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2022.02.08
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カテゴリ: ショートショート


 5年前に自宅の近くにT脳神経外科が新設された。当時オープン記念だったのか、廉価で脳ドックを実施していたので受診したことがある。脳ドックと言っても簡易脳ドックで、MRIだけの簡単な検診だけだった。特に問題がないと診断され、これであと5年間は心配ないと喜んだものである。
 それからあっという間に5年経過したのだが、相変わらず検査料が廉価なこのT脳神経外科へ再び行くことにした。簡単な診察を受けた後、早速MRI室で土管のようなトンネル状の機器の中に体を挿入してじっとしている。
 MRIとは magnetic resonance imagingの略称で、日本語に翻訳すると「核磁気共鳴画像法」という堅苦しい名称になるが、誰もが略称のMRIと呼んでいる。難しいことはよく分からないが、磁気を使って体内原子などの反応を利用して、体内の画像を構成する魔法のような機械だそうである。
 とにかくその磁気が発生するときの音が凄い。「ガーガーッツ、キンキンキン」と低音高音が入り乱れて凄まじい音に襲われてしまうのだ。それでもMRIを利用するのは初めてではないので、ここはしばらくじっと目をつぶってじっとしているしかない…。
 「はい終わりましたよ吉崎さん、お疲れさまでした。静かに起き上がってください」と検査技師の声が聞こえた。終わってみれば何ということもない。俺は静かに起き上がって検査室を出た。そして今回も医者の診断は「全く問題なし」でホット胸をなでおろす。さあ早く家に帰って、この結果を女房に話してあげよう。
 急いで自宅に帰り駐車場を見ると、なんと「ヴィッツ」が駐車しているではないか。俺が今乗っているのは「デミオ」のはずだ。確か3年前に「ヴィッツ」から「デミオ」に乗り換えたはずである。それとも誰かかヴィッツに乗って来たので、デミオをどこかに移動したのだろうか…。まあ女房に聞けばすぐ分かるはずだ。
 その女房は台所で昼飯の支度をしていた。「ただいま、検査は異常なしだったよ」
「お帰りなさい、それは良かったわね。」と言って振り向いた女房がなんとなく美しい。顔の皺が減っただけではなく、そこそこ艶っぽいし洋服も若々しいのだ。それだけではない。洗面所の鏡に映った自分も若々しいし、なんと白髪がほとんど無くなっているではないか。そしてその日は、久しくご無沙汰だった女房との愛の行為が復活するのであった。
 翌日新聞を見ると、「阿川首相が解散宣言」という見出しが飛び込んできた。だが俺の記憶では5年前に阿川首相が解散し、総選挙で惨敗した結果、岸山首相に変わったはずだが…。それで新聞の日付をみると、なんと今日は五年前の日付だったのである。むろんこの新聞はいま郵便受けから取ってきたもので、過去の新聞ではないはずだ。
 それで念のため女房に今日の日付を聞くと、やはり新聞の日付と同じだった。ということは、俺の心だけが5年前にタイムスリップしてきたと考えるのが一番ノーマルである。そして女房が若いこと、車が買い替え前の「ヴィッツ」だということ、などと辻褄が合うことになる。
 しかしどこでタイムスリップしたのだろうか。前日の行動を念入りに思い返してみると、どうやらMRIの検査をした後から世界が変わったとしか考えられない。つまりMRIの機械がタイムマシンだったのであろう。
  その後俺は、ここ5年間のあらゆる記憶を呼び戻すことに必死になった。そしてその記憶を頼りに、過去の競馬・株式・野球賭博などで荒稼ぎしようと考えた。だが残念ながら賭け事には全く縁がないし、株式投資も丁度5年前にやめてから株式欄には全く目を通していなかった。
 はっきり覚えているのは、3年前の天皇賞でナインポイントが史上初の6冠馬を達成したことぐらい。これはTVや一般紙で大々的に報道しているので覚えているのだが、ガチガチの本命レースで馬券を1000万円買っても100万円しか儲からない。結局金儲けの役に立つ記憶はほとんどないも同然だ。
 せっかく5年前にタイムスリップしたというのに、ことさら変わったこともせず、あっという間に5年の歳月が通り過ぎてしまった。そして今日はまた相変わらず検査料が廉価な、あのT脳神経外科で簡易脳ドックを受信することになったのである。
 簡単な診察を受けた後、早速MRI室で土管のようなトンネル状の機器の中に体を挿入してじっとしている。
 とにかくその磁気が発生するときの音が凄い。「ガーガーッツ、キンキンキン」と低音高音が入り乱れて凄まじい音に襲われてしまうのだ。それでもMRIを利用するのは初めてではないので、ここはしばらくじっと目をつぶってじっとしているしかない…。
 「はい終わりましたよ吉崎さん、お疲れさまでした。静かに起き上がってください」と検査技師の声が聞こえた。終わってみれば何ということもない。俺は静かに起き上がって検査室を出た。そして今回も医者の診断は「全く問題なし」でホット胸をなでおろす。さあ早く家に帰って、この結果を女房に話してあげよう。
 急いで自宅に帰り駐車場を見ると、なんと「ヴィッツ」が駐車しているではないか。俺が今乗っているのは「デミオ」のはずだ。確か3年前に「ヴィッツ」から「デミオ」に乗り換えたはずである。それとも誰かかヴィッツに乗って来たので、デミオをどこかに移動したのだろうか…。まあ女房に聞けばすぐ分かるはずだ。
 その女房は台所で昼飯の支度をしていた。「ただいま、検査は異常なしだったよ」
 「お帰りなさい、それは良かったわね。」と言って振り向いた女房がなんとなく美しい。顔の皺が減っただけではなく、そこそこ艶っぽいし洋服も若々しいのだ。それだけではない。洗面所の鏡に映った自分も若々しいし、なんと白髪がほとんど無くなっているではないか。そしてその日は、久しくご無沙汰だった女房との愛の行為が復活するのであった。
 あれ、なんかこれ初めてじゃないよね…。またまた同じことを5年間繰り返すのかいな。だがまてよ…、するとまた5年後に同じことが起きるかもしれないな。よしそれじゃ今度こそ次の5年後に備えて、株と競馬の情報をしっかり記憶しておこうじゃないか!。
作:五林寺隆
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最終更新日  2022.02.10 17:17:40
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