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若山牧水と言えば旅の空で歌を綴った歌人で、その代表作は何と言っても
「白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」
であろう。
また彼は旅と同じく酒をこよなく愛したことでも有名で、酒の随筆のほか数々の「酒の歌」も残している。その数多い酒の歌の中からとりあえず10首を選んでここに紹介することにした。
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白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり
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あな寂し酒のしづくを火におとせこの夕暮の部屋匂はせむ
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ただ二日我慢してゐしこの酒のこのうまさはと胸暗うなる
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病む母を眼とぢおもへばかたはらのゆふべの膳に酒の匂へる
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酒無しにけふは暮るるか二階よりあふげば空を行く烏あり
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一杯をおもひ切りかねし酒ゆゑにけふも朝より酔ひ暮したり
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酔ひぬればさめゆく時のさびしさに追はれ追はれてのめるならじか
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人の世にたのしみ多し然れども酒なしにしてなにのたのしみ
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寂しみて生けるいのちのただひとつの道づれとこそ酒をおもふに
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酒ほしさまぎらはすとて庭に出でつ庭草をぬくこの庭草を
評:五林寺隆