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2023.04.05
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テーマ: エッセイ(94)



「高峰秀子ベスト・エッセイ」(高峰秀子・著、斎藤明美・編/ちくま文庫)を読んでいる。
この本を読んで驚いたのは高峰秀子さんが55歳で女優を引退したということだ。55歳と言えば当時の定年の年齢であるから不思議ではないけれど、老いて盛んというか70歳代で活躍する近頃の俳優諸氏を見るに生涯現役が当たり前のような気がしていたので、大いに驚いた次第である。これまた驚いた理由には私自身がその歳をすでに通り過ぎてしまったせいもある。財もなく悠々自適に暮らすわけにもいかない私は還暦を過ぎても働かざるを得ない。大女優として40年以上働いてきた高峰秀子さんだからできた引退とも思えた。そして、また小さな驚きであるが彼女の引退作品「衝動殺人 息子よ」を映画館で見ている。
さて、『人間50年、その後…』と銘打って書き始めたけれど、49歳でその生涯を終えた織田信長を意識していて、48歳で職をなくして路頭に迷い役者の道もあきらめた我が人生の一つの終焉を重ねたものである。
 私は二度目の死を考えていた。
一度目は中学三年14歳の時である。高校受験を控えた夏が始まるころ、ふと、死を思った。その時より前に読んだのか、後に読んだのか定かでないけれど「二十歳の原点」という自殺した女子大学生の日記を書籍化したものに感化されていた。衝動は突然、うっすらと考えていた自殺というものが顕在化して発作的に死を実行しようと考えたのだが、その実行を思うと恐ろしくなり、何気ない母の声掛けで我に返ったように翻意した。その時の委細については、もう記憶になく、なにゆえに実行しようとしたのか、また何があって実行をやめたのか判然としない。ただ、その時も、その後も、一度死を考えた私は生涯二度と死を考えることなどないと考えていた。ところが、である。
 地方から映画俳優を目指して上京し、渋谷の混雑に人酔いして山手線に乗る気がしなかった。なぜか、ふと思いつき南口バスターミナルからバスに乗ればとバス乗り場を探した。バスターミナルの乗り場は停留所がそこかしこに広がり、ほぼ中央に位置するところに新宿行きの乗り場があった。雨上がりでわずかな水たまりが点在していた。私は、数人のバス待ち客の最後尾に並んだ。バスが到着すると水たまりをぴょこんぴょこんと飛び越えて駆けてくる若い女性がいた。夕暮れの太陽が彼女を照らし輝いて見えた。思わず身を引いて彼女を先に通した。彼女のまなざしは私をとらえ前後の椅子に腰かけた時には彼女の手を握りしめていた。遠い昔の余談はこれくらいにして…、それから四半世紀、あちこちいくつものバイトを転々としてなんとか暮らしていける時給を稼げる会社にバイトで入った。俳優として売れることも、生活することもできずにいたが、バイトでの仕事ぶりが認められ売れたら辞めたらいいと促され正社員となって日夜働いた。オーナー中小企業だったので、ワンマンがたたり、倒産の危機を何度も繰り返し、とうとう耐え切れなくなり店じまい。私は、辞める時には最後のひとりと考えていた。その会社の社長に、宴会の席で残党社員10人ほどの前で社長は「俺はお前を認めていない。何十年も一緒に仕事してきたけれど、ぜんぜん仕事できていない。いつまでいるんだ、さっさとやめろ!お前なんてな…」と私に暴言を吐いた。私に味方する人は誰一人いない。社長の暴言よりも、誰もかばってくれなかったことに悲しみ傷ついたのかもしれなかった。私は立ち直れず、家族があるにもかかわらず、初めての時のように、この世から消えてしまいたくなった。死。死を意識した。再び自死を考えたことに震えおののき私は壊れた。
 映画だけが頼りなのか、さりとて実写を見る気にはならず、ジブリならと公開中の「コクリコ坂から」を見た。その映画を見た私はさめざめと泣いていた。映画が終わると苦しみは拭い去ったのか、心痛い苦い思いはあれど、死へと進む気がなくなっていた。映画が、アニメが私を救ってくれた。宮崎駿監督が救ってくれたと思っていたが、宮崎駿監督は脚本のみで監督は宮崎吾郎さんだった。ありがとう、感謝いたします。


木下惠介生誕100年::衝動殺人 息子よ [ 若山富三郎 ]


二十歳の原点(新潮文庫)【電子書籍】[ 高野悦子 ]





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最終更新日  2023.04.05 22:17:18
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