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■ 土 はつくれるのか ■
藤井 一至(土の研究者)
5 億年前の歴史が必要
栄養分が循環する仕組み
植物に必要な光と水と肥料
5 億年前までの地球の陸地は、植物はなく、乾燥した岩肌でした。でも今は、みずみずしい緑と土で覆われています。
植物が育つためには、太陽光と水、そして肥料が必要といわれています。水耕栽培のようなものを考えると、肥料のような栄養素でいいのかもしれません。ただ、植物がよく育つためには根を張る必要があるため、水耕栽培の場合でも、土地のような土台が必要になります。また、土壌微生物は植物の生育を助けてくれる重要な存在です。
実は、この土を、人間はつくることはできません。土は、岩石が崩壊した砂や粘土と腐蝕(動植物の遺体などの栄養素に富む成分)の混合物。であるならば、砂や粘土に肥料を混ぜればいいのではないかと考えるかもしれません。
ホームセンターなどに培養土が売られています。確かに土なのですが、 1 年何かを育てたら、翌年には新しい培養土を買ってこなければなりません。構成要素をただ集めただけだと、 1 年後には栄養的にぺっちゃんこになってしまうのです。
そこには、土として大事な機能が欠けているように思います。例えば、ミミズや昆虫、微生物がたくさんいる土は、 1 年後でもフカフカで栄養素がたくさん残っています。それは、落ち葉や間伐材などを分解して、土地を再構築する仕組みがあるからなのです。
そんな土を再現したいと思って、これまで研究を重ねてきました。砂や粘土は必ずしもなくていいのだと思っています。栄養分が循環して、土自体が自らを再生する。これこそが土の本質なのです。
近著『土と生命の 46 億年史』(ブルーバックス)では、戸津の実態と、その仕組みについてまとめています。
人類は、森林や草原などの下で、植物と微生物が培ってきた肥沃な土地を使い、 20 万年かけてここまで繫栄してきました。しかし、使うばかりで、土はつくれません。現代の科学技術は非常に発達していますが、化学構造式、化学反応式が書けないものはできないのです。
火山灰にすむ多様な微生物
乾燥した岩や砂しかなかった陸上に、どのように植物が進出し、土地ができていったのでしょうか。陸上に進出する植物には順番があります。まずコケ類が生えて、続いてシダ類が。最後に被子植物などが生えるようになります。これは 5 億年かけて起きた歴史です。
新たに土をつくろうとしたら、これと同じ手順を踏まないとできません。ただ、現代が昔と違うのは、生物類がそろっていること。実際、 5 億年というのは、ほとんどが進化に使われた時間です。現代では進化した生物がそろっているのだから、もう少し早くできるはずです。
インドネシアで実験したところ、 40 年で土地と同じようなものが出来上がりました。
肥沃な表土が流れてしまった後の荒れ地や、石炭などを掘り出した跡地など、農業に向かない土地を再生することができるのではと思っています。
実験には、桜島の蚊塩梅を利用。火山灰自体は風化して土地になるまでに時間がかかるのですが、最初の振る舞いは非常にいいのです。
火山灰には、多少の小さな穴が開いていて、現地の土地の中に埋めておくと、火山灰にさまざまな微生物がすみつきます。そうなった火山灰を、苗木の根元に入れて育てるのです。
全体を土にするのは多変ですが、植物の根の周りだけでも土状にすることで、植物は育ちます。実は、 1 年、 2 年程度で土のような状態になります。
ただ、短時間では、定着する微生物の種類は少なく、何か問題が起きたときに全滅してしまう恐れがあります。
実際の土中には、多種類の微生物が共生していて、1種類がいなくなっても、他の微生物が変わりを果たします。
微生物がすみついて、世代を重ねていくと、すみかとなっている好物と微生物、その死骸などが相互作用し、その場所の環境も多様になっていきます。酸性やアルカリ性、酸素が多い場所、少ない場所……。さまざまな環境があるから、そこにいろいろな微生物がすめるのです。この多様性をつくるのに40年が必要なわけです。
土地がすごいのは、毎年、条件が違うのに、同じように作物ができること。そこには、別の微生物が働いているはず。多様性によって、一つがダメになっても、ほかのものが働くようになっているのです。
5億年かけて洗練されてきた究極のシステムが、40年程度でできるのはすごいと思います。されに便利な人工土壌が期待されています。 =談
ふじい・かずみち 1981 年、富山県生まれ。福島国際研究教育機構ユニットリーダー。土地の研究者として、カナダ極北の永久凍土からインドネシアの亜熱帯雨林まで、スコップを片手に各地を飛び回る。著書に『土と生命の46億年史』(ブルーバックス)、『土 地球最後のナゾ』(光文社新書)などがある。
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