ラッコの映画生活

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2008.01.16
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カテゴリ: 日本映画
LOFT ロフト

115min
(桜坂劇場/DISCAS)

*0.jpg

去年ではなく一昨年になるんですね、11月頃に映画館で見たのですが、ちょどこのブログを本格的に始める前だったのでレビューも書いていません。 『叫』 を見たキッカケに再度見たくなり、DISCASでレンタルしたので感想を書きたいと思います。

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ホラー映画はたいていそうだとも言えるし、また黒沢作品のすべてではないけれど、黒沢作品の魅力の一つはリアリティーのある映像です。たしかに冒頭からどこか現実離れした雰囲気、そうある種の静謐さのような感じ、あるいは何処かに有りそうで無いようなシンプルなインテリアとか、そういう感じはあるけれど、でもごく当たり前にありそうな世界の描写から始まる。小説家の春名礼子(中谷美紀)は次作のインスピレーションが湧かずにスランプにある。化粧をする(落とす?)鏡に映った彼女のアップは美しくもあり、また無表情。でもよくあるように単に物思いに耽っている女性の表情ではない。そして吐気を催して彼女は吐く。でもそれは血ではなく漆黒の泥のようなもの(余談ながらこれは白黒映画では描写のしようがないでしょうね)。彼女は編集者(西島秀俊)のオフィスを訪れる。編集者は彼女にプロとして早く作品を仕上げることを要求する。感じが悪くて、ちょとイケスカナイ感じの男なのだけれど、でも非常に現実的な世界の人物。でもこの2人の対比も含めて、もう既に黒沢映画の世界。創作のために環境を変えたいという彼女の希望に、編集者は緑の自然の中の古い洋館を世話する。 遠からぬ隣には大学の研修施設だという廃屋に近いロフトがある。こうなるともう全き黒沢ワールド。この映画では森の木々や風の音、無気味な沼、幽霊、と古典的な怪談話ないし映画の世界ではあるけれど、あるいは洋館は江戸川乱歩の世界にも通じるけれど、『回路』や『叫』もそうであったように、廃屋は過ぎ去った近代文明を見るかのようであり、それと自然の対比がある。『叫』や『回路』は終末論的世界でもあった。そして 文明以前の自然 文明の終焉 の中間にある登場人物や我々にとって、自然は文明の人間疎外からの逃避としては安らぎであると同時に、文明の日常にどっぷり浸かった人々には精神を裸に剥かれる恐怖でもある。否応なく人々は実存的に自らを反省することに誘われてしまう。分析的に言えば『回路』が火と風の世界であったとすれば、ここでは水と地の世界だ。

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緑沼 から千年前のミイラを発掘したらしい。黒沢作品をそれほど見ているわけではないけれど、ごく初期の 『ドレミファ娘の血は騒ぐ』 の主人公が洞口依子だったのを除けば、黒沢映画の主人公はおおむね男性だ。この映画の主人公は女性作家で、脇で登場するミイラも幽霊も女性。他の映画に比べて女性の側からの心理を描こうとしているし、また春名と吉岡のロマンスの物語でもある。謎のロフトの曇ったガラス窓に外から手を当てる礼子。それに気付いて内側からその手に手を合わせる吉岡。礼子はそのことに理性的・物質的には気付かないが、感覚的に何かを感じて手を引っ込める。微妙さが美しい出合いのシーンではないだろうか。このシーンは短いが、精神・肉体両面の愛の交渉を表し得ている。そして女が手を差し伸べていて、そこに男が手を合わせるという方向性も象徴的だ。女は未知の男に手を差し伸べるのであり、男は求めてそれにすがろうとする。そして接触した瞬間に引かれる手は、女の躊躇やおののきを示している。

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(以下少しネタバレ)
冒頭のテロップにあったように千年前の女は若いままの美貌を永遠にしようと保存性のある沼の泥を飲み、沼に沈んだ。それと呼応するのは冒頭(他)で描かれた鏡に映る礼子だ。そして幽霊(安達裕美)は春名礼子が今住むこの洋館の前の住人の作家志望の女子大生。礼子と同じ編集者に認められなかった。そして3年前から行方がわからない。この彼女に呼応するのもスランプで書けずに編集者に急かされる礼子でもある。そういう意味ではミイラや幽霊は礼子の内面の一部の別表現でもある。吉岡の夢か妄想か、あるいは現実か、吉岡と幽霊(やミイラ)との関係が描かれるが、この映画を吉岡と礼子のロマンスという点で捉えるなら、これもその複雑な内面関係の別表現でもあり、吉岡のミイラや幽霊に対する接し方は礼子に対するものの比喩でもある。この映画ではどこからどこまでが現実で夢や妄想の世界であるかの境界が特に後半では曖昧だが、この幻想の世界、あるいは寓意の世界に対して、編集者だけが全き現実の世界にいる。もともと映画などすべてが作り事というのを置けば、編集者にまつわる部分だけが映画内的世界の現実と考えられるように作られている。

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作品が作品だけにこれ以上のネタバレは避けるが、印象に残ったセリフを数カ所引用したいと思う。

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吉岡:後悔する。
礼子:してもいいわ。

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幽霊:男を破滅させるために。
   行こう、私と地獄へ。

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礼子:今の吉岡さんには私がいる。

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吉岡:ボクは全部捨てる。君以外の全部を捨てる。

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Last updated  2008.01.17 03:50:19
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