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現在第1集、第2集まで出版されており、「スピンドル」「クアルプ」「ぺトラ・ゲニタリクス」「うたぬすびと」の4つの話、他2つのおまけ有り。魔女を題材にして、時代や国を超えた短編集です。初めて読んだ作者でした。恐らくこの作者はマニアックな部類に入る漫画家ではないかと思われます。なにせこの作者の作品は某「遊べる本屋」では頻繁に見かけていたので。それだけに、内容はマニアックではあるもののイマジネーションを大いに刺激されるものだったと思います。なんといってもこの作者の絵ですね。作者はどうも男性のようなのですが、ぱっと見は少女漫画のような線の細い絵で、これと言って絵に特徴があるというわけでもないような気がしてしまいます。しかし、その一見地味目な絵の各所に、はっとさせられる絵が存在するのです。その絵がこの漫画の世界を奥深いものに印象付けているように感じました。ただ、それだけに全体的に見て絵の持つインパクトに対して世界観やストーリーのインパクトは薄かったのが残念でした。シンプルといえばシンプルな作品なのですが、読み込めば世界の奥深さも味わえる作品です。イマジネーションを刺激されたい方などにおすすめの作品です。「スピンドル」巨大な首都にある市場、そこに魔女は復讐を果たすべく降り立つ。時を同じくして遊牧民の少女も導かれるように市場を目指す。異国情緒溢れ、ごちゃごちゃした様子の市場や素朴だけれど聡明な少女など、世界観、登場人物など、なんとなくジブリ作品を思い起こさせる感じでした。エグイ所も多いので少々エグイジブリといった感じでしょうか。好きな人にはすこく好みの話だと思います。ただ、魅力的な世界観の割にはストーリーに意外さは、ほとんどなかったです。「クアルプ」熱帯雨林を住処にする部族に開発の手が伸びる。全てを失った呪術師の女は精霊に「癒し」ではなく「復讐」を呼び掛ける。ストーリーらしいストーリーは、ほとんどありませんでした。しかしその分、最も絵が印象的で力強かったように感じました。これは絵で読ませる話です。「ぺトラ・ゲニタリクス」北欧の小さな村で暮らす少女と「大いなる魔女」と呼ばれる女。宇宙で起こった事故が二人の運命を変えてゆく。絵とストーリーの割合のバランスが良かったように感じました。登場人物も魅力的でした。一番「魔女」のタイトルにしっくりくる話だったように思いました。「うたぬすびと」舞台は現代の日本。女子高生の主人公は、ふと飛び乗った船で女から聞いた特別な島を目指す。この物語は最もストーリー性のある話だったと思います。登場人物の心理がうまく書けていたり伏線なんかがきちんと張られていました。ただその分、絵は他の作品と比べてあまり印象に残らなかった感じがします。
2009.12.30
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やっと読むことができました。村上春樹の作品であるのと最近長編を読んでいなかったせいで、読むのに多大な集中力と体力を要しました。さすが村上春樹です、少しも読み飛ばせないくらい濃く深い作品でした。しかし、これはあくまで私個人の村上春樹を読む時の姿勢であって、この作品はあまり深く追求せずに物語を追うだけでも、十分に楽しめるものになっています。そうなんですよね~。こういうところが村上春樹が多くの人達に読まれるゆえんなのではないのかと思うのです。物語だけでも楽しめるし、内容を深く掘り下げても満足出来る。さまざまな読み方が出来るという間口の広さがベストセラーになる要因なのではないでしょうか。※以下の感想に若干ネタばれが含まれているので注意して下さい。さて、内容ですが今回は青豆と天吾という二人の主人公が登場します。二人の話が交互に語られやがて一つに繋がってゆきます。こういった複数のストーリーがやがてひとつに繋がってゆくという展開は割と好みなのですが、内容や世界観を深く掘り下げると、作品の根本は「ねじまき鳥」に近い印象を受けます。なんとなく今までの村上作品の要素を作品のあちこちに散りばめた様な感じもしました。そういう意味では、新しさや斬新さを問われるとこの作品は少々弱いかもしれません。まあ、逆にそれだけ村上春樹の世界がしっかり出ているとも言えなくはないのですが。ただ、新しさを感じるところも登場人物や設定に、ちらほらあることはあったのです。まず、斬新な登場人物としては主人公の青豆でしょう。奇抜さでいえば、独特な雰囲気を持つ「ふかえり」なんでしょうが、彼女はなんとなく加納マルタ、クレタや「ダンスダンスダンス」のユキなどの村上作品にはたまに登場する普通の人には感じ取れない能力を持つ登場人物に近い気がします。