ネット文芸館 木洩れ日の里

ネット文芸館 木洩れ日の里

PR

×

コメント新着

朽木一空と五林寺隆 @ Re:新宿に熊怖い(06/16) 笑左衛門さんへ 新宿、渋谷、池袋、銀座…
笑左衛門 @ 新宿に熊怖い ユニークな画像でびっくりしました。新宿…
イラン攻撃@ Re:時の家(03/05) イラン攻撃については、 0896240183 をど…
日差し@ Re:万作の花(02/22) 日差しの知りたいことは、0896244450 か…
聖書預言@ Re:置き爺(11/25) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

サイド自由欄

このサイトに掲載している「文章と絵手紙画像の著作権」は、当サイト管理人に帰属しています。従って、無断で転載することをお断りします。

2026.09.01
XML
カテゴリ: エッセイ



 店内には大音響が響き渡り、年配の女性が演歌を熱唱している。ざっと見回すと、あとは八十代と思しき白髪や禿頭の爺さんばかり。席に着くと、ママが挨拶とともにメニューを差し出した。ここでは飲み物を一つ頼めば、あとは一曲百円という、なんとも分かりやすいシステムらしい。
 車で来たのでアイスコーヒーを注文すると、「かけつけに、さっそく一曲入れてくださいね」と促される。初めての店なので、オハコではなく歌いやすい吉幾三の『雪国』を選んだ。

 女性の歌が終わると、割り込みで入れた私の『雪国』の前奏が流れ出す。慌ててマイクを手に取り、大画面の前へ。なんとか無事に歌い終えると、パラパラとお愛想程度の拍手が聞こえた。
 続いて、同じく割り込みで入れた囲碁仲間二人の歌が続く。忘年会などで聴き慣れた歌声なので「いつもながら巧いな」と思っただけだったが、我々より先に陣取っていた常連たちの歌声には、思わず度肝を抜かれた。

 村田英雄の『無法松の一生』をはじめ、春日八郎、大川栄策、鳥羽一郎など、古い演歌が中心なのだが、そのどれもが腹の底から絞り出すような迫力に満ちている。よく見ると、ヨタヨタ歩きの人や杖をついた老人ばかりなのに、歌い始めると突如として「別人28号」の世界へと変貌するのだ。

 いつもの私なら得意の演歌をリクエストするところだが、ここではとても太刀打ちできない。そこで次に選んだのが『ブルー・シャトー』。すると突然手拍子が起こり、なんと一番を歌い終えると大拍手。
「ブルー、ブルー、ブルー……シャトー」と歌い切ると、店内は歓声と拍手拍手の大嵐となった。

「なるほど、演歌漬けのこの店では、こういう曲のほうが受けるのか」
 そう悟った私は、橋幸夫の『恋のメキシカン・ロック』、植木等の『スーダラ節』、吉幾三の『俺ら東京さ行ぐだ』などを立て続けに歌い、大喝采の雨あられを浴びたのだった。

 ただ、もうネタ切れである。当分この店に顔を出すのはやめておこう──そんな思いを胸に、店を後にした。

作:五林寺隆

 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。 またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。

にほんブログ村 ​

人気ブログランキングへ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2026.09.01 18:15:38
コメントを書く
[エッセイ] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: