PR
Freepage List
20年と言う時の長さを、私は少し怖がっていました。
それは私の人生のほぼ半分の時間でもあり、 その間に宗教の壁が陥落した東西の壁に取って代わり、私は故郷の国籍を失い、結婚・離婚・再婚と言う月日と心の峠を越えた、同じ年輪でも倍の皺になっていそうな、そんな時の層でした。
その20年の間に一度お会いしただけの先輩がウィーン迄いらっしゃるとの事。本当に気さくで飾らない、人情に厚い方なんだけれども、人間、40も過ぎると風貌だって変わるものだし、色々生きて行く上で苦労もあるだろうし、昔の様に万年青年の様な格好で居て下さるとは限らないし、(だって今、やたらメタボだ何だと騒がれているし、)お腹が出て二重顎とかになっていないとは限らないし…と、20年と言う歳月が人間を表向きだけでも変えてしまうその力を、かなり怖れて居たのでした。
先輩がウィーンに到着された晩、私は丁度演奏会でお迎えに行かれなかったのですが、ホテルのお部屋にお電話すると、声は本当に昔そのまま。ほんの一寸ご出身の岩国の抑揚が見え隠れして、冗談の切り込み方、何もかもがそのまんま。
翌朝、矢張り緊張して居たのか、4時半には目が覚めてしまいました。それぞれのエクササイズの回数を減らして超特急 ピラティス を30分、朝食もきちんと取って列車に乗り込みました。 オーストリア国鉄 の1等席無料アップグレード券を使ってのんびり快適な2時間半。10時前には先輩の泊まられるホテルに到着。「いゃっどうもっめぐみちゃん!」とのお声に振り返ると…お声だけでなく、お姿も全く昔のまんま。良かった…!
さて、ウィーン観光で一番自慢出来るのは交通の便。東京の様に利用する会社が変わる毎に料金がゼロから始まる事が無く、ウィーン市内の鉄道、地下鉄、市電、バス全てが同じ傘下にあるので、幾ら乗り換えても「一方向」は「一片道」。ましてや24時間又は72時間乗り放題チケットならば、思い立った時にひょいと飛び乗る事が出来るので便利。おまけに今はサッカーのヨーロッパ選手権がオーストリアで開催されているので、普段は無い「48時間乗り放題チケット」も登場。先輩は翌々日の出発なので、48時間チケットはとても助かりました。
先輩のご希望に副ってまずは シェーンブルン宮殿 。
今日は夏至だぞ!と気合の入ったお日様が、昨夜に降った雨を大地から煽り立てて居るかの如く、珍しく空気がもわっとしています。「うぉお、デカイなぁ、こりゃ…」と先輩。

私が以前訪れたのはもう、15年前。中に入ると、当時に比べて受付やクロークも新しく整い、音声ガイドは日本語も用意されていて無料。折角なので Grand Tour (40部屋・約50分・12.90€)を回る事にしました。以前に比べて、当時の様子を分かり易くする為の小さな心配りが増え、二度目だと言うのにとても興味深く見る事が出来ました。
宮殿のお庭も見ずにそのまま街中へ…もうお昼で、お腹が警報を鳴らし始めたのです。いきなり何処かのお店に入るのも勿体無いので、カールス広場の一歩手前「Kettenbrückengasse」と言う駅で降り、ナッシュ・マルクト(摘み食い市場)を通りながら街方面へ向かいました。此処に入ると、私はなかなか前に進めなくなります。
例えば…

