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ブラック村ごんべえ

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2026.08.15
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「ここが噂に聞いた結婚相談所か…。」

男は雑居ビルの奥にある、表札の無い扉の前に立っていた。

ここの相談所に世話になると、確実に結婚出来るという噂を聞いたからだ。

決意を固めて扉を開くと、予想に反して中は煌びやかなミラーボールが照らす空間であり、1人の女性がバニーガールの姿で待っていた。

「すみません。間違えました。」

男は一礼すると引き返そうとする。

すると女は笑いながら言った。

「うふふ…結婚が望みなんでしょ?間違いではないわ。私はこの結婚相談所の所長の結城希美(ゆうき のぞみ)よ。」

「どうみても違うでしょ。何の冗談ですか?」

確かに部屋の雰囲気は、お酒を飲むお店のようにしか見えない。男が怪しむのも仕方なかった。

しかし希美と名乗る女は、堂々と言い放つ。

「そんな事だから結婚出来ないのよ、あなたは。」

男は心をえぐられるような感覚を覚えた。彼の悩みの本質を突いた言葉だったからだ。

「どういう事ですか?」

男は聞かずにはいられなかった。

「率直に言えば、あなたには余裕がないわ。入ってきてすぐにあなたは視線を逸らして逃げようとした。女に対して臆病でもあるわね。余裕ある男なら喜んじゃう場面よ。」

「うぐっ…!しかし、ダンディな男だってモテるでしょう。そんな人は喜びませんよ。」

「あなた、自分がダンディだとでも?とんだ勘違いでしかないわ。」

男は何も言い返せなくなった。

確かに自分がダンディな紳士を装っているだけの、ただの臆病者である自覚があったからだ。

「では、相談に乗って頂けますか? ここなら100%結婚出来ると聞いたのです。」

男は本題に戻って話を切り出した。

「もちろん成功率は100%よ。ただし、私に認められない限りは相談を受け付けないわ。」

「では、やはり無理だと…?」

がっかりする男を見定めるように、笑みを浮かべながら立ち上がる希美。

「それは私が決める事。……では、服を脱いで全裸になりなさい。」

「はぁっ!?」

男はまさかの要求に唖然とする。困惑する男を面白がるように、希美は続けた。

「あなたのスペックデータを取るためよ。さっさと脱ぎなさい。」

男は迷った。

しかし、彼女に言われた「臆病」という言葉が、頭の中で何度もリフレインする。

(臆病ではダメなんだ…!)

意を決して、男は全裸になった。もし何かの罠だったとしたら、確実に恥をかかされるだろうと思いながら。

希美は真剣な眼差しで、男の肉体データを観察し、計測していく。

「次はこの書類に記載をしなさい。あなたの情報を完全に把握するためよ。」

渡されたバインダーを手に取り、男は腹をくくった。今更引き返す訳にはいかない。言われるままに書類の質問に答えていった。

その書類を目にして、希美がつぶやく。

「名前は山田正、年齢38才……何とかなりそうね。引き受けましょう。」

「本当ですか! 僕は結婚出来るんですね!」

山田は喜んだ。自分はおそらくダメだと諦めかけていたからだ。

「本当に危なかったわね。あなたのスペックでは、本来なら35才が最低ライン。それを超えた年齢になればほぼ無理よ。でも私なら、40才までなら結婚させられるわ。」

「ちなみに、僕は何がいけなかったんでしょう? 真面目に生きてきたのに…。」

それを聞いて希美は鼻で笑った。

「真面目ねぇ。今のあなたでは何の武器にもならないわ。むしろ、つまらない男にしか見られないでしょうね。」

「うっ…。」

「さっきも言ったように、あなたは臆病者。勇気を出せない自分への言い訳を『真面目だから』『誠実だから』と置き換えて誤魔化してるだけなのよ。」

言われてみれば確かにそうかもしれないと、山田は痛感させられた。

「真面目さや優しさを武器にするなんて、むしろ真逆のチャラ男が得意な手法よ。普段チャラい男がちょっとそういう部分を見せるから、ギャップで効果がバツグンなの。」

「では、僕はどうすれば…。」

希美は山田を見つめると、一呼吸を置いて言った。

「今のあなたを破壊して、再構築します。」

「破壊!?」

「その覚悟はあるかしら?」

山田は真剣な眼差しで答えた。

「もちろんです。」

希美は不敵に笑った。

「なら、その真面目さも一度全部捨てなさい。」

「そう言われても…どうしろと?」

「私にキスをしなさい。」

「えぇっ!?」

予想外の指令に山田は驚き、まじまじと希美を見た。

バニーガール姿の希美は、改めて見れば息をのむほど魅力的な女性だった。

「これまであなたは『私に変態だと思われるの』を恐れて、視線を逸らしていたんじゃない?」

図星だった。

山田は確かに、これまで女性がいるとあえて視線を逸らしてきたのだ。見たいという願望を必死に押し殺して。

それを指摘された瞬間、山田の中で何かが吹っ切れた。希美の指示に従う決心がついた。

(自分を破壊しなければ…!)

山田は希美を力強く抱き寄せると、思いっきり唇を重ねた。

長い時間あたたかな感触を確かめ合い、一度離れてから希美の顔を見つめ、再び激しくキスをした。

希美は一切抵抗しなかった。

それから、どれだけの時間が過ぎただろうか。

ミラーボールに怪しく照らされながら、山田は希美と肌を重ねていた。

人生で初めて知る女性のぬくもり。山田は欲望の赴くままに走り抜け、最後は抑えきれずに中で出してしまうのだった。

「やってしまった…。」

行為を終えた瞬間、山田は急激な罪悪感に包まれた。

しかしそれと同時に、「もし妊娠したら、希美と結婚出来るのではないか」という身勝手な期待も湧き上がってしまう。

「私とあなたが結婚する事は無いわよ。そこは勘違いしないでね。」

山田の心を見透かしたように、それまで静かだった希美が言った。

「でも、ここまではじけられたのだから褒めてあげるわ。」

「……罵倒されるかと思いましたよ。」

「私はプロの相談員。あなたは依頼者。ビジネスパートナーとして、これからよろしくね。」

そう言うと、希美はにっこりと艶やかに微笑むのだった。






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Last updated  2026.08.15 22:03:07
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