それに対して青豆は体を鍛えることと護身術を愛するスポーツウーマンで、なおかつ職業は殺し屋という村上作品にはあまりお目にかかれないストイックな精神に非現実的な職業を持つ登場人物だったと思います。そして驚いたのは、設定が「初恋の人をお互いにずっと想い続けている」という昔の少女漫画や、はたまた昼メロのような実に現実ばなれしたファンタジーになっていたということです。みんなが夢見ているけれど、実際には起こり得ないと分かっていることをまさかの村上作品でお目に書かれるとは!しかし、そこはさすが村上春樹ってなもので、さほど違和感を感じずに最後まで読めてしまうので不思議です。物語の面白さ内容の奥深さ、どちらをとっても満足のいく出来なのですが、若干消化不良なところもありました。天吾の母親の詳細が未解決なことや安田恭子に起こったこと、結局「リトルピープル」の正体とは?といったことです。でもどうやら続きが出るようなのでそちらでこれらが解消されることを期待しています。しっかり村上春樹ワールドしていて、内容も奥深く、それでいてストーリーだけでも面白く読めます。読んで損はない作品です。全ての人におすすめです。一度読んでみてはいかがでしょうか。
2009.12.22
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京大に入学した主人公は、ふとしたことから、謎の競技「ホルモー」に参加することになる。この作者の作品がドラマ化や映画化もされ何かと話題になっていたので、ずっと読んでみたいと思っていました。設定が奇抜だという評判をあらかじめ耳にしていたので、「ホルモー」の設定に対しての驚きは正直あまり感じませんでした。そうすると、この作品の最大の持ち味である奇抜さ生かされないので楽しめないかと思いきや全くそんなことはなく、青春小説としてとても面白く読むことができました。読んだ後にこんなに清々しい気持になった作品は久しぶりでした。ただ、文章は個性的な表現を多用していてユーモアなのですが、最近の流行りなのか分かりませんが、こういった文章にあまり新鮮さは感じませんでした。というかちょっと食傷気味ですらあります。なので、この作品は文体で味わう独特の世界観をあまり感じなかったので、映像向きな作品のような気がします。奇抜な設定を今のCG技術を駆使して視覚化した方がもしかしたら、イメージが伝わりやすいのではないでしょうか。映画化もされているようなので、そちらも是非観てみたいと思いました。極上の青春小説です。大人から子供まで青春を存分に味わいたい方、是非おすすめです。
2009.12.08
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「大人の階段登る」とか「恋が愛に変わるとき」とか、人って日々成長するものだ。何か大きな起点があってオセロをひっくり返すようにパタリと一気に成長することもあれば、知らぬ間に少しずつ成長してある日振り返ってみれば、「ああ、私大人になったんだな」としみじみ感じ入ることもあるだろう。さてさて、話は変わって最近めっきり寒くなってきました。寒くなってくると当然体が冷えることもしばしばです。体が冷えると当然お腹も冷えるわけであります。お腹が冷えれば、きゅるきゅる、ごろごろとお腹の調子が芳しくなくなるわけで。そうなると、突発的にトイレに駆け込む事態になることも多いかと思います。そうです、あれ辛いですよね~。あれ。腹痛?お腹下す?いえいえ、ぼかさず言えば下痢です。下痢、辛いですよね。よく人の痛みは誰にも測れないといいますが、あの下痢時の腹の痛みは世に数ある肉体の痛みのなかでも最高に近いのではないかと個人的には思われます。ひどい時には痛さのあまり意識を失いそうになったことさえあります。それに下半身丸だしで便座に腰かけながら激痛に耐えなければならないという情けなさも加味されて精神的にも痛さの度合いは最高潮に達するのではないでしょうか。しかも、この下痢とやらは最高に痛いし情けないのにも関わらず普通に生きていれば、誰もが一度は経験するであろうポピュラーな状況。そう、普通にいつ、誰にでも起こる現象なのです。自分自身はもちろんのこと、大切な人々、家族や友達、またはペット、そして、そして好きな人や恋人にでさえ。で、ここまで引っ張って一体なにが言いたいのかと申しますと、こういうことなのです。「あなたは、好きな人や恋人の下痢は許せますか?」下痢といっても好きな人や恋人が過去に下痢したとか、伝聞で耳にしたときは除いて下さい。