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2017.05.20

日本の重厚長大製造業の劣化と再生－三菱重工、IHI、川重

テーマ：気になったニュース(32009)

カテゴリ： Opinion

戦後日本の高度成長期を支えた巨象群が、足元から揺らぎ出し、物造りの底が抜けた失態が止まらず、次々に損失計上する事態になっています。
日本の重厚長大製造業は「設計に始まり、設計に終わる」とされていたのですが、それをカバーする製造現場の設計変更フィードバックがあったのです。それには優秀な人材が欠かせないのですが、戦後の混乱期には集めることが出来て、世界に冠たる重厚長大製造業に発展したのでした。

しかし、現代では優秀な人材は軽薄短小のエレクトロニクスやIT企業に転進してしまい、重厚長大製造業は人材払底の状況となって来てしまったのです。
それでも、先人が残した設計マニュアルがあれば、従前通りの製造が可能と考えたのが浅はかな判断だったのです。
三菱重工は、YS-11の夢再びとMRJ航空機を手掛けますが、設計マニュアルに現場がフィードバック対応出来ずに、設計変更ばかりで遅々として進みませんし、客船事業でも同様な事態となり、納期遅延と大幅赤字決算とならざるを得ませんでした。

IHI、川重も造船事業をブラジルで事業展開出来ると始めたのですが、現場フィードバックも無く、設計マニュアルだけでは思う様な製品が出来ず、大幅な赤字を特別損失処理せざるを得ない状況に至りました。

永年そんな企業に勤務していた経験からは寂しいものがあります。結局は主力製品に集中して営業強化と利益確保で事業展開して、次世代に備える地道な努力をして欲しいもので、全て一朝一夕には栄華は来ないと認識すべきなのです。

象徴的なのが、MRJの現場。半世紀ぶりの国産旅客機と期待されたものの、2008年の開発開始から5度も納入延期をし、納入開始時期が「飛ばないジェット機」と化している。
航空機部門で新興国勢が台頭してきたことへの危機感があり、このタイミングしかないと事業化に踏み切った経緯がある。

造船事業は数年間、客船の大型商談で連続して受注に失敗して、受注優先に走り最新の大型客船建造ノウハウの不足を認識しながら、過去の経験で乗りきれると楽観して突き進んだ。2011年に海外クルーズ会社から約1000億円で2隻受注したものの、設計・仕様変更が度重なり、ついには受注額の2倍以上（2500億円規模）の特別損失を計上する羽目になった。又、商船三井に引き渡した貨物船が、インド洋を航海中に真二つに破断する信じられない沈没事故まで起きている。

一事が万事この調子で、原子力発電事業ではアメリカで建設された原発の蒸気発生器を納入したが、その配管が破損して水漏れが発生して廃炉になっている。

手掛ける製品が重厚長大なだけに、失敗した時の損失もその分巨額になることはわかっていたはずなのに、焦りから甘い経営判断に傾いた。
三菱重工はこの3月末に横浜・みなとみらい地区の巨大不動産を売却。すでに損失穴埋めなど財務基盤の強化に走り、昨年にはグループ内の不動産事業を分社化して、JR西日本にその株式も970億円で売却している。

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