書は持って来なかった。2日間、勉強はしないつもりらしい。2年生を卒業し、春休みである。一応、悠介の立てた受験勉強は、完全ではないが、終了していた。再度、勉強を始める前の、気分転換にもしたいと、由樹枝は言っている。列車の中で、由樹枝は出来れば、悠介と同じ、M大学に入りたいと言う希望を持っていると言った。両親は、地元の大学を希望している故、話してないと言う。又、学力がそこまで達していないと思うので、合格するか難しいとも言う。しかし、今から、4年も5年も離れて暮らすのは、二人の将来に良くないと言うのであった。悠介は、由樹枝を愛し続ける自信があった。他の女性には全く興味がない。その旨、由樹枝に説明する。しかし、由樹枝は、長い期間遠距離は困ると言う。離れ離れになったら、心も遠くなる可能性があると言うのである。由樹枝の気持ちは分からないではないが、前回、話しが出た時と同様、結論は先延ばしにした。両親の希望をさておき、悠介に、どうしろ、こうしろと、まだ言えた立場にないのである。ただ、どう言う状況になっても、悠介は、由樹枝と別れる事はないと自信をもってそう言えるのであった。アパートに、悠介の母親が買った布団は着いていた。管理人さんが、受け取り、部屋に保管してくれたのである。橋本が使っていたせんべえ布団を棄てるべく、どうしたら良いか管理人さんに聞くと、管理人さんが貰うと言う。管理人さんは、橋本が布団を買った時のことも知っていて、打ち直しをすれば、十分に使えると言うのである。新しい住人が入って来た時に、その布団を貸出しする事も出来るので、是非欲しいと言って持って行った。棄てる手間が省けて悠介にとっては、有難いことであった。橋本は、アパートの近くの駿河台キャンパスを案内してくれた。しかし、大学からの案内書が届いて読むと、1年、2年は、和泉キャンパスに通うらしい。アパートから30分程度で行けるようなので、別に困りはしない。由樹枝に駿河台を見せてもまだ3年先であり、和泉キャンパスを一緒に見ようと出かけた。御茶ノ水から新宿まで行き、そこから乗換で、歩きも含めて30分で着いた。ここを毎日通う事になる。2時間位の時間をかけて、キャンパス内を一通り廻った。由樹枝は、高校に比べると広いねー、と頻りに感心していた。悠介自身は、キャンパスは入学してゆっくり見れば良いと感心は薄かったが、由樹枝に見せてあげられて良かったと思っている。これで、共通の話題が増えるし、ここでどうしたとか、こうしたと言った場合、由樹枝は勝手に想像してくれるであろうと思うのである。ただ、通学方法だけは、しっかり覚えておかねばならないと、頭で復習しながら歩いた。大学から帰り、まだ時間があったので、由樹枝を湯島天満宮に案内した。ここは、多くの受験生や子供の合格祈願をする人々が訪れる神社であり、悠介もW大学受験の前に、橋本に連れて行って貰った。来年は、由樹枝の受験である。丁度良いと思ったのである。由樹枝は熱心に拝んでいた。悠介も、学問の神様の、菅原道真に、由樹枝が希望の大学に合格するよう、お願いした。そして、合格祈願のお守りも買って、由樹枝に渡した。夕食は、橋本が教えてくれた食堂に行った。定食の種類は沢山あるし、日替わり定食と言うのもある。下宿の学生たちの為である。毎日食べに行っても飽きない。それは、橋本も説明してくれたし、橋本は、ほぼ毎日、ここで食べていたようである。特別にお祝い事はないが、ビールを頼んだ。もう何度も飲んでいるし、ご飯を食べるだけでなく、飲みながら、そして話をしながら、食べたいと思うようになっている。飲むのが嫌いではなさそうである。===================================
2020.06.29
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第82回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。===================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。受験勉強をしているので、実力試しにW大学を受験する。写真はyahooより借用===================================しばらく二人で横になって休んでから、由樹枝は勉強に取り組んだ。悠介は、受験は終わってしまったので、受験の為でなく、趣味的に勉強している英語の本を持って来ていた。それに集中した。さらに時間もあるので、小説も持って来た。橋本さんに刺激され、本も沢山読み、教養を高めるべく頑張ろうと思うのである。幸い、本を読むのも好きである。高校生活は勉強を主体としたので、あまり本は読めなかった。大学入学まで、出来るだけ本を読みたい。図書館には溢れんばかりに本が並んでいる。中でも、日本文学全集を出来るだけ多く読もうと決めていた。2月末、W大学の発表があった。悠介はめでたく合格である。先生からも褒められた。長野高校からの受験生の内、合格したのは、半数であるとの事、悠介のような実力試しでなく、W大学を主に絞って受験した学生が多いので、落ちた者は可哀そうである。しかし、滑り止めは受けているはずであり、浪人するかどうかは、本人と親が決める事である。悠介は、合格したが、予定は変更せず。M大学に進学する。ワンランク落として、M大学で上位にいたいと言う悠介の安全策である。冒険しようと言う意欲が元々なく、安全運転を志向する傾向が強いのであった。由樹枝と撮影した写真を現像、焼き付けしなければならない。秘密の写真なので、当然ながら、写真屋に頼めるはずもない。それで、親友の関根に頼んだ。、結果、写真部の暗室を3日間借りる事が出来た。今の時期、3年生は受験で忙しく、時期的に撮影会もなく、暗室を使用する生徒が少ない事も幸いであった。関根から仕切りに、何を現像、焼き付けするのだ? と聞かれたが、秘密の写真だから、言えない、申し訳ない、で言い通した。まさか、由樹枝のヌード写真や、二人で交わっている写真とは言えない。絶対に内緒で、現像、焼き付けをせねばならない。初日は、ネガにする作業である。これは、見られても問題はない、光に透かして見なければ、何が写っているか分からない。乾燥させるためにネガを吊るしているのは見られたくない。ネガを乾燥させるまで、丸々1日かかった。翌日の2日目は、現像、焼き付けである。50枚以上あったので、時間がかかった。それから、写真を充分に洗浄し、乾燥の為、写真を吊るす。悠介は、弁当を買い込んで、写真部の部室に入り込んだままである。誰かに入室されたら困るので、部室には「使用中」の、看板をかけて、中から鍵もかけた。昼過ぎから夜まで写真を乾燥したが、まだ完全には乾ききっていない。写真を吊るしたまま帰宅したら誰かに見られる可能性がある。それで、各写真を新聞紙に挟み、家に持ち帰る事にした。翌日、又、部室に行き、完全に乾燥させた。作業の途中も、美しい由樹枝の写真に見とれる事も何度もあった。愛し合っている写真を見ると興奮する。清純そうな由樹枝が、露わな肢体を全て見せているのである。これらを持って東京へ行けば、寂しさは少なくなると悠介は、心が休まった。丸3日間の作業で、写真の現像、焼き付けは終わった。一仕事やり遂げた充足感がある。そして、この写真は他人には絶対に見られてはまずいものである。鍵付きのファイルを探した。八つ切りサイズのものも、多くあるので、B5サイズのもので丁度入るが、大きめのA4サイズのファイルを買った。鍵付きである。これで、安心である。3月に入り、クラスメートの進路もほぼ決まった。浪人する者も数人いる。別のクラスであるが、親友の関根も、東京の大学に決まった。それで、東京でも会おうとお互いに励まし合っている。大学に慣れれば、人懐っこい、関根の事であり、すぐに友人は出来るだろう。しかし、知人のいない現在は、悠介は頼りにされているのである。悠介にとっても、関根が東京にいると思えば安心感は増す。クラスメートも東京の大学が多い。しかし、関根とのような親しい関係ではないので、東京で会おうと言う者はいない。元々、親友と呼べる友人は、ほとんどいない悠介である。悠介にとって、最も重要な人は、由樹枝であり、他の友人には興味もない。小説を読むだけで、どんどんと日にちは進む。東京へ行くまでに、池田町の実家にも行かねばならない。叔母の家から持ち出す荷物は、多くないが、それでも、何もない訳ではない。一応、引っ越しである。由樹枝と会える残り日数が少なくなって行くので、それが最も寂しく、心残りである。卒業式も終わり、高校生でもなく、大学生でもない立場になった。池田町へ帰る数日前、由樹枝が東京への引っ越しの時、一緒に行って手伝いたい、と言って来た。何も手伝うような作業はないので、その通りに話した。だが、由樹枝は、悠介の住む所を見て見たいと言うのである。行くとなれば日帰りは難しい。===================================
2020.06.25
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。受験勉強をしているので、実力試しにW大学を受験する。写真はyahooより借用===================================悠介は、勉強しかして来なかった。運動は、由樹枝と行ったバドミントンだけである。スポーツマンらしく、引き締まった身体を持つ北村が羨ましいと思った。しかし大学に入っても、運動部に入って、汗を掻きたいとは思わない。群れてエッホエッホとか言いながら走るのは、とても自分には向かないと思うのである。かと言って文化的なものにもあまり興味がない。本を読む位である。そう考えると、悠介は、何に対しても積極的ではないと言える。そんな風に自分を分析していたら、北村に聞かれた。「君は、大学に入って何をやりたいの?」悠介は、答えに窮した。「特に、何もやりたいものはないのです。今も、そんな事を考えていました。先輩は、スキーとか、趣味が合って良いですね。」「何か、目標を持たないと、だらだらとした学生生活になってしまうぞ。」悠介は確かにそうだと頷いた。「学生運動には参加しない方が良いぞ、あんなもの、馬鹿な奴らが熱心になる事だ。一生を考えたら、熱中するもんじゃない。」橋本が、熱心に語った。そして、北村も続いた。「勧誘が来るだろうが、絶対に学生運動は止めた方が良い。時間の無駄だ。」学生運動は、東大の安田講堂陥落から一気に下火になった。しかし、一昨年はよど号ハイジャック事件、昨年は、あさま山荘事件など大きな事件もある。悠介自身、学生運動など、全く興味もなかったから、勧誘があっても、入るつもりはない。その心配はなかった。「もう少し飲むか? 北村? 俺の部屋へ来い。寺本が良い酒を持ってきてくれたんだ。」「そうですね、橋本さんと飲めるのも、もう少しの間だけです。」悠介は、長野の銘酒、「夜明け前」を一升瓶で持って来た。小野酒造店がつくる「夜明け前」は、人気のある酒である。酒屋の主人のお奨めだった。「これだ、これが、夜明け前だ。島崎藤村だぞ? 知っているな?」「知らないです。初めての酒ですよ、橋本さん。」橋本は、夜明け前を知っていた。しかし、北村は知らなかった。「うん、旨い、飲み易いですね。」一口飲んで北村が言った。「酒は知らんでも、木曾路はすべて山の中である、と言うのは知っているだろう?」「それは、知ってますよ。夜明け前の書き出しですよね?」「そうだ、そうだ、それだよ。それから取った名前らしい。」悠介も話を聞きながら、夜明け前を飲んだ。ビールと違って、胸を突くような味である。咽せそうである。悠介は頭がボォーっとして来た。酔っ払って来たみたいである。橋本と北村の話しは続く。文学に関しては、橋本が詳しい。悠介の知らない作家の話しも出る。