ここでいう状況は好きな人や恋人と二人でいるときに突発的に相手が下痢に襲われた時として下さい。「いやいや、自分の好きな人や恋人はおしっこもしないし」とか逆に「いやいや、下痢なんか全然オーケー。寧ろ興奮するくらいだ」といった極端な意見もここではふれないことにします。さて、好きな人が下痢になったら?私ももうアラサ―。ドモホルン○ンクルのCMなんかもやけに気になったりする年齢です。なので許すも許せないも恋人の下痢くらい、バッチ来い!てな感じで問題なく受け入れられます。もし二人でいるときに突発的に恋人が下痢になったとしても「大丈夫?」と心配100パーセントで気遣うことが出来ます。恋人を好きな気持ちに下痢はなんら影響を与えません。でも思い起こしてみると、私は昔からこんな感じだったのだろうか?恋人や好きな人の下痢という状況を右から左へ流すようにすんなりと受け流すことができただろうか?思い出すのは小学校の遠足のこと。好きだったクラスメイトの男の子がバスに酔って吐いてしまったのだ。しかも私はその時風邪で遠足に参加していなかったのでそのことは後に人づてに聞いたのである。しかし、私はその話を聞き即効でその男の子を嫌いなった。ゲロでさえこんなんなら、きっと下痢だったなら小学生の私は受け入れることなんて到底無理だろう。嫌いになるどころか口さえ利かなくなりそうだ。酷過ぎるよー!!小学生の私!自分だって乗り物酔いするくせに!お腹弱いくせに!一体何様のつもりなんだ自分!思い出すだけで昔の自分の薄情さにほとほと嫌気がさしてくる。それでも当時の私は好きな人の下痢を受け入れられなかっただろうと思う。ほとんど確信に近い感じでそう感じる。さて、中学生の自分である。思春期で中二病真っ只中で、夜更かししてポエムなぞをしたためていた当時の自分も好きな人の下痢を受け入れることは無理だっただろう。甘酸っぱい妄想の世界に生きていた中学生の私は好きな人と下痢という単語を並べることでさえ出来なかったのではないだろうか。なのでもし好きな人が目の前でお腹を抱えてトイレに駆け込んで行ったら、二秒もかからずに嫌いになっていたような気がする。本当に、なんて慈悲のかけらすらない中学生の私だろう。それでは、いつ頃から変わってきたのだろうか。思い起こせるのが高校2年くらいの頃だったと思う。漫画「ブラックジャック」を読んでいたときのこと。「ブラックジャック先生すごいな~、神だな~」とブラックジャックの凄腕に讃嘆して憧れさえ抱いて読んでいた私はある場面で衝撃を受けることになる。それは、ブラックジャック先生が山奥で一人きり具合が悪くなったときのこと。あまりの痛みに動けなくなり人一人いない山奥で下山も叶わす誰にも助けを求めることの出来ないブラックジャック先生は、なにせ凄腕なのでなんと自分で自分を手術するという荒業にでるのだ。そこでブラックジャック先生はまず具合悪さの原因を突き止めなければならないと、自分の下痢した汚物を持っていた顕微鏡で観察し病原菌を突き止めようとする。「ブラックジャック先生―!!いやー!!」ブラックジャック先生にほのかな恋心さえ抱いていた私はその場面を目にして非常に大きな衝撃を受け、叫び声をあげそうになったのは言うまでもない。「あ、あのニヒルなブラックジャック先生が下痢?」「血も涙もない守銭奴めいていて、本当は弱者には優しいあのブラックジャック先生が下痢?そしてそれを顕微鏡で?」わなわなと震え、信じられないものを見た思いで当時の私は一旦本を閉じた。中学までの私だったらそこでブラックジャック先生に幻滅を覚え嫌いになっていたに違いない。しかし、中学だけでなく、恐らく中二病も卒業して高校生になった私は、「いやいや待てよ。ブラックジャック先生は具合が悪く、しかも苦しんでいて生死が関わる状況なんだぞ。下痢がどうのこうのいっている場合ではないのだ」と一人自分を戒めた。心を落ち着かせてそう念じているうちに私は次第に「ブラックジャック先生死なないで!」と下痢で苦しむブラックジャックに憐憫の情を覚えるまでになっていった。多分その辺りからだと思う。心の中での動揺は隠せないまでも少しでも下痢で苦しむ好きな人に一応「大丈夫?」と気遣ってあげられる感情が芽生えてきたのは。これが大人の階段登る瞬間?恋から愛に変わるとき?私がわずかながらでも成長したとき?そんなことを思い出していたら、アラサ―にもなって昔とちっとも進歩していないと感じていた自分もきっと今でも少しずつ成長しているんだと思い、希望が湧いてきたのだった。って下痢の話題でこんな終わり?!山崎マキコ「ためらいもイエス」仕事一筋のOL奈津美の弱点は恋愛だった。そんな主人公の成長物語。家族への嫌悪から仕事以外に耳をふさいで生きてきたアラサ―の女性の成長を描いた物語です。