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2009.01.04
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カテゴリ: 神話・伝承・民俗

 とうとう2009年になってしまった。もっとも、そうは言っても、時間に明確な区切りがあるわけではなし、地球が太陽の周りをぐるっと一周したというだけのことだが。

 報道によると、今年の正月は例年より1秒長くなっていたらしい。なんでも1日の午前8時59分59秒の次に、8時59分60秒というのが挿入されていたとのことだ。1秒などと言われても、瞬きする間に過ぎてしまうようなものだが、外国通貨だの証券だのの取引をしている人にとっては、その1秒が損得の分かれ目になりかねないそうだ。

 そういう人にとって欠かせないものといえば、精度の高い時計ということになるだろう。そういう時計のことを、一般にクロノメータというそうだが、その語源はギリシア神話に出てくる時の神 「クロノス」 にある。また 「クロノロジ」 と言えば、年表や年代記のことを意味する。

 スペインの有名な画家ゴヤの晩年の作に、 「我が子を食らうサトゥルヌス」 という絵がある。サトゥルヌスというのは、ギリシア神話のクロノスに当たるローマの神だが、将来自分の子に殺されるという予言を怖れたクロノスが、生まれてくるわが子を次々と呑みこんだという話をモチーフにしている。

 クロノスの妻が最後に産んだ子がかのゼウスであり、その 「どうかこの子ばかりは」 という願いを聞いた両親である天と地、すなわちウラノスとガイアによって、赤ん坊のゼウスは遠い所へ隠され、クロノスは代わりに産着に包んだ石を呑まされる。

ところが 大いなるクロノスは これらの子供たちを呑みこんでしまわれたのである
その子供たちが 聖い母胎から膝へ生れ落ちる片端から。
おのれ以外の 栄えある天の末の神々のたれかが不死の神々の間で、王者の特権を獲ることがないようにと図って。
というのも 彼は 大地と星ちりばえる天から聴いていたのだ
おのれの息子によって いつの日か 打ち倒される定めになっているのを

ヘシオドス 『神統記』 より      




わたしと、かの不埒な父から生まれた子供たちよ お前たちが私の言うことに従ってくれるなら
わたしたちはお前たちの父の非道な仕業に復讐してやることができるのです。
それというのもあのひとが先に恥知らずな所業をたくらんだのですから

 それを聞いた子供らの中から、末子のクロノスが進み出て母の願いを聞き入れ、一役買うことになる。すなわち、クロノスは母親の寝所に隠れて、父ウラノスが来るのを待ちうけ、親父殿がことに及ぼうとするところでとび出して、その大事なところを母に渡された鎌でちょん切ってしまうのである。

 つまり、ウラノスとクロノス、そしてクロノスとゼウスの物語は見事に相似形をなしており、おのが子を怖れた父ウラノスと同様にクロノスもまた子を恐れ、ウラノスが末子のクロノスによって倒されたように、彼もまたおのれの末子であるゼウスに倒されるという結末になる。

 この話は一口で言うと 「因果はめぐる」 ということになるだろうが、おそらく時間は、ぐるぐると円環的にめぐるということを象徴した話なのだろう。実朝を暗殺した公暁は事件の黒幕という疑いもある北条に消され、大内氏を倒した陶晴賢は毛利に亡ぼされる。信長を討った光秀もまた山崎で秀吉に討たれる。

 かのオイディプスもまた、 「お前はおのれの子供によって亡き者にされる」 とのアポロンの神託を怖れた父によって捨てられるのだが、殺してくるよう命じられた家来の情けによって命は助けられ、めぐりめぐって別の王家で育てられることになる。

 白雪姫もまた、 「白雪姫はあなたより千倍も美しい」 との鏡の言葉に嫉妬した王妃(グリムの初版では継母ではなく実母ということだ)によって、森へと連れ出されるのだが、やはり同様に哀れに思った狩人により命を助けられ、小人らとともに森の中で暮らすことになる。

 さて 「エディプス・コンプレックス」 理論で有名なフロイトは、『トーテムとタブー』 の中でこんなことを書いている。

 ある日のこと、追放された兄弟たちが連合し、父親を打ち殺して食べてしまい、そこで父親群に終止符をうつのである。彼らは団結して、個々の人にとって不可能だったことをあえて行って、それを実現したのである。 (中略)

 たしかに暴力的な父は、兄弟集団のだれにも羨まれ、かつ恐れられた模範であった。そこで彼らは、それを食いつくす行為において、父との一体化を遂行して、おのおのが父の強さの一部を自分のものとしたのである。

 人類の最初の祭りかもしれないトーテム饗宴とは、この重大な犯罪行為の反復であり、記念祭であろう。そしてこの行為とともに社会組織、道徳的制約、宗教など多くのものが始まったのである。

