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伊坂幸太郎の短編作品集。「動物園のエンジン」「サクリファイス」「フィッシュストーリー」「ポテチ」の4作品。「動物園のエンジン」短い作品です。世界感は伊坂ワールドなのですが、ミステリの部分が極めて少ない感じでした。そのせいなのか、純文学的というか村上春樹の短編を思い起こさせるような気がしました。なんだか、この作者の新境地を少しだけかいま見たような気がする作品でした。「サクリファイス」この作品はミステリの占める割合は多かったです。多分この短編の中で一番ミステリっぽかったような。都会的な雰囲気が漂う伊坂ワールドでは異例な感じの地方の村を舞台にした郷土感溢れる作品。しかし登場人物たちは伊坂幸太郎風なので、相変わらず楽しく読めます。「サクリファイス=犠牲」、読み進めていくとそのタイトルの真の意味に気付かされることになります。ちょっと乾いた切ない余韻を残す作品です。「フィッシュストーリー」これは表題作らしく一番伊坂さんらしい作品。時間も場所も越えたそれぞれの登場人物たち、彼等の話がどのように繋がっていくのか読み進めていくのが楽しい作品です。その手法は「ラッシュライフ」を思い起こさせるのですが、短編でここまでの作品を描けた作者の成長を感じずにはいられない作品でした。「ポテチ」これも仙台を舞台にした伊坂ワールド全開な作品。ドライな感じよりはほろりとする作品でした。タイトルのポテチが内容と上手くリンクしていて、それがまたいい感じで話を盛り上げています。全体的にそんなに深く重い話では無かったので、さらりと読めました。ただ、短編だと短いせいか伊坂幸太郎ワールドが凝縮され過ぎていて続けて読むには少々食傷気味になってしまう感じがします。この作者は長編で良さが発揮されるような気がします。長編向きな作家さんですね。次回は長編の作品を読んでみたいです。
2009.03.26
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盗聴専門の探偵である主人公の三梨。ある企業の依頼で盗作調査を行っていたのだが、眼にコンプレックスを持つ冬絵をスタッフに迎え入れてから、調査は思わぬ展開に・・・。この作品で久しぶりに満足出来るミステリを読んだ気がしました。それというのもしばらく読書から遠ざかっていて、最近また少しずつ読書するようになったのですが、なぜかミステリらしい作品はほとんど読んでなかったのです。私的に満足出来るミステリとは、物語の終盤くらいに真相が明かにされて「ああ、あの伏線はこれだったのか!」と気付かされる瞬間があることです。なのでこの作品も伏線が明かされて「そうだったのか!」と気付かされる瞬間があり、それこそがやっぱりミステリの醍醐味だと改めて実感することが出来ました。少し残念だったのは、肝心の殺人事件の真相はなんとなく分かってしまったことなのですが、この作品はそれ以外にも伏線が各所にちりばめられているので、もう終盤は「これでもか!これでもか!」と伏線ネタあかしの大判振る舞いです。もちろん最初読んでいて、「これは騙されるな」っていう気配だけはびんびんしてました。なのですが、用心して用心して読んでいても、思いもよらなかった部分までもが伏線だったりするので、一つ二つくらい見破れてもそれ以上に見破れない伏線の多さにもう十分満足出来ます。物語全体の本当に細かいところまで伏線が張り巡らされているので、どんなに頑張っても誰でも一つくらいは見破れない部分が出てくるのではないでしょうか。ふぅ~、久しぶりにミステリをおなか一杯食べた感じの贅沢な作品でした。
2009.03.23
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桂をかぶる店長のいる「桂美容室別室」の従業員達と主人公淳之介と梅田さんが織り成す彼等の日常。この作者らしい日常をあわあわと描いた作品でした。相変わらすセンスの良い表現力で、「人のセックスを笑うな」の時のような瑞々しさはなりを潜め、その分少しだけ深みが出て来た感じがしました。この話は主人公と桂美容室の従業員達と梅田さんを交えて話が進んでいくのですが、特別にとっぴなことが起こるわけでもなく、ただ淡々と日々が過ぎていきます。そして登場人物たちもそれほど個性的でもありません。なのでこの作品は物語、登場人物を楽しむ作品ではないような気がします。多分この作品で一番味わうべきは人との微妙な距離感ではないでしょうか。親しいようで実はあまり踏み込めていない、何でも話しているようで実は何も知らない周りの人との近いようで遠い距離感。作者が描きたかったのはそんなきちっと括ることの出来ない、人との距離だったように思います。それにしても、ストーリー、登場人物のインパクトがいまいち少なかったせいか読んだあと、余韻が残らなかった。読後、どうしても「・・・それで?」と感じてしまいました。正直、何度も何度も繰り返し読みたい気を起こさせることは薄い作品のような気がします。日常のように通り過ぎる感じの作品。なので、就寝前などにでも、さらりと読みたいときにはおすすめな作品です。
