PR
Keyword Search
Freepage List
●日本政策研究センター=伊藤哲夫の主張
伊藤哲夫が代表を務める「日本政策研究センター」は、日本会議のようにデモや署名集めなどの市民運動を展開したり、議員懇談会を作って議会や内閣に圧力をかけたりするような動きを見せるわけではない。そのため、一般のメディアでの報道や分析記事で、この「日本政策研究センター」の名前が登場する事例は、これまでもほぼない。しかしながら、すでにふれたように、安倍晋三の周りに常に付き添い、安倍政権の隠然たる影響力を行使していることは事実だ。
日本政策研究センターが何を主張し、どのような活動を重ねてきたのかについては、同センターの機関紙『明日への選択』 2004 年 5 月号で、代表の伊藤哲夫本人が「この二十年、われらは何を主張してきたのか」という小論を発表し丁寧な解説を加えている。
この小論の中で、伊藤は、「とりわけ『国家の精神的基礎』ということに焦点を当てた研究を行い、そこから政策提言を、というのがそのころのわれわれが描いた当面の目標であった」と、 984 年に「日本政策研究センター」が設立された当時の目標を振り返っている。そしてこの目標のもと、伊藤及び同センターは、「いずれ訪れるであろう『昭和最後の日』」とそれに伴い必然的に発生する皇位継承の在り方に問題意識を持つようになったのだという。「(皇位継承を)電燈の神道的儀式そのままに維持できるかどうかは、まさに日本国家の基本的な在りように関わる本質的な問題」であるとの認識のもと、大嘗祭問題や憲法改正問題に正面から取り組むようになったと、伊藤は昭和と平成のはざまで行った自分たちの運動を回顧している。
その後、「ポスト冷戦という『混沌』の中で、おとうや日本政策研究センターの主張は「文化の問題、歴史認識の問題」に軸足を置いたものになっていく。「 PKO への参加、歴史認識、ポスト冷戦論、コメ開放、アメリカニズムへの対峙などの論陣」を張ったもの、この頃の運動には自信がないようである。「国中が世界の問題から眼をそらされ、選挙制度を変えれば日本は変わる——といったレベルのわけの分からない自称『改革論議』にわれを忘れ」たような世間の風潮から、伊藤たちの主張は顧みられることは少なかったのだ。
しかし、そんな伊藤周辺にも転機が訪れる。細川内閣の誕生だ。伊藤たちの認識では、この頃から「中韓の反日論が明確な形を取り始め、これにクリントンのアメリカが連携するといった構図が生じ始め」ており、一方、「世界の左翼勢力」が「国家主権の相対化だの、共通の歴史認識だの、子供の人権や女性差別の撤廃だのといったスローガンを唱えつつ」、「国際的な運動を開始し始めていた」のだという。そして、その路線が国内に伝播し、細川首相による『戦争への反省』「過去の清算」という「一連の大合唱」につながり、「捕手がリベラル路線に一方的にのせられていくという一連の国内政策」は開始されたのだと分析している。
そのため彼らは 「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」 の 4 点に集中するようになったのだ。さらに「近年」(この小論が発表された 2004 年当時)は、これら 4 つの論点を、「次から次へとダラダラとモグラたたきのように生起する左翼勢力の仕掛けに、受動的、後追い的に振り回されているのではなく、むしろこちらから構成的に戦いを仕掛けるべき時に来ているのではないか」という認識のもと、「保守革命」というテーゼに集約させるようになったのだと伊藤は書いている。
これらの小論が発表されたのは、 2004 年、前節で触れた、伊藤哲夫と安倍晋三の対談のわずか 5 カ月前だ。
とえうると、「チャンネル桜」の対談記事の中で、伊藤が安倍を「保守革命を担うリーダーこそが安倍幹事長でなくてはならない」と褒め上げた箇所に出てくる「保守革命」とは、つまるところ、伊藤哲夫率いる日本政策研究センターの論点である、「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」だと考えるのが自然だろう。
こうしてみると、安倍政管が、安保法制のみならず捕手を通り越して「反動」の色彩を強めていくのも頷ける。また、米・カリフォルニア州のグレンデール氏が設置した従軍慰安婦像に関して像の撤去を求めて訴訟を起こしている、いわゆる「グレンデール慰安婦像裁判」の原告団と、政府が「緊密に連携を取っている」と、菅官房長官が異例の言及を行った背景が理解できる。
つまり、「保守革命」なる者の具体的項目である 「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」 の 4 点は、安倍内閣の「メインテーマ」でもあるということだ。で、あればこそ、たかだか海外の訴訟原告にしか過ぎないものに対し、政府が「緊密に連携を取っている」と堂々と表明するのであり、「女性が輝く」「 Shine 」などという意味不明なあいまいな言葉を多用してお茶を濁し、「男女共同参画」や「女性差別撤廃」という本質から目を背け続けているのだ。
【日本会議の研究】菅野完著/扶桑社新書
「ハイリスク」という快感——ギャンブルへ… November 6, 2025
アルコール依存症が起こる仕組み November 5, 2025
次の行動企画に心を湧き立たせる November 5, 2025
Calendar
Comments