 いうまでもなく、このようなフロイトの主張はとうてい 「歴史的事実」 としての確認などできるものではない。また人間の 「社会形成」 に関する理論としてみれば、一種の社会契約論と言えなくもないが、説明があまりに空想的で心理主義に偏向しているのも確かだろう。

 たしかに古い神話や伝承には、しばしば 「怖ろしい父」 「怖ろしい母」 といった形象が登場してくる。神話の場合には、そのような形象はおそらく人間の上にのしかかる、様々な抵抗しがたい力が擬人化されたものなのだろう。とはいえ、そういう怖ろしい力が 「怖ろしい父」 といった姿で表されたということには、それなりの根拠というのもあるのかもしれない。

 第二次大戦中のヒトラーによる 「絶滅政策」 を生き延びた人々は、パレスチナへの「帰還」によって、2,000年ぶりに自前の国家を建設した。しかし、それはすでにそこに住んでいた人々を暴力で追い払い、彼らから土地と家を奪うことによる 「建国」 でもあった。

 「建国」 前には、パレスチナ全体の1割にも満たない土地しか所有していなかったユダヤ人入植者による、パレスチナ全域の制圧によって実現したイスラエル 「建国」 は、現実にはパレスチナ人に対する旧ユーゴの内戦と同様の 「民族浄化」 によるものだ。当時の記録を読めば、イスラエルの 「建国」 が、単なる自衛を超えた 「テロ」 の力を借りたものであることは疑いようがない。

 彼らの 「テロ」 と、その後のパレスチナ人による 「テロ」 との違いがあるとすれば、彼らのテロは 「国家建設」 という目的を果たし、その結果 「建国」 のための 「英雄的行為」 として正当化され認知されているということでしかあるまい。

 かつて東欧の狭い 「ゲットー」 の中に押し込められていた人々の末裔は、いままた高い壁でパレスチナ人の居住区を取り囲み、新たな 「ゲットー」 を建設しようとしている。ただし、これは 「因果はめぐる」 という話ではない。

 わずか360 平方キロという一都市ほどの広さしかない土地を軍事的に制圧するのは、むろん赤子の手をひねるよりも簡単なことだろう。だが、自国の周りに、自らの手で敵意と憎悪の壁をうず高く積み重ねていくのは、最悪の愚策でしかあるまい。それは、ゴヤが描いたサトゥルヌスのように、自らの手で自らの未来を食い尽くすことでしかないだろう。






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Last updated  2009.01.04 14:20:12
コメント(8) | コメントを書く


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イスラエルの建国  
わど さん
なるほど、やっぱりそうでしたか。世界の良心とユダヤ人の財で、パレスチナ人たちから土地を購入したわけじゃなかったんですね。ユダヤ教のこともよく知りませんけど、「神からの約束」という狂信的な宗教信条が背中を押したかもしれません。
上にリンクされたサトゥルヌスの絵を見ました。共食いを基本的に禁止する本能を解除された人類の、知性におぼれた絶望的な姿がリアルに迫ってきました。いま資本と既得権益は世界中で暴れまわり、自己保存のためには他の人類を壊滅させようとさえ意図しているみたいです。この世界はどう動こうとしているんでしょうか。なにかが見えてくる前に、こちらが消滅してしまうんでしょうか。はらはらどきどきです。
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 (2009.01.04 20:25:48)

Re:イスラエルの建国(01/04)  
かつ7416  さん
わどさん
初期の移住者が作った入植地は、たぶんそうでしょうね。ただ、その割合は現在の国土のほんの数%に過ぎないはずです。歴史をたどれば、イギリスの二枚舌外交、ヨーロッパでの二度の戦争と戦間戦後の混乱など、いろんな問題があります。

このへんはWikipediaでもかなり詳しく説明されてますが、もとはアラブ側にもユダヤ人に対する反発はなかったにもかかわらず、「ユダヤ人によるユダヤ人のための国家」を目指した彼らの性急な運動が、そもそも多数派であったアラブ側の反発を呼び、現在に至っています。

ただし、もはやイスラエルという国の存在そのものを元に戻すことは不可能であり、それは最も急進的な「反イスラエル」勢力の側も実際には分かっていることでしょう。なので、イスラエルの相も変らぬ軍事一本やりのやり方はほとんど無意味です。

今回のガザ攻撃も、実際には「国内世論」向けの要素の方が大きいように見えます。おそらくイスラエルの政治構造そのものが、恒常的に「敵」を必要とするものとなっていて、そのため結局は「パレスチナ」に安定した秩序が生まれること、ひいては「パレスチナ」が国際的に認知されることを望んでいない勢力が今は強くなっているのでしょうね。

こちらこそ、今年もよろしくです。お互い、不景気の中をなんとか生き延びていかないといけませんね。
(2009.01.04 22:51:53)

