浅きを去って深きに就く

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Freepage List

April 25, 2025
XML
カテゴリ: 医学

自由診療を憂慮する学会声明も

科学文明論研究者  橳島 次郎

脳の操作の臨床応用㊤

今年 4 月、日本児童青年精神医学会が、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)両方を未成年者の精神疾患や発達障害の治療に使うのは「非倫理的を伴う」とする声明を発表した。

大きな電磁コイルを頭のすぐ近くにかざし、磁場による刺激で脳の神経活動に変化を与えると、精神神経疾患に対し治療効果が得られるとされる。標準的な手順では、 1 回約 40 分の磁気刺激を1週間で最多5回、最長6週間程度、外来通院で受ける。これがrTMS療法である。

この治療法は、日本では 2019 年から、成人の難治性うつ病に用いることが保険診療として認められている。だが子どもへの実施は認められていない。発達障害への適用も、研究は行われているが、まだ認められていない。

しかし一部のクリニックで、保険外の自由診療として施術しているところがある。学会の生命は、そうした医学的根拠の乏しい脳の操作が高額の診療費をとって行われている事態を憂慮して出されたものだ。

近年、脳の神経活動に時期や電機の刺激を加えて精神疾患を治療しようとする試みが盛んになっている。これらを総称して「ニューロモヂュレーション(脳神経調節)」という。rTMS療法はうつ病患者の他に、米国では強迫性障害への適用も認められた。頭に取り付けた装置で電流を流す経頭蓋直流電気刺激(t DCS )両方もあり、うつ病などへの適用が研究されている。

ニューロモヂュレーションの精神疾患治療への適応は、 1990 年代に研究が始まったばかりの新興の技術で、rTMS療法は痛みやけいれんなどの副作用が起こることもある。だが侵襲を伴わずに実施でき患者の負担が少ないので、期待は大きい。

しかしニューロモヂュレーションには、留意しなければならない独特の事情がある。精神科医療では過去に、脳に外科手術を施して統合失調症などの治療を試み、多くの害をもたらしたことがあった。悪名高いロボトミーに代表される「精神外科」である。この負の歴史が影を落とし、ニューロモヂュレーションも同じような害をもたらす恐れがあると受け取られるのではないかとの懸念が、関係者の間に根強くある。

では、精神外科とはどんなものだったのか。それは現在のニューロモヂュレーションにつなふぁりや影響があるのか。次回、脳に手を加える精神科医療の歴史的経緯を詳しく見ることで、脳神経活動を操作する先端技術がもつ倫理的問題を正しく知るように努めてみたい。

先端技術 は何をもたらすか— 21 —】聖教新聞 2024.5.21






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  April 25, 2025 09:13:56 PMコメント(0) | コメントを書く
[医学] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

聖書預言@ Re:池上兄弟とその妻たちへの日蓮の教え(10/14) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
背番号のないエースG @ 関東大震災 「福田村事件」に、上記の内容について記…
とりと@ Re:問われる生殖医療への応用の可否(04/03) 面白い記事なんですが、誤字が気になる。
とりと@ Re:●日本政策研究センター=伊藤哲夫の主張(03/21) いつも興味深い文献をご紹介いただき、あ…
三土明笑@ Re:間違いだらけの靖国論議(11/26) 中野先生の書評をこうして広めていただけ…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: