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ナノヘルツ重力波とは
浅田 秀樹(弘前大学教授)
巨大ブラックホールか
宇宙誕生時の名残か
同じような重力波ではない
昨年6月、アメリカで研究チーム・ナノグラブが「ナノヘルツ重力波」の存在証拠を見つけたと発表しました。
ナノというのは、10のマイナス 9 乗( 10 億分の 1 )の大きさ。 1 ヘルツが 1 秒間に 1 回振動する波を指すので、ナノヘルツ重力波は 1 秒間に 10 憶分の 1 回しか振動しない重力波になります。桁数が大きくなりすぎてわかりにくいかもしれませんが、 1 回振動するのに 10 億秒、約 30 年かかることになります。
重力波自体は、 2015 年に研究チーム・ライゴが初顕出に成功しました。しかし、この時の重力波とは全く意味合いが違います。ライゴが検出した重力波は 1 秒間にも満たない短いものでした。
このような重力波は、ブラックホールの合体によって生じたとされています。
今回の重力波な、銀河の中心にあるような巨大ブラックホールの衝突によるもの、もしくは宇宙誕生時のインフレーションの痕跡ではないかと考えられています。いずれにしても、重力波研究が新たな段階に進んだことを知ってもらいたく、近著『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学」(ブルーバックス)を出しました。
時空の歪みが遠くまで伝わる
アイシュタインは一般相対性理論で、重力は時空の歪みだと予想しました。
空間が曲がっているイメージは、よくゴムシートに例えられます。ぴんと張ったゴムシートの上に物をのせると、沈み込みます。重いものほど沈み込みが大きく、これが空間の曲がりが大きい状態になります。
実際に空間が曲がっている証言として、重力レンズという現象があります。遠くの星を観測した時に、手前にある重力減によって光が曲げられ、実際の星の位置と違う場所に見える現象です。
ブラックホールは曲がりが大きく、一定の距離まで近づいてしまうと、そこから光さえ抜け出せなくなります。
ゴムシートに重力減が一つだけなら、沈み込んだままです。しかし二つになるとどうなるでしょうか。うまく調整すると連星のように互いの周りをぐるぐる回るようになります。この時、ゴムシートは波のように揺れます。この波が遠くまで伝わっていくのが重力波なのです。
今回、ナノヘルツ重力波の顕出に使用されたのは、パルタータイミングアレイという方法。パルサーは非常に正確に電波を発信している天体です。その正確さというのは、原子時計よりも誤差が少なく、 14 桁とか 15 桁の制度。この感覚をはかることで時空の歪みを捉えようというのです。
重力波があると、電波の感覚が揺らいでいるように見えます。このデータを解析することで、値のヘルツ重力波の存在を確認したのです。
新たな観測方法に応用可能
重力波の顕出という意味では以前と同じなのですが、実はひとくくりにできない成果です。
一つは、巨大ブラックホールが互いに好転している現象。ライゴで検出されたのが、ブラックホール同士の衝突による重力波だったので、同じように、もっと巨大なブラックホール同士が衝突しようとして、互いの周りを公転しているのではないかというのです。
銀河の中心にあると考えられる大要質量の数億倍という居談ブラックホールが、数万光年の距離で互いに好転するとき、公転周期が数年になり、同じような重力波になると考えられています。
もうひとつの可能性は、インフレーションの痕跡です。
無質の源である元素は、ビッグバンよりも以前に、宇宙が急激な膨張をして時空が漁師的に振動するというのが「インフレーション仮説」です。この重力波を計算すると、非常に長い波長になるのです。
また、今後、重力波を使った新たな観測方法も期待されています。例えば、超新星爆発の内部では何が起きているのか。重力波であれば爆発時の放出物に遮られないで、観測できるようになるかもしれません。
ナノヘルツ重力波の原因とともに、新たな観測方法にも期待したいものです。
=談
あさだ・ひでき 1968 年、京都府生まれ。弘前大学理工学研究科 宇宙物理学研究センター長・教授。専門分野は一般相対性理論、重力理論、理論宇宙物理学。著者に『宇宙はいかに始まったのか』『三体問題』(ともにブルーバックス)がある。
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