Re:わが子を食らうサトゥルヌス(01/04)  
alex99  さん


本年もよろしくおねがいいたします

新年早々、ある方のブログで、米国とイスラエルを一方的に非難するステロタイプの単純な論調を読んで、「片方だけが悪いということはめったにありません」と、おもわずコメントをいれました

もちろん、イスラエル建国自体がメチャな話しなのです
それにアラブは昔から英国などから実に安直に扱われてきましたよね
もともと国境の無かったアラブ世界を、砂漠を直線で区切った国境を作ったり、バルフォア宣言だとか、まるでアラブをバカにしてきた
そのツケが、原油の発見に産油国の富裕化と共に一気に出てきた

ただし、オスロ和平プランを壊したのは、イスラエルの強硬派だけではありません
アラブからの援助金をふところにいれたいアラファト議長やパレスティナ強硬派が、和平成立寸前に自爆テロなどで妨害しました
和平が成立すると困る勢力が双方にいるのです
それが余計悲劇を深めている

そう、私は見ているのですが

(2009.01.06 02:19:13)

Re[1]:わが子を食らうサトゥルヌス(01/04)  
かつ7416  さん
alex99さん
明けましておめでとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。

アラファトの晩年は確かに酷かったようですね。ノーベル賞を貰い援助も入ってきた時点で、将来のための土台作りをすべきだったのです。自治政府の腐敗が、ハマスの台頭を招いたのは確かですね。ただし、これは「第三世界」ではよくあることなのですが。

パレスチナ自治区がヨルダン川西岸とガザに分断されており、しかもガザはきわめて狭いのでもともと日常生活ですら自立が困難なところです。その点では、最初から統合に無理な点もあったようにも思います。

ラビン暗殺以降、イスラエルの政治家の中に本気で問題解決を考えている者がいるのでしょうか。シャロンはガザの入植地は放棄しましたが、西岸への入植は継続されています。

現在のイスラエルでは、宗教勢力が強くなっているようですね。そもそもイスラエルはユダヤ人といっても、実際には各国からの移民の寄せ集めなのです。かつての強硬姿勢は、過去の歴史からくる過剰な危機意識の表れとして理解できなくもないですが、現在の姿勢は、むしろ国内統合のための手段であるように見えます。そういったことが、現実的方策より軍事力一本槍のやり方に走らせているのではないでしょうか。

むろん力の差は圧倒的なので、軍事的に失敗することはないでしょう。しかし国際世論をはなから無視したような態度には、昔の日本と似たところを感じます。アメリカの後盾に安心しているのでしょうが、あのやり方では「自爆テロ」は防げません。実際にはロケット弾による攻撃などより、そちらの方が遥かに脅威のはずなのですが。

アラブ側も結局は二階に上げて梯子を外すという「見殺し」状態ですね。しかし、イスラエルの強硬姿勢が続けば、中東全体で原理主義勢力が伸びることになります。イスラエルを支援しているブッシュもそこまで考えているのか、非常に疑問です。 (2009.01.06 03:48:00)

明けましておめでとうです  
たんぽぽ さん
かつさま、遅くなったけれど、
新年あけましておめでとうございます。

去年は、かつさまには、ほんとうにいっぱいお世話になりました。
今年もよろしくお願いいたしますね。


ところで、今年は「うるう秒」があったのね...
意外とたくさん、うるう秒のある年があるみたいです。
地球の公転って、結構不正確なんだなと、思ったけれど。
(2009.01.09 23:00:17)

Re:明けましておめでとうです(01/04)  
かつ7416  さん
たんぽぽさん
明けましておめでとうございます。
もっとも、世の中は、あまりめでたいことばかりではないようですけどね。

>今年もよろしくお願いいたしますね。

こちらこそ、よろしくお願いします。
ただし、常温核融合とかの話はパスですが。

しかし、ある分野ではそれなりに見識があり、成果をあげている人でも
別のことになると、とたんにトンデモっぷりを暴露するというのも新たな発見でしたよ。
(2009.01.10 01:19:12)

Re[1]:明けましておめでとうです(01/04)  
たんぽぽ さん
>世の中は、あまりめでたいことばかりではないようですけどね。

ガザもそうだし、国籍法とか派遣切りとか、多いですね。


>ある分野ではそれなりに見識があり、成果をあげている人でも
>別のことになると、とたんにトンデモっぷりを暴露する

そういえば、多かったですよね...
「連合赤軍」発言のカウンセラーのかたとか、
リーフチェッカーとか、「ルルドの泉」のかたとか。
国籍法の田中康夫、川田龍平や、常温核融合の荒田センセイもそうだし。

わたし個人的には、「私闘発言」と「国籍法」で、
2回やってくれた、とんぼさんがいちばん衝撃的でした。
(2009.01.12 17:38:49)

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