悠介は勉強だけでなく、本も読まないと常識に欠ける人間になってしまうな、とボォーっとした頭で反省する。スポーツや遊びに関しては、北村の得意とする所らしい。踊りに行ったりもするようだ。大いに語り、大いに飲んで、橋本も北村も機嫌が良い。悠介は酔っ払って、眠たくなって来た。知らぬ間に、横になって寝てしまった。「おい、風邪ひくぞ、布団に寝な。」起こされた。北村は帰ったようでいなかった。寝てしまった事を覚えていない。二人の話しを聞いていた後の記憶がない。このような事は初めてである。悠介の欠点は、飲み過ぎると記憶を失う事である。この欠点が、そう遠くない将来、大きな問題を産むのである。人生を変えるような大きな問題に直面するのである。しかし、今の悠介には、知る由もなかった。全てが順調で、なにも問題ない今が、悠介の絶頂期なのかも知れない。翌朝は、頭が少し重かった、これが二日酔いかと思った。まだ自分の適量が分からない。酒は効く。ぐいぐいと飲まない事だと反省した。「ありがとうございました。ほんとお世話になりました。」悠介は、丁寧に橋本に挨拶した。これで、もう橋本に会えないと思うと、たった2回会っただけであるが、別れの寂しさを感じた。人生、出会いと別れだなー、と思う。試験を終えて長野に帰ると、気が抜けたようである。目標がなくなった。気が楽になったかと言うとそうでもない。何かやらねばならないと思うと、それが気を重くするのである。由樹枝の家には相変わらず、水曜、日曜と通っている。それも、後、1ヶ月も続かないと思うと、寂しさが募る。大学入学の新生活の希望よりも、現実の生活から離れる方が辛い。離れて暮らすには、何か思い出の品が欲しい。写真も上高地で撮ったものがあるが、少なすぎる。もっと沢山二人の写真が欲しいと思う。そして、出来れば、由樹枝のヌード写真が欲しい。思い立ったら、物凄く欲しくなって来た。===================================
2020.06.21
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。受験勉強をしているので、実力試しにW大学を受験する。写真はyahooより借用===================================中学の同級生とも会い、家族団らんの正月も過ごし、悠介は長野に戻った。その後は、受験勉強に集中である。学校が始まり、先生に、W大学を腕試しに受験したいと正式にお願いした。昨年からその旨話はしてきたが、願書の提出をせねばならない。先生から、腕試しなら、私立1校、国立1校、受験したらどうか? と勧められた。T大を受験して見たら、と言うのである。先生から、悠介の成績ならば、合格する可能性は高いと言う。どうも、T大合格者数を実績として増やしたいようである。悠介は考えても見なかったので、驚いた。しかし、2校も腕試しをしたいと思わなかった。推薦校を蹴って、別の大学には行けないと言う、生真面目な考えを悠介は持っている。仮にT大に合格したら、心が揺れるのではないかと言う心配もあった。それだけ、T大の存在は大きいのである。T大に合格して、入学しない学生は少ない。W大ならば、行かない学生もいるはずである。それらを考え、悠介は、T大は受験しない旨、きっぱりと断った。1月から2月は、受験勉強に専念である。毎週、水曜日、日曜日に由樹枝の家に行くのは定例化されていた。水曜日の1時間ほど、愛し合う時間に費やすが、それ以外に、勉強、勉強の連続であった。由樹枝の勉強もスケジュールよりも遅れているが、順調のようで、数学以外は、悠介への質問もない。従って、二人で黙々と机に向かって勉強をしていた。由樹枝が、東京の大学に行きたいと言い出したのは、愛し合った後の寝物語である。今は、1週間に2回も会えるから良いが、4月から会えなくなる。高校3年は受験もあるから、会うのは我慢して、勉強するが、その後の大学生活でも会えないのは、苦痛であると言うのであった。確かにそうであるが、由樹枝の両親が許すと思えない。今まで昼食を食べ乍ら、進路の話しもあったが、地元の大学を優先すべし、と言うのが、両親の方針である。悠介には、東京に出て来て欲しいが、そのような希望も軽々と言えない。黙って聞いていた。そして、成績次第だから、まだ決めるのは早いと、話しをはぐらかせた。あのアパートで由樹枝と同棲する姿を想像すると、胸が膨らむ。そうしたい気持ちは大きくなる。しかし、由樹枝の両親を説得するのは難しいと考える。遠距離恋愛も止むを得ないのではないかと思う。バイトすれば金も入る。1ヶ月に1回は、帰郷し、由樹枝に会いに来ればいい。お金を渡して、由樹枝に東京に来て貰っても構わない。受験は終わっての大学生である。自由時間は多く作れるはずであった。2月中旬、W大の試験日となった。2回目の東京である。試験の前日、橋本のアパートに泊めて貰った。試験会場は新宿なので、アパートから、そんなに時間はかからなかった。大きな試験は、悠介にとって初めてである。緊張した。多くの受験生も緊張しているようだ。皆、優秀に見えた。「どう? 試験の出来は?」「はぁ、まぁまぁ出来たと思います。」橋本の宿の近くの食堂である。試験が終わって、アパートに戻った後の食事だ。「彼が北村だ。寺本君の2年先輩になるかな。今2回生だ。」「北村です。よろしく。」「寺本です。よろしく、お願いします。」悠介の役に立ちそうな人を連れて来ると橋本は言っていたが、約束通り連れて来てくれたのである。近くの宿に下宿しており、バイトも先日紹介して貰った所で行っているとの事である。従って、悠介との付き合いは長くなりそうな人と言えるであろう。北村は背も高く、身体もがっしりしている。小柄な悠介から見ると見上げるようである。外での仕事をしているせいか、日に焼けて健康そうだ。しかし話をして分かったが、日焼けは仕事のせいでなく、スキー焼けらしい。バイトの金は、スキーに費やしていると言う。学生生活を充分に楽しんでいると言う事である。「一応、この辺りは案内して、バイトの大将にも紹介してある。後は、実際に何かあったら、教えてあげてくれ。」「分かりました。橋本さんには、手取り足取り教えて貰い世話になりました。今度は、僕が後輩を面倒見る番ですね。」悠介には、北村は、頼り甲斐がありそうで、力強い味方を得たと喜ばしい気持ちである。全て順調に進んでいる。試験の結果も良かったし、合格出来ると言う自信も持てた。「長野と言ったら、スキー場のメッカだな?」「いや、僕は、スキーやったことないので、すいません。分かりません。」「そうか、勿体ないなー、近場に沢山、良いスキー場があるのに。」北村は、心より残念そうに言った。===================================
2020.06.17
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。受験勉強をしているので、実力試しにW大学を受験する。写真はyahooより借用===================================「じゃー、寺本よ、東京の連絡先が決まったら、教えてくれ。」悠介のアパートは決まっているが、住所は持っていなかった。従って、後で連絡する事にした。そして、福田と山脇が、クラス名簿を夏ころまでに作る事になった。その頃には、みんなが、就職したり進学したりで、新しい住所に落ち着くだろうとの理由である。ほのぼのとした気持ちで、中学の同級生と別れた。同級生って良いなー、と思うのである。正月元旦は、両親に二人の姉、そして悠介と全員集合である。「明けましておめでとう!」父親が、お屠蘇のお猪口を持ち上げて、家族全員に言った。「明けましておめでとうございます!」家族が声を揃えて挨拶した。「久しぶりか? 家族全員が揃うのは?」「そうですね、悠介が長野へ行ってから、仲々、全員集合出来ないですから。」母親が、しみじみした口調で答えた。「悠介が東京へ行ったら、益々、会えないな。」「しょっちゅう帰って来るのでしょう? 悠介?」長姉が聞いた。「どうかなー? 休みはバイトする予定だから、仲々、帰れないかも。」お酒を飲みながら、和気藹々と家族談議である。家は良いなー、家族は良いなー、と感じる瞬間である。悠介は、東京のアパートについて、家族に説明した。先輩から貰えるので、持って行くものは何もないと話した。しかし、母親は、布団は一組新しいのを買うから、と言う。東京に行った時は泊めて貰うから、と言うのが理由である。アパートには、既に二組の布団があった。しかし、先輩が使っていた布団は、せんべぇ布団になっていたように思う。それで、それは捨てる事にして、有難く布団を一組送って貰う事になった。「いいアルバム作ったね。」北海道のアルバムである。由樹枝から返して貰って、実家に持ち帰ったものである。今の所、悠介の宝物のようなものであった。「説明書きがあるから、分かり易いよ。後でじっくり読ませて貰うね。」「それは、私も後で読ませて貰うけど、彼女はどうなったの?」次姉が、突然言った。「え? 彼女?」悠介は、突然言われてドキッとした。関係したのを見透かされたかと思ったのである。「去年、彼女が出来たって言ったでしょう?」「あぁ、あの彼女の事? 名前だけって言う彼女ね?」「そうそう、その後、進展した?」「一応、本物の彼女になったよ。家にも行っている。」「そうなの? じゃ、今度、こちらにも連れて来なさいよ。」「受験勉強で忙しいけど、そうだね、紹介したいな。」毎週、彼女の家に行き、一緒に受験勉強をしており、昼食も、家族一緒に食べている旨、説明した。そしたら、そんなに世話になっているなら、何かお礼をしないと行けない、と母親が言い出した。悠介は全く考えていなかった。「一度、妹の家にも行って、挨拶しないとね、悠介が3年も世話になったんだ。その際、その彼女の家にも挨拶に行くかな?」思わぬ展開に、悠介は驚いた。叔母の家には、両親とも、年に一度は必ず来て挨拶していた。年に2回ほど来る事もあった。しかし、由樹枝の家に行くと言う事に関しては、悠介には違和感があった。高校生の付き合いである。親が挨拶に行くには、とても早すぎると思うのである。「いや、良いよ、挨拶は。東京に行った時も、お土産は買って行ったし、そう言う気遣いは、無用だと思うよ。」それは、それで、話しは終わった。話題は長姉の事になった。22歳で適齢期である。見合い話も舞い込んでいるようだ。勤め始めて4年が経ち、仕事も順調なようである。本人は、結婚はまだ早いと仕切に見合いを断ろうとしている。誰か好きな人でもいるのか? と、次姉にも追及されていた。結局、良い話があれば、見合い話を進めて貰う事で話は着いた。悠介は、長姉が結婚となったら、家を出る事になり、寂しくなるな、と思う。次姉には彼氏がいるようで、休みの度に、出かけていると言う。次姉まで結婚したら、家には、両親だけになる。益々、寂しくなるな、と悠介は、自分が東京の大学に行って良いものかどうかと、心配になって来るのであった。お酒をお猪口に何杯飲んだであろうか? こんなに沢山飲んだのは初めてである。気分が高揚してはいるが、酔っ払って、ふらふらする事もない。アルコールは強いようである。楽しくも、心配な点もある、元旦の家族団らんであった。===================================
2020.06.13