成長物語といっても、登場人物や語りがコメディタッチなので重苦しくなく、さくさくと楽しんで読めます。主人公は彼氏いない歴が年齢という恐ろしく仕事一筋の性格で仕事はバリバリ出来るのに、恋愛となると全く駄目というギャップが読んでいてとても面白かったし、そんな不器用な主人公にとても好感が持てました。この主人公の何が凄いと言えば、仕事に対する姿勢でしょうか。会社を「俺の城」と呼び、休日出勤や泊まり込みも厭わない、休みの日にもスキルアップの為、自宅で猛勉強をする。まあ、それだけ仕事に打ち込んでしまわなければならない理由もあったわけなのですが。でもこの作品を読んだ後、自分が働いていた頃を思い出し、なんだか無性に情けなくなりました。私はこの作品の主人公のようにバリバリ仕事をするタイプではなかったのですが、もう少しこの主人公のような意識を仕事に持てなかったのかと。あの頃にこの作品を読んでいたならもう少し仕事に対する意識が変わっていたかもしれないと感じました。ただ、この作品、成長物語としてみればとても良い作品なのですが、ラブストーリーとして見るとちょっと疑問が残ってしまいます。それというのも、ギンポ君の存在です。ギンポ君が決して嫌いなわけではなく、寧ろ好きです。だって、あのギンポ君って女の子なら誰しも求めている存在ではないでしょうか。デートでは行きたいところ食べたいものをほとんど叶えてくれて、卒なくスマートにエスコートしてくれる。不意に会いたくなったら逢え、電話をかければいつでも出てくれる。そして、自分の駄目なところ情けないところも幻滅しないで話を聞いてくれ、落ち込んだ時には慰めて、時には叱って励ましてくれる。そんな自分を全て受け止めてくれる男の人。もう最高じゃないですか。欲しいよ。彼に常に側にいて欲しいよ。もしギンポ君がスタンドだったらスタープラチナよりもギンポ君欲しいよ。しかし、しかし、だからこそ現実として考えてしまうとこんな素晴らしい存在の人は決しているわけないと感じてしまうのです。ギンポ君、まるでファンタジー的存在です。この作品の仕事やそれを取り巻く環境など現実としてみても、とても共感出来る部分も多かっただけに、彼のファンタジーさが返って成長物語の足を引っ張ってしまったような印象を受けてしまいました。ファンタジーがあったって、フィクションだから良いじゃんと思う人もいるかもしれませんが、ファンタジーのなかにリアルがあるのは真実味を感じれるのに、この作品のようにリアルの中にファンタジーがあるとそれまで築いてきた真実味が薄れてしまうような気がしてしまうのです。ネタばれ防止です↓まあ、これは好みの問題だとは思うのですが、他が素晴らしかっただけに恋の結末をファンタジーで締めくくってしまったのは残念だった気がします。恋の結末にもリアルさが欲しかった。たかがリアル、されどリアルです。なのでラブストーリーよりも成長物語として読むことをおすすめします。とても素敵な主人公の成長物語です。主人公の働きっぷりを是非味わって下さい。
2009.12.04
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主人公のカナは犯罪者として逃げる途中、記憶喪失の少女白雪と出会う。二人はともに逃げることになる。少女を描いたら天下一品の作者がまさにその少女を描いた作品です。その年代特有の欝屈とした感情や焦燥感が余すところなく描かれていました。同年代の子たちが読めばきっと共感できることも多いと思いますし、かつて少年少女だった人たちが読めば、その当時の感情を少しでも思い出すことが出来るのではないでしょうか。ただこの作品の文章やストーリーのみに注目してみると、中高生向けに描かれたのだなという印象を受けてしまいます。擬音が多くて難しい言葉を使わない文章は熟練の読書家には少々拙く感じてしまうかもしれません。そして読み進めていくうちに破天荒さがどんどん増していくストーリー展開などは、十代の何物にも染まらない感性には受け入れられても、世の中の酸いも甘いも知り尽くした大人には少々受け入れ難いかもしれません。しかしこの作品の優れているところは、どんな年齢層にも思春期の頃の「どこかに行きたいのに行きたい場所はどこにもない」という焦りや不安を感じられるところにあると思うので、文章やストーリーをあまり重視しないで読むことをおすすめします。三種類あるエンディングを「お得」と取るか「邪道」と取るかは読む人次第です。思春期を感じられる作品です。親子で読むのもおすすめかもしれません。
2009.12.01
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