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September 5, 2025
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カテゴリ: 社会

団塊の世代が 75 歳以上に——

介護「 2025 年問題」 にどう対応

淑徳大学  結城 康博教授に聞く

ゆうき・やすひろ 1969 年生まれ。淑徳大学卒、法政大学大学院修了。政治学博士。研究分野は社会保障論、社会福祉学。ケアマネ―ジャーなどを経て現職。著書に『介護格差』(岩波新書)など。

要介護者 急増の可能性

人手不足で支援届かぬ恐れ

現場の実態

——介護を巡る現状は

結城康博教授  今年 8 月時点で介護が必要な要介護・要支援の認定者数は約 718 万人に上っており、 65 歳以上に占める割合は約 20 %だ。統計的に 75 79 歳と比較すると倍以上に高まる。人口の構成上、一番多い団塊世代が全員 75 歳以上になるということは、来年以降、要介護者が急激に増える可能性があるということだ。

高齢者の単身世帯が増えていることも心配の一つだ。単身者は家族による在宅介護ができない。 1 人暮らしの在宅介護者もいるが、要介護 3 以上になると、認知症も伴う場合が多く、非常に大変だ。

また日本は、「保証人社会」であり、家賃や介護保険、入院の契約時に保証人がいないとサービスが使いにくい。結果、社会で生きづらくなる。

——介護の現状は

結城  訪問介護を代表として、人手不足が進んでいる。訪問介護は有効求人倍率約 14 倍(昨年度)で、地域によっては非常に人数が少なくなっている。介護保険をと花押としても、契約してくれる事業者がおらず、要介護認定を受けてもヘルパーが来てくれないといったことが既に起きている。厚生労働省によると、こうした事態を防ぐには、介護職人数が 26 年度には約 240 万人、 40 年度には約 272 万人必要だとしている。毎年の着実な増加が欠かせない。

——人手不足の原因は。

結城  まず労総市場の資金水準に介護業界が追い付いていないことが問題だ。人口減少社会で、どの業界も人手が足りていない。そうした中で、介護業界は他の産業に比べて依然として給料が低いのが現状だ。社会的に賃上げの流れが起きているが、今年の中小企業の賃上げ率が約 4 %だったのに対し、介護報酬改定による介護業界の賃上げ率は 2.5 %だった。

また、人口減少だけでなく少子化も進む中で、そもそも人がいない。介護業界全体で若い人を受け入れる体制づくりができていないことも人材不足の要因となっている。

ベルの角度では、ハラスメントの問題もある。介護サービスの利用者のうち、肌感覚では 10 15 人に 1 人の割合でハラスメントをしている。介護業界に人が集まらないのは、そうした要因が複雑に絡み合っている。

求められる施策

人材確保への賃上げ重要

介護福祉士 医療行為の拡大検討

——求められる対応は。

結城  介護報酬をあげるなど介護事業者の処遇改善を進めることが重要だ。介護政策の充実、特に介護人材対策に大きく投資し、賃金を全産業並みにすることが求められる。賃金が上がることで介護業界へのイメージも良くなる。

一方で現役世代が働きながら家族らの介護を行う「ビジネスケアラー」が増加することが予想される。ビジネスケアラーへの支援では、介護休業などの制度が充実してきているものの、最終的にはプロのヘルパーや施設に関わってもらわなければ、仕事と介護の両立はできない。介護の「楽しさ」や「やりがい」などの啓発活動を通じて、介護従業者を増やし、育成していく取り組みも不可欠だ。

——そのほかには。

結城  資格自体の見直しも必要だ。地域で医療ニーズの高い要介護者が増えていく状況下では、医療行為ができる介護福祉士がもっと重要になる。現状は、たんの吸引や経管栄養しかできないが、医師の指示も能登で駐車や点滴、導尿といった、例えば准看護師レベルの医療行為ができる介護福祉士の新しい資格を創設すれば、それに見合った待遇改善にもつながるのではないか。

——当事者や家族、周辺の人たちが意識すべき点は。

結城  現時点では介護業界に外国人労働者が多く入ってくる見込みは立っていない。事業者側からすると、人手が足りない状況では、介護する人を誰でも受け入れるというわけにはいかない。つまり介護する人を選ぶ可能性があるということだ。大事なことは、要介護者やその家族も顧客権利意識を持つのでは核、選ばれるための「支えられじょうず」になることが求められる。その意味では今後、介護を受ける側のマナー講習のような取り組みも必要になる。

さらには、そもそも介護されなくても済むように健康で過ごす各自の努力も必要だ。そのためには日ごろから社会参加を促し、いろいろな人とつながりを持って行くことが重要になる。

社会で支える体制構築を

来年以降 制度改革へ勝負の 10

必要な視点

——介護政策の在り方や政治に求めることは。

結城  国民全体で、「介護なくして、日本の社会、経済は持たない」というコンセサス(合意)をつくり出すことだ。何も対策を講じなければ、親の介護で働けなくなる介護離職者が一気に増える。 50 代、 60 代の管理職矢部寺 bb 社員が、介護のために仕事をやめざるを得なくなる。離職を回避できたとしても、十分な働きができない。そうした層が増えてしまえば、日本経済自体に大きな打撃となる。だからこそ、社会全体で介護を支えるための政策にお金を回すことが求められる。

介護政策とは一種の労働政策だ。社会を維持するための〝インフラ政策〟と言ってもいい。介護への投資で介護職の賃金をアップさせる。ビジネスケアラーには、安心して介護しながら仕事もできる環境をつくる。介護人材を確保する仕組みを整える。こうした施策を副詞的な側面だけでなく、社会全体を支えるインフラ的な視点で議論してもらいたい。

——人口の 3 分の 1 が高齢者になる「 35 年問題」もあるが。

結城 35 年には、団塊の世代が全員 85 歳以上になる。 85 歳以上の要介護認定率は 5 割以上と言われているので、来年から、必要な手立てを講じる「勝負の 10 年」となる。そのためには社会保障全体の仕組みも見直し、大改革をしていく必要がある。現役世代がどんどん減っていく中で、高齢者が高齢者を支えるという世代内で助け合いも大切になってくるだろう。

10 年と言っても残された時間は少ない。介護保険制度を維持していくための〝勝負〟が今こそ必要だ。公明党がその先頭に立ち、存在感を発揮することに期待したい。

外出や友人と会うなど社会参加が多いほど要介護リスクが提言——。日本福祉大学の健康社会研究センターが今年 5 月に発表した調査によると、ここ 10 20 年の 65 歳以上の高齢者について、社会参加の増加によって、要介護認定の発生リスクが低下していることが分かった。

同調査では、 2010 年度の高齢者 2 2522 人と、 16 年度の高齢者 2 6284 人をそれぞれ 3 年間かけて追跡。双方のグループ

外出や人とのつながりなど

社会参加で介護リスク減

で要介護 2 倍以上の認定を受けた割合を比較した結果、 65 74 歳の前期高齢者では、 16 年度の要介護発生リスクが 10 年度と比べて 25 %低下、 75 歳以上の後期高齢者では、 27 %低下した。

低下した要因に関しては、外出や友人と会うといった社会参加する機会が全体的に増えたからだと分析。社会参加に要介護認定の発生リスク低下に関連している可能性があると結論付けている。

【土曜特集】公明新聞 2024.12.21






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Last updated  September 5, 2025 04:27:43 PMコメント(0) | コメントを書く
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