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。受験勉強をしているので、実力試しにW大学を受験する。写真はyahooより借用===================================初めての一人での東京である。成果は上々で今後の心配は何もない。浮き浮きした気分で、おばさんの家と、由樹枝の家にお土産を買う事にした。大きなお菓子屋さんに入った。何を買って良いのか分からないので、店員さんに話を聞いた。親切で良くしゃべる店員さんで、詳しく説明をしてくれる。色々と見て聞いたが、プチ・フールと言う愛らしいひと口菓子にした。バタークリームのミルキーな甘さと洋酒の香りがするらしい。そして、あの文豪の川端康成が「心底から私を喜ばせる。」と絶賛したと言うお菓子である。二箱買った。そして、由樹枝には、勉強しながら食べられるように、東京ピーセンと言うピーナツせんべぇを買った。帰路についた。由樹枝に会いたかった。東京での生活に目途が立ち、自分が生活する場所が具体的に決まったのである。一番先に由樹枝に知らせたい。「そうだ、山本さんに、お礼の手紙を出さねば。」山本は、悠介に然別湖や糠平湖を案内してくれて昼食もご馳走してくれた人である。M大学の卒業生であり、橋本を紹介してくれたのである。彼と会わなかったら、そして彼がM大学の出身でなかったら、さらに、橋本を紹介してくれなかったら、アパートは借りる事が出来なかった。悠介は、山本に心よりお礼を言いたいと思った。浮かれている場合ではない。お礼はきちんとせねばならない。上高地から帰ってから、由樹枝の家に行く回数を増やした。何故ならば、日曜日は、親も妹もいるので愛し合えないからだ。授業が終わった水曜日、すぐに由樹枝の家に行く。親は夕方にならねば帰らない。妹も部活で帰らない。それで、勉強の前に愛し合うのである。由樹枝も12月に入った頃より、ずいぶんと慣れて来た。快感も感じるようである。積極的にもなっている。悠介には、嬉しい展開である。由樹枝の勉強も順調である。受験勉強のスケジュールは遅れているが、それは、気にする事はない。本格的な受験勉強の取り組みは、3年になってからで良い。今は、予備勉強である。由樹枝の2学期の期末テストの結果も良かったようだ。悠介は安心した。悠介との恋愛によって、成績が落ちたとしたら、付き合い方を考えねばならない。しかし、これまで通りの付き合いを続けても問題はない事が、期末テストの結果により、分かったのである。悠介にとって、全てが順調である。この頃が、悠介のもっとも安定し、心配もなく、心が安らぐ日々であったろうか?年末年始は、池田町に帰った。大学に入って休みはバイトをすると、ゆっくり自宅に居られるのは、これが最後のチャンスかも知れないと思ったからである。中学の友人たちにも会った。家の近くに同級生がおり、彼が、さらに友人を呼んでくれて4人で話をした。年末である。同級生の噂話もかなり聞いた。ほとんど全員が、まだ池田町に住んでいる。悠介のように、越境して高校へ通っている者はいなかった。中学を卒業して働いている者もいる。大学を目指して勉強しているのは、クラス全員の中の数人らしい。「寺本は、大学に行くのだろう?」「もう推薦で、行く大学は決まっているよ。」「へぇ~、そうか、凄いなー。大学生か? いいなー、俺たちは、4月から社会人だよ。頭良くって、勉強家だからな、寺本は。大学に行った方が良いよ。」「別に頭が良いと思っていないけど、1年から勉強はしていたなー。 三浦はもう、働いているんだよな?」小柄でクラスでも目立たなかった三浦に聞いた。彼は高校に進学しなかった。「あぁ、寿司屋の見習いだよ。」「そうか、寿司屋さんか、どうなの? 重労働なの?」「そんな事ないよ、大将は良く仕事を教えてくれるし、奥さんも優しい。」「そんなら良いな。俺は、まだ今から4年も遊ぶけど、三浦はもう社会人だ。ずいぶん、人生に差が付くな。」「俺だって、寺本のように頭が良ければ、高校も大学も行きたかったよ。でも、それは出来なかったから、就職したんだ。仕事も悪くない。学校より良いよ。机に座って勉強しなくていいからな。でも仕事も、毎日、勉強だ。厳しいよ。」そんな話を聞くと、どちらの人生が良いのか分からないな、と思う。しかし、お金はかかるのに、勉強させて貰う自分は幸せだ、と感じるのであった。同級生のその後の動向なども聞いて、楽しい時間を過ごした。「中学の同級生は、皆、バラバラだよな。これから、もっと離れて行くよ。でも、1年に1回位は、みんなで会いたいな。」高卒で地元の銀行に就職する事が決まっている福田が言った。「そうだな、そうしよう。俺たちは地元に残るから、連絡係をするよ。」同じく高卒で、町役場に就職が決まっている山脇も同意した。悠介は、高校では感じなかったが、良い仲間だなー、と思った。===================================
2020.06.09
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。写真はyahooより借用===================================まず、車で工事現場へ行くのに30分はかかる。それから、仕事にかかるが、10時には休憩だ。12時からは、きっちり昼食時間である。午後も似たようなものだから、1時間半仕事して、30分休憩のような時間割らしい。勿論、その日の大将によって仕事のやり方は変わるそうである。生真面目な大将の下に着くと、がっつり仕事をさせられるようだ。「どうだい? やって見るか? まぁ、やって見て、ダメそうなら止めれば良いし、就職ではなく、バイトだからな。」「分かりました。バイトはしたいと思うので、紹介して下さい。」話しは決まった。その日は、橋本の部屋に泊めて貰い、翌日の朝食も、食堂で食べ、そして、バイト先と言う会社へ出かけた。アパートから歩いて行ける所に事務所はあった。それでも、20分程かかった。9時頃着いたので、作業員は既に出払って、親方だけがいた。「おー、どうした?」親方は、がっしりしているが、背は高くない。腹が出て、日に焼けて、如何にも親方と言う印象である。社長と言う呼び名は相応しくないと悠介は思った。「来年から来る、バイト候補を連れて来ました。」「そうか、そりゃーいい、最近は、人手不足でな、有難いよ。」「寺本です。来年春、M大学に入学します。」「始めは、高い給料は出せないが、一人前になれば、それなりの報酬はだすよ。」親方は、機嫌が良い。橋本との関係も良好のようである。コーヒーを出してくれて事務所で雑談する。橋本は、ほとんど全ての従業員を知っているようで、親方とその人達の話しをしていた。現場の失敗工事があり、やり直したりしたので、あそこの現場は赤字だとか、そんな話しもしている。悠介はさっぱり分からないので、黙って聞いているだけである。30分程、雑談した。帰りに親方より、こちらに引っ越して来たら、すぐに連絡してくれ、と言われた。期待されていそうで、悠介もやる気になっている。事務所を出て、橋本より言われた。「では、これで、もう会う事もないな、寺本が来る前に、おれは、部屋を出るからな。管理人さんに全て話して、鍵も預けるから。」しかし、悠介は、腕試しに、W大学を受験するつもりなので、2月に1泊させて欲しい、と頼んだ。橋本は快諾した。「それなら、湯島天神へお参りして行こう」、と言う。湯島神社は、親方の事務所のすぐ近くにあり、学問の神様の、菅原道真が祭られ、多くの受験生や子供の合格祈願をする人々が訪れるらしい。橋本の説明である。湯島天満宮にお参りした。「W大に合格したら、そちらに行くのか?」「いや、腕試しです。受かっても、受からなくても、M大学に来ます。」「そうか、受かったらとしたら、勿体ないな。でも、そうしたら、アパートは変えねばならない。他に誰か後継者を探さねばならないよ。」「いえ、すいません心配かけて。推薦が決まって目標が無くなってしまったので、受験勉強をしているのです。腕試しに受けて見るだけで、仮に受かったとしても、進路は決まっています。アパート、よろしく、お願いします。こんないい条件は、他にありません。」「そうか、分かった。分かった。じゃー、1泊ではなくて、2泊しな。受験の終わった夜、一緒に飲もう。誰か、君の為になるような奴を呼んでおくよ。」橋本は、親切な人であった。何から何まで、世話を焼いてくれる。良く気の付く人でもある。アパートにある備品を全て買ったら、かなりな金額になるはずである。それを全部くれると言うのだから、太っ腹だ。かれは、入社する会社の独身寮に入ると言う。そこには、必要な備品は揃っているし、賄いつきなので、料理用具も不要とのことである。新入社員になるので、必要な物も、心機一転、新たに買うと言うのである。バイトもしたし、使うのは飲み代だけだったので、預金もあるらしい。何とも有難い先輩である。橋本とは、湯島天満宮で別れた。丁寧に礼を言い、手紙を書くと約束をした。今度来る時は、酒でも土産に買って来ようと思った。部屋に酒瓶があったので、部屋でも飲むのだろう。この辺りの地理を頭に入れる為、湯島天満宮から、バイトの会社の辺りを歩いた。そして、橋本の宿まで、歩いて道順を確認した。さらに、大学までの道順も歩いて確認した。すっかり地理を頭に入れて、悠介は、安心したのである。北海道を一人で旅をして、新たな地においてもやって行けると言う、ある自信を持っている。北海道の旅は、悠介を一回りも二回りも大きくしたようである。===================================
2020.06.05
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。写真はyahooより借用===================================11月が過ぎ、12月も、第2週に入った。山本さんから紹介されていた、M大学の橋本さんとは、手紙で連絡を取っていた。クリスマス前に、東京へ行き、アパートの部屋や、学校を案内して貰う事になっている。その日がやって来た。一人で東京へ行くのは初めてである。緊張するが、充分に下調べはしてある。14時にアパートへ行く事になっている。アパートは神田川のすぐ近くにあると言う事である。東京駅まで行き、そこから、お茶の水へ行った。住所とアパート名だけを頼りに、駅から歩く。あちこち聞きながら、行きつ戻りつして、ようやくアパートへ着いた。神田川の辺と聞いていたが、1本奥へ入った道路の奥にあった。14時より早く着いた。管理人に話を伝えると、「聞いていたよ」、と橋本さんの部屋まで連れて行ってくれた。階段を上った、2階に橋本の部屋があった。「おー、寺本くんか? 俺が、橋本だ、よろしく。」「寺本です。お世話になります。」「さぁ、入ってくれ。」6畳のワンルームだった。机が一つあるだけで、何もない。布団が部屋の隅に畳んであった。机の前が窓であり。その向こうに前の家の屋根が見える。そして、屋根と屋根の間から、神田川が見えた。南西向きのようである。「一通り、何でも揃っているぞ。全部置いて行くから、何も持って来る必要はない。山本先輩の紹介だからな。聞きたいことは何でも聞いてくれ。」「ありがとうございます。」「一応、部屋を説明しておくよ。」橋本から、狭い部屋であるが、説明してくれた。机がある。そしてテレビもある。ラジカセも置いてあった。キッチンには、鍋やフライパン、お皿やどんぶり、さらには、橋やスプーンやフォーク、細かいものも何でもあった。小さいが冷蔵庫もある。贅沢な部屋である。風呂も狭いがある。橋本の説明では、この辺りで、風呂のある物件は少ないそうである。その分、割高であるが、銭湯へ行くお金も不要だし、面倒でないと言われた。押し入れもあって、洋服を掛ける所もある。悠介には十分すぎる部屋であった。その後、橋本が、部屋の近くを案内してくれた。買い物の店とか、外食の食堂とか、それほど歩かない範囲に、何でもある。学生が多くいる地域なので、安いお店が多いと言う。そして、さらに学校まで案内してくれた。アパートから、10数分の距離である。大学の構内は、北海道大学しか知らないが、M大学も広い。ここで、勉強をするのか、と思うと悠介には感慨深いものがあった。運動場や体育館、図書館に教室など、丁寧に親切に橋本は説明してくれた。