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我が家は周囲を畑や果樹に囲まれた環境にある。もちろん雑草も今の時季そこかしこに繁茂している。そしていろんな生き物をペットとして飼っている。赤いカナリアも一員である。そのカナリアと今日突然の別れを迎えた。昼食後、玄関を出て、軒下に吊るしてあるカナリアの籠を何気なく見やると、エサ箱のあたりにいるるようだったが何となく異様な感じがした。全然動かないこともそうだが、体が変に大きいのだ。近づいてぞっとした。なんということか。(驚愕、憤怒)一匹のヘビがカナリアをぐるぐる巻きにしているではないか。カナリアは頭の部分しか見られないほど完全に巻き込まれている。最初一瞥した時、それとすぐ分からなかったのはそのヘビがカナリアの色に似た赤みがかったオレンジ色だったせいである。あまりの事態に瞬間的には体が動かなかった。大声で家人を呼ぶぐらいである。飛んできた家人がキャー、キャー騒いでいる中、ようやく我に返り、所定の位置に置いてあるモリを取ってきた。実はこのモリ、魚を獲るためのモリだが、時たま出没するマムシ退治用に家の周り数ヶ所に常に置いてあるのだ。モリを片手にカナリアの籠を地面に下ろした途端、ヘビは危険を察知したのかトグロを解き、籠の中を四方八方に逃げ回る。時間にして数秒、あっという間に籠の外に出てきた。鳥かごの篭目は一センチ間隔ぐらいで、そこを出入りしたのだから小さいヘビといえるが、しかし出て来てみるとこんなのがよく籠を通り抜けたなと思うぐらいの大きさである。後で考えてみるに、体を自在に平たくして小さい隙間でも出入り可能な体の構造なのだろう。中に入り込んでカナリアを襲ったはいいが、外へ持ち出すわけにいかず籠の中で獲物を巻き込んだままじっとしていたということか。呑みこむには無理がある彼我の大きさと思えるが、ヘビはあの後どうするつもりだったのか。いや、やはり人間が近づかなかったらあの大きさでも呑みこんだかもしれない。怒りと驚きと悲しみの激情の中、くだんのヘビにはその場で死刑宣告をして処分したのはいうまでもない。通常のヘビに比べて頭が三角に近かった。明らかにマムシとは違うが、濃いオレンジの体色と併せて考えるに昔聞いたことのある「ヒカゲリ」かもしれないと思い、用心して死刑執行した。ヒカゲリは「陽陰り」とでも書くのか。昼間噛まれたら、陽が沈む頃には毒がまわって死んでしまう、それほどの毒蛇という意味である。当地で毒蛇といえばマムシだけしかいないというのが常識だが、子供の頃「ヒカゲリ」の話を聞いたのも確かである。そして今日のにっくき奴の頭は、まさしく毒蛇のそれの形状だった。後で地区の古老にでも聞いてみよう。毎日キレイな声を楽しませてくれた我が愛するカナリアは、哀れにも目を閉じ事切れていた。ヘビが侵入してきた時、籠の中を飛び回り、必死で助けを呼んだに違いないのに、おろかにも飼い主は昼のテレビに夢中で気づかなかった。更に飼い主が罪深いのは、軒下に吊るした鳥籠の、すぐその横に鉢植えのカンナの花を置いてあったことだ。鳥籠は地面から1メートル以上の高さなのに、背の高いカンナは鳥かごの真横まで伸びていて、鳥かごに接するぐらいになっていた。そんな状態を飼い主は暑さよけにはいい按配だろうと考え違いをしていたのだ。「スマン、スマン」と心の中で詫びながら体を調べてみたが、まだ硬直しておらずぐったりしているのが悲しく、もう数分でも早く鳥籠を覗いていれば、と残念でならなかった。傷らしい傷は見つけられなかったが、締め付けられて窒息したのか、あるいはあれがヒカゲリだったなら、毒にやられたのか。「可哀そうに…」という家人の呟きを聞きながら、庭の隅にねんごろに葬った。「もう鳥は飼わんといて…」とも言われたが何も言い返せなかった。
August 30, 2005
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ツクツクボウシが鳴き出した。初夏にも一日、二日、鳴いていた日があったが、あの時はいかにも季節外れで連中の体内時計か何かが狂って地中から出てきたものだろう。今度はあちらこちらで何匹も鳴いているので、まっとうな時季の本格的な出現である。東日本ではもっと早くから鳴いているのかも知れないが、自分の住む地域では、ツクツクボウシが鳴きだすのは8月下旬と決まっている。子供の頃はこのツクツクボウシの鳴き声は実に切ないものだった。何故かというとこの声が聞こえだすと夏休みが残り少なくなっているからである。思う存分遊べる日がもう数日で終わるという惜別の思いと、宿題の残りに焦る気持ち。ツクツクボウシの声は、そんな切なさをかきたてる季節の移ろいを知らせる声だったのだ。成人した今は、彼らの鳴き声を聞いても、そんな切なさや焦りは感じないが、それでも必ず子供の頃の夏休みの終わりを思い出させる。こんな感慨は自分だけだろうか。
August 29, 2005
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