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2016.08.11
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 ひろし君は子供の時からマンガが大好きだった。だが当時のマンガ雑誌は、現在のように週刊誌ではなく全て月刊誌であった。そしてまだマンガは市民権を獲得しておらず、マンガ=悪書とのレッテルが貼られていたのである。
 だからひろし君の両親も、最初はマンガ雑誌は認めてくれなかった。しかし祖母と一緒に住んでいるときは、毎月『幼年ブック』という雑誌を買ってもらっていたと懸命に主張したため、さすがに両親も妥協して、月一冊だけなら買っても良いという約束をとりつけたのである。

 だがもう小学生になったことだし、『幼年ブック』ではなくクラスメートの多くが読んでいる『少年』という雑誌を購読することにした。『少年』には手塚治虫の「鉄腕アトム」をはじめとして、横山光輝の「鉄人28号」が連載されており、別冊付録のほか50連発拳銃や少年探偵団手帳などのおもちゃ付録も充実していた。さらに正月号などでは、50大付録と名を打った大企画に胸をときめかされたものである。
 ひろし君は一番人気だったSF系の「鉄腕アトム」よりも、現実味のある「鉄人28号」のほうが好きで、いつも鉄人28号の絵を描いていた。また『幼年ブック』時代から親しんでいた「ドロンちび丸」の影響もあってか、杉浦茂タッチの絵を真似たマンガ絵を描くのも好きだった。

 はじめの頃はひろし君も、月一回発行されるだけの『少年』だけを心待ちにしていたのだが、たとえ付録が沢山付いていようが、とてもじゃないが1ヶ月に一冊だけの雑誌だけを待ってはいられない。当時月刊少年マンガ誌は『少年』のほかにも、『少年画報』、『冒険王』、『ぼくら』、『少年ブック』などが発行されていた。
 ひろし君はこれらのマンガ雑誌の全てを読みたくてしょうがない。だからと言ってそれら全てを買う金はない。それで近所にある貸本屋で借りて読むことを決意したのだが、たとえ貸本であっても、両親は『少年』以外は読むことを許してくれない。

 そこでひろし君が考えたのは、服の下に借りたマンガ本を隠し持って家に入り、急いで二階にある自分の部屋に駆け上って行くことだった。だがこの方法は薄着の季節には出来ないし、マンガ雑誌数冊と付録本数冊をまとめて運ぶのは困難なため、すぐに諦めて別の方法を考えるしかなかった。
 そこで自宅の屋根を登って、二階の物干し台まで借りたマンガ雑誌を運び、そ知らぬ顔で帰宅して、二階の物干し台からその雑誌を回収するという方法に切り替えたのである。はじめはその方法で上手くいったのだが…。

 ところがある日、古い屋根に登っているときにメリメリと音がし始め足場を失いかけた時、もしや泥棒かと勘違いした母のみつ子がいきなり飛び出してきたのだった。ひろし君は必死になって屋根にへばりついたままじっと身を伏せていた。みつ子はしばらく表の様子をみていたが、「ネズミかもしれないね」とブツブツ言いながら、やっと家の中に引き返した。だが、ひろし君は九死に一生を得た気分で、額は汗でびっしょりになっていた。


 ただ少女雑誌の中にも、読んでいるうちにだんだん面白くなってきたマンガがあったことも否めない。そのマンガとは、手塚治虫の『リボンの騎士』と山田えいじの『ペスよおをふれ』だった。
 そしてその数年後に、白土三平の忍者マンガ「サスケ」が『少年』に新連載となり、それに夢中になったひろし君は、白土三平風の忍者マンガを描きはじめ、それがクラス中で回し読みされるようになるのだが、その話については別稿に譲りたい。

作:五林寺隆

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最終更新日  2016.08.11 11:02:33 コメントを書く
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