短時間で、ほぼ大学の概要を掴めた感じである。実際に見ると、実感が湧いてくる。今まで想像だけであったが、これからは、具体的に想像が可能である。一旦、部屋に戻り、それから、近くの食堂に出かけた。「橋本さん、今日は、二人ですか? 珍しいわね?」若いお姉さんが、親しく橋本に声を掛けて来た。食堂の店員さんである。この挨拶を聞くと、橋本は、いつも一人で来ているようである。「来年から、俺の後、部屋に住む、寺本君だ。懇意にしてくれ。」「ええー、そうなのですか? 可愛いわねー。」「まだ、高校3年だからな。誘惑したらダメだぞ。歳が違う。」「何言ってんの? 誘惑? しちゃうかなー? 良い男じゃーないの。」冗談を言ってから、お姉さんは、何にしますか? と橋本に聞いた。「ビール飲めるか?」「1回だけ、飲んだことあります。」「よし、ビール飲もう。大学に入ったら、飲む機会が多いからな。」つまみは、適当に頼んでくれた。そしてビールは2本頼んだ。「明日は、バイト先を紹介するよ。バイトするだろう?」「はい、仕送りだけで足りるかどうか分からないですが。」「遊ぶ金まで、親に出して貰ったらいかんよ。部活に入らなければ時間はある。土日だけ働いても、良い金になるぞ。」「そうですか? どんな仕事ですか?」橋本の話しに寄れば、力仕事の労働者だそうである。外構工事と言って、塀などを作るらしい。始めは、言われたことをすればいいが、1年もすれば、1人前になって、簡単な仕事ならば、任せてくれるとの事。冬休みや夏休みで、毎日働けるときは、人を使って仕事をしていると橋本は説明した。そんな仕事をした事がないので、悠介には自信がなかった。北海道での丸太くず運びは大変だった。あのような仕事ならば、お金を貰っても嫌だなー、と思う。その旨、橋本に話すと、力仕事と言っても、大した事ではないと言う。===================================
2020.06.01
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。写真はyahooより借用===================================「そろそろ、、汽車の時間かい? 出かける?」お金は、悠介が支払った。由樹枝も親から、お金を貰って来ていたが、宿代と交通費以外は、悠介は出してあげたいと思っていたのである。汽車の中でも、二人は黙々と勉強した。昨夜、愛し合った仲とは思えない。二人とも、とても真面目であり、目標に向かって努力する素質を持っている。悠介は、受験勉強が面白いと感じる。今までやって来たことの復習であったからだ。沙漠の砂が水を吸い取るように知識が吸収されているようである。長野駅に着いて、電車を乗り換えた。ここから、信濃吉田駅がおばさんの家のある駅である。その後、由樹枝とデートした小布施駅があり、さらにもっと先に、由樹枝の家がある信州中野駅だ。従って、悠介が先に降りる順番である。送って行きたかったが、送ると、遅くなりそうなので我慢して信濃吉田駅で降りる事にした。「次、いつ会える?」「日曜日? 家に来るでしょう?」「うん、じゃ、1週間だ。もっと会いたいけど、勉強があるからね。」「楽しかったよ、上高地。ありがとうね。」「いや、痛い思いをさせてごめん。」「いやらしい。」お互いに、じゃー、と言い、握手して別れた。1週間はすぐに過ぎ去った。悠介も由樹枝も、今まで以上に勉強に集中出来た。心より愛し合う恋人がいると言う心の安定と満足感が集中力を増幅させているようである。幾日待てば、又、会えると言う楽しみも待っていた。悠介は学校で関根に会った。級友とは普通の雑談はするが、友人と呼べるほど親密な友達はいない。関根は唯一の友人と言えるかも知れない。受験勉強と写真部の活動で相変わらず忙しそうだ。「久しぶりだなー、元気?」「あぁ、まぁまぁだよ。推薦決まったそうだね、おめでとう!」「ありがとう、やっと決まってほっとしている所だよ。」クラスメートは、推薦に関して全員が知っていたが、別のクラスまで噂が流れていると悠介は知らなかった。「六大学だからなー、大したもんだ。俺は、六大学クラスの学校に受かりそうもない。」「まだ、時間がある。頑張れよ。」「いや、俺は、大東亜帝国辺りを目指すよ。ところでさー、小平とは、上手く行っているの?」悠介は、全部話してしまいたい誘惑に駆られてしまった。由樹枝との仲を、誰かに言ってしまいたい誘惑である。しかし、思い留まった。由樹枝との秘密の仲である。二人が知っていれば良い出来事なのだ。「あぁ、付き合いは、続いているよ。」「どう? もうキスしたのか?」「いや、そう言う仲じゃーないんだ。受験勉強を一緒にやっている。」「そうなの? だって、もう1年以上、付き合っているんだろ? キス位しなきゃー、おかしいよ。みんな、やっているらしいぜ。」「仲々、そんなに上手く行かないよ。」親友に真実を伝えられないもどかしさと、嘘を言わねばならない申し訳なさに関根の目を見て話せない。関根も、今は、写真部の活動を制限し最小限の事だけやっているらしい。受験に専念せねばならない。その点、悠介は、推薦を勝ち得たので、気楽である。一応、W大学は受験するが、腕ならし、実力試しで、合格しても不合格でも、進む道に関係はしない。翌週の日曜日、由樹枝の家に出かけた。北海道のアルバムを持参である。由樹枝には是非、見て欲しかった。悠介の18年の人生で最大のイベントである。振り返っても、良く行ったなー、と思う。あんな旅は、今後も出来ないのではないかと思うと、今更ながら、行って良かったと思うのであった。「これ、北海道のアルバム、勉強に疲れた時にでも、見て。」由樹枝は、ぱらぱらと、アルバムをめくった。「凄いね。全部、コメント付きね。後で読ませて貰うわ。」「出会った人とか、全部書いてある。」「分かった。楽しみだなー。」この日は、勉強して、又、両親と昼食を食べた。午後から夕方まで勉強して、悠介はおばさんの家に帰った。悠介は、抱き合いたかったが、両親も近くにいるので、それは出来なかった。キスしただけで別れたのである。===================================
2020.05.28
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兼ねてより編集していた、ニュージーランド一周の旅、でじたる書房へ送付していました。そして、掲載完了しましたと、メールが届きました。これが、北島一周の旅の、表紙となります。全338ページ、380円で販売です。安いですねー!『ニュージーランド 北島一周の旅』http://www.digbook.jp/product_info.php/products_id/18800上記が、デジタル書房から、送られて来た、URLです。海外では、見られませんが、日本では、見る事が出来ます。で、アジアの星一番 には、何が書いてあるか、分かりません。これが、南島一周の旅の、表紙であります。全509ページ、380円で販売です。これまた、安いですねー!『ニュージーランド 南島一周の旅』http://www.digbook.jp/product_info.php/products_id/18801上記が、同様に、でじたる書房から、送られて来たURLです。海外では見られませんが、日本では、見る事が出来ます。本への編集、楽しみながら、想い出しながら行いました。自粛生活の楽しみでしたね。もう、これで、最新の本としては、掲載する物はありません。いや、「チェンマイに佇む男達、山川純一の場合」があります。しかし、これは、今、小説すばる新人賞に応募しているので、デジタル書房に掲載する事が出来ません。落選が決定したら、デジタル書房で、販売開始する予定です。古いもので、本にしていない国、地域もあるので、それらを本にするかなー?でじたる書房から、販売促進の為、ブログなどで、告示して貰いたいと要望を頂いているので、ブログに掲載しました。
2020.05.25
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第71回、72回、73回は、公序良俗に抵触するような内容が含まれております。従いまして、ブログには、掲載しませんので、ご了承願います。==================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。写真はyahooより借用===================================「お早う! 起きて? とってもいい天気よ。」悠介は、由樹枝に起こされた。あれから、2時間ほど寝たろうか? 時刻は、まだ7時前である。起きだして、廊下の外を見た。確かにいい天気だ。「朝食の前に、散歩に行く?」由樹枝が、活き活きとした表情で言った。もう痛くはないのであろうか? と悠介は不思議に思った。浴衣から、着替えて、表に出た、涼し過ぎるが、気持ち良い朝である。手を繋いで、河童橋の方へ歩く。昨日見た景色であるが、結ばれた二人にとって、新しい景色のようである。「見て、見て、綺麗な水!」由樹枝がはしゃいで、梓川の川面を指す。何を見ても楽しそうである。悠介も何とも清々しい気持ちである。散歩している人は、誰もいない。二人だけで、自然を満喫である。元気な由樹枝の姿を見て悠介は聞いた。「もう、痛くないの?」「痛くないけど、何か、挟まっている感じ、変な感じよ。」「そうなの?」悠介には、分からない感想である。ふーん、と頷き、首を振るばかりである。宿から、河童橋までは、すぐ近くである。少し梓川の辺に佇んで帰った。30分も、散歩したであろうか? 部屋に戻ると、布団は畳まれて片付けられ、食卓も出ていた。その両側に、座布団が敷いている。廊下の椅子に座って、外を眺めながら、雑談していると、仲居さんが声を掛けて来た。「お食事をお持ちしました。」悠介が時計を見ると、もう8時である。昨日、ハイキングもしたし、今日は帰るだけである。由樹枝も勉強の遅れを気にしているだろうし、帰りのバス、電車では、勉強しながら帰ろうと思った。そして、どこにも寄らずに家に帰そうとも思った。昨夜の出来事で、悠介は、さらに優しくなり、心に余裕も増えたようである。朝食を食べ、ゆっくりして、10時前にはチェックアウトした。もう少し早く出てもよかったが、昼食時間の事を考えたのである。松本で食べるのだ。そこの時間が合わないと、早い昼食を食べねばならないか、お腹を空かして、長野へ行かねばならない。バスの中では、言葉も交わさず、熱心に勉強した。由樹枝は、時々、本から目をあげて、外の景色を眺めたりしている。しかし、すぐに本に目を落とし、勉強に集中した。悠介は、集中力があるなー、と由樹枝を見直す思いで見つめていた。来る時とほぼ同じ、1時間半で、松本に着いた。昼食に丁度いい時間である。由樹枝は、あまりお腹空いていないと言うし、悠介も朝食をたっぷり食べたので、重いものは食べたくなかった。それで、蕎麦を食べる事にした。松本駅周辺には、沢山の蕎麦屋がある。どこが良いのか分からない。居酒屋風のお店でなく、蕎麦専門の蕎麦屋さんに入った。「朝食を食べ過ぎたかなー?」「美味しかったからね、ちょっと食べ過ぎちゃった。」「俺は、ざるそばにする。由樹は?」「私も、ざるそばにする。」「今、どの辺りを勉強しているの?」「ルネサンスの所。」「そうか、由樹は、外国に興味があるんだよね?」「そうだけど、悠介みたいに英語が得意じゃーない。もっと勉強しないと。」「いや、今は、受験勉強だからね。大学に入ったら、会話とかも勉強すると良いよ。受験勉強と会話とか違うから。」「悠介は、ラジオで勉強したのだよね?」「そう、1年からずっと勉強して来た。でも、実際に話したことがないから、自分の実力が分からない。俺も大学に行ったら、どこか実地で勉強したいな。」ざるそばが来た。食べる事に集中した。「ヨーロッパに行って見たい?」「うん、今、ルネサンスの所だから、行って見たい。それで、イタリアとかも行きたい。ルネサンスて、西欧全部に跨っているでしょう? その関係が、まだ良く分からない。でも、パリかな? パリも行って見たい。」「そうか、憧れだよね、ヨーロッパ。行ける時が来るかなー?」「新婚旅行で行きましょう?」「え?」「ふふふ、だって、結婚するって、昨日言ったでしょう?」「あぁ、そうだな。新婚旅行で行ければ良いなー。お金貯めなくっちゃ。」===================================第71回、72回、73回は、お休みにさせて頂きました。公序良俗に抵触するかも知れない内容が含まれているからであります。どんな内容が書かれていたかは、推測して、続きをお読みください。