2009.03.17
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死んだ父親の遺言で拳銃を届けることになった龍哉、同居人の公平とくるみもその旅に同行することになるのだが・・・。なかなかに味のあるイラストが印象的な表紙のこの作品。拳銃を届ける為にわけ有りな男女3人の行動を追った青春ロード・ノベルらしい・・・のですが、それにしてはなんとなくスピード感が足りなかったような。足りないというか、中盤あたりまで結構まったりしちゃってたというか。あらすじを見る限りではなんとなく伊坂幸太郎さんをイメージしてしまったので、伊坂ワールドのようなスピード感溢れる展開とスタイリッシュさを期待し過ぎていたのかも。でも、展開はゆっくりでも登場人物の心の傷などは丁寧に描かれていて良かったです。うん、心の傷は・・・良かったのですが、でも読んでいてなんだか払拭しきれない違和感を感じてしまった。なんでだろうとずっと考えていたのですが、それはおそらく主人公3人の年齢に問題があるのではないかと。彼等の心の傷とそれに伴っての「殺したい奴がいる」の心情は納得出来るのですが、もうその彼等、御年25歳・・・。いい加減いっぱしの社会人。これが10代、せめて20歳くらいまでだったなら、彼等の心情とその行動に納得がいくかもしれないのですが、25歳の社会人にしては無責任すぎて幼過ぎる気がします。そこが気になってあまり話に入って行きづらかったのがちょっと残念。でもさくさくと読めて、お手軽な作品でした。
2009.03.12
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「しゃざむねぇ~。」これは恋か!?って思うくらい最近頭の中からはなれない言葉がある。その言葉はふっとした拍子に不意に頭に浮かんできて、頭の中で幾度となく繰り返される。最近の私のそれは「しゃざむ」という言葉。「しゃざむ」とは某週刊少年漫画雑誌の巻末の漫画に出て来た言葉で、意味は「シャズナのボーカルはイザム」という、一般人の日常会話では使用頻度が限りなくゼロに近い言葉。「しゃざむ」使いどころねぇ~!日常会話で使いどころもなく、何の意味も脈絡も無い言葉が頭のなかをぐるぐるまわってしまうので本当に困る。何をしてても「しゃざむ」、「しゃざむ」、もう勘弁して~。しかもその「しゃざむ」の話はもう先週号・・・。私は先週から気が付くと「しゃざむ」という言葉がが頭の中からはなれないという、「しゃざむ」地獄に落ち入ってしまった!忘れろ~忘れろ~っと念じていると、増々頭の中を「しゃざむ」が駆け巡ってしまう悪循環。もう助けて~!人生においてこんなに長い期間、ある一つの言葉が頭の中を駆け巡ったのは、「インドメタシン配合」と「山村美紗サスペンス」以来だ。もうこうなったら週末カラオケにでも行って「メルティラブ」歌うしかないかな・・・。 「夜は短し、歩けよ乙女」森見登美彦よく歩く黒髪の乙女と彼女に片思いする主人公の青春ラブストーリー。前に何かのアンソロジーで読んで、とても面白かったのですが、それに続きがあると知ってずっと読みたかった作品。この作者の独特の文章は合う合わないがあると思いますが、合う人には、是非おすすめの作品。この作品は4章からなっているのですが、表題作である第1章のパワーは衰えることなく2章3章そして最後の4章まで続いていて、とてもむちゃくちゃで、でも底抜けなほど愉快な世界を最後まで存分に味わえます。奇妙キテレツなサークルと登場人物たちなど、ごちゃごちゃでデタラメに見える登場人物やエピソードが、毎回最後に一気に集結するさまは爽快です。この作者独特の言い回しがこの奇妙な世界観と妙にマッチしていて、それはもうある意味童話めいていました。大人の贅沢な童話という感じです。夢をみたい方はぜひ。
2009.03.04
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