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自由診療を憂慮する学会声明も
科学文明論研究者 橳島 次郎
脳の操作の臨床応用㊤
今年 4 月、日本児童青年精神医学会が、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)両方を未成年者の精神疾患や発達障害の治療に使うのは「非倫理的を伴う」とする声明を発表した。
大きな電磁コイルを頭のすぐ近くにかざし、磁場による刺激で脳の神経活動に変化を与えると、精神神経疾患に対し治療効果が得られるとされる。標準的な手順では、 1 回約 40 分の磁気刺激を1週間で最多5回、最長6週間程度、外来通院で受ける。これがrTMS療法である。
この治療法は、日本では 2019 年から、成人の難治性うつ病に用いることが保険診療として認められている。だが子どもへの実施は認められていない。発達障害への適用も、研究は行われているが、まだ認められていない。
しかし一部のクリニックで、保険外の自由診療として施術しているところがある。学会の生命は、そうした医学的根拠の乏しい脳の操作が高額の診療費をとって行われている事態を憂慮して出されたものだ。
近年、脳の神経活動に時期や電機の刺激を加えて精神疾患を治療しようとする試みが盛んになっている。これらを総称して「ニューロモヂュレーション(脳神経調節)」という。rTMS療法はうつ病患者の他に、米国では強迫性障害への適用も認められた。頭に取り付けた装置で電流を流す経頭蓋直流電気刺激(t DCS )両方もあり、うつ病などへの適用が研究されている。
ニューロモヂュレーションの精神疾患治療への適応は、 1990 年代に研究が始まったばかりの新興の技術で、rTMS療法は痛みやけいれんなどの副作用が起こることもある。だが侵襲を伴わずに実施でき患者の負担が少ないので、期待は大きい。
しかしニューロモヂュレーションには、留意しなければならない独特の事情がある。精神科医療では過去に、脳に外科手術を施して統合失調症などの治療を試み、多くの害をもたらしたことがあった。悪名高いロボトミーに代表される「精神外科」である。この負の歴史が影を落とし、ニューロモヂュレーションも同じような害をもたらす恐れがあると受け取られるのではないかとの懸念が、関係者の間に根強くある。
では、精神外科とはどんなものだったのか。それは現在のニューロモヂュレーションにつなふぁりや影響があるのか。次回、脳に手を加える精神科医療の歴史的経緯を詳しく見ることで、脳神経活動を操作する先端技術がもつ倫理的問題を正しく知るように努めてみたい。
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