2020.05.23
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。10月には、大学の推薦が決まり、二人で上高地への1泊旅行に出かける。写真はyahooより借用===================================鱒の焼物もある。鍋もあった。仲居さんが火を点けていってくれたので、もう食べられる。「こうやっていると、大人になったような気分がするね?」「私もよ。」「しかし、俺たち、どう思われているかなー? 仲居さん達にさ。」「う~ん、高校生に思われている?」「だったら、おかしいよ、高校生が男女二人で泊まっているなんて。」「じゃー、働いている人?」「どうかなー? 分からないなー? でも、たぶん、高校生には見られていないね。もっと大人にみられているよ、きっと」ビールを飲み終え、悠介も酔ったのかどうか分からないが、浮き浮きした気分になっている。由樹枝は相変わらず頬を桜色に染めて、益々色っぽい。炊き上げご飯と、松茸のお吸い物もあった。お腹一杯って感じであったが、それらも全て食べた。さらに、ゼリーのデザートもある。豪華な夕食であった。「腹一杯だな。もう勉強する気にならないよ。」「そうだね、勉強はやめちゃう?」「良いのかい? 勉強遅れるって心配してたろう?」「そうだけで、まぁ、いいや、こうやって、悠介と二人だけだから。これから、こう言う機会って、いつ来るの?」「そうだなー?」悠介は考えた。由樹枝も受験勉強があるので、そうそう、泊まりで出かけられない。二人だけで出かけて泊まれる機会はないなー、と。「そうだ、来年の、春休みに、東京に来れるかい?」「来年の春休み?」「うん、その頃、俺は、東京のアパートにいるんだ。」「行けるかなー? 泊りででしょう?」「そうなるね。」「お母さんに、何て言えばいいか、分からないよ。」「それも、そうだ。」悠介は、いい考えだと思ったが、そんな簡単には、実行出来そうもないと、考え直した。由樹枝は、まだ、高校2年生である。一人で東京の泊りは無理だ。ゆっくりして、お茶を由樹枝が入れてくれた時、襖の外から声がかかった。「失礼します。お食事は終わりましたか?」「はい、どうぞ。」先ほどの仲居さんでなく、別の女性であった。テキパキと片付けながら、話しかけて来る。「お客さん、どこから来られました?」「長野市です。」「そうですか? 近いですね。ここは、遠くから来られる人が多いですよ。」悠介と、由樹枝は、片付けの邪魔をしないように、外廊下の椅子に移動した。「お二人、お若いですね? まさか、新婚旅行じゃないですよね?」「あ、いえ。」「ご結婚されています? あ! ごめんなさいね。プライバシー侵害ですよね。」「構いませんよ。まだ結婚してませんが、将来結婚するつもりです。」由樹枝は、驚いて、悠介を見た。まさか、結婚すると悠介が言うとは思わなかったからだ。「そうですか。では、恋人さんですね? 楽しそうですねー。、今が一番、良い時期かも知れませんよ。私にも、そう言う覚えがあります。」女性は、おしゃべりである。ついつい、その調子に乗せられ、悠介も、言わないで良い事まで言ってしまった。悠介自身、結婚云々は考えていなかった。薄ぼんやり、大学を卒業したら、結婚するのかなー、などと、想った事があった程度である。由樹枝は、身体の芯が熱くなるような感覚に襲われた。じーんと何かが押し出してくるような感覚である。悠介が、結婚すると言った言葉が、心の中に染み入るようである。まだ高校2年生の身であるが、そこは女性、結婚と言う言葉には心が動かされる。悠介は、そこまで考えて付き合ってくれているのか、と嬉しい、幸せで、心が一杯になった。「それでは、ごゆっくり。お風呂はいつでも入れますから。」お喋りの女性は、にっこり笑って、片付けを終え、戻って行った。「もう一度、風呂に入る?」「少し酔ったみたい。もう少ししたら入ろうかな? 悠介、入って来て。」「俺は、まだ飲んでも大丈夫みたいだ。強いのかなー?」「じゃ、何か頼む?」「いや、良いよ。これから、重要な事をしなければならないからね。」===================================
2020.05.19
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第68回は、公序良俗に抵触するような内容が含まれております。従いまして、ブログには、掲載しませんので、ご了承願います。==================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。10月には、大学の推薦が決まり、二人で上高地への1泊旅行に出かける。写真はyahooより借用===================================「お客様、よろしいですか?」仲居さんから、声がかかった。「は~い。」由樹枝が答えた。「お食事の用意が出来ました。お持ちしました。」先ほど使った布団は、由樹枝が綺麗にたたんで、押し入れに仕舞い込んだので、部屋には、テーブルがあるだけである。障子の外に張り出した廊下に、二つの椅子がある。そこに、悠介も由樹枝も座っていた、食事は、部屋で、食べるようである。二人の女性が、次々と料理を運んで、テーブルの上に並べる。並べ終えて、仲居さんが聞いた。「お飲み物は、何にしますか?」突然聞かれて、悠介は困った。何も考えていなかったからである。「おビールとか、飲みますか?」「ええ、じゃー、お願いします。」考えもなしに、ビールを頼んでしまった。「由樹は、どうする?」「あの、お茶とか、あるのですよね?」「はい。ここに、急須とお茶碗、このポットにお湯が入っています。」「では、私は、お茶で良いです。」「はい、わかりました。ビールは、すぐにお持ち致します。それに、ここに、食前酒の、梅酒がありますので、お召し上がりくださいませ。」仲居さんが、丁寧にお辞儀して部屋を辞した。「いやー、緊張するなー、俺、こう言う食事、初めてだから。」「私だって、初めてよ、でも、なんていう事ないでしょう?」「由樹は、度胸があるなー。さっきとは、全然違うよ。」「何、言ってるの?」由樹枝は、恥じらいの色を浮かべた。全裸の姿を見られているので、それを思い浮かべてしまったのであろう。まだ、交わってはいないが、全裸で抱き合った男と女の距離は縮まっている。「梅酒、飲んで見よう。」「どんな味かなー? わたし、飲んだ事あるよ。お母さんが作った。」「俺も、飲んだ事あるけど、同じかなー?」「どう?」「甘いわ。家で飲んだのと、あまり変わらない見たい。」「そう? ねっとりしている。濃いな、これ。」「お待ちどうさまでした。 ビールをお持ちしました。」仲居さんが、ビールを持って来た。「何か、あったら、言い付けて下さい。それでは、ごゆっくり。」年増の仲居さんから、高校生の自分達に、とても丁寧な対応をされて緊張する。どこか、不自然さがあって肩が張った。しかし、二人きりになれたので、肩の力も抜けて、緊張も解けた。「ビール頼んでしまったよ。頼まなければ、悪いような気がしてさ。」「いいんじゃない? 飲んで?」「由樹も一杯飲めば?」「わたし、飲んだ事ない。」「じゃー、少しだけ、飲んで見て。俺は、正月にお屠蘇を飲んだ事がある。」「酔う?」「いや、俺、結構、強いかも? 姉に止められたけど、別に変わらなかった。」「どうぞ。」由樹枝が、コップを渡してくれた。並々と注いでくれた。そして、悠介は、由樹枝にグラスを渡し、同じく、並々と注いだ。「では、乾杯!」「何に、乾杯?」「何にって、二人の為だろう?」「そうね、乾杯!」由樹枝は、ごくりとビールを飲んだ。「にが~い!」「そうかい? 美味いけどなー。」悠介も、苦いとは思ったが、コップの半分ほどを、ぐっと、飲んだ。「食べよう!」料理は、多すぎて、何から手を付けて良いか分からない。刺身こんにゃくがあった。南瓜豆腐もあった。この辺りは、ビールを飲みながら、つまんだ。由樹枝は、ほんのりと頬が桜色になっている。あまりアルコールに強くないらしい。梅酒と、ビールをコップに一杯も飲んでいない。悠介は、梅酒を飲んでも、ビールをコップに一杯飲んでも、何ら変わりはない。2杯目をコップに注いで貰った。==========================================第68回は、公序良俗に反すると思われる内容が含まれており、掲載は中止しました。前回、通報されて、このブログが、閉鎖されてしまいましたので、同じ過ちは繰り返したくありません。ストーリーに関しては、1回のお休みでも、何ら影響はないものと推測致します。
2020.05.15
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。写真はyahooより借用===================================付き合い始めの頃の事で、話しに花が咲いた。お互いに惹かれていたと、実感したのは、もっと後だった。あの頃は、言葉だけでも、付き合っていると言うだけで、喜びの頂点だった。その由樹枝と、今日は、結ばれるのである。たった1年で、信じがたい進展であった。「さぁ、行こうか?」昼食を食べながら、楽しい話しをして、気分も最高である。二人は、荷物を纏めて、歩きだした。立ち枯れた木が水面に映る姿も幻想的である。その向こうに焼岳が見える。大正池は、大正時代にできた新しい池である。向こうに見える活火山の焼岳が噴火して、土砂が梓川をせき止めて出来たのが、大正池である。河原にあった木は水につかって枯れ木立になって、そのうちのいくつかが、残って幻想的に、大正池の雰囲気を醸し出しているのである。田代池、田代湿原を通り、梓川の辺を歩く。1時間もかからず、河童橋に着いた。宿は、河童橋から、歩いてわずかな所にある。ホテルにチェックインした。チェックイン時間には、早過ぎたが、宿の人は、気持ち良く対応してくれた。高校生の悠介にとって、かなり高級な宿である。しかし、悠介は、安い宿にはしたくなかった。部屋は、8畳ほどあるだろうか?和室であるが、二人には、充分である。それに、清潔であった。障子を開けたら、紅葉の色が飛び込んできた。「少し、休む? それとも、ハイキングに行く?」「疲れてないわよ。行きましょうか?」荷物を置いて、必要な物だけを持った身軽な軽装で、宿を出発した。岳沢湿原を見て、さらに歩く。心洗われるような水の流れの景色の中を歩く。木の精、水の精、森の精、そんなものがあって、人間の心を癒してくれるように思う。さらに明神池の方へ歩く。既に、大正池からの歩きも含めると、2時間近く歩いたが、疲れは感じない。明神池には、明神一之池、明神二之池もあった。この辺りで、少し休み、梓川にかかる、明神橋を渡って、対岸へ行く。そして、上高地まで戻った。往復、2時間ほど、かかったであろうか。「さぁ、風呂に入って来よう。」宿に帰り、早速、風呂に入った。部屋に風呂はない。大風呂に別々に入る。大きな湯船に浸っていると、ハイキングの疲れが、心地よく、癒される気分である。もうじき、由樹枝と抱き合えると思うと、興奮してくる。ゆっくりと湯船に浸り、全身も丁寧に洗った。部屋に戻ると、由樹枝はもう、帰っていた。「お茶、飲む?」「あぁ、そうだね、喉が渇いた。風呂のせいかな?」浴衣に丹前姿の、由樹枝は、妙に色っぽい、初めて浴衣姿を見た。「こっちに来て。」由樹枝を抱き寄せた。由樹枝も身体を持たせて来る。お互いに自然と抱き合う。悠介は、由樹枝の縊れた腰や、ふくよかなお尻を撫でまわしている。由樹枝は、両腕を悠介の首に回し、何も言わず凭れ掛かっている。くちづけを繰り返し行い、悠介は言った。「もう、したい。いいだろう?」「・・・」由樹枝は無言で、悠介にしがみついている。興奮しているのか、嫌なのか分からない。しかし、頬が熱くなっているので、興奮しているのが分かる。まだ、外は明るい。夕食まで、時間もある。夜は長い。慌てる事はないが、悠介は、早く、由樹枝と一つになりたかった。この日を、長い期間夢見て、待っていたのである。「布団を敷くから、ちょっと待ってて。」そう言って、悠介は立ちあがった。押し入れに、清潔そうな布団が入っていた。悠介は、その中の一組を取り出した。本来は、仲居さんが敷いてくれるのだと思うが、構わない。由樹枝を見ると、うつ伏せになって顔を見せない。恥ずかしいのであろう。「ほら、向こうに行こう。」悠介は、由樹枝の身体を抱いて、布団へ導いた。由樹枝は目を閉じたままである。身体を横たえて、由樹枝の隣に寝た。すぐに、片手は、由樹枝の乳房に合わせる。左手を、首の下に回し、右手で乳房を揉む。そして、口づけをする。由樹枝も答えて来た。唇を離して、由樹枝がかすかに言った。「カーテン閉めて。」===================================
2020.05.12
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。写真はyahooより借用===================================「1時間もかからないで、宿に着くから、途中、眺めの良い所があったら、そこで、昼食にしよう。」「はい、分かりました。」由樹枝は素直である。「気持ち良いなー、由樹と二人で、こんな所を歩けるなんて、嬉しいよ。」「そうね、外の散歩って、千曲川河川公園だけだった?」「そうだなー? 焼きそば食べてから歩いたけど、町の中だ。」「そう言えば、あまり行ってないね。」「そうだよ、バドミントンと、焼きそば位しか行ってない。」「又、行けるかなー? 受験勉強、忙しくなるし・・・。」「息抜きに、たまには、出かけようよ。」紅葉の山と、青い空が、大正池に映って、とても美しい景色である。「ここで、食べようか? とっても、綺麗だよ。」「ほんとね、丁度、腰かける石もあるし。」ゆっくり歩いたので、バスで一緒だった人達は、先に行ってしまった。この美しい景色と、新鮮な空気も、二人占めである。二人は、石に腰かけて、弁当を取り出した。「実は、北海道の旅では、パンに牛乳ばっかりだったんだ。」「そうなの? 好きなの?」「好きって言うか、あんまり、弁当売っていなかったような気がする。」「ふ~ん。私は、パンでも良かったけど?」「そうか、パンで良かったの? じゃー、パンにすればよかったかなー?」「いや、おにぎりも好きよ。」二人で、他愛ない話しをしながら、おにぎりを頬張った。爽やかな風が通り過ぎていく。暑くもなく、寒くもなく、丁度いい気温でもある。それに、美しい景色、さらには、美しい由樹枝が一緒で、悠介は、何も要らないと思った。これだけで、最高の幸せだとも思った。これ以上の幸せがあろうか?「幸せだなー!」「そうね、私も、幸せ! 悠介と二人で、こんな所に来られると思わなかった。」「そうだよ、始めは嫌がっていたんじゃーないの?」「って言うか、親に何と言ったら良いか分からなかったし・・・」「それもそうだ。あの時、急に言い出すから、びっくりしたよ。」「両親とだけの時は、言い出せなかったのよ。」「そうか、それも、そうだね。俺みたいに、自由でないもんね。」「悠介は、親元を離れておばさんの所でしょう?」「そうそう。特に何も、拘束されない。何をしても自由。と言っても、勉強以外は、由樹に会うだけだったけどね。真面目なんだよ。」「喫茶店、行ったね?」「あれ、1回だけだよ。不良っぽい高校生とかいるので、懲りた。」「うん、変な人達いたよね。」「そう言えば、助けてくれた、笹川って人、顔は怖いけど良い人だね。」「私は、あの時以外も会ったかなー? 会っているの?」「いや、ほとんど会わないけど、見かけたら、挨拶しているよ。」思い返せば、笹川と言う上級生が、悠介の所へ来て、「小平由樹枝と付き合っているのか?」、と問われたのが、最初だった。何のことかさっぱり分からなかったが、付き合っていると言った方が良いと判断し。そう答えた。それで、由樹枝へ、しつっこく、付き纏った男たちがいなくなったのである。そのお礼に手編みの手袋を由樹枝が編んでくれた。まさか、想っていた由樹枝から、手編みを貰えるなんて、想像すらしなかったから、本当に嬉しかったのである。そして、数いる高校生の中から、由樹枝は、悠介を選んだのだ。そして、今、二人だけで、授業をさぼって、上高地にいる。「俺たちは、愛し合っているんだよな?」「うふふ、今更、何を言っているの? 愛し合っているから、ここに、こうして、来たんでしょう?」「そりゃ、そうだけど、今でも、夢かな? なんて思うんだ。」「去年の今頃は、友達にもなっていないものね?」「そうだよな。いつだっけ、友達と一緒に、俺のクラスに来たの?」「う~ん、忘れちゃった。去年の9月頃じゃーなかった?」「そうだ、その頃だ。夏休みに、関根から、由樹枝と付き合っているのか? って聞かれていたからね。答えに窮していた頃だった。」「笹川さんの友達がしつっこくて、私は、寺本悠介さんと付き合っていると言ったでしょう? そしたら、本人に、確認すると言ったのよ。その後、何も言って来なくなったけど、どうなったのか、気になっていたの。」「聞いた、聞いた。あの時にね。俺もさ、何で、そんな話が出て来るのか、気になっていたよ。それで、全て合点したんだった。」===================================ネットを見ていたら、アメリカが、中国への「投資全面禁止」を決定、と言うニュースがありました。 驚きです。真意のほどは分かりませんが、もし、これが本当であれば、米中戦争勃発じゃーないですか? 怖いですねー。しかし、ほんとなんですかねー? 投資全面禁止、決定とあったのです。 信じられませんね。いくら何でも、こんな大変な事を、簡単に決めないでしょう。そうなったら、日本も、どうすべきか、大変な決断を求められます。何とか、仲良く出来ないものでしょうか? 同じ人間じゃーないですか?平和が一番良いですよ。
2020.05.06
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。写真はyahooより借用===================================「でも、勿体ないなー。トップクラスなら、T大でも行けるだろう?」「いや、分かりませんけど、無理したくないのです。」「そうか、いい大学に行きたい生徒は、羨ましがるだろうな。」その話をしていて、悠介は、実力試しに受験して見るかなー、と思った。受験勉強をしているが、それは、万が一の場合の為と、由樹枝の勉強の為である。推薦が決まったら、目標が一つ減る。受験費用は、大して高くないと聞いている。高くても、話をすれば、両親は費用を出してくれるであろう。「W大学でも、受験して見るか?」悠介は、又、一つの目標を得たような気分になった。上高地へ行く土曜日がやって来た。昭和45年10月24日だ。天気は快晴、全くの旅行日和である。8時半に長野駅で待ち合わせした。松本駅まで、電車で行く。由樹枝は、ベージュのスラックスに、タータンチェックのシャツ、その上に、白のVネックのセーターを着ている。軽快な服装である。ハイキングにぴったりだ。悠介は、普通のズボンに普通のシャツ、その上にセーターだ。自分でも垢抜けていないなー、と思うが仕方ない。同級生や、高校生は見当たらないので、二人で一緒に、電車に乗り込んだ。由樹枝はすぐに参考書を取り出した。世界史を持って来たようだ。悠介は、少し話をしたかったので、何だか、気抜けした感じであるが、同じく参考書をリュックサックから取り出した。リュックサックは、北海道の旅で使ったもので愛着がある。大きいので、何でも入るし便利である。30分程、走った頃、由樹枝が顔上げて行った。「2回目だね?」「え? 何?」「ほら、授業をさぼるの。」「あぁ、その事か。そうだな、あれは、4月だったか?」「そう、4月、菜の花、綺麗だったー。」「そうだ、あの時、初めて手を繋いで歩いた。」「おじいさんが歩いて来たのに、手を離さないのだもの。」「そうそう、仲良いなーって、言われたよね。儂も手を繋ぎたい、とか言った。」二人にとって、懐かしい思い出である。あの日から、急速に親しくなった二人であった。「そうだ、推薦決定、おめでとう!」「あぁ、ありがとう。予定通りだけど、決まって安心したよ。」「悠介の努力の結果ね。すごいよ。私には、推薦は無理。」「由樹は、バドミントンと両方、頑張って来たから、勉強が多少、遅れても仕方ないよ。俺は、1年から、推薦狙いでやって来たからね。普通に勉強しただけで、そんなに頑張っていないよ。」「それで、推薦取れるって、悠介は、頭良いよ。」「大した事ない。由樹と一緒の、今の方が、よっぽど勉強しているんだ。」「へぇ~、そうなの?」悠介は、実力試しに、来年、受験する事を由樹枝に話した。W大学を受けて見ると。その方が、今の勉強に身が入るし、やる気も持続するからである、と。そんな話をしていたら、勉強せずに、松本駅に着いてしまった。1時間位かかったであろうか? 電車を降りて、上高地行きのバス停に向かう。途中、弁当を買った。おにぎりにおかずが付いている簡単な弁当である。北海道の時は、パンに牛乳が定番であった。弁当を売っていた記憶がない。パンでも良いが、上高地は、おにぎりが似合うと思ったのである。北海道の旅でも、良くおにぎりは作って貰った。青空の下、木陰で食べたおにぎりは美味しかった。松本からバスに乗った。土曜日であるが、そんなに混んでいない。二人並んで、真ん中の辺りの座席に座った。「又、勉強して行こう。」悠介が言った。「そうね、向こうに着いたら、話しも出来るしね。」由樹枝は、参考書を取り出した。悠介は、英語の参考書を取り出した。英語は得意だった。勉強するのも好きだった。NHKのラジオ英会話は、ずっと続けている。実力試しに、外国人と話して見たいが、そのチャンスは、今までになかった。1時間半、バスに揺られながらも、ばっちり、勉強した。大正池に着いたのだ。バスは、上高地行きであるが、早めに降りて、歩く事にした。悠介が調べた通りである。バスの乗客も、半分位の人達が降りた。歩くようである。「良い天気だなー!。」「ほんと、真っ青な空! 綺麗ねー。」空を見上げて、二人で言った。===================================大雨が降った一昨日以降、チェンマイの大気は、きれいになり、気温も下がって、ほんと、清々しい朝で、気持ち良いです。遠く、チェンダオの山々も、くっきり見えます。今日、タイ政府から、コロナ対策に関して発表がありますが、エアコンのないレストランや食堂は、閉鎖が解除されると言う噂もあります。アルコールの販売禁止解除と、レストランの解禁は、自粛生活に大きな幅が出ますので、有難いですね。チェンマイは、19日間感染者ゼロですから、ある程度、解除しても良いと思うのですが、如何でしょうか?
