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2016.05.05
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 その富久寿司の末っ子・松山信広こと「のぶちゃん」は、ひろし君より一つ下の幼馴染だった。泣き虫で小学生になってもお母さんのおっぱいを吸っていたので、いつも冷やかしていたのだが、近所に同年代の男の子が少なかったせいか、いつも一緒に遊んでいた。

 ひろし君の家は和菓子の製造工場を少しずつ広げたため、庭は全て潰してしまった。だがのぶちゃん家の裏側には、まだ猫の額ほどの庭と井戸端が残っており、道路に面した隅のほうには、小さな石炭小屋も建っていた。ひろし君たちは、かくれんぼをすると、よくこの石炭小屋に隠れて泥んこになり、大人達に叱られたものである。
 ある日ひろし君は、その石炭小屋から道路に出たところで10円玉を見つけた。このあたりに落ちていたのだから、おそらくのぶちゃんの家族が落とした確率が高いのだが、一応公道に落ちていたので、のぶちゃんと相談してお巡りさんに届けようということになった。

 早速二人は、家から15分ほど歩いた場所にある「北沢警察署」まで行き、窓口にいたお巡りさんに拾った10円玉を手渡した。すると二人の少年をじっと見つめていた巡査は、優しく微笑みながらポケットから10円玉を取り出した。そして「君たちは正直だなあ、ご褒美にこれをあげよう」と言って、少年たちの頭を撫でながら、それぞれに10円玉を握らせるのだった。こうして二人の少年は大喜びで、北沢警察署をあとにすることにした。

 10円がいきなり20円になる。この実に美味しい出来事があってから、二人は目を皿のようにして道端を歩き回った。だがそう簡単にお金は落ちていないものである。がっかりして諦めかけたとき、のぶちゃん家の縁側下に10円玉が落ちているではないか。
 当然ここに落ちていたのだから、間違いなくのぶちゃんの家族が落としたに違いなかった。だがそんなことは、もうどうでも良い気分だ。ひろし君とのぶちゃんの二人は、小躍りしながら拾った10円玉を握りしめ、またまた北沢警察署へと向かった。

 薄暗い警察署には、先日20円にしてくれた巡査は見当たらない。そこに「僕たち何か用?」と言いながら婦人警官が近寄ってきた。それでひろし君たちは、近所でお金を拾ったと言いながら、10円玉を彼女に手渡した。

 今回は全く儲からなかった。ひろし君たちは「やはり女はケチなんだね」と、悔しそうな顔をしながら帰り道を急いだ。そしてこの件以来、もうお金を拾っても、二度と警察には届けないことにした。

作:五林寺隆

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最終更新日  2016.05.05 11:35:05
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