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紀元前51年、ナイルの河畔。
若き女王クレオパトラは、激しい屈辱と野心の狭間に立たされていました。父王の遺言は、わずか10歳の弟プトレマイオス13世との婚姻と共同統治。権力闘争のただ中にある彼女にとって、それは呪いにも等しい儀式でした。
「あの幼子を夫と呼ぶなど、反吐が出ますわ。……ですが、今は甘んじて受け入れましょう。王座さえ手に入れれば、あのような子供、いつでも排除できるのですから」
しかし、婚礼の夜、彼女の計算は脆くも崩れ去ります。
一通りの儀式を終え、二人きりになった寝所。クレオパトラは冷ややかに言い放ちました。
「ふふ……あなたはまだ子供。務まるはずもありませんわ。形式だけで終わりにしましょう。どうせ誰も見ていないのですから」
その時、弟の瞳に鋭い光が宿りました。
「姉上、人は知らずとも、神は見ております。神を欺けば、必ずや不幸に見舞われるでしょう」
「えっ……?」
戸惑うクレオパトラの隙を突き、プトレマイオス13世が距離を詰めます。彼は姉の細い肩を掴むと、力強く引き寄せました。
「本気なのですか、あなた?」
「無論です。この美しき姉上を、私はずっと待ち望んでいたのですから」
次の瞬間、クレオパトラの唇は強引に奪われました。
それは幼子の無邪気な戯れなどではなく、一人の男としての、執着と支配欲に満ちた熱い口づけでした。クレオパトラは驚きに目を見開きますが、逃れようとする間もなく、弟の腕が彼女を深く封じ込めます。吐息が混じり合うほどの距離で、彼女は初めて、目の前の少年がすでに「猛獣」の牙を持ち始めていることを悟りました。
エジプトが深い闇に包まれ、月明かりが二人を照らす中、クレオパトラは抗う術を失い、妻としての儀を果たしました。
翌朝、ナイルを朝日が照らす頃。
満足げに身支度を整えた弟は、寝所に伏したままの姉を見下ろし、冷笑を浮かべました。
「姉上、最高でしたよ。さすがはエジプト一の美貌。側近たちに良い土産話ができました。次に会う時は、貴女が私に屈服した時……その時は再び、女として扱ってあげましょうぞ」
立ち去る背中を見送りながら、クレオパトラは震える手でシーツを握りしめました。
「……小癪な童(わっぱ)が。この屈辱、必ずや倍にして返してあげますわ」
女としてのプライドをズタズタにされながらも、彼女の瞳には復讐という名の新たな炎が燃え上がっていました。
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