2020.04.28
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。写真はyahooより借用===================================試験の前に、日帰りで故郷の池田町に帰って来た。お金を借りる為である。母親は、必要なお金だろうから、あげると言ってくれた。しかし、友人と卒業旅行と嘘を言っている後ろめたさがあり、素直に貰えない。そのお金は、大学に入ったら、返却する事にした。その代わり、東京へアパートなどの見学に行くお金は出して貰う事で了解して貰った。上高地の宿については、中間試験中であるが、旅行社に出かけて、予約して貰った。そこで、支払いもした。これで、全て準備完了である。上高地の夜が楽しみで、わくわくして来る。由樹枝は、この事に関して、多くは語らない。既に覚悟は決めているはずである。ずいぶん前から話して来たことなのだ。今更、嫌と言うはずがない。悠介は、既に経験済みなので、自信を持っている。帯広での出来事がなかったならば、もっと、不安があったかも知れない。裕子に話した時も、経験をした方が良いと言われたのである。確かに、その通りだと、今になって悠介は、そう思う。中間試験の終わった週の日曜日、予定通り、由樹枝の家に行った。「どうだった? 試験は?」「うん、かなり出来たと思う。」「そうか、良かったな。頑張った甲斐があったね。」「そうね、勉強の効率が良くなって来たみたい。」「悠介は、どうなの?」「俺は、あんまり良くなかったね、たぶん。気が乗らなかった。」「そう? 珍しいんじゃーないの?」「そうだな、この試験は、推薦と関係ないからね。」悠介は、由樹枝から、試験の結果が良かったようだと聞いて嬉しくなった。受験勉強は一緒にやっているが、中間試験は、由樹枝が独力で行っている。しかも、受験勉強の合間の勉強であったのである。これで、少しは気を抜く事が出来て、上高地に行けるはずである。この日は、気分を変えて、受験勉強である。由樹枝の不得意と言う数学をやっている。勉強に疲れたら、手を握り合い、キスしたり、身体を撫で合ったりする。そして、又、勉強に集中する。良いリズムである。由樹枝も集中力がある。分からない所は、悠介に聞いてくるが、それ以外は、集中して、参考書に線を引いたり、ノートに書いたりしている。その日の昼食は、カレーライスであった。家族で仲良くおしゃべりしながらの食事である。「あのね、中間試験終わったし、みんなで、一泊で、上高地へ行く事になった。」由樹枝が突然、話し出した。「今の時期しか、行けないから、私も行って良い?」まだ、由樹枝は、両親の了解を得ていなかったのである。「そうか、上高地か。今は、紅葉が始まって、綺麗だろう。」父親は、好意的に話を聞いている。「これから、受験勉強が忙しくなるから、これを逃したら、友達と行けない。」「良いんじゃーない、毎日、一所懸命勉強しているんだから、息抜きは必要よ。」母親が、許可を出した。「そうだな。記念になるしな。」父親も、OKである。悠介は、どうなる事かと、どきどきしながら聞いていたが、結果に満足した。「悠介君も行くのか?」急に、話しを振られて焦った。一瞬の判断で、行かないと言う事に決めた。「いえ、僕は行かないです。初めて聞きました。」「そうよ、同級生と行くから、悠介は関係ない。」由樹枝も合わせて、そのように答えた。一緒に宿泊で旅行に行くと言ったら、両親に、余分な心配をかけるであろう。悠介は、冷や汗をかくようであったが、何とか、ばれずに、別の話題に移った。旅行の費用は、両親が出してくれることになったので、悠介の負担は減った。二人分支払うつもりでお金は準備したが、何か、又、別の入用があるであろう。「ご馳走様でした。」「いいえ、お茶を淹れるね。」「悠介君、受験の方はどうなの?」父親が聞いた。「はい、もうじき、推薦が決まると思います。」「推薦で行くの?」「はい、そのつもりで、ずっと勉強して来ました。」「悠介は、優秀なのよ。学年でもトップクラスなんだから。」「へぇ~、凄いなー、トップクラスだったら、どこの大学でも行ける。」「でも、M大学に決めているのです。」===================================
2020.04.21
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。写真はyahooより借用===================================「なぁ、推薦が決まったら、上高地に行かないか?」「え? 上高地? どうして?」「ほら、俺たちの記念旅行だよ。」「旅行? 泊まるの?」「そう、1泊で行こうよ。」「勉強は? 1泊で行ったら、2日は勉強できない。遅れるよ。」「一生に一度だ。俺は由樹枝と一緒に行きたい。」「でも・・・。」「勉強が心配なら、参考書も持って行こう、電車でも、バスでも移動中は勉強できる。宿に着いたって、勉強も出来るよ。」由樹枝は、勉強の事を心配している。悠介の立てたスケジュールに基づいて勉強しているが、かなり頑張って、ようやく追いついている程度である。中間試験の勉強もあり、その間は、丸々、スケジュールは遅れる。今、丁度、中間試験の勉強を始める所だったのである。悠介は、何とか由樹枝を説得した。先生からも、参考書の勉強は来年からが良いと言われていたし、来年の3月までに、必ずしも完璧に完了する必要はない。予習のような気持ちで取り組めばいいのだ、と。悠介は、2日間は、勉強や家族、友人の事も忘れて、由樹枝と二人だけの世界に浸りたいと思っている。しかし、由樹枝の心配を少しでも取り除く為、参考書は持って行く事にした。由樹枝の同意を取り付けた悠介は、具体的な計画を立てるべく、勉強の合間を見つけて、本屋に行って、ガイドブックなどを読み漁った。宿に泊まるだけでなく、上高地をハイキングした方が良いことが分かった。早めにバスを降りて、大正池辺りを歩く。宿にチェックイン後、河童橋から湿原や、梓川を見ながら、明神池を見て、明神橋を渡って帰って来るコースを歩く。2時間位で歩けそうである。この通りに行く為には、土曜日学校が終わってからでは、夕方遅くなり過ぎる。翌日の日曜日は、宿でゆっくりしたい。日曜日に歩きたくはない。それで、由樹枝に又、反対されそうであるが、土曜日はさぼったらどうかと悠介は思う。一生に一度である、と、悠介は、そう強く思うのである。もし、由樹枝が強く反対するならば、土曜日は移動だけで宿泊、翌日の日曜日にハイキングにしても良いと、考える。それは、後で相談する事にして、宿を調べた。上高地の宿は高い。悠介の小遣いだけでは不足する事が分かった。「困ったな、どうしよう?」悠介は思案した。「どうするかなー? 今からバイトでは間に合わない。」考えた末、母親に借りる事にした。理由は、卒業旅行に行くが、お金が不足する、大学に入ったらバイトして返す。これで、何とか借りられるはずである。日程は、大学の推薦が決まる10月中旬以降、そして、同時期に終わる中間試験の後、10月20日の週の土日が最も好ましい。紅葉も最高の時期であるのだ。これで、決定である。後は、由樹枝に相談し、了解をとって、宿の予約する。一度、池田町に帰って母親から、お金を借りる。その前に、電話か手紙で、母親に依頼をせねばならない。これだけを、決めると、悠介の心はすっきりした。悠介の受験勉強は順調である。ほとんどの時間を勉強に費やしている。スケジュールより、かなり早く進んでいる。悩みは何もない。M大学付近のアパートの事に関して、急に思い出した。然別湖を案内してくれた、お兄さん、山本さんから、手紙の返事を貰っていたのである。紹介してくれるアパートに、丁度4年生がおり、悠介が入学する前に卒業する。その部屋を借りたらどうかとの事である。その学生は、橋本さんと言うが、一度、アパートを訪ねて、話しを聞いたらどうかとの、山本からの親切な手紙である。山本さんから、橋本さんには、既に概略を説明してあるとの事、素早い山本さんのアクションに感謝である。遅れてはならじと、早速、橋本に手紙を書いた。12月頃、東京へ行きたいと書いた。手紙のやり取りをして、現地に行くには、その頃が良いであろうと考えたのである。早めにアパートを見て、ついでに大学も見て来れば、安心出来る。そんな事で、10月第一週も慌ただしく過ぎ去った。もう来週から、中間試験が始まる。悠介は余裕であるが、由樹枝は必至だ。勉強で焦っているだろうが、上高地行きは、土曜日、授業をさぼって行く事を了解した。考える余裕がないのかも知れない。悠介の熱意に負けたのかも知れない。中間試験に集中して貰う為、試験が終わるまで、会わない事にした。===================================
2020.04.16
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。写真はyahooより借用===================================北海道の写真が出来上がって来た。1枚1枚、鮮明な光景が思い出と共に蘇える。改めて、北海道へ行って良かったと思う。アルバムは買ってあったので、出発から順番に貼り付けた。1ページに6枚は貼れるが、2枚か3枚にした。その空きスペースに、旅の記録を書くのである。楽しい作業だ。勉強は休みにして、その作業に没頭した。絵葉書も買ったものがある。それも、写真と共に、アルバムに貼った。裕子の写真もあった。裕子と二人で撮った写真もあった。然別湖へ出発前に撮ったものだ。「懐かしいなー、どうしているかなー?」、何とも言えない、胸の疼きを覚えながら、アルバムに貼った。久子に明子の写真はない。昼間会った事がないからである。久子と明子の顔を忘れてしまいそうで、悠介は焦った。写真を撮っておけば良かったなー、と思った。アルバム作成作業は、思ったより時間がかかったが、楽しい作業であった。写真を見ながら、その日の出来事をアルバムに書く。「よし、これで良いか。」出来上がったアルバムの表紙に、「北海道の思い出」と、大きな字で書いた。悠介は、完璧であると、満足した。由樹枝に見せたいと思った。暫く貸しておけば、勉強に疲れた時にでも、見て貰えるであろう。その後は、池田町の実家に持って帰り、姉や父母に見て貰う事にした。学校の授業も順調である。由樹枝との勉強も順調に進んでいる。勉強、勉強の毎日であるが、飽きる事はない。試験がある訳でもなく、余裕のある勉強であるからかも知れない。復習的な勉強であるからかも知れない。何の不安も心配もない9月中旬を過ぎた頃、先生に呼ばれた。「寺本、そろそろ、推薦大学の、希望の書類を出してくれ。」そう言われて、数枚のコピーを渡された。「一応、第2志望校も書いておいてくれ。」「第1志望は、通りそうもないですか?」「いや、そう言う事でないが、書く事になっているからな。」悠介は、推薦の可能性に関して、先生に確認した。悠介の過去の、評定平均は、4.6との事である。希望のM大学は、評定平均4.3以上を要望している。従って、大学の要求は問題なくクリアしている。問題は、悠介以上の評価平均点を取っている生徒が、推薦を希望して来た場合である。先生の話に寄れば、悠介以上の評価点を取っている推薦希望の生徒もいる。しかし、彼の推薦希望大学は、W大学や、K大学であり、M大学と競合しないとの事であった。従って、M大学であれば、ほぼ、推薦は確定であるとの事である。もう一つ、評定平均4.6あるので、W大学、K大学の推薦入学の基準もクリアしていると言う。そちらに行く気はないか? とも聞かれた。悠介は、M大学1本で良いと答えた。いい大学に行って、中位にいるか、一段落として、上位にいるか、後者を選びたいのであった。又、M大学の就職率は、他大学に比べて、格段に良いのである。先生との面談を終えて、悠介はほっと一息ついた。しかし、この結果は、予想通りであるが、結論が出て見ないと、本当に喜べない。姉の言う通り、万が一の事も考慮し、受験勉強を続けるつもりである。由樹枝も進路相談して来た。悠介の買った参考書、スケジュールを持って、説明をしたところ、その通りやれば、完璧である旨、先生のお墨付きを得たと言う。しかし、その勉強は、3年生になってからが授業との進行上、好ましいと言われたようだ。確かに、まだ習っていない所も出て来るのである。由樹枝の勉強の進行に合わせて、そこは、柔軟に対応する事にした。あと、1ヶ月、推薦の結果が出る。その後、由樹枝と深い仲になるのだ。胸が膨らむ。どう言う事になるのか、わくわくする。悠介は考えた。どこでするか?由樹枝の部屋では、家族が気になる。平日の昼であれば、誰もいないが、集中出来るか心配がある。自分の部屋、即ち、叔母の家の方がもっと心配だ。今まで由樹枝を連れて行った事がない。この一件は、二人にとって、もっとも記念すべき思い出になる。そうしなければならない。悠介は、考えた末、上高地に1泊で行く事にしようと思った。丁度紅葉が見ごろの時期のはずである。いい考えだ、と悠介は、自分を誉めたくなった。その一夜を想像すると、ぼぉーっとしてしまう事がある。悠介は、そんな時、勉強に集中するべく、気持ちを引き締めた。二人で勉強して、目標に向かって進む事が、二人の愛情を、さらに育むことであると信じているのである。10月に入った。上高地行きの件を具体化せねばならない。由樹枝に話した。===================================
