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何ら特別ではない、普段通りの休日。
息子は木漏れ日の中で、幸せそうに昼寝をしている母親の姿を見つけた。
それは、ふとした瞬間の出来心だった。
規則正しい寝息を立てる母の無防備な姿に、心の奥底に隠していた「親愛」以上の何かが、一気に堰を切って溢れ出した。
衝動は止まらない。やってはいけないという本能の制止を振り切り、彼は眠る母親に唇を重ねた。
触れてしまった唇の柔らかさに、心臓が痛いほど脈打つ。
「やってしまった」という強烈な罪悪感と、それ以上に抗えない 独占欲
母親が目覚める前に立ち去らねばならないと理性が命じても、内なる何かがそれを拒絶する。
彼はその暗い渇望に従うように、ゆっくりと目を閉じ、母の感触を確かめるように何度も唇を重ね続けた。
世界から音が消えたような錯覚。
罪悪感さえも今は遠く、ただ目の前の温もりに全てを委ねたいという、切実な欲求が彼を支配する。
「息子」という役割を脱ぎ捨て、一人の男として触れたその瞬間。
目を閉じた視界の裏側で、彼はこの背徳的な幸せが永遠に続いてほしいと、叶わぬ願いを抱きしめた。
だが、永遠など存在しない。
彼が己の世界に浸っているその時、母親は浅い眠りから意識を取り戻した。
(…何をしているの?)
驚愕が彼女を貫く。しかし、彼女は即座に反応することができなかった。
もし今、目を開けて「起きたこと」を悟られたら、一体どうなってしまうのか。その恐怖が彼女を縛り付けた。
今ここで拒絶すれば、積み上げてきた親子関係は一瞬で崩壊するだろう。冗談として笑い飛ばしたところで、この淀んだ空気は二度と消えない。何より、問い詰めることで息子が自暴自棄になり、取り返しのつかない事態に発展するのではないか――。
もはや、以前の母子には戻れない。
そう悟った彼女が選んだのは、苦渋の「狸寝入り」だった。
どちらにも精神的余裕などない。嵐のような感情が二人の心を吹き荒れる。
(もう止めなきゃ…)
(早く終わって…)
(…止めたくない)
(心臓がうるさい…バレてしまう…)
(もっと…)
やがて、息子が唇を離した。
充分すぎるほど堪能したはずなのに、消えない飢餓感を残しながら。
彼は足音を殺し、逃げるようにその場を去っていった。
静まり返った部屋で、母親はなおも横たわり続けていた。
去っていった息子の気配を肌に感じながら、安堵とともに、奇妙で不謹慎な妄想が脳裏をよぎる。