PR
コメント新着
カレンダー
カテゴリ
キーワードサーチ
サイド自由欄

『わんぱく戦争』の巻で登場したが、梅ヶ丘商店街のガキ大将こと鈴本健二はまだ中学生になったばかりだったが、去年父親が突然亡くなってしまい、家計を助けるために新聞配達をはじめたのである。朝早く起きて朝刊配達をして、中学校から帰ると今度は夕刊配達をしていた。まさに新聞少年だったのだが、人懐っこくて行動派の健二にとっては、単調な新聞配達は辛いというよりも退屈で堪らなかった。
それで夕刊配達のときは、子分格のひろし君を誘って二人で夕刊を配ることにしたのである。手分けして配るので一人で配るよりかなり時間の節約になるし、二人でお喋りしながら配るので退屈もしない。
そのうえ手にする賃金はすべて健二のものになる。健二にとってはメリットばかりで楽しい仕事になったのであった。
一方ひろし君のメリットは、配達しながら健二から怪談話を聞けることだった。健二はいろいろな話を知っていて、かつそれらを声色を使って上手に話すのである。そして盛り上がったところで、暗闇で奇声を発して逃げてしまうのだ。ひろし君は怖くて堪らないのだが、逆にそれがまた楽しくて堪らなかった。
こんなことが二か月間続いた。だがさすがに怪談話も底をついてしまい、健二は何度も同じ話を繰り返すようになってしまった。また最初は健二の親孝行ぶりを褒めていたひろし君の父母たちも、「いつまでもただ働きをしていないで、家の手伝いもしなさい」と文句を言うようになっていた。 それで次の日に健二が呼びに来たとき、「親に叱られたので、もうついてゆけない」と断ってしまったのである。さすがの健二も親に叱られたと言われると返す言葉がなく、「そうか」とつぶやいて一人で夕刊配達にむかった。
その日を境に、健二がひろし君を夕刊配達のお供に誘うことは無くなった。と言うよりも、もう子分格として接することもなくなり、声をかけることさえもなくなってしまったのである。そうして健二とは疎遠になってしまう。
また小学三年生になったひろし君も、近所の子供たちよりも学校の友達と付き合う割合が増え、健二に対する興味も薄れてしまった。かつ家業の和菓子屋の手伝いが忙しくなり、ちゃらちゃらと遊び呆けてばかりいられなくなってしまうのである。
作:五林寺隆