2020.04.13
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行する。写真はyahooより借用===================================バドミントンを止めようかと言うことは聞いていた。悠介の記憶に残っている。理由は、今、由樹枝が言った通りである。それに、バドミントンの腕も上がらない事もあったようだ。国体出場を諦めるのは可哀そうであるが、確かに、学校の勉強に受験勉強だけで、余裕はなくなるであろう。今までも、由樹枝はかなり頑張って、勉強時間を作って来た。しかしながら、悠介のように、推薦で大学へ入れる成績には、少し足りないようである。今から、推薦狙いでは遅いが、両睨みで頑張っても構わない。「じゃー、ざっと、参考書を見て見る? 社会は、世界史にしたよ。」「うん、日本史より、世界史を勉強したい。楽しみながら勉強出来るよ。」「世界史は、範囲が広いから、時間をかけないとね。」「いいよ、世界地図見ながら、想像も膨らませて、勉強できるよ。」「いいな、そう言う考え。楽しみながらやるのが一番だ。俺は、そんな風に楽しみながら出来ないなー。ぎちぎちだよ。」「何? ぎちぎちって?」「何て言うかなー? 余裕がないって言ったら良いのかなー? でも、これから由樹と勉強するのは、受験じゃーないから、気楽だ。」「良いなー、悠介は。それって、余裕だらけだよ。」「1学期の期末試験までは、余裕なかったよ。一生懸命だったからね。」「そうか、頑張ったから、推薦勝ち取れるんだ。偉いよ、悠介。」スケジュール表と、参考書を捲るだけで、午前中は終わった。由樹枝も全容が掴めたはずである。その時、由樹枝の母親が、「昼食よ」、と呼びに来た。由樹枝の家族と一緒に昼食を食べるようである。悠介は緊張した。「どうぞ。」母親から言われた。「すいません、ご馳走になります。」「どう、勉強の方は?」父親から聞かれた。「ええ、来年の3月までの、勉強のスケジュールや、内容について見ました。」「悠介が、全部準備してくれたので、分かり易い。何とか、やって行けそうよ。」「そうか、それは良かった。」父母が声を揃えて安心の声をあげた。昼食は、信州ソバであった。長野市は、信州ソバの本場である。街中にも、100軒以上の蕎麦屋さんがあると言う。日本三大そばの一つに数えられる戸隠そばも、長野市から、すぐ近くである。悠介も、子供の頃から、信州そばを食べて来た。由樹枝のお母さんが打ったそば、美味しかった。悠介の母が作る蕎麦と、ちょっと味が違うと感じたが、それは、タレの違いのようである。どちらも美味しかった。「沢山、食べてね、一杯作ったから。」お母さんが進めてくれる。「君は、日本三大そばは、どこか知っているかね?」お父さんが聞いた。「いや、すみません、知らないです。」「一つは、ここの地元戸隠そば、それから、岩手県のわんこそば、そして。島根県の出雲そば、が、その3つとされているんだ。」「はぁ、そうですか。どれも、食べてないです。」「戸隠そば、美味しいよ、悠介、食べた事ないの?」「うん、食べた事ないなー。」「池田町からは遠いものね。ここからだと、すぐ近くよ。」そばを食べながら、そば談議が続いた。お父さんや、お母さんが、話してくれるし、由樹枝も話すので、悠介は、緊張を解いて、ゆっくりと食べながら、話題に入る事が出来た。由樹枝の部屋へ戻った。机に座ると、目の前の棚の上に、木彫りの熊が置いてあった。いつの間に、持って来たのであろうか? 午前中はなかったはずだ。由樹枝が、熊を持ち上げて、笑顔を見せながら、熊の足の裏を見せた。「知らなかったよ。」「あぁ、これか。」右足の裏に、「由樹枝へ」、左足の裏に、「悠介より」、と書いてあるのだ。アイヌ部落の女将さんに書いて貰ったものである。「びっくりした。嬉しいよ、これ。宝物だなー。」由樹枝が目を輝かせて言った。土産を渡す時、文字を書いてあると説明はしなかった。なので、由樹枝も知らなかったのであろう。見つけた時の喜びを想像して、そして、喜ぶ、笑顔を見て、悠介も、心が躍った。午後は、英語から始めた。お互いに参考書を持っているので、別々に勉強だ。17時までみっちり勉強した。それから、今後は、水曜の午後と、日曜日に悠介が由樹枝の家に来て、分からない所を、読み合う、若しくは、悠介が教える事にした。毎日、一緒に勉強しても、進みが遅い。月曜、火曜、木曜、金曜、土曜は、別々に集中して、勉強する事にしたのである。===================================
2020.04.10
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あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行する。写真はyahooより借用===================================「北海道に行って来たんだよ。」「え? 北海道? 勉強しなかったんか?」「勉強? しなかったよ。ヒッチハイクの無銭旅行だからね。」悠介は。一躍、クラスの注目の的である。あちこちから、質問が飛んだ。勉強に集中して来た彼らの夏休みに、北海道を無銭旅行なんて、クラスメートには、信じられなかったのであろう。「これから、受験勉強するんだ。参考書とか、教えてくれ!」「今から、おせぇよ。」「やるんだよ。文系志望は誰だっけ? 明青立法中を目指しているのは?」クラス上位の3人が、該当し、勉強しているのが分かった。丁度、その時、先生がクラスに入って来たので、話しは中止、後で、3人に詳しく聞く事にした。昼休みと放課後、詳しい話しを聞き、参考書の表題もメモした。大体、悠介の想像通りであり。由樹枝と話した内容で進めれば良いことが分かった。悠介の行動は早い。その日に学校の図書館へ行き、参考書を調べ、ざっと中身も見た。目新しいものはない。悠介が勉強して来た内容がほとんどである。悠介は特別に受験勉強はして来なかった。推薦を得る為、学校の勉強と、その試験に集中して来た。それが、そのまま受験勉強に繋がっているようである。さすが進学校である。学校の勉強をしていれば、それが、受験勉強になったのである。悠介は自信を持った。推薦でなくても、合格するのではないか、とも思った。姉さんの杞憂である。悠介は、由樹枝に教えながら、勉強をし直そうと思った。このまま半年間を無為に過ごしていたら、大学に入ってからもよろしくない。高校生活の目標が出来た。由樹枝に会う口実も出来た。これまでも、勉強を教えて来たので、由樹枝の家に行く後ろめたさはないが、目標を正確に定めて勉強する方が、より良いはずである。その週に参考書を買った。英語を1冊、国語は総合を1冊、それに世界史を1冊、さらに、由樹枝の希望で、数学を1冊、4冊を、2セット買った。全部で8冊なので、お金も馬鹿にならない。しかし、勿体ないとは全く思わなかった。北海道のバイトのお金が残っており、先月と今月の小遣いも貰った。さらに、何かあったら使えと、北海道の旅に出る前、ジーパンの裾に縫い付けてくれた、1万円も、母から使って良いと貰った。小遣いは潤沢である。由樹枝の喜ぶ顔が早く見たかった。参考書を家に持ち帰り、7カ月間で、どのように勉強するか、時間割表を作った。1週間に2冊、2週間で4冊、これを繰り返して、7ヶ月で完了させるスケジュールとした。1日、20ページほど勉強しなければならないので、かなりハードである。悠介は、スケジュール通り、終わらなくても、何ら問題はない。高校生活の復習である。由樹枝は、学校の勉強と並行して勉強なので、厳しいかも知れない。スケジュール通り、終わらなければ、見直せばいい、由樹枝は、さらに1年間あるのだ。日曜日、悠介は、由樹枝の家に出かけた。由樹枝の父親に初めて会った。「お早うございます。寺本です。」「あぁ、話しは聞いている。由樹枝の父です。」「よろしく、お願いします。」「いや、由樹枝に勉強を教えてくれてありがとう。これから、受験勉強の支援をしてくれるそうだね?」「はい、僕も勉強中ですから、分からない所も多いですけど、頑張ります。」「よろしく、頼むよ。」挨拶は、スムースだった。母親は、出かけていた。後で、きちんと挨拶をする予定である。由樹枝は、母親に似ているようである。父親は、身体も大きく貫禄がある。悠介は圧倒されるようであった。しかし、貫禄がある中に、ゆったりした優しさが垣間見られる。厳しい顔ではなかった。由樹枝に、勉強スケジュールと、参考書を渡した。「わぁ、凄い! スケジュールを作ってくれたの? さすが悠介。凄い!」「この通り、進められれば、来年の3月に、一応、完了するよ。」「出来るかなー?」「厳しいかもしれないけど、由樹は、まだ、習っていない所もあるから、そこは、飛ばしても良いね。」「わたし、バドミントン止める。受験勉強に集中しようと思うの。」「そうか、国体は諦めるの?」「うん、二つは出来ないよ。大学に入れたら、又、始めようと思うの。」由樹枝の受験勉強に対する意欲を感じて、悠介も、頑張らねばと思った。===================================4月11日から17日までの1週間、24時間外出禁止令が出ると言う情報が昨日、流れました。情報源、発信者が誰なのか、確認は出来ませんでしたが、信ぴょう性のある情報だと言う事なのです。1週間、外出出来ないとなると、まず、食料であります。米、味噌は、在庫があります。ビール、ウィスキーも、在庫があります。気分は慌てています。スーパーへ走り、インスタントラーメン、スパゲッティ、ソーセージなど、長持ちしそうな食料を買いました。納豆も買いました。冷凍出来る豚肉も、買いました。スーパーは、いつもに比べて、3倍位の客で溢れていましたから、24時間外出禁止令の情報を知って買い出しに来たのでしょう。問題は、野菜や果物ですね。これらは、買い溜め出来ません。本当に、24時間外出禁止令が出るのでしょうか?外食、買食で、3食を食べている人が大半のタイ人は、非常に困るでしょう。少なくとも、スーパー、市場の生鮮食品は、買えるようにしてくれないと大混乱になりますよね。
2020.04.07
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