ギリシャの各種前菜、

瓶詰めのオリーブをオリーブと呼ぶ無かれ…とでも言いたげな連中、

もう、メタボになっても構いません…と言わせる美味・珍味、

土から生えるものなら何でもあるよ・・・と笑顔で決めるトルコ人、

これ全部試してみたい…牛のチーズ、

サラダにしたら美味しそうな羊や山羊のチーズ、そして

遠路遥々ようこそいらっしゃいました…の海の幸。
これからの2週間、重たい料理ばかりになるだろうから…と、ナッシュ・マルクト内にある ギリシャの魚専門料理店【Nautilus】 に入りました。10.9€と12.9€のメニュー二種。それぞれ本日のスープか前菜盛り合わせとの組み合わせで、人参の生姜風味スープにはお魚のフィレが一切れ乗って居て、先輩もご満足の様子。私も、変化に富んだ盛り合わせにホクホク。特に小さな蛸のマリネは、葫が利いて美味しかったです。

安い方のメニューのメインはレモン風味ルッコラ菜ソースと海老の ペンネ 。 これは、生クリームに刻んだルッコラ菜とレモンの皮が入って居て、見た目より一寸重たいお料理でしたが美味しかった!

1時頃になるともうお店は満席。日陰でぽかぽか陽気にそよぐ風に身を委ねて座って居ると心地良くて立てなくなってしまいそうだったので、早々にお店を出て街中へと向かいました。
オンラインで予約しておいた 楽友協会 の立見席。 21日の午後に丁度、ウィーンフィルが特別演奏会を開くのです。裏のチケット売り場で予約確認メールと正式チケットを交換し、今度は国立オペラ座へ。公式オフィスでは「明日の晩?ある訳ないだろ?」とつっけんどんに追い返されたのですが、その戸口で禿鷹の様に集って居たのがチケット事務所の連中。色々な事務所のある中で、お互いに連絡を取り合いながら、客を斡旋するシステムらしく、前以て事務所が29€で購入しておいたチケットを49€で先輩に売り払いました。これには私も不満だったのですが、事務所の取り分が10€、前日だから更に10€上乗せ…と、説明している本人が俯き加減で早口だったので、一寸不憫にもなってしまったのもあります。
有名なケルントナー通りを行こうとしたのですが、この日の晩のサッカー・ヨーロッパ選手権はトルコ対クロアチア。呼笛、ラッパ、怒声、酔っ払った応援団で埋め尽くされているこの通りを歩くに忍びなく、一寸横道に抜けたら迷子になってしまい、先輩に思いっきり歩かせてしまいました…ごめんなさい。
中央郵便局に行き、ほんの一息入れて今度は南駅に行こうとすると、これが又直ぐに見付からず、午後は観光しているのだか遠足(走)しているのだか分からなくなって来ました。喉は渇くし、汗だくだし、やっと乗り場を見つけてほっとしたのも束の間、今度はその列車が警察の警戒規制にあって1時間以上の遅れ。頑張って仕事を早々に終えてくれた夫とBadenで待ち合わせする筈なのに列車が来なかったので、ウィーン迄車で迎えに来てもらいました。
幸い、ウィーンの南側からは渋滞にも会わず、あっと言う間にBadenを越え Sooß に到着。お気に入りのホイリゲ Steiner "zum 67er" に入り、中庭のテラスに腰を下ろすと、いきなり疲れが足を襲います。仕事で疲れているだろうに、それを察して夫が、店内から様々な料理を運び出して来てくれて、それを肴に白ワインの シャルドネ を飲みました。先輩がこの日ずっと抱えていらした袋から色々取り出して、「二人へのお土産に」と渡して下さいました。 とても可憐で美しい、宇野千代さんの名を仰いだ陶器のお茶碗 、 わらび粉を使ったさっぱりして滑らかな珍しい外郎 、 はちみつ入りの錦帯せんべい や、無知な私達を見越して、錦帯橋の説明用に図柄の入ったタオル…等など。今日一日中、私の無知が先輩をあちらこちら引きずり回してしまったのに申し訳無い限り。夫と先輩も英語や身振りで意気投合。20年の月日が無かったかの如くの再会の様に、夜は音も立てずに過ぎて行きました。

ズノイモとワイン 2009/01/02
ズノイモで食べる & マルレンカ 2008/12/31
ズノイモ到着と4つ星ホテルPrestige 2008/12/30